恒例の…

昨シーズンも、大好評のうちに東京と大阪で計4回開催しましたが、今年も「文字指導/handwriting指導法」のセミナーを開催します。
静岡の亘理先生/稲葉先生を中心に展開している「英語授業を語る会・静岡」とのコラボだけは特別に無料ですが、その他は有料のオンラインでのセミナーです。静岡以外の先生方は、こちらのオンラインセミナーをご検討下さい。
教員だけではなく、文科省の担当者や、教科書会社の担当者の方、大学の教科教育法の担当者、教員免許更新講習の企画に行き詰まっている方など、奮ってご参加下さい。

2月13日(土)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

2月23日(火/祝日)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

※両日とも同内容ですので、ご都合のよい日時でご検討下さい。

さて、
ソーシャルメディアで「来年度からは、中学校では文字指導をしない」というようなミスリーディングな文言を目にしたので、危機感を持っています。いや、中学校で導入したことが、高校でも定着していない、なんてよくある話じゃないですか?小学校で導入した「文字」の指導を、中学以降でも継続するのは当然だと思うんですけど。

ということで、来年度から使われることになる「中学校の検定教科書」での、「文字」の扱いを見ていきます。
たまたま、いや、本当に偶然に、『英語教育』(大修館書店)の2020年2月号の第3特集が「新しい中学校検定教科書 試し読み」なんですよ。この企画って、高校の検定教科書も発行している大修館書店の雑誌では、「高等学校検定教科書 読み比べ」なんてできないので、小中の教科書を発行していない偶然が生んだ、ということですね。


私は昨年の「展示会」で見てきました。
中1のBook 1 での見開き構成で、
・レッスンタイトル
・セクションタイトル
・指示文
・本文
・生徒が書くであろう部分の例

など、求められる活動ごとに、教科書のフォントがどうなっているか、というところを中心に6社の教科書を見てきました。

One World Book1 (教育出版;中1)

今回の改訂、小学校教科書で各社で見られる「UDフォント」の採用を謳いますが、本文のディセンダー (pqyなどの基線からはみ出る部分が) とにかく見づらい。小文字の y がなどはボールドになるとつぶれてしまいます。
セクションタイトル (小文字のSpringboardのgやa、Part 1の a、Classroom Englishのa)ではUDフォントの配慮はナシ。Book1 でも、メインレッスンではサンセリフのフォントを使っているのですが、Further Reading で読みに特化したレッスンになって初めて、セリフのフォントになるのですね。
これは他社本にも言えるのですけど、「読みの技能への依存度が増す」活動なのに、どうして、文字の認知負荷がより高いセリフにするのかは理解に苦しみます。

New Crown Book1 (三省堂;中1)

伝統のCrown。ところが、表紙見返しのLanguages around the world のタイトルからしてフォントへの配慮に欠け、極めて残念。小文字のa/gをよく見ましょうよ。同じことは、レッスンのセクションタイトルにも当てはまります。Part 1 / Read / Take Actionなどの小文字の a はこれでいいですか?
本文フォントはサンセリフ。yは左に曲がって終わります。この教科書もReading for fun の課(ハンプティ・ダンプティ?)で「セリフ」に変わるのです。「とにかく読む」という、読みに特化した活動で文字認識関わる負荷は下げて、語義や文構造の理解にリソースを割けるように、という配慮がなぜできないのか、と思います。
これは、Book2(中2)でも同じこと。読んでいるときくらい読みに集中させてあげて下さい。「全集中!」ってやつですかね。

New Horizon Book1 (東京書籍;中1)

判型が大きい!Book 1に関してはフォントへの配慮は一番行き届いていると言えるでしょう。そりゃ、小学校用教材のWe Can! から、NH handwriting (字游工房からの発売ではJK handwritingフォント) のフォントを開発して使用してきたのですから。セクションタイトルなどのフォントと、本文のフォントとでのギャップがほぼないのは歓迎できる。Let's Read の2になると、「セリフ」に変わり、その後のOptional Reading の本文もセリフとなっています。
ただし、Book2 になると最初からセリフです。

Sunshine Book1 (開隆堂;中1)

カラーUDへの配慮、対話文での手書き「風」フォントの採用など、一見小学校からのスムーズな接続を考えているように見えるのですが、フォントのデザインは「プロ」が関わっているとは正直思えません。本当に、この文字でノートなどに手書きしてから、書きやすさや読みやすさを確認してますか?まあ、「文字」に関しての専門的な知見のある著者が不在なのでしょうね。
そして、中2のBook 2 からは「セリフ」が一気に増えるのに、そこへの段階的な移行がBook 1で考えられているようには見えないのが残念。今回の教科書の中で、文字の扱いに関しては、私の評価は最も低いです。

Here We Go Book 1 (光村図書;中1)

光村は「コロンブス」という名を捨てましたね。時代の変化を見越していたということでしょうか?
文字に関しては、独自開発のUDフォントを謳います。このフォントのデザインには、プロが関わってますね。でも、セクションタイトル Part 1/ Goal などの a は…。ということで、結局は「教科書著者陣」の見識なんです。
歌のコーナーなど、メインレッスン以外ではセリフが使われていますが、その意図は?
Book 2(中2)からは本文はみなセリフになります。

Blue Sky Book 1(啓林館;中1)

啓林館かぁ…。個人的には、高校の教科書で良い印象のない出版社なんですが、小学校のチームは良識派なんでしょうか。
UDフォントでの配慮を謳っているのに、セクションタイトルは…。
Part 1 / Let's Talk / Get Ready / Practice の a。
Let's Read と歌のセクションはセリフ。
そして、Book 2(中2)では、最初から皆セリフ。

私は展示会で見ましたが、実物をご覧になっていない方も、こちらからリンクを辿ると、各社のカタログやパンフレットがありますから、少しは私の指摘したことを感じることができるかもしれません。

一般社団法人 教科書協会
教科別発行教科書の紹介
中学校
www.textbook.or.jp

私が指摘しているのは、ここで取り上げた「中学校用教科書」にとどまらない問題です。
むしろ、市販教材のほうが、配慮がなされていないというか、気づきさえしていないことが多いのではないかと思います。

難関大進学を目指す意識高い系の中高一貫校などで採択されていると言われる、某Z会の検定外教科書 『新お宝』 も、中学1年生用のBook 1 に相当する、Stage 1 が改訂に合わせて、フォントが変わりました。

www.zkai.co.jp

『お宝』の初版を作ったときにStage 1 の本文フォントを Sassoonにしようと頑なに言い張ったのは私なんですけど、私が抜けた改訂2版でも、Sassoonが踏襲されていました。
今回は、小学校の検定教科書に配慮したのか、モリサワのUDデジタル教科書体のLatinが使われています。
その改訂に合わせて、ペンマンシップの教材も変わったようなのですが、指導体系としては、感心しない構成と内容で残念でした。せっかくUDフォントを使っているのだから、その良さを反映できるような教材が求められるのではないかな、というのが正直な感想。
もっとも、初版を出した時にも、ペンマンシップをどうするか、など私は全く相談を受けたことがないまま、編集委員会を去りましたから、初学者への配慮とか技能の習得/発達段階への配慮というようなことは何も考慮されていなかったということなのだろうと思います。
当時、一緒に編集委員をしていた両K先生、U先生、事実誤認があればご指摘よろしく。

ということで、

  • ライティング指導の第一歩は文字指導から
  • native speakers は存在しても、native writers は存在しない

本日はこの辺で。

本日のBGM: Free (ポルカ・ドット・スティングレー)

ロマンス抜きでも『浮かれモード』

本当に嬉しいことがあったのでこちらでも幸せのお裾分けを。

12月18日は、世界の安藤美姫さんのお誕生日なのですが、ツイッターでおめでとうと呟いたら、なんと、ご本人から直接リプライが!
一日中、浮かれ浮かれで、舞い上がっておりました。

またアリーナで素敵な演技、プログラムを堪能したいという思いが募っております。


さて、生業の英語教育でのセミナーの告知・続報です。

指導者対象セミナー (12/27)
「名詞句」関連ですが、この日はオンラインでの実施です。何分、はじめての試みですので、暖かい目で見ていただければと思います。

passmarket.yahoo.co.jp


続いて、「受験生」対象のオンライン&メール併用のセミナー。
「英文ライティング/自由英作文」に対応する講座です。
受験生の方、受験生をお持ちの保護者の方、お知り合いに受験生がいらっしゃる方、ご自身の塾・予備校ではきめ細かなサポートができない英語講師の方などなど、よろしくお願いします。

「A講座」は二日程とも同じ内容で、ガイダンスの講義と「お題」1題。

12/28

passmarket.yahoo.co.jp

12/30

passmarket.yahoo.co.jp


「B講座」は、早慶など私立大入試で課される「自由英作文」に対応する講座です。

2021年1月4日

passmarket.yahoo.co.jp

両講座とも、これまでに、過去問を解いて添削してもらい、その英文を暗記して乗り切ってきた受験生には「英文ライティング」の原理原則を学んでもらい、既に塾や予備校で「(自由)英作文」の講座を取ってきた人には「セカンドオピニオン」の場を与え、そして既にかなり「英語が得意だ」という人には、「群を抜くための着眼点」に気付いてもらうことを主眼としています。
過去問は使用しますが、解答が「エイブン」ではなく「英文」になっていることを目指す講座ですので、それぞれの講座の趣旨を理解した上で受講して下さるようお願いします。

詳しくはそれぞれリンク先の「詳細」をお読みください。

Stay Safe.

本日のBGM: I believe (絢香)

「開放」?「却下」?それとも…。

またしても更新が滞りましたが、その間も、生き延びておりました。ありがたいことです。

指導者対象の対面でのセミナーも2回行い、さらに今月2回行う予定です。
昨シーズンの「名詞句を教えるならこのくらいのことを考えておいてはどうか?」というセミナーの発展編という位置づけです。

2020年12月20日開催
指導者対象セミナー:名詞句の捉え方・教え方
kokucheese.com

noteの公開記事でも、「比較三原則」「比較表現の発展」を公開済みです。
私自身が学習者としても、指導者としても、「最も難しい文法項目」の一つ、と感じているのが、この「比較」ですので、三部作+補遺、というような位置づけで記事を4本公開しました。
最上級で表された文を、比較級や原級を使って言い直す、というような、「雑な書き換え問題」に頼らずに、その表現形式で伝えたい意味、話者としての意図、を重視し、実例をひとつひとつ丁寧に「生き直す」ことを求めています。

比較表現の基本(その1): 原級を中心として 
note.com

比較表現の基本(その2): 比較級を中心として
note.com

比較表現の基本(その3): 最上級と比較の否定と
note.com

比較表現の発展・少し高いところで、より広い地平を眺めて
note.com

今週はさらに、いわゆる「仮定法」関連の記事を2本公開しました。
これまでに公開していた、「助動詞」関連と合わせた、「お買い得パック」も用意しています。

助動詞の過去形が出てくるたびに

  • (?) 「仮定法」です
  • (?) 控えめな表現です
  • (?) 可能性がより低いことを表します

という「?」の続出するような学参の記述を何とかしたいという思いが常々ありました。

現代英語の言語事実を踏まえて、「実例」ありき、「生息域」ありきで、英語の運動性能を高めるための教材としています。

いわゆる「仮定法」その1
note.com

いわゆる「仮定法」その2
note.com

お買い得パックの「マガジン」はこちらから。

助動詞と心的態度そして世界のミカタ
note.com

例によって、「練習問題」など、一つもない教材です。
「四択」完成問題や整序完成問題、連立完成の「書き換え問題」などに現を抜かしているうちに「語感」が鈍ってしまうことがないようにという、私の「祈り」だと思ってください。

この冬休み期間中には、喫緊の受験生を対象とした「英文ライティング・自由英作文」の講座も企画しています。
メールでのフィードバックが中心で、一部オンラインでのサポートをする予定です。詳細は近日中にお知らせできると思いますので、twitterやFB、このブログなど、ソーシャルメディアでの告知にご注目下さい。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 星に願いを (綿内克幸; 2020年11月28日@三軒茶屋 Grapefruit Moon バージョン)

deceptively simple, but ...

