have difficulty の扱いにどの程度苦労する?

日本の英語教室内外で課されるテストでは、次のような問題がよく見られます。

1. 彼は新しい環境に馴染むのに苦労しているようだ。
He (ア in イ to ウ getting used エ seems to オ have difficulty) his new environment.

2. 大学の4年生の一部は英語をなかなか理解できないが,大半はよく理解できる。
 A few ( ) ( ) ( X ) but ( ) understand ( ).
1.understanding English 2.most seniors 3.of those university's seniors
4.have difficulty 5.English well

※どちらも、整序完成で、不要・不足はない設問です。完成すると期待される英文は、

1. He seems to have difficulty in getting used to his new environment.
2. A few of those university’s seniors have difficulty understanding English but most seniors understand English well.

でしょうね。2.の英文は少しぎこちないものになりますが、文法語法上の間違いはありません。

問題は、have difficulty に続く部分が、 in + ingになるか、 ing単独かは、出題者が決めているということ。


以下、同じ項目で、まずはinアリの出題例。

3.When Yuta visited northeastern England, ( 1 ) ( 2 ) ( 3* ) ( 4 ) ( 5* ) ( 6 ) culture at first.
A.understanding B.had C.difficulty D.their E.he F.in
4. 一人でその企画を完成させるのは大変でしょう。
( ) ( ) ( ) ( ) ( ○ ) ( ) ( ) ( ) yourself.
[① a lot of ② by ③ completing ④ difficulty ⑤ have ⑥ in ⑦ that project ⑧ you'll]

5. 彼女は簡単にレストランを見つけるでしょう。
She will ( ) ( ) ( * ) ( ) ( ) the restaurant.
(a) in (b) difficulty (c) have (d) finding (e) no

続いてinナシの ing単独。

6. 彼の家を見つけるのは全然苦労しないだろう。
You ( ) ( * ) ( ) ( ) ( * ) ( ) finding his house.
(1) all (2) difficulty (3) have (4) no (5) at (6) will
7. Chloe (① her point ② great difficulty ③ across ④ had ⑤ getting) to the band members.
8. 彼は学生の質問すべてに答えるのに苦労した。
He (A. all B. answering C. asked D. by E. difficulty F. had G. questions H. the) the students.


この項目、古くは、上本明 『現代英語の用法』(研究社、1972年)で、取り上げられ、

一部で言われるほど、inを用いない構文のほうが普通というわけではなく、むしろinを用いる場合のほうが、(特にnoやlittle、あるいはgreatなどの限定語がdifficultの前につくときに)、多いということである。
もっとも以上のことは、用いる人の好みとか、構造上の問題とか、文体や微妙な文意の差など、いろいろの要因も介在していることであるから、一概に言い切れることではない。(pp.88-90)

とコメントされています。上本は、同書で、次の関連表現も取り上げて考察。

busy / have trouble / lose no time / there is no use

ほぼ同時代の学参で、金子稔&J.キャレンダー 『英語クリニック』(吾妻書房、1972年)では、このdifficultyに続く ingの表現で、

inは省略してもけっこうです。最近の英語では英米共にinを省略する傾向があります。(p.181)

difficultyのかわりに a hard timeを使っても同じことです。

  • ingの前のinが省略されるのは現代英語によく見られる現象です。(p.181)

と解説を加えています。

Ngram Viewerで、上本本や金子本の時代と重なる1960年代からの概況を眺めてみます。
過去文脈で、had 名詞 ingかhad 名詞 in ingか?

全体

AmE

確かに、60年代、70年代では、米語法でも、no difficultyに続く場合は in -ingが優勢であったが、80年代,90年代で変化が見られます。


一方の英語法では、2000年代以降で差が縮まりはしているが、まだ no difficulty in -ingが優勢。

ざっくりとした検索結果ですが、全体とBrEではin -ingが優勢で、AmEでは拮抗していることが推察できます。

比較的近年のコーパス資料や英語ネイティブの語感を調査した佐久間治『ネイティブが使う英語・避ける英語』(研究社、2013年)では、

近年では、inを除いた語法が、特別な事情がない限り、90%を占める。古い教育を受けた者なら、inがあった方が安心するが、近年のnative speakerはinがない方がnaturalと感じる。
(pp.42-43)

としているのですが、上述の no difficultyの生息域を考えると、「90%を占める」という一般化には慎重である必要があるでしょう。


という状況で、非北米英語を身につけてきた学習者は、この二つの表現形式であれば、in -ingの方を普段使っていると考えられるのですが、その場合に、上述の問題の2,6,7,8番を課された者は、

  • 「おお、私は普段 in無しでダイレクトに-ing形が続く言い方をしないけれど、テストではこちらのin無しの形が正解として求められているのだな」

という処理をして正答に至るのでしょうか?
もしそうだとしたら、それって学習者に不要な認知負荷を強いていませんか?
そんな疑問からいろいろ調べているわけです。

次に、noなどの限定がないdifficulty単独の場合はどうなっているか?を見てみましょう。

全体

AmE

BrE

そして findingだけで合算表示。

全体概況ではなく、AmEの環境では、肯定でのhad difficulty -ingの頻度が突出。他はどんぐりのなんとやら状態。

一方のBrEでは、

肯定のin無しhad difficulty -ingは1990年代後半で in有りと逆転し優位となり、その後差は拡がっている。それに対して、否定の had no difficultyでは今日までin有りが優位に見えます。

ところが、類義表現も見て行くと、もっと混迷の様相に…。



名詞troubleが出てくると、肯定でも否定でもtrouble + ingの一人勝ち。英語法でも、
had no trouble -ing > had no difficulty in -ingですから、最早、difficultyで悩んでいるのはムダに思えてきます。


COCA系のNOWコーパスで,肯定過去文脈の had trouble -ing の類語検索。

problemは通例可算扱いの名詞なので、無冠詞の単数形の例は誤用の域でしょう。
無冠詞複数形も使われないわけではないですが頻度は低いです。Ngram Viewerで類似表現との比較をしておきます。

名詞に続く in 有りだと、ケタ違いに少なくなり、troubleも、had trouble in -ingだと殆どヒットせず。

裏返しの否定で had no difficultyでの類語検索。肯定に対しての頻度は激減。かつ、troubleとproblemが優勢。注目すべきは、否定の文脈でのno problem の使用頻度ですね。通例可算名詞ですが、no + 単数形で使われています。
それに対して、difficultyはケタ違いに少数に。 

逆に、in有りだとdifficultyが優位で、troubleは激減します。


均衡コーパスのCOCAで米語法を概観。頻度は trouble : difficulty が 4 :1くらいです。

裏返しで no trouble : no problem : no difficulty が 11 : 4 : 1 くらい。

ここまで見てくると、冒頭の have difficulty の続きで何を選択するかに苦労していたのは、いったい何だったんだ!と叫びたくなりますね。
因に、過去形の "had no problem -ing" の用例を載せている辞書は、

研究社英和大のみ。

She had no problem finding [to find] a job.
彼女はすぐ仕事を見つけた

それ以外の時制だと、
Wisdom英和

I have no problem picking you up at 6 o’clock.
6時に君を迎えに行くのは何の問題もないよ[たやすいよ].

O-LEX和英

山道でも2,3キロ歩くのは何でもない
I have no problem walking (for) two or three kilometers even on a mountain trail.

英英辞典だと、
COBUILD

He says he’ll have no problem authenticating the stamp.

LDOCE

I've no problem recruiting staff.

という感じですかね。

さあ、テストでは何をどう問えばいいでしょうか?
何がどう問われるべきでしょうか?
どんな表現形式でも、使用頻度とか使用域に関係なく、意味が通じればいいでしょうか?
既に英語の運用力がある者にも、不要な認知負荷をかける、理不尽な問いになっていないでしょうか?

タスク、タスクと、囂しい今風の日本の英語教育では、ともすれば

  • 「コミュニケーションの課題をクリアできれば、どのような言語形式を用いても構わない」

というような声さえ聞かれるようで、心配になります。
テストを考える、そして、その前の授業を考えるに当たっては、このような言語事実の精査が不可欠だと思って、誇張なしに、毎日クエリー数の上限まで、COCA系で検索をしていますが、一介の英語講師には荷が重いというのが、正直なところです。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 罪と罰 (大江千里)

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年の功より亀の甲 あるいはカメラトーク

明日2月25日は、国公立大の個別試験前期日程。

落ち着くもよし、瀬戸際まで足掻くもよし。

  • 若いうちは若さに捉まれ。

と言うじゃないですか。ここまできたら、全ては必然。
いつも通り、と思うと緊張が増したりするものなので、「その時通り」でいいんですよ。
前夜に眠れない時でも、目を閉じて横になっているだけでも随分違うらしいです。

前回の記事で提示した「レクチャーもどき」のサマリーとスクリプトを公開します。
まだ、レクチャーを聞いていない、という方は、まずはそちらを聞いてから、続きをお読み下さい。

tmrowing.hatenablog.com

Summary – Text

The lecture explores the parallel challenges of isolation faced by the Galapagos Islands and Japan, despite their vastly different contexts. Japan's technological prowess, akin to the Galapagos' ecological uniqueness, is threatened by "Galapagosization," where domestic-focused technology fails to compete globally. To combat this, Japan must embrace diversity, drawing parallels with successful sports teams, to foster innovation in technology while preserving its cultural identity.

