Don't cry before you are hurt.

最近のツイッターのタイムラインでのやり取りで面白いものがあったので、その再録から。
こういうのは

  • 備忘録
  • 忘備録

のどちらが正統?

始まりは四軒家忍先生の投稿でした。

小さなことだけど、このようにbeforeが使えると英語が日本人離れしてきますね。英語と日本語は対照しながら勉強すると発見も多いですね。

元動画とそのキャプションがこちら。

A deer collided with a woman in a North Carolina parking lot before crashing through a laundromat window and running through the store.

私の引用RT。

アプリ辞書の物書堂にブックマークを作って、授業でも用例をすぐに示せる準備はしています。

写真を再録。

四軒家先生からのコメント。

いつものことですが、素晴らしい準備に感服です。

私の関連ツイート。

関連項目のブックマークのフォルダーを上に引っ張ってきました。
物書堂内の用例では、
followingとfollowed by
に比べると、現代英語でのprecedeの後置修飾(前置詞化)のprecedingの例は多くない印象。

こちらの写真も再録。



最後の写真の冒頭に見られる辞書の用例のように、具体的な名詞に後置修飾のように preceding が続く

  • 名詞A preceding 名詞B

のパターンでは、名詞Aには時の単位となる名詞がくることが多いというのが、普段ニュース英語に親しんでいる私の実感です。


元の投稿の beforeの話しに戻すと、その後、このようなコメントがつけられていて、興味を引かれました。

「BしないうちにA」の登録もいいですね。一連の手順・出来事を表すA followed by Bを論文でよく使いますが、before はBが実際に行われたことまで保証しないのでThe experiment was stopped before the temperature reached 80°C.(温度が80℃に達する前に実験を中止した。)という表現に使えます。

私が授業でbeforeを扱うときに長年使っている用例に次の英文があります。

The classroom had been unlocked before I tried to.
私が開けようとする前に、その教室の鍵はもう開いていた。

before節で過去形の “before I unlocked it” を使ってしまうとおかしなことになる例ですね。

先のツイートで例示されていた、「実験での温度上昇」 の例と合わせて考えると、良い教材になると思ったので、いくつかの生成AIに訊いた回答を元に、Claudeとやり取りをしてみました。

私の入力

英語のbeforeでの前後関係と、事実確認での質問です。
1. The classroom had been unlocked before I tried to.
私が開けようとする前に、その教室の鍵はもう開いていた。

2. The experiment was stopped before the temperature reached 80°C.
温度が80℃に達する前に実験を中止した。

1では、私は実際にunlockしていないのですから、beforeの節に、I unlockedと過去形の動詞を使うのは不自然に感じるけれども、2. で温度が80度には達していないのに、reachedという過去形が来ても不自然に感じないのではどうしてでしょうか?

これに対して、各種生成AIはいろんな解答をよこしてきました。共通点が見いだせる部分と、的外れ、極論というものもありました。生成AIからの回答全てを再録するだけで十数ページになってしまいますから、問題のありそうな回答のみを一覧でまとめておきます。

1. before節の過去形は、その出来事が実際に起きたことを主張しません。
過去形は「過去の時間枠の中に置く」ための形式にすぎません。実現したかどうかは、文脈と主節との関係から推論されます。言語学では、before節の読みは次の3つに分けられます。

例文2の reached はこの非事実的(または反事実的)な読みに当たり、標準的な英語です。GPT系の回答が指摘しているとおり、「80℃に達しなかった」は文の主張ではなく推論です。厳密には、中止後に余熱で達した可能性までは否定していません。

2. 生成AI各回答の問題点

3. では、なぜ例文1 の unlocked だけ不自然なのか
主な理由は次の2つです。

(1) 既定の読みが「事実的」になり、主節と矛盾する
before節は、特別な手がかりがなければ「実際に起きた」と読まれます。
The classroom had been unlocked before I unlocked it.
この文は「すでに開いていた → その後、私が(開いている鍵を)開けた」と読まれます。unlock は「施錠状態から解錠状態への変化」を前提にする動詞なので、ここで矛盾が生じます。

(2) 非事実的に読ませる手がかりが弱い
例文2では、温度上昇は放っておけば進む自然なプロセスです。主節の「中止」がそれを止めたという阻止の関係が明白なので、聞き手は自然に「達しなかった」と読みます。
一方、例文1の「私が開ける」は話者自身の意図的な行為です。英語では、自分の行為が先回りされて実現しなかったことを言うとき、過去形をそのまま使うより、次のように表すのが普通です。
…before I could (unlock it).
…before I got the chance to.