しばらく更新できずにいました。
辛いニュースがいくつか飛び込んでくる中、まずは、この2ヶ月を生き延びた自分を褒めてあげたい。
「怒濤」でした…。

朝の日課の「英語ニュース140字紹介&詳解RT」も扱える数が減ってしまっていましたが、少しずつ持ち直してきているところです。

朝日CCのライティング講座も開講の部分は終了し、今は、提出された課題のFBをメールでしているところです。
巷の「英作文講座」とか、「ビジネス英文メール&プレゼンテーション」などでは触れられることのほぼない、「英文ライティングの基礎基本」は扱えたと思っています。受講者からは、「続編を」という声もありましたが、リクエストは私の方にではなく、「朝日カルチャーセンター新宿」の方へお願いします。


非常勤をしている某高校でも、所謂「2学期」から、担当するコマが一つ増え、その準備が思いの他大変でした。高3の入試対策演習ということで、問題の選定は過去問データを見ればまだ労力は減らせるのですが、解答・解説を全て自前で作るのは結構手間がかかります。「何もここまで…」というくらいきめ細かく、丁寧な解説を提供しておりますので、受講者は安心してくれていいとは思います。

さて、
ここで告知・宣伝です。
noteで配信している「有料記事」ですが、今最新の記事がこちらです。
「大関の生息域」番外編:大関による時制の遡上
note.com

「大関の助動詞 have 」の特集で番外編です。
時を担う「過去形」と 心を映す「過去形」
相を担う「大関」と 時を遡る「大関」
これまでの記事を「統一した主題でまとめ」横断的に整理してみました。

a. That accident could have been worse.
あの事故は、もっと酷いものになっていたかもしれない。
b. I’m really sorry to have kept you so long.
大変お待たせしてどうも済みません。
c. He’s proud of having been a successful athlete when young.
彼は若い頃卓越した運動選手だったことを誇りにしている。
d. Having known her personally, I was very saddened to know she killed herself.
彼女とは個人的に知り合いだったので、自死したと知ってとても辛かった。

のそれぞれで使われている「大関の have」を、まずは一つひとつ実感してもらうために、まず「英語の過去形」というものをしっかりとつかまえ、それを踏まえた上で、英語ということばが時系列を表すために、どのように「大関の have」を使いこなしているか、精選された実例を通して感じてもらいます。

他にも、以前、公開した有料記事を、あるテーマでまとめて、「お買い得」なマガジンを設定してみました。

「助動詞の番付表」 お買い得パック
note.com

大相撲の力士の序列を英語の助動詞の階層性に見立てた「枠組」です。
法助動詞 
完了形
進行形
受動態
に加えて、助動詞としてのdoまでの体系を実例重視で示しています。
「簡易版」と用例が共通していますが、個々の「助動詞」の用例の精選ぶりと的確な解説とで類書とは一線を画すでしょう。 価格設定はものすごくお買い得だと思います。

  • 助動詞の番付表(2020年簡易版)
  • 大関の活躍の場を追体験する
  • 関脇は懐が深い<be + -ingの世界>を学ぶ
  • 英語の「受け身表現」:小結の生息域
  • 助動詞の生息域と番付表の活用#1

の5本の記事をパックにしています。

「名詞は四角化で視覚化」ドリル お買い得パック
note.com

第1弾:その1-その7 第2弾:その8-その14 第3弾:その15-その20 に加えて、 用例が「第3弾」に一部共通していて解説もある「中級への入り口」 の4点セットに、「助動詞の番付表」の簡易版を加えての販売です。
マガジン初公開時に「付録」だった、「文と文の要素を識別するドリル」は、新たな「関係詞」関連の記事として、別売りで公開しています。あしからず。
文を作る要素としての「名詞句」にとことんこだわったドリルです。 基本的に、空所補充もなし、並べ替え完成もなし、ひたすら四角で囲んで実感するドリルです。 用例の精選が肝なので、このままお使いくださるのが一番かと。

  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル その1〜6まで
  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル 7-14
  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル 15-20
  • 名詞句の限定表現〜中級への入り口
  • 助動詞の番付表(2020年簡易版)

こちらのパックにも「助動詞の番付表(簡易版)」が含まれています。

『意味順』と「四角化」で作る英文法の見取り図 お買い得パック
note.com

田地野彰先生の開発した『意味順』というしなやかなOSを援用して、文型分類ではない、記号付けに終わらない、英文法の見取り図を作るための記事を集めました。それぞれの「意味順スロット」の中に名詞句が来る際に、ひとかたまりになる、つまり後置修飾で下線延長となるのか、それとも知覚動詞、使役動詞のように、下線は延長しないのか、が最初のうちはわかりにくいので、「見取り図」で確認してください。 「四角化」の例文と共通しているものもありますが、併せて読むことで理解が深まることでしょう。

  • 『意味順』スロットで確かめる英文法の見取り図(2020年7月修正三訂版)
  • ワニ使い動詞で整理するthat節とwh-節とhow節
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #1
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #2
  • 「知覚動詞」「使役動詞」って簡単に言うけれど…

入試素材文を活用して「つながり」と「まとまり」感覚を養う
note.com

「センター試験」の「不要文指摘」や、私大入試の「文整序段落完成」問題の素材文を活用して、英文の「つながり」と「まとまり」の感覚を養うための記事を集めました。 細かい解説はありません。素材の良さを噛みしめ、私の手書きノートの記号付けやコメントを活かしていただければと思います。
「名詞は四角化で視覚化」という記号付けは、実際の英文例の中でどのように行われているのか、を知る材料ともなることでしょうし、「私自身が、英文をどのように読み進めているのか」「その英文、英語表現、語義のどこに着目して解説しているのか」を知ることにもつながるでしょう。
センター試験型「不要文指摘」問題を読む #1

  • 「センター試験」「私大入試」素材文を読む:「つながり」「まとまり」感覚を身に付けよう!
  • 「センター試験」不要文選択問題のパラグラフを咀嚼する#1
  • 「センター試験」不要文選択問題のパラグラフを咀嚼する#2
  • 「センター試験」不要文指摘問題記号付け

名詞か?形容詞か?副詞か?その都度しみじみ味わうパック
note.com

名詞句の限定表現に習熟してきたら、次は文中での識別です。
とはいえ、「文型ありき」での後だしジャンケンではありません。
後置修飾なのか?使役動詞・知覚動詞での形合わせなのか? それとも分詞構文や付帯状況での形合わせなのか? 「強調構文」で語順が歪に見えたり、「足あと」の有無が分からず「ウム厶…」となったり。 でも、そういうものは、その都度「意味と形」をすり合わせて「しみじみ」味わいながら身に付けるしかないように思います。 そんなことを想定した教材です。 既に公開しているマガジンの他の「お買い得パック」の内容と重複しているものもありますので、購入の際には十分お気をつけください。

  • 『意味順』スロットで確かめる英文法の見取り図(2020年7月修正三訂版)
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #1
  • 「知覚動詞」「使役動詞」って簡単に言うけれど…
  • いわゆる「分詞構文」: 2020年10月版
  • いわゆる「強調構文」のお話

老婆心ながら、補足しておくと、これらの記事、マガジンには、ほとんど「練習問題」というのがないんですよ。私自身、問題を解くことで英語ができるようになった、という実感がほとんどないので、こればっかりは「生存者バイアス」で申し訳ないのですが、偽らざる心境というか信念、視座と言っていいでしょう。

このエントリー冒頭でも書きましたが、実際に「受験学年」の生徒や、受験生の指導をすることがありますが、四択にしろ、整序にしろ、誤文訂正にしろ、問題演習って、本当に好きじゃないんです。時に「ああ、良い問題だな」と思うものもありますが、その場合もたいていは、その問題の「素材としての英文テクスト」が良いから成立しているんですよ。

ということで、「問題演習」を謳う「教材」を扱わざるを得ないときにも、完成した英文に関する言語事実に関してはできる限り丁寧に説明するようにしています。最近は、教材に付属する解答解説が「見開き2ページの両面印刷で、個別シートのバラ納品」などというものが増えましたが、私の場合は、解説の殆どを自分で書き直して生徒に伝えています。入試過去問のデータは同じですから、「市販教材」と同じ問題を扱ったりもするのですが、最近では、この完成した英文の「解説」「和訳」が酷かったですね。

  • I’ve never met him but ( from what ) I've heard, he's supposed to be as charming as he is deceptive.

慶應・商の空所補充四択完成での出題です。正解は容易だけれど、特に he’s 以下の意味を市販教材や学校採択教材の解説でもまともに扱えていないものがあるのががががが…、という感じ。
この英文のポイントは三つほど。
1. 一般には「同等比較」と呼ばれるas A as Bの「肝」。
2. 形容詞deceptiveの語義の把握。もとになる動詞は deceive。
3. <be supposed to 原形>の原形がbe動詞となる場合の語義の知識。「一般に…だと思われている;…と目されている」。
≧ の気持ちを踏まえた上で、同じ尺度での二者の比較なら「勝るとも劣らない」で、類似の性質を同一物で比較するなら「だけではなく;に加えて」、相反するような性質を同一物で比較するなら、「補って余りあるような」という解釈をすることで、出口が見えることでしょう。

お手持ちの『過去問演習』本でこの問題が収録されていたら、その「和訳」や「解説」を見てみてくださいな。

本日はこの辺りで。

本日のBGM: やさしい悪魔 (キャンディーズ)
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「始まってしまったから…」

8月もいよいよ「夏も終わり…」への最終コーナーにいます。
昨日は久しぶりに雨が降りました。
「降ればなんとやら」で雷雨でしたけれど。

休み明けの高校の授業の準備をしているフリーランスの講師である私ですが、少し前に買ったまま読んでいなかったある本が気になっていたので、ちょっと本気を出して読んでみました。
で、愕然。ワニの口。憤りはなかなか収まらず、ツイッターで連投していました。

少し時間が経ち、頭と気持ちの整理ができましたので、こちらにまとめることにしました。

この本は、『現役本』ではありますが、これがこのまま広まったりすると困るので、ここで取り上げ問題点を指摘します。

その本とは、
『高校英語授業における文法指導を考える 「文法」を「教える」とは?』(アルク、2020年)

副題にあるように、「文法」を「教える」とはいえ、実際は「解説しているだけ」ではないのか?「教え込み」で「身に付いた」という勘違いが高校現場に強く根付いているのが問題では?
旧来型の高校の授業と著者グループの関わった中学/高校のような実践との違いは何か?