Summary – Table

Lecture script

今一つTED Talk に寄せ切れませんでしたが、お楽しみいただけたでしょうか。


さて、
ツイッターの英語ニュース詳解から。ちょっと気になった語法を。


cuspは本来は「異なる期間の境目; 変化の先(端)」の意味で、adulthoodとかchange などの名詞を伴う on the cusp of に動名詞が続く例。
「まさに…しようとしている;今にも…するところ」。
ニュース英語では時々見ますが日常会話ではどうなんですかね?
on the verge [brink / edge] of の類推?

名詞cuspは、過去ツイでも取り上げていました。10ヶ月ほど前ですね。
私は星占術は疎いので、この「宮」の話しというのもよくは分っていません。

(be) on the cusp of …「…への変わり目・境目にある・いる」「今まさに…にならんとする」。cusp は「先端;尖端」「境目;境界の間」。占星術由来というのは私には理解不能。
India’s populationでの「国名+アポストロフィ+s+名詞」を確認。
第一文のasは前置詞、第二文のasは様態を表す接続詞。

ということで、検索タイム!

3枚目に注目。英の検索結果を、全体、米の結果と比較されたし。
4枚目は類語・関連語で、verge / brink / edge / pointとの比較。

全体概況。比較的近年になってから、この -ingを取る用法がみられることがわかる。

AmE

BrE ではlosing以外はヒットしなかった。

vergeなど他の名詞との比較では、ほぼ低空飛行。頻度だけでみれば圧倒的な差がある。

以下、COCA系の検索結果。

NOW で類語検索

NOWでcuspのみ。


GLOWBEでcusp

COCAでcusp

TVでcusp

ニュース英語に限らず、2000年代以降では (be) on the cusp of に動名詞が続く例が増え、その際の動詞も拡がっていることがわかります。


まだまだ誤用の域を出ないとは思うのですが、今や、次のような使われ方も現れていますので。要観察。

この表現のbrink の代わり(?)に、the blink of an eyeからの類推なのか、完全に思い違いしているのかon the blink of というフレーズをソーシャルメディアでは時折眼にすることがあります。
Wisdom英和の extinctionの例文も「?」が浮かびます。

語法研究が好きな方は、一次資料を精査したら面白そうですね。
何か、あらたな言語事実が分かったら教えて下さい。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Knife Edge Caress (Flipper’s Guitar)

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脱ガラパゴス

日中も寒い中、今でストーブをつけてWFH。
今日が祝日だということにさっき気づきました。

さて、ツイッター(今はX)で以前、こんなエピソードを呟いていました。

私が高校生だった頃の実話。
当時の英検1級は日本語の記事や随想・コラムみたいな文章を150語の英語で要約させる問題が出ていた。私が受験していた教室で前の席に小学生がいたのだが、その問題の漢字か熟語が分からなかった模様で、手を挙げて監督者に訊いたけど却下されて泣き出したのを思い出した。
https://twitter.com/tmrowing/status/1752966400170508449

日本の英語教育を批判する人たちの多くが使う常套句が、「英語は英語で」で、「日本語を介在させた学習や指導では、結局ガラパゴスのまま」という形容がよくなされます。

でも、私は、この「日本文に基づく英文での要約」って、その人の英語のライティング力を見るのに、物凄く良いと思っているんです。
大学入試に限っても、この日本文に基づく英文要約って、かれこれ20年近くお茶の水女子大が出題し続けてきましたよね。

私は、2000年代の自分の授業でも、このお茶大の問題は使っていましたし、今は無き『英語青年』(研究社)の2006年4月号で、もっと注目して然るべきですよね?と訴えていました。(因に、その雑誌で原稿を書くことになったきっかけが、このブログの過去のエントリーです。
そろそろふた昔前ですね。

そして、誰も批判しなくなった?
tmrowing.hatenablog.com

こちらに当時の雑誌の写しを貼っておきます。





雑誌掲載の一年後の大学入試を眺めての雑感がこちら。

tmrowing.hatenablog.com

受験産業は女子大軽視なのか、入試の解答速報でもお茶大を取り上げません。もっとも、お茶大そのものが、公式サイトで、過去3年分の問題と解答例を公表するようになったので、大学側が公式に表明している英文解答例の存在は大きいですね。お茶大の問題&解答例公表直後は、著作権の関係なのか、英作文の素材文である、日本語の文章が掲載されていないことがありますが、時期が来ると、日本文に関しては掲載後のファイルに差し替えられるようです。根気強くアクセスして確認して下さい。

www.ao.ocha.ac.jp

話を戻して、

  • 「いやー、いいとこずくめじゃないですか!」

と絶賛に値する、この日本文に基づく英文要約の出題ですが、冒頭で引いたエピソードの、過去の英検1級に関しては、完全に私の記憶違いでした。
実際はこういうもの。

先ツイで150語の英語と書きましたが、私の記憶違いでした。
正しくは60語の英語でした。
大違いで、大変失礼しました。

私の受けた回の問題がこちら。
https://twitter.com/tmrowing/status/1760180299038855215

  • 日本文に基づき、英語での要約

は正しかったのですが、分量が全然違いました。150語の英語ではなく、約60語の英語でした。それでも、効能は変わらず。

ということで、新体制の「英検」では、「要約」が出題されることになる、と業界では話題のようですが、昔の英検1級のお題設定の効能を見直すのが先でしょう。

・主題とその支持の必要最低限のことは書かなければいけない。
・英語で何というかが分からない時に、書かずに済ませる、という回避ストラテジーを使えない。
・語数の制約があるので、日本語と等価の的確な語彙・表現が思いつかない時に、それを自分の使いこなせる範囲の英語表現で書くとしても、冗長なものになってはいけない。

どうでしょう、日本語を母語とする学習者が受けるテストであれば、最良・最善の選択肢のひとつでは?
という話しでした。

国公立の個別試験前期まで秒読み。
受験生は、安全&健康第一で。
私の受験生講座を取っていて、東京外国語大学の対策を全てやり終えた、という人は、楽しいことを考えてポジティブに、だらけず、緊張し過ぎず、アルデンテのようなhealthy tensionを持って過ごすのが良いと思います。
もし、まだ最後に飛躍を、という人、または、入試に関係なく英語力を伸ばしたい、という人は、新たなレクチャーもどきの素材を作りましたから、そちらに取り組んでみて下さい。
635語で、4分弱のレクチャーです。200語要約するなら、約1/3の分量。良い按排かと。


こちらがメモ取り用ワークシート。

こちらが音源です。

www.dropbox.com

レクチャーのスクリプトは、明日にでもこのブログか、ツイッターで公開しようと思っています。

既に公開済みの、"Boyfriend Style" に関するレクチャーもどきの音源はこちらからどうぞ。

tmrowing.hatenablog.com

本日はこの辺で。

本日のBGM: together (Maggie Rogers)

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描写のうしろに…

前回、慶応義塾大学の経済学部の出題を取り上げ、その「著者名」をあれこれ論じてみました。今回は、今春の大学入試問題から、表現系の出題を取り上げます。
例によって、解法講義ではありませんので、不要な批判をされぬようお気をつけ下さい。

まず、慶大・理工。
メディアでも話題となった、村上春樹の日本語の文章の和文英訳。
問題は、こちらなどから入手して下さい(いつリンク切れになるかは分かりませんでの、悪しからず)。

http://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/s_mondaitokaitou/keio/mondai/img/keio_212_eigo_mon.pdf

次の和文を読み, 下線部分をひとつのセンテンスに英訳しなさい。 解答は解答用紙(記述式)に記入しなさい。

大学に入るときに東京に出て, そこで結婚して仕事を持ち, それからあとはあまり阪神間には戻らなくなった。たまに帰郷することがあっても, 用事が済むとすぐに新幹線に乗って東京に帰った。 生活が忙しかったこともあるし, 外国で暮らした期間も長かった。 それに加えて,いくつかの個人的な事情がある。
世の中には故郷にたえず引き戻される人もいるし、 逆にそこにはもう戻ることができないと感じ続ける人もいる。両者を隔てるのは, 多くの場合一種の運命の力であって, それは故郷に対する想いの軽重とはまた少し違うものだ。 どうやら, 好むと好まざるとにかかわらず, 僕は後者のグループに属しているらしい。

