連休に

連休の中日の日曜日、こちらのワークショップに参加してきました。

明日からの授業が楽(らくに、たのしく)になる!
英語ライティング・ワークショップ
『評価とフィードバック』

山岡憲史先生が講演されるということなので、お会いしたかったのですが、流石にRITZは遠いので、オンラインでの参加。
内容は盛り沢山で、半日に及ぶ学びの機会を与えてもらい、TransableというAI の活用事例では、ライティング指導/学習の新たな可能性を感じました。
最後の英コミュの素材に基づくライティング活動の設定のワークショップでは、途中、山岡先生から振られて、コメントをすることになったのですが、難しい素材だと実感。
生徒作品へのフィードバックのワークショップの前に、実践者からタスクを設計するにあたっての背景を熱く語ってもらったことで、「ああ、そういうことだったのか」という気づきがあり、生徒作品と、それを書いた生徒の思考過程などにも思いを馳せることが出来て、非常にthought-provokingなものになりました。
ありがとうございます。

連休最終日の今日は、WFH。
合間にYou-Tubeでこんなものを見つけました。
Have AI Break, Have A KitKat

youtu.be

ここでもAI。
やり過ぎでは?と思わなくもないです。
このCMで気になったのが、名詞のbreak。

breakって名詞、結構、厄介なんですよ。
以下、Wisdom英和(三省堂)から引用。

1a C (仕事などの)休憩, 中休み, 息抜き

  • without a break 休まず(働く)
  • Let’s take [have] a 15-minute [quick, short] break.15分の[ちょっと]休憩をとりましょう.

1b C 短い休暇

  • go home for Christmas break クリスマス休暇で実家に帰る
  • a two-night break in Paris 2泊3日のパリの旅(!旅行会社の広告文).

1c U (英)(授業間の)休み時間((英)break time, (米)recess)

  • at break休み時間に.

Cとあるのはcountableで可算扱い、Uとあるのはuncountableで不可算扱い、ということです。
キットカットのCMでのコピーの have a break は、きっと、1a の「休憩;息抜き」の意味で用いられているのでしょう。可算扱いで、不定冠詞つきです。
注意が必要なのは、1cの「授業間の休み時間」の意味で用いられるbreakで、こちらは不可算扱い。
米用法では、通例、recessという名詞が使われるのですが、それも不可算扱いが多いでしょう。

以下、Ngram Viewerで

全体概況

AmE

BrE

授業間の休み時間の意味で breakやrecessが使われる際に、不可算扱いとなるのですから、当然

  • 「授業」とか「授業時間」という場合にも不可算扱いになるの?

という疑問を持つのも無理からぬことです。

こちらもツイッターで少し呟いておきましたが、例によって殆ど皆無と言っていいくらい、反応はありません。
皆さん、英語ツヨツヨなんですね。

こちらの名詞classを調べたきっかけは、スカートの澤部渡さんの別アカでのツイートでした。

そこで疑義を呈されていた <have class on 曜日 at 時刻>という無冠詞の用法が、辞書でどう扱われているのかが気になったのでした。

スカートの澤部さんのツイートで気になって、辞書のclassの扱いを概観。
ある講座の授業(時間)・学習活動
授業日
という場合があって、後者はschoolで置き換えられるけれど、前者はclassかlessonが使われるでしょう。
go to classの無冠詞は「出席する」語感で、go to school「通学する」の語感に通じるもの。
https://twitter.com/tmrowing/status/1756790507706122412

に始まる連ツイへと繋がりました。貼り付けた辞書の例文をこちらにも。

物書堂のアプリ辞書のブックマークから

こちらの写真も再録しておきます。

「授業がある」 全体概況

AmE

BrE

さらにCOCA系の検索結果から追いツイ。


ここでは「授業の終わりに;授業の最後に」の意味となるような名詞の類義語と冠詞の結びつきを見ています。

COCA 無冠詞 と定冠詞

Glowbe 無冠詞と定冠詞

この程度の、ごくごく日常的な話題で出てくる名詞ひとつ取ってみても、とっても面倒くさいのが外国語/第2言語なんですよね。
英語の先生って、正誤問題とか大好きな人が多いみたいですけど、冠詞とか可算不可算を出題する人は、ホントに英語ツヨツヨなんだろうなぁ、と思います。

私も、あちこちで、散々「高校生に難しいことやらせ過ぎ」などと言われてきましたけど、正誤問題って横並びの共通問題で一律に課される定期テストを除いて、自分の作成する小テストでも定期テストでも、教壇に立ってから、この三十数年間、一度も出題したことないと思いますよ。

語句整序による文完成の問題と、正誤問題は、初学者はもちろん、中級の壁を越えるくらいまでの学習者には必要ないと思っています。
まあ、そもそも「テスト」がなければないにこしたことはないんですけどね。

大学入試対策をしなければならないので仕方なく出題している、という人は、進学しない生徒にはどのような英語力をつけさせているのでしょうか?
私も、この時期はオンラインにしろ、オフラインにしろ、生徒/受験生が提出する「英作文」や「ライティング」の過去問の解答にフィードバックを与えていますけど、ただ添削するのではなく、作文力、ライティング力の養成と、その養成した実力発揮、パフォーマンスの向上のための指導と思ってやっています。

先日、某大学対策指導でフィードバックを返す際に、私の作成した英文解答例をつけましたので、こちらで紹介しておきます。
どんな「お題」だったか、当ててみてください。

まずは、解答英文の和訳から

私は、日本人にはより長い、連続した休暇が必要だと考えている。日頃の努力をより客観的に評価する機会にもなるし、自分の時間をより多く作ることで新たな趣味に取り組んだり、スキルアップに取り組んだりすることもできる。一般的に仕事によるストレスは想像以上に大きく、心身の健康を損なう可能性を専門家が指摘している現状では、長期休暇は手遅れになる前に健康を回復する期間となるだろう。日本人全員が一度に休暇を取ったりしたら経済へ悪影響が出る、などと心配する人もいる。しかし、それはまず今より長い休暇を実現した上での話しで、休暇取得時期の調整などで現実に対応できることだ。まさに「バカも休み休み言え」だ。

以下英文。

I believe that Japanese people need longer, continuous vacations. It provides an opportunity to evaluate their daily efforts more objectively, and by creating more time for themselves, they can take on new hobbies or engage in reskilling. The stress from work is generally greater than imagined, and in a situation where experts point out that it can damage physical and mental health, an extended vacation would be a period to restore their health before it is too late. Some people worry about the negative economic impact of all Japanese taking vacations at a time. That could be addressed, however, by timing adjustments and other measures after first achieving a prolonged vacation. Indeed, even a fool would say, “Give me a break.” (121 words)

おあとがよろしいようで。

本日のBGM: 迷子の言葉 (比屋定篤子) 

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