というような問題提起もなされています。
かねてより、著者の金谷憲氏のグループでは、「名詞句の限定表現」が指導から定着まで、どのような推移・経過を見せるのかリサーチをしてきましたが、この本でも、「授業」の「成果」としての「生徒の英語力」を測ための「テスト」を開発し、それを使って「文法力」の検証をしていることが書かれています。

調査結果の分析・考察で、とりわけ後置修飾を含む英文の理解度に大きな差があることが取り上げられています。 (p. 69)

ある高校では、高1段階で55%の理解だったものが、高2では85%の生徒が理解できている。別の高校では、高1の段階では34%、高2で52%、高3では54%の理解度でした。

では、これはどのような「テスト」によるものでしょうか?
「FMテスト」と呼ばれるものに、このような設問があります。

John opened the door Mary closed.
問題: ドアはどうなっていますか?
(a) 開いている
(b) 閉まっている
(c) わからない

この問題の正答を (a)に限るとすれば、その正答率が低いのは関係詞による後置修飾、この場合はいわゆる「接触節」の理解が乏しいことのみによるものであると言い切れるでしょうか?
私にはそれだけが原因・理由とは思えません。
関係詞の後置修飾(所謂接触節)の定着を診るのなら、この文のように、主節と形容詞節(接触節)のどちらも過去形というような文は避けるべきでしょう。時制が同じであることによって、どちらが時の上流かの判断に迷う可能性があるでしょうから。
時の上流から今へと順行するのではなく、ある過去の時点から、さらに時の上流へと逆行するので、過去完了で

  • John opened the door Mary had closed.

のように書かれていれば、「今ドアが閉まっている」という誤解は減るはずです。(もっとも、これを現行の学習指導要領で学んでいる中学校段階の生徒や、高校1年生段階でテストしても、過去完了形の理解度の低さによって、正答に至らない可能性があることは充分承知しています。)

関係詞で作られる形容詞節での過去完了は規範的な文法では義務的で、かなりの割合の英語使用者が、過去完了形を好むとされています。

まず、使用者の多い辞書から用例を引きましょう。

I lost the dictionary that my sister had bought for me the day before.
前日に姉に買ってもらった辞書をなくした。
The book I had lost turned up.
なくした本が出てきた。  (以上『ジーニアス英和』大修館書店)

次に、使用者の多い文法書から引きます。

After a few weeks’ trial he was shifted to another department, because he was not up to the work that had been given to him.
(数週間試しに働いてみた結果、与えられた仕事は荷が重すぎたので他の部門に移された)
『英文法解説』(改訂三版、金子書房)

関係節の時制の解釈で、

  • 前方転移
  • 同時
  • 後方転移

の読みの可能性があることは良く知られていると思いますが、ここでは深入りしません。

詳しくは、
千葉修司『英語の時制の一致 時制の一致と「仮定法の伝播」』(開拓社、2018年)
長原幸雄「過去完了の代用としての過去形について」(英学論考 (26)、1995年、東京学芸大学レポジトリ)
Ogihara, Toshiyuki (1996) , Tense, Attitude, and Scope, Springer
を参照されたし。

この問題の正答率が低いのは、「接触節」の理解が乏しいことのみによるものではなく、「時制」「相」の理解が乏しい、または未成熟であることも起因しているのではないか、という「素朴な疑問」がこのテストの作成者、リサーチを支援する研究者の側にありさえすれば、今指摘した「過去完了」での修正以外に、例えば、次のような英文を使うことも可能だったはずです。

  • John has opened the door Mary closed.
  • John was opening the door Mary was closing.

同じ「ドアの状態」を尋ねるにしても、前者であれば「開いている」と答える者の比率は上がり、後者であれば、「わからない」という選択肢の意味が出てくると思うのです。


しかしながら、問題の根はもっと深いところにあります。
もし、上述の「ドア」の英文が正しいとして、「メアリーの閉じたドアをジョンが開けた」という文は、いつ、誰が誰に対して、何のために、どのように伝えるものなのでしょうか?
この書、そしてこれが依拠する調査・実践では、「英語を使う」ことで「文法」も身に付くということを盛んに強調しているのに、その「文法」が身に付いているかを測るテストがこれでいいのでしょうか?

高校生レベルではより詳細な調査が必要、として開発された「テスト」があり、「KBテスト」と呼ばれています(「高校生用のビリーズテスト」とでもいうのでしょうか)。
後ほど、細かく検討しますが、そのテストのうちの一つの問題がこちらです。

(   )の語を加えて文を完成させるとき、もっとも適切な箇所はどこか?
(18) The ① little ② girl ③ who ④ was ⑤ eating ⑥ candies ⑦. (jumped)

正答は、④か⑦だそうです。
では、この (18) で完成する文はどういう意味になるのでしょう?

girlは定冠詞theで限定。
jumpedは単純過去形。
was eatingは過去進行形。
candiesは無冠詞複数形。

「意味が分からない」と正答できないと思うのです。
でも、「意味がよくわからない」のは、後置修飾への習熟が不十分だから、という理由だけではないように思います。

以下、このKBテストで、「正答」として完成する 33 ある英文のうち、不自然なものを取り上げてコメントします。

(3) ? The tall man liked by everyone is Koji.
前置の形容詞が既についている名詞でも、後置修飾は可能だ、ということを分からせたいのか?何かのCMの悪影響だろうが、the そのものの「指示性」は弱いのです。「同定」が主たる機能。tallは尺度のある形容詞。原級のままだと主観的形容。この二つの要素だけで、他のman (またはwoman) との弁別・識別を図るのには無理がある。
like が受け身で容認されるのは、「不特定多数」による場合だが、中学や高校段階でどれだけの学習者が、likeという語の特性・制約をそこまで理解しているか?

(4) ? The girl that you invited to the party cooked.
cookedという過去形はどういう意味で用いられているのか?「調理した」?
The girl that you invited to your birthday party was [turned out to be] a very good cook.
なら分かりますよ。
「みな驚きました。それが後のカリスマ家政婦シマさんだったんですけどね」とかね。

(5) ? Which small clock is yours?
その他にも複数の小さな時計がある中で、直接話している相手に「小さい」という情報を含めて確認してもらわなければならない状況がイメージできません。
「『ミニ時計』自慢大会」に出品したけれど、ブースとかショーケースの中で他の出品者のものと混ざって分からなくなった?だったら、「小さな時計」という旧情報は言う必要がないのだから、Which is yours? で十分では?

(8) ? The student that reads many books likes English.
関係代名詞による修飾である必然性はどこに?「たくさんの本を普段から読むその生徒」という制限的な関係詞で何を表しているかが不明。何かの調査結果をレポートしている?
次のような文ならまだ分かります。でも、中学生のテストには不向きでしょうね。
The student, who reads a lot (of books), likes English the best of all school subjects.
「その生徒は、普段から読書家なんですけど、英語という科目が一番好きなんです。」

(9) ? The man eating in the restaurant is popular.
レストランには外に何をしている者がいるのだろうか?「飲むだけの人」?
man ではなくwoman? 繰り返すが、the そのものの指示性は弱いのである。popular は liked by a large number of peopleで不特定多数の人に好かれていることを表す形容詞。 「…を…している男は人気者です」って、どういう情報価値を持った文なの?
たとえば、「このレストランで、男性が最も多く注文するメニューが…です。」ならまだ「主題化」して、その答えだから、名詞一語で十分ですけど、「…を食べているあの男性が、若者の間で多大な人気がある声優です」とか、主語の重みと釣り合うだけの「意味」の濃さが必要では?

(13) ? The old painting of my brother is in the box.
後半の「テスト」では、二つの解を示すものがあるのに、なぜ、この13では、
The old painting is of my brother in the box. にならないのでしょう?
いや、この文でも、「この古い絵画は、箱に入っている私の弟を描いたものです」といって、齢百歳を越えようかという老人は、死産となった弟のミイラが入った箱を示した。」などというスペシャルな場面はあり得ますよ?

(14) ? That blue music player is popular.
(9) と同じ疑問ですが、なぜ、この文だけthe ではなく that なのでしょうか?
また、ひょっとすると、playerは人なのでしょうか?「ブルーマン」?

(15) ? The girl that the student taught studied very hard.
the studentの正体が分からないと、「生徒/学生が女の子に教える」の意味が漠然としすぎていてよく分かりません。そもそも「何を教えているのか」も不明。
大学生がお受験の小学生の家庭教師をしている場面?だったらそう書くべきでしょう。

(17) ? The big park in our city is beautiful.
私たちの市に大きな公園はいくつあるのでしょうか?bigは原級のままでいいのでしょうか?次の例と比べると、この (17) がいかに不自然かが分かろうというものです。
The cherry blossoms in Yoshino are most beautiful.
「桜は吉野にとどめを刺す」(O-LEX和英より)

(18) ? The little girl who jumped was eating candies.
  基準時制が過去。jumpedは単純過去形で副詞句が何もない=自動詞。どういう動作なのか、絵が描けません。「その跳ぶ少女」って?そして、過去進行形で「線」を表すwas eating candies の「お菓子;アメ」が「無冠詞複数」。「アメを複数頬張っている」?「アメを一個食べるごとにひと跳びした」?どちらにせよ、何を跳び越すのか言わないと。
あの〜、ところで、「過去進行形」って結構制約が多いって、分かってますか?
? The little girl who was eating candies jumped. こちらも同じ。

(20) ? The cute girl l pushed met the man.
  私が押したのが、時のより上流で、その男に会ったのは、それよりも下流だから、両方過去形でOKですけど、「私が強く押したその幼くか弱そうな女の子はその男に会った。」ってどういう意味なんですか?meet を「接触する」という意味で使ってる?
? The cute girl l met pushed the man
「私が初めて会ったそのか弱き乙女はその男を押した」。このmeetは初対面?「押した」ってなぜその男を押すの?まさか、このpushはスラングの「殺る」?

(22) ? The old man who(whom) l met called.
meetの意味は? callが自動詞で単純過去形って、どういう意味?いや、これ、目的語がないですから。その人と私は会ってたんですよね?誰かと会っている時にcall する、ってどのような行為?「電話をかけた」?「叫んだ」?