(村上春樹,『辺境・近境』, 1998年より一部改変)

※はてなブログでは下線部が見づらいので、上記引用箇所では斜字体で太文字にしている。
ソーシャルメディアでは、難問であるかのような声が漏れ聞こえてきていましたが、私は結構早い段階で次のようにツイートしていました。

今回、某大某学部の入試問題で採られたのはこの部分ですね。
ちょっと安易すぎる出題だな。
granta.com

Some people are constantly being pulled back to their home town, while others feel like they can never go back.

https://twitter.com/tmrowing/status/1757350114379862244

「安易すぎる」と批判的に取り上げたのは、数々の村上作品の翻訳に関わった翻訳者の定訳とも言えるものが既にあるので、安心して別解や採点基準を作れるというところが気になったから。
https://twitter.com/tmrowing/status/1757356896099725812

東大が多和田葉子氏の文章を和文英訳で取り上げたときは、翻訳される可能性が高かったり、最初から日本語以外で書かれる可能性のある小説でもエッセイでも講演録でもなく、「文庫版あとがき」の日本語だったことを考えると、私の問題意識も少しはわかってもらえるのでは?

メディアの担当者も、村上春樹、という名前で大騒ぎしないで、どうせ取り上げるなら、予備校等で指導経験の長い講師の方に話しを聞くべきだったと思いますよ。

文字通りの英訳ならそれほど難しくはありません。

先ツイの英訳なら、上位層の受験生で十分対応可能でしょう。前段で進行相を選ぶ人は少ないと思うけど。核になるideaはattachment vs. detachmentということでしょうから、近い意味合いで言語化できていればOKかと。下線部の後「想いの強弱は不問」という趣旨なので、心情に寄せ過ぎない表現選択が吉。
https://twitter.com/tmrowing/status/1757353083603218848

ただし、実際の翻訳者の方が選択した

  • being pulled back to their home town のpull back to their home town がどのような意味を表すか、
  • others feel like they can never go backのnever go back がどのような意味を表すか、

に関しては、英語でも日本語と同様に、幅や奥行きがある、と言ってだけ済ませて大丈夫かな、という気がします。
ということで、

因みに受験生レベルを無視して私が最初に考えたのは次の文。コロンは入試だと掟破りと見做されますかね。
There are two types of people in the world: those who compulsively attach themselves to their hometown and those who constantly feel their hometown is not where they should belong.

とツイートして、私見を示しておいた次第です。


早慶戦、というわけではありませんが、次に、早大・法の出題を取り上げます。

この問題も、こちらなどから入手されたし。

http://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/s_mondaitokaitou/waseda/mondai/img/waseda_215_eigo_mon.pdf

この出題もYouTubeも含むWeb界隈、ソーシャルメディアでは結構話題になっていた印象ですが、批判的な論評があっても、その多くが、バンクシー作品が使われたこと、背景的知識の有無で解答の出来に差がでるので、英語の試験としてはいかがなものか、というような視点・切り口からのものでした。

私の批判の論点はただひとつ。

一橋大は近年改善され、コントラストの明瞭なものが出題されている印象だが、今年の某大は酷さが増している感じ。もし「写真」を示したというなら、どこからどこまでが作品なのかが明瞭であることが重要だろう。
「お前は批判ばっかり」という人が時々いるので、とりあえずの解答例を示しておきます。



※2024年2月22日追記: 上記解答例でのdeemの用法で、続く形容詞のbarbaricの前の前置詞asは不要でした。慎んで訂正します。
あれこれ欲をかくといけませんね。


過去のツイートから、批判の根拠を示しておきます。

もう数年来言ってますが、カラーの絵画やイラストをモノクロ印刷すると、質感が損なわれることを出題側は弁えておくべき。出題者がオリジナルのカラー版で見た印象と、受験生がモノクロ版で受ける印象とのギャップで、受験生の描写が「誤解・曲解」となる可能性には要注意。



古くは、このブログの過去の記事で、

tmrowing.hatenablog.com

で指摘していたことです。もう9年も前のことですね。


今回の早大・法の出題は、問題冊子のコピーではなく、実際の問題冊子での印刷の質を確かめないといけませんが、モノクロ印刷の「精度/解像度」の問題はバカにできません。

2021年の出題の例もありましたので、私は相当に強い口調で批判しています。

この学部の画像・映像の使い方は本当に酷い。
今回の出題で、写真で、しかもモノクロで「ストリートアートの作品」を見せるなら、このような環境ごと見せないと、どこからどこまでが作品なのかさえわからないと思いませんか?
2枚目は私がモノクロ加工したもの。
https://eurbee.org/wp-content/uploads/2021/11/bbank07.jpg

https://twitter.com/tmrowing/status/1760189299818107218

「単純な描写で書いてはダメ」って縛りをかけて、他とは一線を画したつもりになる前に、言葉で「描写」するスキルとは何か、それが適切に発揮できる「作問」はどうあるべきか、を今一度考えて欲しいものです。
高見順が生きてたら怒るんじゃないか。
あれ、怒ったのは川端だったか?
https://twitter.com/tmrowing/status/1760188299447341533

このツイートの最後の高見 vs. 川端の件は、私も呟いた後、こちらで確認しました。

hanaha-hannari.jp

私のライティングシラバスでは、必ず描写文を扱いますが、その参考書籍類は既にこちらでも、ソーシャルメディアでも示していました。

ネタバレしたからどうだ、ということは全くないので、経験の浅い指導者の方は、どんどん、貪欲にスキルを磨いて欲しいと思います。


「共通テスト」の批判的検討や意見の表明では結構鼻息の荒かった方たちも、私大入試や国公立の入試問題の批判にはあまり乗り気ではないようです。現在受験まっただ中の受験生への配慮、ということは理解できますので、今は控えていても構いません。シーズンオフになったら、大きな声で叫んで欲しいと思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Words Can’t Describe (Sarah Vaughan)

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サレンダー

ツイッターのタイムラインに流れてきた日永田 (ひえいだ) 先生のツイートにあった慶応義塾大学経済学部の出題がちょっと気になったので、こちらで取り上げる次第。
元ツイはこちら。

途中で若干の浮き沈み、ブレ玉こそあれ、確か2012年位から、今のような長文の読解問題でissuesを提示し、それを引用し、持論と異なる視点・観点を踏まえて論じるお題作文、という形式が続いていると思います。

拙ブログで最初に取り上げたのは、9シーズン前ですね。

tmrowing.hatenablog.com

近年で一番大きかった変化は、昨年度の、日本語の文章に英語で設問がつく、というもの。
某媒体では、この出題に関してショーモない分析を開陳している若者がいましたが、ことの本質が分っていませんでしたね。

そのような大きな流れの中で注目すべきは、読解素材の英文には逐一、著者と出典が記されているものの、その実在が確認できないものばかり、という点。
いや、英文そのものはissuesを提示するため、それなりにきちんと書かれたものが使われているのですが、その著者の固有名詞や出典の媒体などは、駄洒落?皮肉?茶化してる?というようなものが多く見られる印象でした(この点をまじめに分析し、考察を深めたレポートって、もう誰かがどこかで発表してるんですかね?)。

今年の大問のIIIの著者名として先ツイで指摘されていた

  • Frank D. Bayt = frank debate = 率直な議論

というのは、この学部の出題/解答に求められる要素を的確に表していると言えるでしょう。

私が気になったのは、 大問のIV。日本語の文章の著者と出典とされる雑誌名でした。

こちらの「研究者」の名前と「雑誌」も気になりました。ここまでがセットの壮大な「偽情報」だったら凄いなと。
似た名前の関連領域の研究者も実在して、似た名前のジャーナルも実在するんですよね。
International Journal of Media & Cultural Politics (Journal)
https://www.intellectbooks.com/international-journal-of-media-cultural-politics

https://twitter.com/tmrowing/status/1758944204208976062


雑誌に投稿した研究者名は漢字表記で「伊藤陽子」。英語からの翻訳でどうして漢字が分かった?