4. 元の文1 はなぜ問題ないのか
The classroom had been unlocked before I tried to.
try は「試みた」ことだけを表し、成功を含みません。試み自体は実際に起きているので、事実的な読みのままで何の矛盾もありません。つまり、tried は2の reached とは違い、非事実的な用法ですらない、ごく普通の過去形です。

結論
過去形自体は、実現しなかった出来事にも使えます。 これは1でも2でも同じです。
2 が自然なのは、主節(中止)がbefore節の出来事(到達)を阻んだ関係が明白で、「達しなかった」という読みが自然に導かれるからです。
1 で unlocked が不自然なのは、既定の「実際に開けた」という読みが「すでに開いていた」と衝突し、しかも非事実的に読ませる手がかりがないからです。未実現の自分の行為は before I could で表すのが定番です。
元の before I tried to は、実際に起きた試みを指すので、そもそも問題が生じません。
質問者の「1では I unlocked は不自然、2の reached は自然」という直感は正確です。ただし、その違いを生んでいるのは時制ではなく、主節とbefore節の関係から読み手がどう推論するかです。

さて、ここまで読んだ皆さんは、このClaudeの考察をどう評価するでしょうか?

beforeの実例をいくつか補充して、本日はお終い。

"I still remember, to this day, the almost tangible amount of shame I felt when I realised how lame it was to be acting the way I was – that I had hatred for women because I felt as if they had rejected me before I even tried," he shares.
www.indy100.com

「自分のあんな振る舞いがどれほど情けないものだったかに気づいたとき、手で触れられそうなほどの恥ずかしさを感じました。あの感覚は今でもはっきり覚えています。まだ何もしないうちから女性に拒絶されたような気がして、そのせいで女性を憎んでいたんです」と彼は語る。

例文1とは逆で、実際には起きていない出来事を指していることに注意。even (…すらしないうちに) と、as if they had rejected me (拒絶されたかのように感じた) という文脈から、「彼は女性にアプローチすらしていなかった」と読めます。過去形でも未実現の出来事を表せるという、これまでの考察の典型例といえるでしょう。

Before I even tried the supermarket's instant coffee, the similarities between the German grocer's instant Americano and Nescafe's Azera are hard to ignore. They even have the same coloured design, so I was intrigued to see if this translated to taste.
www.dailyrecord.co.uk

そのスーパーのインスタントコーヒーを実際に飲んでみる前から、このドイツ系スーパーのインスタント・アメリカーノとネスカフェの「アゼーラ」が似ていることは、どうしても目についてしまう。パッケージの配色まで同じなので、味まで似ているのかどうか、俄然気になってきた。

前の文とは逆で、ここでの tried は実際に起きる出来事です。筆者はこのあと実際に飲み比べており、これは記事が試飲レビューであることからも明らかです。同じ before I even tried でも、前回は「何もしないうちから(結局していない)」、今回は「飲んでみるより前の段階で(このあと飲む)」と読みが分かれます。過去形かどうかではなく、文脈が実現・未実現を決めるという点で、これまでの考察とぴったり重なる好例です。

本日のBGM: 忘れる前に (Vaundy)

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ドンガ〜ドンガラガッタ!

相次ぐ訃報。
作家

  • 村上龍
  • 小林信彦

では、特に小林信彦ロスが大きかった。
それに続いて、今日、漫画家

  • ちばてつや

の訃報が。
(以上、敬称略)
出講先の定期試験の採点をしなければならないのだが、やる気以前に、元気が出ない…。

子どもの頃から読んでいたのはちばてつやの漫画。
最も有名な作品としては『あしたのジョー』になるのでしょうが、私が一番好きだったのは

  • 『おれは鉄兵』(1973年-1980年; 少年マガジン連載)

でした。
学園ものの先鞭としては

  • 『ハリスの旋風(かぜ)』(1965年-1967年; 少年マガジン)

がありましたが、流石に連載時の記憶はなく、アニメ版で(それも恐らくは再放送)で楽しんだのだと思う。
主題歌を今でも口ずさめるから。(ヒロインのおちゃらが、その後、『キャンディキャンディ』のキャンディになって驚いたのでした。声優は松島みのりさん)。
もっとも、『おれは鉄兵』『ハリスの旋風』のどちらの作品も、ニュースでは代表作になっていないでしょうけど…。