(23) ? Which person is your teacher?
teacherって普通は人ですよね?選択疑問文でも、疑問詞が人の場合にはwhichではなくwhoを使うのがより一般的だと思います。
ということは、敢えて「人」という情報を前面に出したい?
AIが教師・教育者として完全に定着した未来の世界で、人を敢えて選んで教育を受けている珍しい人の話?

(24) ? The large room in my house is clean.    (17) と同じ不自然さです。

(25) ? The boy who laughs is talking with Nancy a lot.
? The boy who is talking with Nancy laughs a lot.
どちらも不自然なのですが、上の例の方がより不自然ですね。laughsの現在形は「恒常性」を強く感じさせますが、どういう意味でしょう?「お笑い君」?「笑い少年」?「いつもは笑う人」?talk にしろ、laughにしろ、動詞+a lotなら可ですが、talk with を進行形でしかも、a lot で「計量化」するというのは、already の気持ち?
「いつもは笑うその少年が、今、ナンシーとたっぷりと話しこんでいるところです」という場面?テストされた中高生は、そういう理解に達している?
正解を得たとされた高校生に、どんな意味だと思って、その英文にしたのか尋ねてみたのかしら。

(26) ? The girl reading a book is very cute.
「とある一冊の本を読んでいるその少女はとても cuteです」ってどういう意味?
かろうじて許容した(2) This new red sweater is cute. の文でも、先程ダメ出しをした (20) の文でも、cute という形容詞が使われているのだが、いったいどのような語義だと思って「テスト」しているのか? 本来cuteは、生き物に用いる場合は、赤ちゃんや子犬、小猫など「幼い、か弱い」愛らしさを表すもの。この少女は普通は本など読めるはずもない、2歳くらいなので「幼くて可愛らしさ倍増」という感じなのか?
cuteが「未熟さ」のイメージかと思いきや、ところが、米語法では、人に用いた場合に、「性的魅力のある;セクシーな」という意味を持つ場合と、「抜け目のない;ずる賢い」というネガティブな意味を持つ場合がある。
このような後置修飾で、その少女のどんな特性・性質を付加したり、そこにいるその少女以外のどんな少女との識別を図っているのか?

(27) ? The famous singer everybody knows sang.
これは酷い。「歌った」という情報に何の価値があるのか?「有名歌手」なら歌うでしょ。歌手なんだから。「国民的歌手だから、もったいぶって歌わない」の? それだって、「5年ぶりで、公の場で生歌を披露した」とか、スポーツのイベントでの「国家独唱」とか、一文であれ、文脈は存在しますから。テストで「出来不出来」を決めるんだから、もっとまじめに例文作りなさいよ。

(29) ? The young man that smiled was swimming.
? The young man that was swimming smiled.
どういう状況なの?過去進行形って、大変なの分かってる?
点と線?線と線?どちらが点?
「その若い微笑み男は泳いでいた」?「水泳中の若い男は笑みを浮かべた」?
私だったら、息継ぎできないけどね…。
私にイメージできる状況とか場面って、こういうのですよ。
「その若い男性スイマーは、厳しい練習中も、笑みを絶やさなかった」

(30) ? Which baseball team is strong in Japan?
そもそも、この英文を日本語に訳したらどうなるの?
「日本ではどの野球チームが強いのですか?」ですか?
これ、「野球チーム」と「日本で」というのが乱暴すぎるでしょ?
プロ野球で何チームあるの?社会人、大学、高校…それらを含めたら全部で何チーム?
昔、前世紀ですね、PL学園の全盛期に、「今のPLはプロとやっても勝てる」とかいわれてましたよね?で、strong って原級のままでいいの?どこかのチームが一強でその他は全部弱いの?少なくとも限定とか、比較とかにならないと、何も言ってないのと同じでは?

(32) ? The watch broken yesterday is Mika's.
どういう意味ですか?
「昨日壊(さ)れたその腕時計はミカのものです」ですか?
過去分詞は、「完了由来」で「…し終わった」、「受動態由来」で「…された;…してある」を表しますが、本来分詞って、時制を手放すものなんですよ。にもかかわらず「特定/限定の過去の日時」でyesterday。新聞の見出しで、be 動詞の省略でもないと不自然ですね。
「受け身にすることで、動作主を曖昧にして、責任も曖昧にする」というよう状況・場面で考えるとすれば、
The watch broken in an accident yesterday is Mika’s. She said that is a keepsake from her grandmother. 昨日の事故で壊れた腕時計はミカのものです。お祖母様の形見だそうです。
のように、事故の修飾語句としてyesterdayを使うなら可能ですかね。

疲れました。ホントに。
KBテスト33問のうち、3分の2弱にあたる20問に「?」を付けました。
この「テスト」そのものの機械的な作業を抜きにしても、個人的には、これらの不自然な(「酷い」と言い換えたいものもある)「英文」を学習者に作らせるのは耐えがたいのです。
完成した、つまり正答だとみなされる「英文」がこのようなものなのに、それで「文法」の理解度が本当に測れるのでしょうか?

  • 単文・短文の空所を補充することで、簡便に名詞句の限定表現の理解度を測る

というコンセプトやリサーチの基礎デザインは結構です。
ただ、中学段階で学んだことの定着をその後に「診たい」のなら、テスト設計そのものを吟味精査すべきだと言っているのです。
3年前に開発したもので調査したものを、3年後に再検証することに意味があるからといって、「昔これでテストしたから」と問題のある同じテストを使い続けるのでは困ると思うのです。

本書の「第5章」 (pp. 164-200) まで30頁以上を割いて、調査結果の考察がなされています。

調査結果: ① 中2までの文法事項は、活動中心の授業であまり解説しなかったとしても、中学校卒業時までに身に付く(インタビュー、KBテストその他)。 (p.164)

とあるのですが、3分の2弱が、意味のよく分からない文で構成されている「KBテスト」で、いったい何が分かるのでしょうか?

私が担当した第4章のタイトルにSLA研究で文法指導について「分かっていること」と「まだ分からないこと」に加えて「分かり得ないこと」としたのはそういう意図です。SLAのような科学的研究と実践の付き合い方について今回は考えさせられました。 (p.172)

SLAとか、科学的研究というかなり前の段階の、「英語そのもの」に関わる不備が、この「KBテスト」にはあると思うのですが、それは改善されないのでしょうか?ひょっとして、このままで英文として問題がないと思っているのでしょうか?

使えるようにするのは音読などの練習(パイ生地)部分だけではうまくいかず、教科書で扱っている会話やストーリーに関することについて、先生が生徒と英語でやりとりするクリームの部分もなければならない。音読などの練習(パイ)を何回かしたら、先生が教材と生徒の生活との接点を付けるようなやりとり(クリーム)が入って、また練習(パイ)という、まるでミルフィーユのように何段にも重ねられることが大切ということです。(p.179)

お洒落な比喩は結構ですが、なぜ「文法の習得」のプロセスモデルが「ミルフィーユ」というお菓子の構造や製造法で喩えられるのでしょう?「食べ物」を食べる比喩ではなく、作る比喩であることが重要なのでしょうか?では、「バームクーヘン」の構造や作り方とは何が違うのでしょうか?
食べ物ではなく、「和紙を漉く」プロセスの比喩では、文法習得のプロセスモデルとして何が漏れてしまうのでしょうか?

よく分かりません。

そんなことよりも、「KBテスト」を早く修正して、その上でリサーチをやり直してくれませんかね?

私は教師として駆け出しの90年代の初めから、金谷先生の諸々のプロジェクトは見続けてきて、随分参考にさせてもらってきました。
しかしながら、今回の「KBテスト」は全くもっていただけません。
これがパイロットであれ、事前事後であれ、文法事項の「理解度」を測る「テスト」になってしまうとすれば、その結果に乗っかる、実践にしろ、考察にしろ、それらはもう、研究成果の体を成していないのではないかと思います。5Rシステムにしろ、Tモデルにしろ、実践そのものは結構なのですが、その「基礎」が揺らいでは価値は薄まります。早急に「手当て」が必要でしょう。

仕切り直すなら早い方がいい。

本日のBGM: 優しい雨 (小泉今日子)

小泉今日子 優しい雨

The show must go on!

通常であれば、もう夏休み。
公教育現場に再び関わるようにはなりましたが、「学期」「授業」「評価」のあり方も、それぞれそれなり。それに加えて、COVID-19対策での変則的なスケジュール。四捨五入して60歳になろうかという私も、毎度毎度、新鮮な体験をさせてもらっています。

前回の記事で書いた、

自分では決して選ぶことはないであろう教材を横並びで教えるというのも、久しぶりの経験で、受け入れられることと、我慢できないこととがより鮮明になったようにも思います。

の延長線上で、私のオリジナル教材を世に問うています。

note のページで有料記事として小売りをしていますので、「自分の興味関心の高い項目を選んで」とか、「一定の体系が見渡せるように関連記事をまとめて」とか、それぞれ、それなりのアプローチが可能だと思います。

番付表関連を見渡せるよう、こちらで大まかな説明をしておきます。リンク先は note の販売ページになります。

助動詞の番付表(2020年簡易版)
横綱から小結までの概観ができる(簡易版)
横綱(法助動詞)
大関(完了形)
関脇(進行形)
小結(受け身)
のそれぞれの助動詞で、また新たな記事を書いていますが、全体を早く見渡したいという場合はこちらをまず最初にどうぞ。
note.com



助動詞の生息域と番付表の活用#1
横綱と大関、大関と関脇、関脇と小結 など、番付表の組み合わせが実際にどのような場面で使われるのか、を例文と解説で示したもの。note.com


助動詞の生息域と番付表の活用#2 (慣用表現)
横綱の助動詞の「慣用表現」を取り上げ、巷の「トンデモ」な解説や、現代英語に当てはまらない用例を排して、「生息域」を実感しやすいように提示したものです。note.com


大関の活躍の場を追体験する
完了「相」というのは、なかなかに奥が深いのですが、「肝」を押さえることが重要です。
「現在完了」を中心に取り上げていますが、have been -ing の「肝」。
had + -enの実感など、用法分類でごまかさず、英語史的説明に逃げず、書き換えなどの練習問題を一切使わず、徹頭徹尾、実例を通じて学ぶ教材です。
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関脇は懐が深い
いわゆる「進行形(進行相)」です。この記事が一番苦労しました。
先行研究を踏まえ、動詞の「意味特性」を精査吟味した上で、敢えて、一覧表などの形で「動詞の分類」を示すことはしませんでした。
一つ一つの実例を「生き直す」ことこそが、「関脇感覚」を身に付ける最短コースだと思います。
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英語の「受け身表現」:小結の生息域
受動態、いわゆる「受け身」を扱っています。
何の目的もなく「受け身」の姿勢ではいけない、ということは分かっていますが、能動態との書き換え問題は一切扱っていません。
とにかく、英語の「受け身」っていう生き物は、どこに行くと見つかるのか?と自問自答しながら書いた記事です。
とかく、他の学習者と差がつく難しい問題を解きたがる人が多いのですが、難しい問題を解いた数量の分、英語ができるようになるわけではなりません。
収録例文の難易度ではなく、英語の運動性能を身に付ける上でのクオリティは高いと思います。
note.com