こちらの「慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所」にいる実在の研究者名が「伊藤陽一」。


https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/AA1121824X-20220300-0133.pdf?file_id=162903

名前の漢字を見るなら、「一」は「始め;始まり」で、「了」は「終わり」。それを足すと「子」になります。
いや、だから何なんだ?ってことなんですけど。お遊びが過ぎるなと。
そして、今回のテーマが disinformation (偽情報)ですから、私のツイートにあったように、英文素材文と雑誌への反対意見投稿を模した日本語の文章と、合わせてdisinformationだったら凄いな、という感想を持ったのでした。


因に、disinformationとmisinformationに関しては、今月初旬にオンラインで個別対応をした

  • 「受験生D講座」

での東京外国語大学対策で、私とChatGPTとのコラボによるミニレクチャーを作成し、音声もAI生成で自然なものを提供していました。
こちらが、そのときのメモ取り用ワークシートになります。 ご参考までに。


さて、慶応の問題の話しに戻りましょう。
例年、架空の著者と出典情報を示しているわけですが、これがissuesと全く無関係とは言えないところが面白くもあり、それが解答に当たって何らかのヒントになるかと言えば、どうもそうとは言えないところがモヤモヤするわけです。

今年の大問I であれば、 “Remote Work Revolution” by Noah Fice で、これは単純に No Officeの捩りだと分かりますが、だからどうした、ということなのですね。

昨年度から始まった、第3問の英文の内容に対応した第4問日本語の文章というセットの出題でも、英文の著者名はSeymour Zimmer、日本文の著者名はカタカナでフクシ・セイタというものでした。これがちょっと不思議なので、呟いていました。

昨年も出た日本語の文章は、「論評」からの抜粋、というだけで、英語からの翻訳という縛りも何も示されていないのに、その著者名がカタカナ表記という不思議なもの。
介護関連ネタなのでキーワードは「福祉」
→音と字面からの連想で福士蒼汰
→捩ってフクシ・セイタ

「セイタ」に込められた意味は?

分かりそうで分からない、隔靴掻痒なんですよね。

これに関しての私のつぶやきがこちら。

昨年は「フクシ・セイタ」とカタカナで、「福祉」にかけて、福士蒼汰の捩り程度に思っていましたが、Say more とZimmer (歩行補助具)がうまく繋がらないんですよね。
来年も英文とセットでの創作で分析する重要性が増す?

因みに、Zimmerは商標名が一般名詞化した例の一つ。

Zimmer frame

www.youressentialshop.co.uk


少子化対策がテーマの論文の著者が

  • Cole Schauer

で、何の捩りとかアナグラムなのかな、と考えていたのですが、

  • take a cold shower

が「頭を冷やす」以外に「性欲を鎮める(必要がある)」という意味で使われることがあるので、その辺り?


https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/take-need-a-cold-shower

このようなお遊びは恐らく、初期の段階からずっと組み込まれていたのだと思います。過去ログで取り上げた2015年の出題でも、

大問II “Immigration: Fulfilling Our Global Obligations" by Lemmy Inne (2013) は

  • Let me in. 入れておくれよ。

の捩り。


大問III “Global Charity Begins at Home" by Bette Steyput (2013) は

  • (You’d) better stay put. その場を動くな;そのままじっとしていろ。

の捩りではないかという気もします。

とはいえ、大問のIの”Modern Girls Revisited” by Eve N. Flappers (2014) のEve N. は”even” としても、flapperの語義を

  • 口語⦅特に 1920 年代の⦆現代娘,フラッパー⦅しきたりにとらわれない奔放な生活態度・服装などでおとなたちのひんしゅくをかい,不道徳を非難された⦆.(リーダーズ英和)

とするのは、芸がないと思うのですよね。

振り出しに戻って、2012年の出題から下ってみますか。

大問II “Privacy at school: Choices Ahead” by S.M.A. Foane (2010) はsmartphoneでいいとしても、
大問I “Making Sense of Secrecy” by S. Kaane (2007) は何なんだろうか? scannerの英音?


2013年

大問I “Against Zoos” by Anne E. Malls (2010) は (名詞to) end them all (最低最悪の名詞)の縮約で’em ということか。
大問II “In Defense of Zoos” by N. Viro and D. Velle (2009) は environment とdevelopment の頭だけ採った?


2014年

大問I “Inequality and Growth” by Anne Faerrar (2012) は unfairer でしょうね。
大問II “Youth Unemployment: Whose Responsibility?” by Ivan O’Werke (2012) は、意味から考えれば I’ve been out of work. (ずっと失業中)だろうけど、O’は通例、ofの縮約なのでね。


2016年

大問I  “In Defense of Traditional Marriage” by Noah Reinbos (2014) は、同性婚反対派ですから、 No Rainbows にかけているのでしょう。
大問II “Following Ireland, for Better or for Worse” by Roy G. Biv (2015) は、「虹の七色」の頭文字そのまんまで、Red, Orange, Yellow, Green, Blue, Indigo, Violet から成る造語ですね。
大問III “Should People be Required to Vote?” by Fran Chizeforall (2014) は franchise が選挙権/公民権で、franchise for allそのまま。


2017年

大問I “Unnecessary and Inefficient: the National Minimum Wage” by Marc Etfoasses (2013) はmarket forces
大問II “The National Minimum Wage: an idea whose time has come?” by D. Saint-Paix (2015) はフランス語のコミューンのhttps://en.wikipedia.org/wiki/Saint-Prix,_Val-d%27Oise の捩り?paix は平和とか治安、平穏という意味。よく分かりません。
大問III “Taxed to Death? The Estate Tax Reconsidered?” by Lou Sitall (2015) お手上げ、降参です。分解組み合わせを自由にして、 lousy tall (酷く法外な) というような意味にできなくはないですけど…。

疲れました。
読み解く方がこんな調子ですから、作問チームは毎年、練りに練っているのでしょうね。
私も、日を改めて、残りの著者名と格闘してみます。
本日はこの辺で。

本日のBGM:
サンクトペテルブルグ ー ダジャレ男の悲しきひとり旅 (2010年リマスター)/KAN

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upgrade your skills and knowledge

以前、授業でも使ったことがある頻出問題集の四訂版の第二刷が出たことを知り、第二刷なら、誤植等もきっと直っているだろうなぁと期待して購入。
ツイッターでも書影つきで、投稿していました。

この手の「頻出もの」は、普段の学習で出てきた英語表現、模試で出題された英語表現が、本当に「頻出」なのかを確認できることに結構大きな意味があると思っています。
「安心毛布」的な何か以上の存在。

あるとうれしいのが、

  • 索引

先のツイートでも強調していました。

索引は知識のネットワーク化には本当に重要なんだけど、今時の「わかりやすさ」を謳う学参や問題集にはないことが多いので、多くの生徒は索引の活用法を知らずに卒業していくんだよね…。
索引があるなら活用しましょうね。

以下、ツイートを再編成したもの。

先ツイの本の前書きに

  • 悪しき「受験英語」を排し、「実用英語」にターゲット!

とあるのですが、そもそものデータが過去28年の入試問題なので、あくまでも「入試英語の中での人気者」を収録、と見るのがいいと思いますよ。

  • Aという形での出題が多い/狙われる
  • 日常では通例Bという形で用いられる

は大違いですから。

例えば、

  • 「AしてすぐにBする」「Cしたかしないかの内にDする」

界隈は多様な表現形式が大学入試で出題されてきました。先の本では、出題頻度から directlyの接続詞用法を収録しないという判断。では、日常の使用頻度は?類例を子どもが覚えていく順序は?などということは不問。学習や指導で大事なのはそこでしょ。
ということで、検索して精査。
Google BooksのNgram Viewerは5語までしか入れられないので、文頭の範囲での比較。
特に as soon as SVで5語に収まりしかも接続詞用法、という縛りがかけられるものはノイズはほぼないけれど、それ以外では、必ずしも接続詞用法だけを拾っているわけではないので、差し引いて、目安程度に捉えて下さい。たとえノイズがなくても、地域差・文化差はそれなりにありますので、その辺りもよろしく。

全体

ノイズを含めても、As soon as he sawとThe moment he sawでダブルスコア近い差。
Directly he saw やNo sooner had he seen はドングリの背比べ状態ですね。

AmE

BrE

ざっくりした検索でも少し解像度は上がってきたのでは?
続いてベンチマークとなる関連表現を入れての比較。ノイズも含まれるけれど、 no sooner は倒置の方が高頻度 scarcely は通常の語順の方が高頻度 scarcelyとhardlyでは前者がやや優勢なのは意外。

全体

AmE

BrE


倒置と基本形とのマッチアップを考えて比べ直し。
時系列で推移を辿ると、乱高下とも言える変化をしています。
こうして見ると、何が「最も普通か?」を言うのは難しく、「…なんて言わないよ絶対」なんて言えないことが分かるでしょう。

全体

AmE

BrE


文頭の倒置と基本形との比較。
COCAをベンチマークに GLOWBEで地域差概観。
ここでも、 no sooner は倒置の方が高頻度 という印象。

no sooner が倒置で文頭にくる107例のうちで、thanを従えるものが、69例。

個別に見てみると小説が多いが、他のジャンルもチラホラ。

GLOWBEで見ると、倒置の方はそこそこ散らばっているけれど、基本形の方はアジア、アフリカが疎ら。


入試では倒置が狙われるからそちらを収録、ではなく、倒置の方が日常では高頻度で、入試でも出ているから収録、ということじゃないと、全然実用的じゃなくない?