今回ロスの大きかった小林信彦のことを知ったのは大学に入ってから。
中原弓彦作品でその面白さを教えてくれたのは大学の同期のI君。
そこからどちらかというと小説よりはエッセイやコラム、レビューに親しんできました。
なぜか書棚に『日本の喜劇人』が見当たらない。
新潮時代と文春時代から数冊。


改めて合掌。

気分一新、というわけではないのだけれど、10月で会期の終わる展示を二つ見に行きました。

ワールドワイド活版印刷 Worldwide Kappan
ichigaya-letterpress.jp

市ケ谷の活字館の企画展で世界の活版印刷の歴史と実例を観察。
製本に至る緊張感が違いますね。
あの「タワー」の活字の実物を見られて感激でした。
大学生か、専門学校生か、見学ツアーがちょうど入っていて、スタッフがついて巡回していたので、それにところどころ紛れて解説に聞き耳を立てていました。
これがタワー!



この「文字によるタワー」で何か想起しませんか?
そう、私の授業実践「副詞節マッチング」のハンドアウトですね。

もう一つの展示は「組版」。

藤原印刷の展示【組 版】


www.instagram.com

生憎の雨で、お昼に着いた頃が結構な降水量。
すずらん通りのブックフェスティバルの出店も次々と店をたたみ始める展開。予定より早めに藤原印刷の「組版」の展示へ。


先日の活版に続いて、「本づくり」の奥深さを実感。
本っていうのは、確かにいろんな人の手がかかっているのだけれど、著者、執筆者の手による「ことば (=本文の内容)」、だけでなく、その「ことば」の「見え方」「見せ方」を決める、左右する、装丁、組版や活字も重要だということを強調しておきます。

ツイッターで呟いたら、藤原印刷さんの公式アカウントが反応してくれていました。深謝。

予約したのはこちらの図録。

fujiprint.theshop.jp

届くのは来月かな。楽しみです。
この藤原印刷の「組版」の展示で、一点気になったのは

  • パネルでの印刷提示


この印刷ではパネルの縁の余白が殆どありません。私はこの「キワ」にある文字が物凄く読み難くて、落ち着かないのです。
これは制作側の「組版」での演出意図なのか?
パネルの大きさの制約下で最大のポイントで最多の文字数を入れたかったのか?
「組版」の企画展だけに、気になるのでした。

本日はこの辺で。

寝る前にこちらを再読しようと思います。

本日のBGM: don’t know why (Jesse Harris & the Ferdinandos)

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You had to be there.

前回の記事で、書籍の紹介をしていました。
最近は、もう「啓蒙」というような意識はなく、ただ、自分が読んだもの、読んでいるものを、再読を含めて紹介しているだけです。
過去ログでも、新刊に言及することが多いとは思いますが、かつて「絶版先生」と呼ばれたこともある私ですから、万人が読むべき本、などという価値観で書いているわけではありません。

今読んでいる本も、もう1年ほど前にでたものなので、一般には「新刊」という印象は薄いかも知れませんが、個人にとっての初読には新旧の差はそれほど大きな意味を持たないので。

山内 昇/大名 力 著 『コーパスと語用論研究』 ひつじ書房 (2025年10月31日)



私自身、LOBコーパスの検索結果を書籍で拾っていた1980年代の終わりから、授業で使うハンドアウトやスライドで、COCA系のオンラインコーパスやGoogle BooksのNgram Viewerでの検索結果を示している現在まで、それなりに丁寧に活用してきたつもりだったのですが、上掲の目次の写真で概要が分かるであろう第3章、第5章、第7章の指摘内容には、自分の日々の取り組みを考え(直)させられました。

  • 時代はコーパスの利活用から、生成AIの利活用へ

などと嘯く人もいるようですが、「コーパスの利用」でこれだけチェックしておかなければならないのですから、安易に生成AIに頼り、その出力を受け入れるのは考えものだと、しみじみ感じています。