ここまでの「三役」以上の助動詞は有料記事ですが、平幕の do (does / did) は無料で公開しています。(大人の事情です)
note.com


他との競争ではなく、「英語」ということばの森を、虫の足で歩み、虫の目で見ることから始める、またはやり直すことが大事だと思っています。
ここで紹介した以外にも、まだまだ優良な記事がありますので、是非ご覧下さい。
note.com

本日は告知で終了です。

本日のBGM: 蜃気楼 (萩原健一)

「はじめにことばありき」

気がつけば、前回更新から早2ヶ月が経とうとしています。
今年度は、また「公教育」現場に復帰し、高校生も教えています。COVID-19の感染拡大とその対策の影響で、オンラインですぐに授業ができたところもあれば、課題指示だけとか、ようやく対面授業でとか、と今までに経験したことのない「指導」のあり方に翻弄されそうな日々でした。

自分では決して選ぶことはないであろう教材を横並びで教えるというのも、久しぶりの経験で、受け入れられることと、我慢できないこととがより鮮明になったようにも思います。

そんな2、3ヶ月でしたが、私の視座は変わらず、「ことばありき」「テクストの復権」ですので、丁寧にことばを扱うだけです。

夜9時に寝て、朝3時頃に起きる、という自分の慣れ親しんだバイオリズムに戻ってこれたことも喜ばしいことの一つです。いや、生きるリズムって、人間の根源ですから。

WFRで通勤時間が浮いた分、というわけではないですが、ツイッターのアカウントに登録してある100ちょっとの英語メディアの「ニュース」などをざーっと眺めて、その中で「これは学習や指導を考えると有益かな」というものを20本ほど、1時間半くらいかけて読み、引用解説でRTする、というのを朝の日課のように続けています。

大学入試や資格試験対策、というよりは「ことばありき」ですので、私が英語を学び、教え、使ってきた過程で悩んだところを思い起こしつつ、書き手の視点も含めて、

  • 「その語の使い方って、気になりませんでしたか?」
  • 「そこは素通りですか?」

と、かつて、恩師K先生に言われたレベルに近づくべく、呟いております。

ツイッターでは他にも折りに触れ、「文法」や「語法」に関わるオンラインコーパスでの「目安」なども呟いておりましたので、こちらでも一部紹介しようと思います。

助動詞/動名詞との絡みで「慣用表現」として、日本の英語教材で必ずと言っていいほど取り扱われている表現(項目)。
私が高校生に教える際には頻度と生息域の目安を示しています。

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気になるのは、could not help butと助動詞が過去形になった途端に躍進した原形のbe。どんな語が続くのか?とその後を辿ってみると、圧倒的に「感情表現の過去分詞由来の形容詞」。
「目安」にしかならないけど、重要な情報だと思いますよ。特に、「教科書」とか「入試」さらには「模試」作成者には。

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これは以前も呟きましたが「今から過去を振り返っての可能性に言及する」場合の助動詞+完了形。
まずは、肯定の can=あり得る、否定のcannot=あり得ない、でコントラストを明確にしてから「…のはずがない」という日本語との対応を考えた方がいいと思います。
日本の教科書も、入試問題も、模試も、受験を念頭に置いた教材も、cannot have+過去分詞で「…したはずがない」という訳語を当てているのですが、実例を丁寧に観察するまでもなく、桁が違うのですよ。

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そろそろ、業界あげて扱いを見直した方がいいと思いますよ。

次の項目も、「意識高い系」の塾などで使われている問題集だと、いまだに in が入っていて整序作文などで英文完成を求められる設問を見たりしますが、もし自分が生まれ育った英語が in ナシ文化圏の英語だったら「苦労」しますよね。

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こちらも「覚えさえすれば良い」なんて言ってる場合じゃないですよ。私の世代でも、onlyは前って感じだったんですから。

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それよりもなによりも、この「不必要」界隈。とかく「助動詞でneedを使うのはイギリス英語」なんて言われがちですけど、どうしてどうして、手強いです。
私の授業では、強勢が置かれる、置かれない、とか文化圏とか未整理のまま情報だけ提示するのは止めにして、丁寧に扱っています。

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さらに悩ましいのはこれかな。「現在とのギャップ」を示したい表現です。疑問・否定の文脈では didを使う、までは分かっているんですよ。問題はその後の形、ですから。

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教科書などの教材作成者も入試出題者も、入試過去問で学参や問題集を作る人も、模試作成者も、頑張りましょうね。

本日はこの辺で。

本日のBGM: YES AND NO (Dreams Come True)

dictionaries to grow wise with

過去3回に亘って、『コウビルド』ネタを提供してきました。

tmrowing.hatenablog.com

tmrowing.hatenablog.com

tmrowing.hatenablog.com

noteの無料公開記事でも「アプリ辞書の活用法」を書いています。

note.com

物書堂さんのセールも残すところ1週間を切りましたので、この週末にでも再読して購入をご検討ください。
個人的にも、1987年の初版から『コウビルド』を愛用してきましたが、万人に勧める辞書ではありませんし、最初の英英辞典として勧める辞書でもありません。

それでも、

  • この実感は『コウビルド』でなくっちゃ!
  • そうそう、こういうところが『コウビルド』らしさだよね。

とでもいうものが確実にあるので、手放せません。

私自身の英英辞書遍歴は、高1の終わりから。

詳しくは、こちらの過去ログをどうぞ。
tmrowing.hatenablog.com

ラジオの「百万人の英語」の懸賞で

  • 『コンサイス英英』(三省堂)

が当たり、使い始めたものの、「隔靴掻痒」は否めず、悪戦苦闘していたところに、LDOCEの初版が出てきました。高2、高3とLDOCEと研究社の『大英和』を使い、学習用辞典の担うような「より身近な訳語や用例」「語法解説」などは、『新選英和』(小学館)を使って補っていました。

大学はG大でしたので、授業で求められるレベルもそれなりに上がりますが、苦学生でしたので、辞書を買いそろえるまではなかなか。それでも、図書館に行けばほぼなんでも見つかりますし、何より怪物のように英語ができる人が目の前に、周りにいるわけですから、良い環境に助けられていました。

辞書を買いだしたのは、卒業後、教壇に立つようになって、安定した収入が得られるようになってからですね。
80年代の終わりにCOBUILDが出て、『ジーニアス』が出て、『ロイヤル』のお手伝いをちょっとだけして、というころに、三省堂の教科書のTMを書く仕事をしていて、職場で隣の席にいらしたY先生のWBD (World Book Dictionary) とコリンズから出たばかりのBBCを主に使って、「ならでは」な定義や用例を示していました。編集部には、一般の先生方のシェアしやすいもの、ということでOALDのものに結構差し替えられていたのを覚えています。

2000年代に一番使ったのは、MED。マクミランの英語辞典でした。マイケル・ランデルですね。
今では、完全にオンラインに切り替わり、紙の辞書は廃していますが、良い辞書だったと今でも思います。

ということで、コウビルドの話に戻りますが、コウビルドに代表される定義文の if/when など、定義を書く側の意図と使う側の処理・理解とのギャップに関しては、マイケル・ランデルがずいぶん前に指摘しています。

michaelrundell.com

Rundell, M. 2006. ‘More than one way to skin a cat: why full-sentence definitions have not been universally adopted’. In Corino E., Marello C., Onesti C. (eds.), Proceedings of 12th EURALEX International Congress. Alessandria: Edizioni Dell’Orso.
https://www.euralex.org/elx_proceedings/Euralex2006/040_2006_V1_Michael%20RUNDELL_More%20than%20one%20Way%20to%20Skin%20a%20Cat_Why%20Full_Sentence%20Definitions%20Have%20not%20been.pdf

この論文は引用本数も多く「辞書学」が専門ではない私でも知っているくらいなのですが、若い方はまだお読みではないかもしれないので、この個所に注目して欲しいと思います。(p.332)

• the If/when distinction: most verb definitions begin with 'If, but a substantial minority begin with 'When'. For example:
When a horse gallops, it runs...
If you gallop, you ride a horse that is galloping

The distinction is motivated rather than arbitrary: it is intended to say something to the user (Hanks 1987.126). In most cases I can understand why one is used rather than another (though the entry for break has defeated me). I am more or less certain that the average learner (assuming s/he even notices this variation) will not pick up the difference the lexicographer intends.

この学問領域がエキスパートの方には、ここでランデルが指摘したことの掘り下げをして欲しいんですよね。
彼に

「私はわかるからいいけどさ、(でも、breakの項には私も参ったけど)、大体の平均的学習者には定義書いた人の意図を汲んで区別するなんてできなくない?」

って言われて終われなくなくなくない?
いや、多くの研究者(そんなに多くもない?)がsingle-clause when-definitions(名詞にぶら下がるような、対応する主節のないwhen単独節)に関して利点も問題点も指摘してくれるのはありがたいですよ。
例えば、こちら。

https://www.euralex.org/elx_proceedings/Euralex2012/pp997-1002%20Lew%20and%20Dziemianko.pdf

流石はエキスパートだと思います。

  • でも、英語がL2の日本の学習者、教師には、シングルじゃないヤツが実は厄介なのではなくて?

ということです。

・when=whenever の解釈ができるときは if と交換可能
・副詞節を導くwhenはifよりも確実に起こるという話者の想定
というような概説を繰り返してもらったところで、コウビルドの文定義の実情・実態・隔靴掻痒に納得できるか?

  • では、whenしか使えないのはどんな定義?

っていうところですよ。
ランデルも参ったというbreakを含め、whenの生息域を確かめられる好例を載せておきますので、味わってください。

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break1

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break2

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born

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die

3回のシリーズで「コウビルド読みのコウビルド知らず」にならないように、という願いというか、挑発というか、私の本心を投げかけておきましたけれど、自分へのブーメランとなるような語というか用法に、初心を取り戻させてもらえた気がするので、こちらにツイッターから出だしの投稿だけ引いておきます。

ここからの一連のツイートは、単なる「いいこと聞いた」レベルの情報価値だけではなく、ことばにかかわる「頭の働かせ方」という面でも、読んでおく価値の高いところではないかな、と思っています。効率よくテストのスコアを上げたいとかいった、消費財としての辞書ネタ、語彙・語法ネタを求める人や、そういうネタが好きな人にはお勧めしませんので悪しからず。

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Sinclair & Rundell

TwitterのTLでは、その後、『P単』の思い出話の方が、この『コウビルド』ネタよりも反響があったような印象ですが、そこで読み返して欲しいのは私のこのツイートですね。

この機会に、過去ログの辞書活用法とnoteの有料記事も併せてお読みください。

辞書を使いこなすには
tmrowing.hatenablog.com

以下は note の有料記事へのリンクです。

note.com

note.com

本日はこの辺で。


本日のBGM:Curiosity Killed the Cat (Emile Gassin)

辞書活用法:『COBUILDの芸風に慣れよう!』その3

現時点で最新版であるCOBUILDの第9版では、特に「動詞の用法」、「文型」と呼ばれることの多い「動詞型」に関して、どのような記号を用いて、どのように意味と形・構造を整理して扱っているのか、というCOBUILDならではの「芸風」を知っておく、慣れておくことが重要だ。

という趣旨で第1回、第2回と書いてきました。
この第3回で締めくくりの予定です。

辞書の機能、特色の全てを扱うわけには行かないので、「動詞型」に焦点を当てています。
第1回、第2回のおさらいは、ここから過去ログを見て下さい。

tmrowing.hatenablog.com


tmrowing.hatenablog.com

第9版は2018年刊行で、物書堂のアプリ辞書のリリース(update)が2020年ですが、それでも誤植はあります。
例えば、基本語中の基本語である動詞 give。

語義の2番目。

give
[2] VERB
You use give to say that a person does something for another person. For example, if you give someone a lift, you take them somewhere in your car.