次は hardlyの類語での共起具合で比較。scarcelyやbarelyが現れます。
ただし、倒置と基本形とでは、no sooner とは異なり、基本形の方が優勢。
では何故、倒置形ばかりを問う?何故、基本形が定着するように学ばない?
全然、実用的じゃないじゃない。

倒置でこの後にwhenやbeforeの続かないノイズ成分を含んでこのヒット数です。

因に、倒置でwhenを従えるのが13例。beforeは2例でした。

基本形はヒット数が激増。

基本形だと、whenを従えるのは70例。beforeは15例でした。

以下、GLOWBEでの地域比較。
基本形でも、アジア、アフリカが少ない印象。



入試での出題が稀、というdirectlyとimmediatelyも入れての文頭比較。
immediatelyの圧勝!に見えますが、文頭大文字 SVだけでは縛りが十分ではないためノイズは含まれますので注意が必要。
これらの副詞の接続詞転用は「英系語法」「主に英」といわれることがあります。ここでのAmEでの概況とGlobalな概況での Directlyの頻度急上昇の背景が気になります。

全体

AmE

BrE

私が高1の授業で、絶対使いこなせるようになること、と説いているのは as soon as。
表現の幅ということで言えば、 the momentの接続詞用法 (ここでは The moment が主語となり補語を取るものもノイズとして排除できていないので注意)。
堅い、レアな表現からこちらへ書き換えるなら許容範囲かな。
実例で言えば、駒沢大学の一昔前の過去問にあったものですが、

I had hardly left the building when I was asked some questions by a police officer.
The (moment) I left the building, I was asked some questions by a police officer.

ならOKでしょう。

全体

AmE

BrE


今回取り上げた本は、入試問題の分析資料としては大変良くできていると思っています。
ただ、私がこうして精査するのは、生徒のため、というよりも、不合理だったり、理不尽だったりするようなテストを課して、その人は英語が出来るだの出来ないだの、と言うのが自分で許せない、という要因の方が大きいですね。

以下、私が高校生に授業で示した整理整頓のおおまかな再現。

まず、表現形式のうちでも日本語で、

  • 家を出るとすぐに、雨が降ってきた。
  • 家を出た途端に、雨が降り出した。
  • 家を出るやいなや、雨が降り出した。
  • 家を出たか出ないかのうちに、雨が降り出した。

の差異を感じない段階の学習者には、対応する英語表現の細かな差異を説明してもご利益は薄いでしょう。さらに、混乱を生んだり、記憶を強化できなかったりという可能性があります。
ただし、上述の日本語表現が使いこなせているなら、以下の英語表現も、ひとつひとつ精査・吟味する価値はあるでしょう。

a. As soon as I left home, it started to rain.
※基本形。まずこれを押さえる。主節からでも書き始められることは大事な力。ただし、この表現では時間差にはかなりの幅があることを踏まえておく。


b. On leaving home, it started to rain. 
※ くだけた会話では低頻度なので、この意味内容を表すには少し堅い印象を与える。改まった会話や書き言葉では一般的表現。-ing形の場合には、意味上の主語をつけずに使うのが基本。「on は接触」と説明されることが多いが、時間差がないことをそれほど強調しないことに注意。単純に when -ingと同意とみなす人も多い。
cf. pay the bill on leaving 帰る時に勘定を払う (G6)
※注意が必要なのは、次のような例。(   )での補足情報が適切な文脈を示している。
The victim was pronounced dead on arrival (at the hospital).
その犠牲者は(病院)到着時に(すでに)死亡と宣告された (研究社英和活用大辞典)


c. The moment [instant / minute] I left home, it started to rain.
※momentはもともと名詞で「瞬間」という意味。a,bに比べて、二つの行為や出来事の連続性を強調して、時間のギャップのないことを表せる「生々しさ」を持つ。その分、よりインフォーマルな表現となる。


d. When I left home, it started to rain at once [immediately].
※公式でもなんでもない、ごく普通の言い回し。主節、従節を入れ替え、It started to rain immediately after I left home. とパラフレーズは可能だが、情報の提示順が異なると、臨場感は薄れ、表現効果も減るので、あくまでも説明の表現と捉えるのが吉。


e. No sooner had I left home than it started to rain.
※このno sooner /than は通例倒置で使われる。日本の教材では、基本形を学んでから倒置形を学ぶ、というのが伝統的な流れなので、この表現形式も、いちいち基本形に直して説明されることが多い。時制は過去でも、現在、これからでも可能。この例文のように過去文脈のときの時制で、時の上流に当たる過去完了のhad left の部分に単純過去形の leftを使う人は英語ネイティブにも結構たくさんいる。さらには、soon 本来の副詞の語義が no soonerになって薄れたのか、No sooner than I left と倒置はどこに行った?と文句のひとつも言いたくなるような表現形式を用いる英語ネイティブもいる。テストを作る人は、四択の選択肢の中に、一見倒置形や、基本形に見えるが英語ではあり得ない語順を入れたつもりで、実はそれも使われている語順、とならないよう注意して欲しい。


f. Immediately [Directly] I left home, it started to rain.
※英和辞典の語法注記でも、英系語法とまとめられることが多い、副詞の接続詞転用。英米ともに、directlyという語を単独で接続詞として使うことが低頻度という印象。immediatelyは、英では今でも一般的な表現。頻度としては、eよりも高いだろうと思われるが、入試では殆ど出題されない。英系の辞書で、COBUILDでは、directlyの接続詞用法を項目に入れておらず、LDOCEでは、directlyに「古風」とラベルを貼っているが、Cambridgeでは、immediately afterの語義とas soon as の語義を分け、それぞれ例文を載せている。


g. I had scarcely left home before it started to rain.
h. I had hardly left home when it started to rain.
※hardlyもscarcelyも、倒置よりも、この基本形の方が使用頻度が高い。scarcelyはbeforeと、hardlyはwhenと結びつくことが多い(COCAだとhardly + when : hardly + before = 70 : 15位の比率) が、逆の組み合わせもある。NgramViewerのデータを見る限りでは、scarcelyの方がhardlyよりも高頻度。 e.の no sooner /than との混交で、このhardlyやscarcelyとthanを一緒に使う英語ネイティブもいるが、日本の辞書では「避けた方がよい」という助言を与えているものが多いだろう。e.と違い、過去文脈でも主節を過去形で使うことは少ない。
※英語ネイティブによっては、従属節の内容、時系列の時の下流の内容は、出来事、現象などの他、自分以外の人が主語となる例が多く、自らが積極的に選択して行う、controllableな内容は続き難いという人もいる。COCAの2015-19の例から。

そういう人にとっては、次のような英文は不自然に感じるでしょう。

? He had hardly left the hospital before he went back to work.

beforeに続く内容を、自らの選択や行動ではなく、例えば、

He had hardly left the hospital before he had to go back to work.
彼は退院後すぐに仕事に戻らなければならなかった。

などとすれば少し良くなるでしょうか。


i. Hardly had I left home when it started to rain.
j. Scarcely had I left home before it started to rain.
※倒置。入試頻出といわれるが、日常ではほぼほぼ小説で使用される表現形式。日常の相対的使用頻度はアカデミックな領域でも極めて低いことに注意。改まり度が高い表現形式なので、この文意程度ではちょっと不自然。上述のwhen以下の制約を気にする人は、次のような英文(入試問題です)は不自然に感じるかもしれません。

Hardly had he left the room when he burst into laughter.
彼が部屋を出るやいなや、どっと笑い出した。

許容できるとすれば、主語が三人称での描写文であること、burst into は「自分で押さえていたものが堰を切って出る」ようなときにも使うので、自らの選択による積極的な行動ではないこと、またburst into laughter はburst out laughingよりも少し堅い印象を与えること、という合わせ技によるものでしょうか。
例えば、次のような文で使われるのなら自然に響くでしょう。

Hardly had I climbed the second hill when I heard sounds coming after me. Faster and faster I ran with my load for my father, but the sounds were gaining upon me.
"The Soft-Hearted Sioux." by Zitkala-Sa [aka Gertrude Simmons Bonnin]
2つ目の丘を登り切ったとき、背後から音が聞こえてきた。もっと速く、もっと速くと、私は父のための荷物を抱えたまま走ったが、その音はどんどん私に迫ってきた。

臨場感を出す工夫がされている物語ですが、この出典は、

American Indian Stories by Zitkala-Sa. Washington: Hayworth Publishing House, 1921. pp. 109-125.
http://www.digital.library.upenn.edu/women/zitkala-sa/stories/soft.html

で、今から100年前の英語であることに注意が必要です。


k. (?) I had no sooner left home than it started to rain.
※倒置ではない、この基本形での使用頻度は低い。にもかかわらず、近年の入試でも出題例があるのです。

Cathy had no sooner sat down on the sofa on the living room (than) the doorbell rang.
キャシーがリビングルームのソファに腰を下ろすやいなや、ドアベルが鳴った。

Meg had no sooner uttered the words (than) she regretted them.
メグはその言葉を口にするやいなや、後悔した。

どちらの出題も錯乱肢に beforeとwhenを入れているところが本当に哀しい。

実際の使用例が少ない原因は、個人的には、この語順での<否定+sooner>の比較級の語義の実感が弱いので、この形式を支え切れない人が多いからではないかと思っています。

ということで、「より良い英語でより良い授業」の参考にしてもらえれば本望です。

本日はこの辺で。

本日のBGM:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第3番 ト短調 BWV1029 ~第1楽章:ヴィヴァーチェ
ヨーヨー・マ(チェロ)
クリス・シーリー(マンドリン)
エドガー・メイヤー(コントラバス)

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while knowing it helps better than anything ...