英語教育の某月刊誌でも「書評」のコーナーがあると思うのですが、この『コーパスと語用論研究』は新刊書評では取り上げられなかった模様。

2026年11月号の特集は前回の記事でも言及したように「英語教師のためのブックガイド」だったわけですが、そこでも取り上げる人はいませんでした。

ソーシャルメディアでは出版直後の2025年11月のこちらの連投で、この本の持つ意義が語られていると思います。

大名先生ご本人のツイートでも、つい先日、紹介されていました。

上述の某雑誌の新刊書評では、

  • Bookshelf

と題された頁で、4冊(恐らくは新刊)が取り上げられ、それぞれ別の評者が書いています。

そのすぐあとには、

  • Check out new titles

という新刊書を取り上げる頁があり、一人が4冊を評しています。

もう少し後ろには、

  • 海外新刊書紹介

という頁があり、評者は一人。ただし、1冊に1頁まるごとを使っています。

この「海外…」は分量もたっぷりあるので、ただ褒めるのではなく、それなりに深い考察がされることが多いのに対して、上述の和書の書評では、どのように書籍と評者を選んでいるのかは分かりませんが、

  • 良い書評 < ヨイショ評

という印象を持っています。

ツイッターでは何度か叫んでいましたが、大衆音楽関係の月刊誌の『ミュージックマガジン』(ミュージックマガジン社)での長年の連載企画である

  • クロスレビュー (cross reviews)

を新刊書でしてみたらいいのに。


過去ツイの一つもこちらで再録。

新刊書を複数取り上げるなら、1冊を複数の評者がレビューをすることで、誰に向けて、どんな響き方をする本なのかがもう少し明確に見えてくるだろうと思います。
話題の本も、読む人によってはネガティブな評価になる、ということが可視化されることにも大いに意味があると思うのですね。
まあ、実現はしないと思いますが…。

  • 本の紹介

といえば、9月末のこのイベントについて、こちらではまとめていませんでしたね。

2026年9月27日 @坊主バー
青谷優子 英語朗読ライブ Tales from Japan

人生初荒木町で青谷優子さんの日本文学の英語朗読会へ。
本編の英語朗読は故ジュリアン・カーペンターさん追悼。彼女の英訳の素晴らしさもあらためて実感。

懇親会は坊主バーで。
懇親会の企画でもあったオススメの本の交換会で私が持参した絵本はじゃんけんで争奪になったのですが、これをバーのお手伝いに来ていた青谷さんの娘さんが勝ち取り、事実上青谷さんのものに!

Neil Gaiman の作品で2010年の絵本。

  • Instructions

イラストは Charles Vess
ナラティブの冒険譚なのに、ほぼ全て命令文 (instructions)で語られるというお話で、英文ライティングの指導でテクストタイプの話しをする際によく引き合いにだしていました。
Gaiman本人の朗読がYouTubeにも上がっているのですが、このInstructionsに従うかのように先へ先へと進みページを繰る楽しさはやはり、動画ではなく実際の「本」の方がオススメなので、この本にしました。

話しはそこでは終わりません。
なんと、即興で青谷さんが朗読をするという貴重な体験をすることとなりました。
この朗読、解像度は低いのですがiPadで録画したものがあるので、青谷さんからの許可を得て公開します。じゃんけん争奪戦で写り込んでいる皆様、ご容赦下さい。

youtu.be

本日はこんなところで。

本日のBGM: You were meant to be (Renee & Friends featuring Glen Phillips)

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秋の夜長にDusty Springfield

今日は書籍の紹介等、推し活ネタを簡潔に。

ツイッターでも書影をつけて呟いていた、こちらの本から。

高田裕美・澤田憲 
『見え方の困り事ってこういうことだったのかドリル』(時事通信社)
で扱われている
「レイアウト問題」

拙ブログでも「見え方/見せ方」を取り上げましたが、英語教育界に限らず、強者は「困り事」に鈍感なことが多い。この本は、自覚の有無に限らず「強者」こそ読むべきかと。

書影等、再度紹介。

見え方の困り事ってこういうことだったのかドリル | 奥村智人, 高田 裕美, 澤田 憲, 奥村智人 |本 | 通販 | Amazon


今年の6月下旬に出版されている本ですが、私も手に取り読むまでに随分時間が掛かりました。私の専門分野としては必読の書だという評価をしているのですが、大修館書店の月刊誌 『英語教育』の11月号の特集

  • 『英語教師のブックガイド』

では、誰も紹介していませんでした。
唯一、特集の寄稿者で、この本の著者の一人でもある高田裕美さんがご自分の記事の欄外で言及していただけです。
まあ、この業界はそういうもの、そういうことなのでしょう。