英系語法ですから、具体例では、liftという名詞が使われていますね。
これに続く、一例目、二例目の用例とその前の動詞型表示をよく見て下さい。

[be V-ed n] I gave her a lift back out to her house.
[V n n] He was given mouth-to-mouth resuscitation.

逆になってますよね?

COBUILDの記述では、 giveのとる動詞型も語義によって注意が必要というか、有益な指摘をしてくれているので、こういう誤植は非常に痛いものです。
[V n n] 表記があれば、いわゆる「二重目的語」を取る、ということは分かるでしょう。でも、その同じ語義に、[V n + to] がない場合は、to を用いての書き換えができない、または頻度が極めて少ないことを示唆します。
先程の [be V-ed n ] は二重目的語を取る動詞型の、いわゆる「間接目的語」を主語にした受け身が可能、ということですが、この表記がない語義の場合は「ない」のか、「少ない」のか、など、それなりの注意を払って読むことが望ましいと思います。

では、語義の9番目を見て下さい。

[9] VERB
If you give something thought or attention, you think about it, concentrate on it, or deal with it.

主節側で、ちょっと欲張った三択を束ねていますが、この語義に対応する用例が、

[V n n] I’ve been giving it some thought.
[be V-ed + to] Priority will be given to those who apply early.

となっています。 二例目の受け身の例文では、[be V-ed n] ではなく、 [ be V-ed + to] となっていることがわかるでしょうか?
能動態では、[V n n] が普通だが、受け身では、[be V-ed + to]が普通なのか?疑問が浮かびます。

新情報の焦点が、語義の[2]で見た、

  • [be V-ed n] I gave her a lift back out to her house.

とは異なることは分かりますが、それは語義によって義務的なのか、任意なのか、に関する情報は与えてくれません。動詞型の表記が正しいとしても、その処理、理解は悩ましいところなのですから、冒頭で示した「誤植」は本当に痛いのです。

COBUILDの動詞型の表記で気をつけるべき項目で、まだ扱い切れていなかったものに、「句動詞」での表記があります。

どういうわけか、この句動詞のパターンというのは、「試験での頻出項目」のようになっていて、個人的には、「それがスラスラ解けるなら、他の英語の語順も相当容易くできるんだろうな」と思うくらい、随所で問題を目にするような印象です。

  • The crowd gathered at the airport to see the President off. 群衆が大統領を見送りに空港に群がった。
  • I’ll pick you up at your house at 7:00. 7時にお宅に車でお迎えにあがります。

などというときの、目的語の名詞と、副詞(不変化詞)の語順の扱いがポイントになるのでしょう。

まずは、see off から。

see off
[2] PHRASAL VERB
When you see someone off, you go with them to the station, airport, or port that they are leaving from, and say goodbye to them there.

この定義に対応する用例が、

[V n P] Dad had planned a steak dinner for himself after seeing Mum off on her plane.
[Also V P n (not pron)]

です。 

  • 動詞+目的語+off 

の語順になりますね。
Vは当該の、ターゲットとなる動詞 (ここではseeのこと)、Pは (adverbial) particle いわゆる「副詞(不変化詞)」を表します。
最後の補足は、[Also...] は「用例は示さないが、こういう場合も可」という意味でした。pronはpronoun 「代名詞」ですから、「この [V P n] という環境になるのは、n が代名詞以外のときですよ」という但し書きです。

先程の用例を見てみましょう。目的語に来ている名詞は Mumでした。大文字ですから、自分の母親です。
第9版では、Mum という語を引くと Nという品詞ラベルが貼られていて、一般名詞扱いであって、代名詞扱いではありません。
ではなぜ、[V P n] にならないのでしょう?悩ましいですね。
COBUILDでもかつての版や米語版では、N-FAMILY という特別なラベルを貼っていました。
家族の呼称で所有格や限定詞なしで、固有名詞のようにも使う、という注記がなされていた語群です。

先程、第9版以外から、例として引いた、

  • The crowd gathered at the airport to see the President off.

という文に動詞型表記をするなら、 [V n P]となります。でも、この the President は代名詞ではないのに、なぜ?悩みますね。
第9版でも、この president には「肩書き」を示す N-TITLE というラベルを貼っていますので、特別扱いでしょうか?

では、第9版には、初学者でも分かる代名詞以外の目的語が来て [V P n] になるような日常的で、平易な用例はないのでしょうか?
アプリ辞書での用例検索の出番、とばかりに検索してみました。

なんと、…。ないのです。

困りましたか?
いや、代名詞以外の場合は、[V P n] にもなるといいつつ、用例の豊富さを誇るCOBUILDのデータに、典型例がないのであれば、「見送る」という場合には、 see 目的語 off がデフォルトで押し通してOKということでは?という気もします。

というように、「句動詞」では、この目的語の名詞をどこに置くか、という語順にかなり悩まされるのですね。

辞書活用マニュアル、といえば皆さんお馴染み、私も随分お世話になっている、

  • 磐崎広貞 『英語辞書をフル活用する7つの鉄則』(大修館書店、2011年)

でも、句動詞のとる語順を類型化して注意を喚起しています。
磐崎は4類型で、自動詞扱いか他動詞扱いか、目的語の入るべき位置(=スロット)はあるか、あるならどこかで整理をしています。

また、今は、紙版を廃し、オンライン辞書に特化しているマクミランが出していた英語辞典では、5類型を文法コードで示していました。
では、COBUILD第9版は?

先程のもの以上の記号、コードによる識別はしていません。

slow down を見てみます。自動詞としても他動詞としても使われそうな句動詞です。

slow down
[1] PHRASAL VERB
If something slows down or is(ママ) if something slows it down, it starts to move or happen more slowly.
[V P] The car slowed down as they passed Customs.
{V P n} There is no cure for the disease, although drugs can slow down its rate of development.
[V n P] Damage to the turbine slowed the work down.

この動詞型表記には代名詞の注記がありませんから、目的語は動詞の直後でも、副詞の直後でも構わない、という読みでいいのでしょう。

続いて tell apart

tell apart
PHRASAL VERB
If you can tell people or things apart, you are bale to recognize the difference between them and can therefore identify each of them.
[V n P] The almost universal use of favourings makes it hard to tell the product apart.

これ以外のパターンを示していないということは、 tell+名詞+apartの形でしか使われないということを示しています。ただ、用例が使役動詞 make の形式目的語 it を受ける不定詞ですので、初学者には分かりにくいでしょう。

allow for はどう扱われているでしょうか?

allow for
PHRASAL VERB
If you allow for certain problems or expenses, you include some extra time or money in your planning so that you can deal with them if they occur.
[V P n] You have to allow for a certain amount of error.

ここでも、これ以外のパターンは示していませんから、常にallow for+名詞 の形で使うことが分かります。

気になりますよね?
「え、何が?」って、allow はCOBUILD以外の多くの辞書では、他動詞扱いの動詞です。そのallow を用いた句動詞も、次の、自動詞扱いの動詞を用いた句動詞 come byも、動詞型表記では見分けがつかないことになります。

come by
PHRASAL VERB
To come by something means to obtain it or find it.
[V P n] How did you come by that cheque?

COBUILDの句動詞の動詞型表記では、

自動詞由来か他動詞由来かは不問(もともと自他の区別をしていないから)。
本来、不変化詞[小辞] (= particle) ではなく、前置詞 (= preposition) であるものも、記号はPで表す。

ということに注意が必要です。

やはり、丁寧に「文定義」の部分を読み、主語や目的語の意味の関係と制約を踏まえた上で、用例と記号とを照合することが重要だと思います。時間がかかりますよ。

ということで、あらためて文定義を眺めて「COBUILDの芸風に慣れよう」(その3)、そして、このシリーズも締めくくりたいと思います。
ポイントは、

  • 文定義では、いつwhenを用い、どんな条件で if を用いるのか?

です。

ここは逐一解説せず、アプリ辞書の定義をひたすら引きますので、面倒でも読み比べた上で、それぞれの「生息域」を感じて下さい。(リストは長いですよ。)

日常生活系

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sleep

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wake

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wear

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put on

f:id:tmrowing:20200508055145j:plain
walk

知覚系

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see

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hear

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listen

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glance

喜怒哀楽系

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laugh

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smile

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grin

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chuckle

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giggle

伝達系

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say

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speak

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tell

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talk

「ちゃんとちゃんと」系

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deal with

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cope with

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handle

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address

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wrestle with

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grapple with

『コウビルド英語辞典』の文定義との折り合いが、「ちゃんとちゃんと」つけられることを願ってやみません。


本日のBGM: ラストダンス (綿内克幸)

辞書活用法:『COBUILDの芸風に慣れよう!』その2

前回の第1回の記事は、

現時点で最新版であるCOBUILDの第9版では、特に「動詞の用法」、「文型」と呼ばれることの多い「動詞型」に関して、どのような記号を用いて、どのように意味と形・構造を整理して扱っているのか、というCOBUILDならではの「芸風」を知っておく、慣れておくことが重要だ。

という趣旨で書きました。私の手元の原稿では、A4版で10ページほどになったのですが、今回の「その2」も同じくらいの分量です。
お時間のあるときにお読み下さい。
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以下、COBUILD Advanced Learner's Dictionary の記述・用例の引用は、書籍版は「桐原書店」が販売している『第9版』に基づくものです。

Collins コウビルド英英辞典 桐原書店編集部

www.amazon.co.jp

一方、アプリ辞書の記述・用例の引用は「物書堂」が販売しているものに依っています。

www.monokakido.jp

COBUILD の現時点での最新版である第9版の『使用の手引き』は小室夕里先生の筆によるものですので、桐原書籍版を購入する方は(既に購入している方も)『使用の手引き』を必ずお読み下さい。


まずは、「前回のおさらい」からです。

COBUILDの第9版では

・原則として「文定義」で、主語に何が来るか、動詞のあとに何が続くか、など動詞の使われる典型的な環境を示し、記号に頼らなくても「動詞型」が分かるようにしている。
・「語義のまとめ」のような、個々の語義の上位概念のようなものは示さない。
・自動詞 Intransitive verb = I / 他動詞 Transitive verb = T というような区別をそもそもしていないので、それに対応する別々の記号はない。
・動詞がとるパターンの表記では、主語は明示されず、目的語にも特別な記号は与えられない。名詞句は全てn という記号で表す。
・v-ing という形で、いわゆる「動名詞」と「現在分詞」を区別していない。
・形式主語、形式目的語などの it であることを明示する記号(とその説明)はない。
・定義文の主要パターンとしては、

  • When SV1, SV2. / If SV1, SV2. のそれぞれ V1 のところに、ターゲットとなる当該の動詞が配置される。接続詞whenやif によって共起する主語や目的語などの語句の制限、使用場面の制限を加えることで、語義・用法を明確に示す。
  • 動詞の前後(主語や目的語など)の名詞句に後置修飾などで選択制限を加え、語義・用法を明確に示す。

ということを確認しました。
今回は、これらのCOBUILD第9版の特徴のうち、前回取り上げたものを踏まえた上で、さらに注意が必要なあれやこれやに光を当てたいと思います。

前回に続き、tell のエントリーから語義の定義を見ていきます。

tell

[5] VERB [no cont]
If you can tell what is happening or what is true, you are able to judge correctly what is happening or what is true.
[V wh] It was already impossible to tell where the bullet had entered.
[V that] You can tell he’s joking.