先日、次のような物言いで「描写文」の指導に苦言を呈していました。

この時期に私のところに過去問を持ってくる受験生は予備校や塾、または参考書などで何らかの対策をしてきたとは思うのですが、こと「描写」となると、課題が多いと思わざるを得ません。
過去問を解いて添削するだけで、肝心な学びや気づきがないからでしょうか?

tmrowing.hatenablog.com

Picture Descriptionとか、Describing Picturesなどと呼ばれる活動は、本当に昔から英語のライティングの教材やテストでは使われてきたので、いくら日本でも、その指導手順が適切に理解され、広く共有されていて然るべきだとは思うのですが、なぜ2024年にもなって、この為体なのか?というのが、偽らざる感想です。

ツイッターでは随分昔から、書影つきで、教材や指導者用の概説書などを詳解してきましたし、ブログでもナラティブから始まるライティングのシラバスの話しは頻繁に取り上げ、しかも克明な記録となる授業日誌まで残してきました。直近でも、このツイートを見れば、経験の浅い指導者でも、その気さえあれば誰でも次のステージへと進めると思っています。

このツイートで貼り付けた写真にある、J.B. Heaton3部作+1に関しては、さらに5年ほど前にもツイートしています。

このツイートまでの流れを読むことを強くお奨めしておきます。

  • 絶版書を奨められても困るんだよ!

という方は、私も以前見て、よくできているな、と思った教材がWeb上にありますので、次のリンクが生きているうちに指導手順に目を通してくれれば、的外れな過去問対策とは一線を画す指導ができるのではないかと思います。
私はこのサイトとは全く関係のない部外者です。あくまでも、リンク先の指導手順を見た(読んだ)ご自身の判断で教室等での指導に役立てて下さい。

www.oxfordonlineenglish.com

対応する動画はこちらで。
youtu.be

もっとも、このような指導手順をマネするだけでなく、そこで問われる描写文の原理原則を、普段のシラバスの中で教えているか、学ばせているか、が重要です。

  • 情報の流れでのgeneralからspecificへ
  • 名詞句の限定表現: 前置詞による後置修飾、分詞句や不定詞句による後置修飾と関係詞節との使い分け
  • イントロどどいつと分詞構文
  • 名詞のないところに名詞のチャンクを作るwhatの活用
  • 主題以外に極力、山谷をつくらない一文の記述

などが、描写文を的確に書く上で重要な役割を果たすので、私の授業シラバスでは、初期の段階から、チャンクで出し入れできるように「四角化ドリル」をやっているわけです。

今日はその中から、「極力山谷をつくらない」工夫として、

  • while -ing形

をざーっと眺めておこうと思います。
英語学習や指導で大事なことの殆どは、ブログやツイッターに書いてきましたが、「はてなブログ」にはpdfなどの資料ファイルが直接貼れないので、私の過去ツイートを並べて、while -ingで気をつけるべきところを確認します。

whileでの対照。-ingは進行形由来のことが多いですが、実際に進行形かどうかは動詞の素性と文脈で決まるので、何でもかんでも主語とbe動詞を補うのは筋が悪いです。hold off…「…を先送りする」。closing timesにハイフンでpubがついているのは実際の「閉店」ではなく「アルコール提供の最終時刻」。

British Prime Minister Boris Johnson announced a series of new restrictions for England, including earlier pub-closing times and tougher enforcement of social-distancing rules, while holding off stay-at-home order to avoid damaging the economy.

https://www.wsj.com/articles/boris-johnson-introduces-new-covid-19-restrictions-to-curb-second-wave-in-the-u-k-11600780834

こちらのwhile -ingは「進行形」でのパラフレーズとなる例。asの前景後景であれば、このwhileがas節に対応し、後景・背景となる状況説明で、「延焼抑制剤」の投下が前景で焦点。
a sign urging A to B(=原形)「AにBするよう促す掲示」でのurgingは後置修飾の現在分詞で進行形には対応しないので注意。

An air tanker drops retardant while battling the #GlassFire in unincorporated Napa County, south of Middletown on Saturday. Below is a sign urging residents to maintain defensible space around their homes in preparation for wildfires.

https://twitter.com/sfchronicle/status/1312596327646269440

今取り上げた二例の違いを感じられる嗅覚、生き物センサーを養うことが肝心。

この例のようにwhile + -ing の多くは「進行形」に対応するものだけれど、その都度、動詞の意味素性を確認するのが吉。詳細はわからないが、運転中の心臓発作って…。走行中だとしたらアクション映画以上。やっぱり「魔女」ですね。「心肺蘇生をする」の「する」に当たる動詞はperform、前置詞はon。

Alyssa Milano’s Uncle Mitch had a heart attack while driving her to an appointment, but she performed CPR on him.
He's doing better now

https://nydailynews.com/snyde/ny-alyssa-milano-update-uncle-mitch-carp-heart-attack-car-crash-20210902-ak2yxtanzbez7lmgofmnqwwdue-story.html

一文凝縮。後置修飾オンパレード、というよりは節を句にする工夫。
関係代名詞whoは主格。attendは現在形。
メインのare gettingは進行形で時の副詞句つき=見込み。 thanks toは前置詞。
過去分詞dedicated 現在分詞taking 時制と主語が共通の場合に圧縮できるwhile raising
まあ、デイリーですから。

Parents who attend CUNY are getting some financial relief this summer, thanks to a new $3 million fund dedicated exclusively to supporting New Yorkers taking college classes while raising kids.

https://www.nydailynews.com/2022/07/17/cuny-distributes-3-million-to-help-student-parents-take-summer-courses/

#無冠詞複数現在形一般論 #主題の設定と節での山谷
experts 「専門家;有識者」。adviseは動詞。密接なテーマはon。そこがヤマなので、how to 原形のstay safeに対する従属節で山谷を作らずwhile -ingでスッとつなげるところをマネしたいところ。 open water「(プールではない)海、湖、河川(の水域)」


Experts advise on how to stay safe while swimming in open water

Experts advise on how to stay safe while swimming in open water after recent Bournemouth and Merseyside tragedies | The Independent

文頭のイントロでも、文末のアウトロでも、挿入句でも使われる while -ingは、主節と主語/時制が揃っているときに、主題以外の山谷を極力減らし、情報と意味だけを「スッと」つなげるもの。
そして、-ingの部分にくる動詞は常に進行形の圧縮とは限らないので注意。本当に注意。いやホントだってば。

このツイートの元になったのが、こちらの恋路、じゃなかった記事。

Hollywood star #BenAffleck recently melted the hearts of internet users when he turned a photographer for his wife and actor-singer #JenniferLopez at her film's recent premiere. The celebrity couple attended the movie premiere of This is Me Now: A Love Story, which Jennifer stars in and has co-written. At the event, Affleck was seen sporting the biggest smile while taking photos of his wife. Jennifer looked stylish in a black, sheer dress. Later, the actors were seen hugging and kissing each other at the red carpet.

https://twitter.com/IndiaToday/status/1757684357656154587

英語ニュース紹介記事での簡単なコメントは次のようなもの。

描写文の練習。
過去形基準からの、非制限的関係詞の補足では現在(完了)形。
所謂知覚動詞の受け身で... was/were seen に続く(残る?)目的格補語に相当する-ing形が2回出てきますが、日本の教材が出なさ過ぎなので確実に。
他動詞のsportは通例進行形で使い
wear + proudly
の語感を捉まえるのが吉。

ここから連ツイを再録。気になった記事はリンク先へ!