まず、no cont ですから、進行形は不可。
定義文の if 節の中に当該のtellの動詞句が入っていますが、can tell wh節 という助動詞のcanを伴う動詞型が反映されるような文で記述しています。そして、主節の you are able to judge wh節の方は、単純現在であることに注意して下さい。

進行形は不可だけれども、今の事柄に言及する場合でも、過去の事実に言及する場合でも、tellは単純な現在時制や過去時制ではなく、助動詞のcanと一緒に使われることで、この語義を表す、ということです。旧版 (現行の『米語版』) では、このtellの語義には、

oft with brd-neg 

という記号が付けられていました。oft = often しばしばはすぐにわかるでしょうが、brd-neg = broad negative は説明が必要でしょう。これは、「否定文の中で、または否定語と一緒に、または、否定的な文脈の中で用いられる」ということを表す記号でした。「語用論」といわれる学問的知見を反映させたものでしたが、この記号も、この第9版では使われていません。(※個人的には、この手の注記がないのは、もったいないと思っています)

最新の学習用英和辞典であれば、「語法注記」のような形で

  • 通例可能性を暗示する語句を伴って(『ウィズダム英和』 三省堂)
  • 通例可能性や難易を示す表現(can, impossible, hardなど)を伴って

という但し書きがあるところですが、旧版では配慮のあったCOBUILDでも、第9版では、冒頭の「文定義」で、使用する文脈、場面を捉まえておかないと、英和辞典が提供しているような語用論的情報は得られないことになります。

用例の一つ目は、形式主語のitを受ける to+原形=不定詞のtell の部分が、ターゲットとなる動詞型の表記なので慣れが必要です。多くの英和辞典では、動詞の語義に続く用例の一つ目には、文のメインの述語動詞としての用法で、時制を持った動詞として示されることが多いと思いますが、COBUILDは「生きた英語」で「フルセンテンス」の用例を謳っていますので、このように、文の中でさまざまな形合わせをした末の「動詞の姿」を捉まえなければなりません。
ここでは、tellの目的語がwh節であることを示しています。

二例目には、肯定文で接続詞thatが省略されたものが使われています。

どちらの例でも、記号付けに nという記号はなく、wh/that節をとるとだけ示されていますから、この語義では、二重目的語をとらないことがわかります。


tellの語義を続けます。

[6] VERB [no cont]
If you can tell one thing from another, you are able to recognize the difference between it and other similar things.
[V n + between] I can’t really tell the difference between their policies and ours.
[V n + from] How do you tell one from another?
[V wh] I had to look twice to tell which was Martin; the twins were almost identical.

この[6]の語義の冒頭にも [no cont]とありますから進行形は不可です。
そして、定義文のIf節の中に、can tell と助動詞のcanが使われているのも、[5]と同じです。
この語義も、旧版では、 [oft with brd-neg] の注記がつけられていたものです。

用例を見ると、[5]よりも一つ例が多く、
一例目:否定文
二例目:How の疑問文(助動詞は doであり、canは使われていない)
三例目: 見た目は肯定文でcanもimpossibleも、hardも使われていない

というように、

  • [5]よりも使われ方の幅が広いのかも?

という印象を持つかもしれません。
ここは、もし、旧版のようにbrd-negという記号が付けられていたとしても、学習者が適切な理解ができる保障はありません。三例目では、セミコロン以降で、「その双子はほとんど同じだから」という文脈が、「難しさ」の背景・理由を表している、という(分かっているひとには何でもない)ことを補う必要があります。
今、私が示したような「補助線」がなければ、せっかくの「生きた用例」も宝の持ち腐れだ、ということは学習者だけでなく、指導する側が弁えておくべきだと思います。


語義を少し戻って、tellも一区切りつけようと思います。

[3] VERB
If you tell someone to do something, you order or advise them to do it.
[V n to-inf] A passer-by told the driver to move his car so that it was not causing an obstruction.

日本の「中学英語」でもお馴染の、tell+目的語+不定詞ですね。COBUILDでは、目的語という表示はありませんから、一貫して、nで「名詞句」として示しています。不定詞は、to-infですから、
the driverがn、そのdriverに命じてしてもらう行為行動が to move his car ...の不定詞となることがわかります。一見、日本の英和辞典の記述との差が余り感じられないところです。
語義では3番目に記述されていますから、「使用頻度」は高い語義であることがわかります。しかしながら、
・不定詞の否定 tell n not to-inf
・受け身. (be) told to-inf
については何も情報がありません。

COBUILD 第9版には、

  • I already told you not to come over. (alreadyのエントリー)
  • Because of the danger of identity theft, we are told not to give personal information over the phone. (identity theft のエントリー)

という用例は収録されていますので、「もったいない」印象を受けます。
こういったところこそ、「アプリ版」を使う利点を感じられると思いますので、是非活用を。

続いて see を見てみましょう。
アプリ辞書の定義のうち、[1]と[2]と[4]に着目します。
このうち [1]と[4] は [no cont] で進行形不可です。
先に、文定義だけを比較しますから、これだけで、それぞれのseeの意味、使われる場面を実感できるか自問自答してみて下さい。

see

[1] When you see someone or something, you notice it using your eyes.
[2] If you see someone, you visit them or meet them.
[4] If you see that something is true or exists, you already realize by observing it that it is true or exists.

定義の [1] の接続詞はWhenで事実や状況の説明。[2]と[4]は接続詞If を用いた条件設定です。
[2] には但し書きがないので、「人を訪ねる;人と会う」というときのseeは、[1],[4]とは違い、進行形になることがあると考えられます。
[1]と[4]では、「目的語」の中身が異なります。[1]は「人」または「もの」であるのに対して、[4]では「ことがら」です。

以上の留意点を踏まえて、それぞれの用例に当ることで、用例から読み取れる情報が変わってくるのではないかと期待します。以下、記号付けで注意が必要な部分を取り上げます。

[1]
[V n] You can’t see colours at night.
[V n v-ing] I saw a man making his way towards me.
[V that] As he neared the farm, he saw that a police car was parked outside it.

二例目の [V n v-ing] のnは目的語となる名詞句、v-ingは日本の教室でいわれることの多い目的格補語となる現在分詞、に対応するものでしょう(教材では、SVOCなどといった記号が付けられがちな動詞型です)。
この用例は、旧版では見られなかったもので、日本の学習者にとっては歓迎すべき改訂と言えるかもしれません。

三例目では目的語がthat節ですから、

  • 定義文にあるような、単なるsomethingではなく、「ことがら」を表していて、[4]の語義に分類すべきではないのか?

という印象を持ちますが、文定義の接続詞が Ifではなく when である、という「縛り」が、この用例をこの[1] の語義に留めておく鍵なのかもしれません。

[2]
[V n] Mick wants to see you in his office right away.
[V n] You need to see a doctor.

どちらも「目的語」として名詞句をとるのは同じで、その名詞が「人」であることも同じですが、二例目のseeを「会う」という日本語で理解する学習者はほとんどいないだろうと思います。「(どこか)具合の悪い(であろう)あなたと、医者とが顔を合わせる」機会というのは、「診療」や「治療」に関わる行為でしょうから、日本語の慣用から適切な理解や表現としては「医者に見てもらいに行く」とでもなるところでしょう。

[4]
[V that] I could see she was lonely.
[V wh] A lot of people saw what was happening but did nothing about it.
[V n v-ing] You see young people going to school inadequately dressed for the weather.
[V] My tastes has changed a bit over the years as you can see.
[be V-ed to-inf] The army must be seen to be taking firm action.

「ことがら」を目的語にとる用法での seeの語義。この項目は、旧版でもあまり上手く整理されていなかったように思いますが、第9版ではどう扱われているでしょうか?

一例目のthat節、二例目のwh-節とも、いわゆる「名詞節=ことがら」ですから、問題はないでしょう。
三例目の [V n v-ing] の nは目的語の名詞句、v-ingは、いわゆる「目的格補語」としての現在分詞ということです。
ここで気になるのは、
[1] の語義に配されていた用例、

  • [V n v-ing] I saw a man making his way towards me.

と、
この[4]の語義に配されている、

  • [V n v-ing] You see young people going to school inadequately dressed for the weather.

とでは、見た目の動詞型は同じでも、「語義」が異なる、ということになります。
その場合の、「語義の違い」を学習者が本当に理解できるか、という疑問が浮かびます。ここでも、最初にあたえられた「文定義」の whenとif の違いが鍵なのでしょうか?
何らかの補足、補助線が必要なところだと思います。

四例目の記号が [V] だけ、というところが気になりました。これは「目的語などをとらない」 という理解でいいのでしょうか?ここでは、関係詞的な使われ方をする as に続く節ですので、seeは言い切って終わりというわけではありません。その次の部分に来るべき「理解する内容」を先取り/抽出して as で括りだしているわけです。この記号 [V] を適切に処理するためには、この語義のseeを理解するだけではなくて、as の用法が分かっていなければならないということです。COBUILDが、いくら「生きた英語」しか用例として使わない、といっても初学者にはちょっと負荷が強すぎると思います。

五例目の [be V-ed to-inf] はここで初めて取り上げました。
受け身であることはすぐに分かると思いますが、V-edとVが大文字になっているところに注意して下さい。
このエントリーで扱う動詞そのものが受け身になっている例ですので、当該の動詞は大文字のVで表します。そして、過去分詞が後続するのではなく、その当該の動詞が受け身の環境で使われることを示すのに、 be V-edの記号が使われます。後続するのは、to-inf いわゆる「不定詞」であることに注意が必要ですから、ここに記号を配していることは頷けるものです。

能動態であれば、[V n v-ing] という動詞型で使われる語義だということは三例目でわかっているのに、その語義に対応する受け身では、v-ingではなくto-inf と「不定詞」を必ずとる、と理解してもいいのでしょうか?頻度が高いものを選んで載せている、ということでしょうか?
この部分に関しては、何も情報が与えられていません。

日本で使われている教材では俗な言い方ですが、「知覚動詞のSVOCの文型」というような項目立てで、焦点が当てられて扱われているのではないかと思います。

『ウィズダム英和』(三省堂)では、次のような語法注記を加えています。

私は彼が通りを横断する [横断している]のを見た
I saw him cross [crossing] the street.
((1) cross は私が見たときはほぼ横断していたことを、crossingは横断している途中にあったことを含意する。(中略)。
(3) 受身では He was seen to cross [was seen crossing] the street となるが、前の方は「誰かに見られた」、後の方は「話し手が目撃した」の意)

COBUILDではこのような文法・語法上の補足説明はありませんし、ここで引用したような用例の対比で、語義・文意 (含意?)の違いを示すこともないように思います。

日本の教材で学んでいる場合に、この see の語義で、

  • 受け身では「to のついた不定詞」となる。

というところは多くの人が理解できているでしょうが、

  • では対応する「能動態」では、原形ではないのか?