オンラインコーパスなどの検索結果も写真を貼って呟いていました。

Ngram viewer での推移
while ensuring とwhile making sure COCAをベンチマークにGLOWBEで地域差を推測。

特に、通例進行形をとることのない ensureやmake sure がこの while + -ingのパターンで使われている頻度はバカにできないと思いますので、一日も早く、日本の辞書にも適切な用例と解説が載ることを期待しています。


このくらい一気に類例を眺め、読んでみれば生息域の実感をかなりの程度「リアル」に感じられるのではないかと。
本日はこの辺で。

本日のBGM: You make it all worthwhile (The Kinks)

youtu.be

#ギャップ橋渡しのeven

2010年代の後半くらいから、授業の中で明示的に指導している項目に、

  • ギャップ橋渡しのeven

と私が名付けているevenの用法があります。
Web上を探しても、私くらいしかそれらしい名称で呼んでいないので、なかなか私の教室の外の方に分ってもらうのが、難しいのですが、ツイッター(今ではX)の「英語ニュース引用RT140字紹介&詳解」を続ける中で、結構な数の記事を取り上げてきたので、こちらで並べてみようと思います。

投稿の時期によって、または、その投稿時の状況によって、ハッシュタグがあったりなかったりするのですが、これなどが比較的初期のもので、まだ「ギャップ橋渡しのeven」というキーワード化の前の段階。2020年4月下旬です。

見出し英語は次のようなもの。

Coffee could be good for you, as long as you brew it correctly. It may even lengthen your life — if you prepare it with a filter, according to a new long-term study.
The healthiest way to brew your coffee – and possibly lengthen your life | CNN

解説で、「ギャップを埋めるeven」「evenのスロープ」という萌芽が見て取れます。

「現実味のcould」はas long as での条件設定で但し書き。「主観的可能性のmay」は本来may=may not。ここでは、書き手の意図と読み手の予想や思惑、予備知識との間のギャップを埋めるevenと一緒に使われているので要注意。まあ、読み手は、書き手の掛けたevenのスロープに乗るしかないんですよね。

書き手(話し手)と読み手(聞き手)との間に、共有できていない知識や情報のギャップがある時に、その溝にスロープを渡して行き来ができるようにするデバイス、小道具としてevenが働くわけですが、水が高いところから低いところに流れて行くのとはちょっと違って、書き手のいる高いところに、読み手はスロープ上を低いところから上がってくる、というイメージです。「橋は架けるけれど、こっち側まで上って来てね。そうすれば、私と同じ地平が見渡せるでしょ!」という書き手主導の捉え方です。

そこから約1年後のツイートがこちら。ここでは既にハッシュタグもでき上がっています。

見出しの英語はごくごく短いもの。

'Not clean, not green, not even healthy': Author slams salmon farming
www.abc.net.au

解説では、形容詞evenの語義を援用して、evenの働きを説明しています。

#ギャップ橋渡しのeven
#具体例は3が吉

豪州の方のABCニュースから「鮭養殖」の話題。
話し手・書き手にとっては主題への貢献度が高い情報だが、受け手との間に温度差が予想される場合に、そのギャップにかけるスロープのような役割を果たすのがeven。
まあ 、「平ら」になったと思ってくださいな。

以下、時系列で、時の上流に近い方から取り上げて行きます。

Italy is so far having greater success than many other European countries in limiting a second wave. New precautions like mask-wearing have become a widespread part of everyday life, even when it isn’t obligatory.
https://www.wsj.com/articles/as-covid-fatigue-fuels-infections-in-europe-italy-resists-the-second-wave-11600772400

These gifts will even please those people who have everything, and people who are picky.
https://slate.com/human-interest/2020/11/best-universal-all-purpose-gifts.html?via=rss_socialflow_twitter

Around the world, girls are doing better than ever. But the covid-19 pandemic could hobble progress for girls in poor countries, or even reverse it
https://www.economist.com/leaders/2020/12/19/covid-19-threatens-girls-gigantic-global-gains?

Ordering restaurant food for delivery only has surged in popularity since the outbreak of the pandemic. Now Applebee’s, Denny’s and other big chains are getting in the game. Will the trend carry on even after dining rooms reopen?
https://apnews.com/article/coronavirus-pandemic-restaurants-79f4410c93bbee8ef681c217d7b60f97?


New York Governor Andrew Cuomo said baseball fans can not only get vaccinated at a Yankees or Mets game, they can even get a free ticket courtesy of the teams. ‘If you get a vaccination, they will give you a free ticket to the game,’ Cuomo said
https://www.reuters.com/world/us/new-york-governor-says-yankees-mets-give-tickets-fans-who-get-vaccinated-their-2021-05-05/


The pandemic, fueled by the highly contagious Delta variant, is worse than ever in some parts of the world, even as wealthy countries let down their guard
https://www.nytimes.com/2021/06/30/world/asia/virus-delta-variant-global.html?


Data shows people are listening to Mariah Carey's smash Christmas tune "All I Want for Christmas Is You," more and more, even into October:
https://www.nbcnews.com/pop-culture/music/these-charts-show-spread-mariah-careys-classic-christmas-song-n1283619

Wayne Thiebaud, who painted shadows better than anyone, was such a gifted still-life painter that even avant-gardists eventually fell in love with his undisguisedly sweet subjects. He died yesterday, at age 101. RIP
https://twitter.com/deborahsolo/status/1475185304072040455

The upside is that hospitalizations and deaths remain far below last winter’s levels, or even the peak of the summer surge.
https://www.sfchronicle.com/health/article/Bay-Area-and-California-mark-record-high-spike-in-16749080.php


You can see it in the masks, in the seating charts and even in the distribution of water glasses. President Biden's staff is making extraordinary efforts to keep him from getting COVID-19, even as he strives to take the nation "from today to more normal.”
https://apnews.com/article/coronavirus-pandemic-joe-biden-health-pandemics-kamala-harris-648f64eafd0b4f58e05f75e236b65e00?utm_source

Stonehenge has been studied for centuries, but new technologies are transforming our understanding of ancient landscapes—even places we thought we knew well.
https://www.nationalgeographic.com/magazine/graphics/stonehenge-was-one-triumph-amid-a-prehistoric-building-boom-feature?


Even as world leaders gathered in Tokyo for the funeral of assassinated former Japanese PM Abe, there were protests against the lavish proceedings.
https://www.nbcnews.com/news/world/shinzo-abe-japan-state-funeral-protests-unification-church-rcna49544?


The term atmospheric river is thrown around a lot. But what even is an atmospheric river?
How do these systems cultivate intense storms in California? In a warming world will we get less or more ARs?
We explain, without the hype for the @sfchronicle:
https://www.sfchronicle.com/projects/2022/atmospheric-river-california/


BREAKING: Tesco says its profit had nearly halved before tax in the last financial year, even as sales jumped
https://twitter.com/SkyNews/status/1646401945748267009

Even a small amount of alcohol can make sleep worse. Here’s what drinking before bedtime does to your body, and how it could affect your overall health.
https://www.nationalgeographic.com/premium/article/eating-drinking-night-disrupt-sleep?


Even as El Niño fades, it doesn’t mean that California’s storms are going away.
https://twitter.com/sfchronicle/status/1758215370689712242


生息域が明確なものもあれば、やや漠然としたものもありますが、このくらい「現地」に近づくと、

  • ギャップ橋渡しのeven

の解像度も上がるのではないでしょうか?
ここでは、英語ニュースでの表現のみを取り上げていますが、英語ニュースに限らず、インフォーマルな会話であれ、アカデミックな言説であれ、このevenを使わずに済ませることがそもそも難しいので、「次に出会った時に、あ、あれだ、と気づく眼」を手に入れれば、インプットの精度も高くなり、アウトプットの質の向上にもつながるでしょう。

本日は、この辺で。

本日のBGM: Water (Tyla)

open.spotify.com

連休に

連休の中日の日曜日、こちらのワークショップに参加してきました。

明日からの授業が楽(らくに、たのしく)になる!
英語ライティング・ワークショップ
『評価とフィードバック』

山岡憲史先生が講演されるということなので、お会いしたかったのですが、流石にRITZは遠いので、オンラインでの参加。
内容は盛り沢山で、半日に及ぶ学びの機会を与えてもらい、TransableというAI の活用事例では、ライティング指導/学習の新たな可能性を感じました。
最後の英コミュの素材に基づくライティング活動の設定のワークショップでは、途中、山岡先生から振られて、コメントをすることになったのですが、難しい素材だと実感。
生徒作品へのフィードバックのワークショップの前に、実践者からタスクを設計するにあたっての背景を熱く語ってもらったことで、「ああ、そういうことだったのか」という気づきがあり、生徒作品と、それを書いた生徒の思考過程などにも思いを馳せることが出来て、非常にthought-provokingなものになりました。
ありがとうございます。

連休最終日の今日は、WFH。
合間にYou-Tubeでこんなものを見つけました。
Have AI Break, Have A KitKat

youtu.be

ここでもAI。
やり過ぎでは?と思わなくもないです。
このCMで気になったのが、名詞のbreak。

breakって名詞、結構、厄介なんですよ。
以下、Wisdom英和(三省堂)から引用。

1a C (仕事などの)休憩, 中休み, 息抜き

  • without a break 休まず(働く)
  • Let’s take [have] a 15-minute [quick, short] break.15分の[ちょっと]休憩をとりましょう.

1b C 短い休暇

  • go home for Christmas break クリスマス休暇で実家に帰る
  • a two-night break in Paris 2泊3日のパリの旅(!旅行会社の広告文).

1c U (英)(授業間の)休み時間((英)break time, (米)recess)

  • at break休み時間に.

Cとあるのはcountableで可算扱い、Uとあるのはuncountableで不可算扱い、ということです。
キットカットのCMでのコピーの have a break は、きっと、1a の「休憩;息抜き」の意味で用いられているのでしょう。可算扱いで、不定冠詞つきです。
注意が必要なのは、1cの「授業間の休み時間」の意味で用いられるbreakで、こちらは不可算扱い。
米用法では、通例、recessという名詞が使われるのですが、それも不可算扱いが多いでしょう。

以下、Ngram Viewerで

全体概況

AmE

BrE

授業間の休み時間の意味で breakやrecessが使われる際に、不可算扱いとなるのですから、当然

  • 「授業」とか「授業時間」という場合にも不可算扱いになるの?

という疑問を持つのも無理からぬことです。

こちらもツイッターで少し呟いておきましたが、例によって殆ど皆無と言っていいくらい、反応はありません。
皆さん、英語ツヨツヨなんですね。

こちらの名詞classを調べたきっかけは、スカートの澤部渡さんの別アカでのツイートでした。

そこで疑義を呈されていた <have class on 曜日 at 時刻>という無冠詞の用法が、辞書でどう扱われているのかが気になったのでした。

スカートの澤部さんのツイートで気になって、辞書のclassの扱いを概観。
ある講座の授業(時間)・学習活動
授業日
という場合があって、後者はschoolで置き換えられるけれど、前者はclassかlessonが使われるでしょう。
go to classの無冠詞は「出席する」語感で、go to school「通学する」の語感に通じるもの。
https://twitter.com/tmrowing/status/1756790507706122412

に始まる連ツイへと繋がりました。貼り付けた辞書の例文をこちらにも。

物書堂のアプリ辞書のブックマークから

こちらの写真も再録しておきます。

「授業がある」 全体概況

AmE

BrE

さらにCOCA系の検索結果から追いツイ。


ここでは「授業の終わりに;授業の最後に」の意味となるような名詞の類義語と冠詞の結びつきを見ています。

COCA 無冠詞 と定冠詞

Glowbe 無冠詞と定冠詞

この程度の、ごくごく日常的な話題で出てくる名詞ひとつ取ってみても、とっても面倒くさいのが外国語/第2言語なんですよね。
英語の先生って、正誤問題とか大好きな人が多いみたいですけど、冠詞とか可算不可算を出題する人は、ホントに英語ツヨツヨなんだろうなぁ、と思います。

私も、あちこちで、散々「高校生に難しいことやらせ過ぎ」などと言われてきましたけど、正誤問題って横並びの共通問題で一律に課される定期テストを除いて、自分の作成する小テストでも定期テストでも、教壇に立ってから、この三十数年間、一度も出題したことないと思いますよ。

語句整序による文完成の問題と、正誤問題は、初学者はもちろん、中級の壁を越えるくらいまでの学習者には必要ないと思っています。
まあ、そもそも「テスト」がなければないにこしたことはないんですけどね。

大学入試対策をしなければならないので仕方なく出題している、という人は、進学しない生徒にはどのような英語力をつけさせているのでしょうか?
私も、この時期はオンラインにしろ、オフラインにしろ、生徒/受験生が提出する「英作文」や「ライティング」の過去問の解答にフィードバックを与えていますけど、ただ添削するのではなく、作文力、ライティング力の養成と、その養成した実力発揮、パフォーマンスの向上のための指導と思ってやっています。

先日、某大学対策指導でフィードバックを返す際に、私の作成した英文解答例をつけましたので、こちらで紹介しておきます。
どんな「お題」だったか、当ててみてください。

まずは、解答英文の和訳から

私は、日本人にはより長い、連続した休暇が必要だと考えている。日頃の努力をより客観的に評価する機会にもなるし、自分の時間をより多く作ることで新たな趣味に取り組んだり、スキルアップに取り組んだりすることもできる。一般的に仕事によるストレスは想像以上に大きく、心身の健康を損なう可能性を専門家が指摘している現状では、長期休暇は手遅れになる前に健康を回復する期間となるだろう。日本人全員が一度に休暇を取ったりしたら経済へ悪影響が出る、などと心配する人もいる。しかし、それはまず今より長い休暇を実現した上での話しで、休暇取得時期の調整などで現実に対応できることだ。まさに「バカも休み休み言え」だ。

以下英文。

I believe that Japanese people need longer, continuous vacations. It provides an opportunity to evaluate their daily efforts more objectively, and by creating more time for themselves, they can take on new hobbies or engage in reskilling. The stress from work is generally greater than imagined, and in a situation where experts point out that it can damage physical and mental health, an extended vacation would be a period to restore their health before it is too late. Some people worry about the negative economic impact of all Japanese taking vacations at a time. That could be addressed, however, by timing adjustments and other measures after first achieving a prolonged vacation. Indeed, even a fool would say, “Give me a break.” (121 words)

おあとがよろしいようで。

本日のBGM: 迷子の言葉 (比屋定篤子) 

open.spotify.com

culculating, manipulative or whatever you want to call it

前回のエントリーは、boyfriend cardiganに端を発して、レクチャーもどきに仕立てるという、足掛け20年になろうかというこのブログでも、これまでやったことのない内容となっていました。

まだ、レクチャーを聴いていない方は、先にそちらを試してみてから、今日のこの続きを読むことをお奨めします。ネタバレになりますので。

tmrowing.hatenablog.com

前回のエントリーは、タイトルから、内容、本日のBGMの選曲まで、久々に自分では満足の行くものでした。
タイトルだけ見れば Mari WilsonやTot TaylorでBGMが来そうなものですが、そこはレクチャーもどきのきっかけとなった「カーディガン」つながり、ということで。

ということで、まずは、レクチャーもどきの「メモ取り用ワークシート」の原形をお見せします。

この表は、要約文を元にして、ChatGPT4 に拵えてもらったものですので、このようなメモが完成するのであれば、もう要約は出来たも同然です。

要約文そのものは、私からいくつか、必須のキーワードをリクエストして、約200語でまとめてもらっています。

英語の勉強、ということであれば、この要約を確認した段階で、もう一度レクチャーを聴いてみるのも良いでしょう。

さあ、スクリプト全文です。長いので、2枚に分けて。

約600語です。何回かやり取りを重ねてこの長さになりました。
途中で講演者が、「gender issuesの専門家として、一言…」と素性を明かして潮目を変えようとしているのですが、アカデミックなライティングではそれほどなくても、講演では、用意した内容を忘れたり、飛ばしたり、などということはザラですので、

  • 「おっといけない、あそこに戻らないと…」

などというカヌーのスラローム競技のような話しの展開にも柔軟に対応できることが、本来は望ましいのですね。
この辺りの柔軟性を養成できる教材としては、もう一昔前に作ったもので、既に閉講となった、『東大特講リスニング』(ベネッセ)が出色の出来だったと思います。



5分を越える長さなので、東外大対策にはちょっと…という感じですけど。

今回の「もどき」も、スクリプトを読みながらレクチャーを聴くもよし、音声に重ねて音読をするもよし、シャドウイングするもよし、それぞれ個人でお楽しみください。

レクチャーの内容に関しては、ある程度事実関係を調べた上で書いていますが、信憑性での疑義をコメント欄に書き込んだりするのはご遠慮下さい。

テーマや取り上げられた事例の「解釈」「意味付け」「評価」ということでは、東京外国語大学のレクチャー問題では「設問2」で問われることがあります。
そちらへの対応ということでは、200語くらいの英文で、持論を展開できれば理想的ではないでしょうか。

  • パートナーとの親密で良好な関係性から生まれる着こなしのスタイルを、商品化しようとした「あざとさ」についてあなたはどう思うか?

などといった切り口でまで出題されることはないでしょうけれど。

本日はこの辺で。


本日のBGM:Turn me loose (Sly & The Family Stone)

open.spotify.com