という疑問の浮かぶところです。第9版の seeのこの語義には、原形をとる用例は示されていません。

では、COBUILDの第9版では、知覚動詞の能動態で V n に続く語が原形になる例はないのでしょうか?
いえ、あるのです。しかもかなり平易な例で。

  • I saw him do his one-man show in London, which I loved. (one-manのエントリー)
  • I saw him take off his anorak and sling it into the back seat. (slingのエントリー)

どちらも、目的語の後には動詞の原形=infが続いていますから、 [V n inf]で表すことができる動詞型ですが、このパターンは、肝心の動詞seeの項目には示されていないのです。
使用頻度が低いのであれば、他のエントリー (上記、one-manやsling) の例文としても適切さを欠くように思いますが、どうしてこのような扱いになっているのか、編集のさじ加減が私にもよく分かりません。

seeの語義の中では、慣用度が高いと思われるものを取り上げます。

[12] VERB
If you see that something is done or if you see to it that it is done, you make sure that it is done.
[V that] See that you take care of him.
[V to it that] Catherine saw to it that the information went directly to Walter.

「ちゃんと…するようにする;…であるようにする」という、私が「ちゃんとちゃんと系」の動詞と呼ぶものです。しかも定義には、「ちゃんとちゃんと系」のもう一つの代表例である make sure that節が使われています。この make sure の方も、多くの学習者は「確かめる」という訳語で覚えがちなので、この定義で、日本の学習者が的確&適切な理解ができているかは甚だ疑問です。

that節中の動詞の時制が現在形、または過去形であることに注意が必要な表現で、「受験に頻出」などと言われたりもするようですが、日本の学習者の習熟度は余り高くないと思われる表現で、何か「補助線」が欲しいところです。しかしながら、COBUILDのこの文定義と記号からだけでは、この表現を使う際の節中の時制など、「留意点」は見えてこないようにも思います。

形式主語の it (同様に、形式目的語に相当する it)自体を項目立てて記述していないのが、第9版の文法語法の扱いですから、この2例目の [    ] 内にある、 to it という語句の働きはよくわからないまま、「定型表現」として覚えることになってしまうのでは、という危惧を覚えます。

that 節を見たついで、ではありませんが、次は、suggestにどのような形が続くかを見てみましょう。日本の英語学習者にとっては、試験でもお馴染で、重要な項目という認識が強いことでしょう。

suggest
[1] VERB
If you suggest something, you put forward a plan or idea for someone to think about.

[V n] He suggested a link between class size and test results of seven-year-olds.
[V that] I suggest you ask him some specific questions about his past.
[V + to] I suggested to Mike that we go out for a meal with his colleagues.
[V wh] No one has suggested how this might occur.
[V with quote] ‘Could he be suffering from amnesia?’ I suggested.
[V v-ing] So instead I suggested taking her out to dinner for a change.

定義文の接続詞はWhenではなく、 Ifです。目的語には人ではなく、somethingと「もの」が来ています。

ここで注目すべきは、二例目、三例目、六例目です。
二例目で、that節をとることはすぐに分かると思いますが、肝心なのは、その節中で用いる動詞の形合わせです。この例では、主節のsuggestは現在形ということはわかりますが、節中のaskが現在形なのか、原形(= inf) なのかを示す記号や補足情報はありません。

三例目の [V + to] で、この語義のsuggestは人を目的語にとらないことがわかります。誰に対して、ということを示したい場合には、前置詞のtoを使う、という記号です。重要なのは、この三例目のthat節の扱いです。主節の suggested が過去形であるのに対して、that節中では goという形が用いられています。これは原形ということでしょう。であれば、先程の二例目の節中のaskも原形だったのではないか、というように、すぐに頭が働くでしょうか。そう簡単ではないように思います。

六例目、v-ingはCOBUILDでは現在分詞という扱いですが、このv-ingには、日本の教材の多くで「動名詞」として扱われているものも含まれています。
ここでは、taking her out to dinner for change 全体の、このv-ingのかたまりそのものが、「ことがら」を表しているという「読み」がもとめられるところです。

このCOBUILDのv-ingの扱いには、慣れておく(慣れて行く?)しかないのですが、語義とのすり合わせには、多くの学習者が苦労するだろう、とも思います。

insistを見てみましょう。

insist
[1] VERB
If you insist that something should be done, you say so very firmly and refuse to give in about it.
If you insist on something, you say firmly that it must be done or proved.

[V that] My family insisted that I should not give in, but stay and fight.
[V + on] She insisted on being present at all the interviews.

一例目の that節をとること自体はすぐにわかります。では、節中の動詞は?ここでは、助動詞のshould +動詞の原形となっています。先程の suggest のように、原形=infではない、という理解でいいのでしょうか?

二例目ではどうでしょうか?人が目的語にこないことはわかりましたが、前置詞のonに続くのは人でも、ものでもないように見えます。一般的な名詞を直接目的語にとることはなく、ことがらを表すv-ingの形に変えて、前置詞onに続ける、という風に考えればよいのでしょうか?補助線が欲しいところです。日本の教材であれば、insist on + 動名詞というような処理で済ませているのではないかと思います。

かつて (20世紀末)のCOBUILDでは、動詞型にはかなり細かい「下位区分」がありました (書籍としても販売され、今でも中古市場では高値がついているようです。)
私も随分と学ばせていただきました。
その「レガシー」は、こちらに残されています。

THE COBUILD SERIES
/from/
THE BANK OF ENGLISH
COLLINS COBUILD
GRAMMAR PATTERNS 1: VERBS

arts-ccr-002.bham.ac.uk

コリンズ社のオンライン辞書関連のサイトでも、動詞型の下位区分は示されています。

https://grammar.collinsdictionary.com/grammar-pattern/verbs
こちらにもあることはあるのですが、ブラウザの設定によっては広告が煩わしいので、私は上記の「レガシー」版とでも呼ぶべきリンクから入って下位分類を参照することが多いです。

前回のその1、今回のその2で、私が拾った動詞型がどのように扱われているのかを、この下位区分まで辿って読む意欲とヒマのある学習者は稀でしょう。
でも、指導する側の人には、できれば目を通しておいて欲しいと思います。


「その1」同様に、長々(くどくど?ぐだぐだ?)と欠いてきた「その2」ですが、「COBUILDの芸風」に少しは馴染めたでしょうか?
最後に、COBUILDの文定義のうち、これまでに示した3大パターンに加え、もう一つの主要パターンを示して締めくくりとしましょう。

動詞 afford の項を見て下さい。旧版であれば brd-negのラベルが貼られる動詞ですね。

afford
[1] VERB
If you cannot afford something, you do not have enough money to pay for it.

この文定義は、かなり見慣れてきたことでしょう。

次の文定義です。

[2] VERB
If you say that you cannot afford to do something or allow it to happen, you mean that you must not do it or must prevent it from happening because it would be harmful or embarrassing to you.

この定義文を読んで「語義」は十分に理解できたでしょうか?「十分」ってどのような基準に達したら「十分」なのでしょうか?
接続詞は、語義[1]と同じ Ifが使われていますが、その後のSVのV が単なる動作・行動ではなく、sayなどの「発話」に関わる動詞が使われ、その発話の中身として、当該のエントリーの語(語句・表現)が続いているところが大きく違います。また主節との意味のつながりでも大きく異なっており、主節のSVのV にmeanが来ていることが特徴的です。

この If you say that A, you mean that B. という文定義は慣れると、「便利だな」と思えてきます。

  • (あなたが) Aという語(語句・表現)を言うとすると、(そのあなたの)意味する [意図する] ところは、Bということですよ。

というつながりとまとまりになるものです。語義を他の語に置き換えて直接示すのではなく、語義そのものを説明するのでもなく、「あなたの言いたいこと、言わんとしていることは、こういうことなのですよ」という定義の仕方です。

ここで、用例と照らし合わせてみましょう。
[V to-inf] We can't afford to wait.
先程の定義文の、"must not" 「禁止;だめ、ぜったい!」の「意図」が表れている用例です。
私は、「ただこのまま待っているわけにはいかないぞ!」というような「語気」 を感じました。
先程の定義文も、「あなたが、affordできないというときには、あなたの意図は、そうすることがあってはならない、とか、そうはさせておかないぞ、というものですよ」と読むべきで、このaffordを「余裕がある」という訳語で済ませてしまうことがあってはならないと、言われているかのようです。
日本が誇るお笑いトリオの「我が家」のローテーションコントで、「言わせね〜よ!」と杉山さんが突っ込むところまでが、一つのユニットとなるようなものでしょうか。

私:それって、もう「語義」じゃないでしょ?
COBUILD:え?でも、この語をどう使うのか知りたいんじゃないの?

と諭されているみたいで、「語義」命、の私のようなものにとっては、この文定義の仕方は革命的とすら感じられます。

文字通りの意味ではない場合も含めて、語(句)を他の語(句)で単純に置き換えられない場合、発話の背景・理由が複雑な場合に、いったん you mean that 節で落ち着く「踊り場」のようなものを与えて、その後にさらに詳細な内容を続けることがままあります。読む側がmean that節そのものに慣れていないと全く役に立たない文定義なのですが、that節に続いてさらに、接続詞 SV, SV を続けたりすることで、説明の呼吸、リズムを整える効果もあります。
このような、文定義の効能を味わい、

  • 「コウビルドが使いにくい、なんて言わせね〜よ!」

と嘯くだけの余裕はあるでしょうか?

以上、COBUILDの芸風に慣れよう、の「その2」でした。

前回、今回と私が参照した書籍を写真で紹介しておきます。

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借りるなら、「巨人の肩」
過ごすなら、「我が家」
Stay Home
Stay Safe
ですね。

本日のBGM: Monday Monday (綿内克幸)

追記:「物書堂」さんのアプリを使っている方は、こちらの noteの記事(期間限定で無料公開です)も是非お読みください。
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