心ある人に一人でも多く、この書が届いて欲しいと願っています。
拙ブログ過去ログでは、

tmrowing.hatenablog.com

や

tmrowing.hatenablog.com

で取り上げた「見え方/見せ方」の内容と通ずるものですので、この機会に拙ブログも再読をよろしくお願いします。

出講先は定期試験の季節なので、作問祭りでエネルギーを使っていました。

  • より良い英語で、より良い教材
  • よりよい英語で、より良いテスト

という視座は変わりません。

推し活その1、としては、綿内克幸さんのビクター時代のレア物配信記念のライブで吉祥寺まで。
今回はバンド編成。
1990年代からずっと聴き続けているアーチストの一人ですが、ファーストアルバム当時にレコーディングやライブでサポートしていたメンバーが健在で何より。綿内さんの郷里の長野県から古い友人も多く駆けつけ、家族もフロアーにいて、暖かい雰囲気に包まれた感じでライブは進んで行きました。

その2、としては、バスケットボールのWリーグ、ユナイテッドカップを配信で。
私の推しは、今季ENEOSサンフラワーズに移籍の今野紀花選手。
私もネーム入りのユニフォームのレプリカ着用で画面に向かいました。

気になっていたプレイタイムも、半分の20分どころか、30分に迫ろうかという長時間。
二試合とも二桁得点で勝利に貢献。ファイナルステージに駒を進めました。
今月末にはレギュラーシーズンのリーグ戦も開幕します。
今、乗りに乗っている今野紀花選手ですから、とにかく怪我なく活躍してくれることを祈っています。来月の試合は見に行けるといいなぁ…。

本日はこの辺で。
本日のBGM: 私のベイビー (綿内克幸)

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タヨリナイノハヨイタヨリ?

8月の千葉豪雨、9月の台風25号と続いた被害で、心身ともに疲れていたからか、ブログを更新する元気が出ませんでした。
そんな状態でも、仕事は仕事ですので、出講先の高1の「論理表現」に当たるコマでは、ライティング課題として、「お弁当描写説明課題」をアップデートして実践してみました。

何のことはない「描写と説明」のライティング課題です。
カラー写真で見れば分かる素材感、質感が、モノクロ写真では劇的に損なわれ、それが何の料理であるかも含めて「ことばでの説明」という補助線を必要とすることを逆手に取って課題としています。(イマドキのソーシャルメディア投稿でalt属性の指定を記述することに近いと言えるかもしれません)

例として、お弁当ではありませんが、次の写真を見てください。
それぞれどんなスイーツだと思いますか?


上の方は易しかったと思いますが、下の方は結構難題で、カラーであっても考えるものになるかと。

上は「ほぼ完熟のあまおうを贅沢に使った雪餅」、下は「和栗をペーストにしてマスカルポーネを合わせたマロンクリームの雪餅」です。
特に後者では、素材感、質感が激変することもあり、モノクロ写真では伝えたいことを十分に伝えられず、心許ない、頼りないということがわかってもらえると思います。

ということで、ことばでの補足が必須な「お弁当課題」再訪。
丁度、教科書でターゲットとしている文法項目が「分詞」になるところで仕掛けたのは、過去の実践と同じですね。

過去ログではこの辺りで紹介しています。

tmrowing.hatenablog.com
tmrowing.hatenablog.com

もう13年も前の高1にやってもらっていたことを、今の生徒にやってもらっています。
当時は私が教室に行って一人一人のお弁当の写真を取り、そのカラー写真とモノクロ出力したプリントを配布していたのですが、今回は写真の撮影とモノクロ加工は生徒に任せました。
スマホの普及の度合いが違いますからね。

現在の生徒作品やA4で9枚のハンドアウト+提出用ワークシートの全てをお見せすることはできませんが、こんな手順で取り組んでいるのだという、大まかな流れを紹介しておきます。


以下、諸々の名称が続きますがカットで。


ここも諸々が続きます。


ここも諸々続きますが、学食のない高校や、中学校ではピンと来ないかも知れません。

次からが、文法を身体知に落とし込むところでしょうか。

この「味・食感」も一部のみ抜粋です。


調理法、加工のプロセスも含めて、所謂「過去分詞」(=-ed/en形)や分詞形容詞の出番が増えます。前置後置も狙いをもって選択。

これらのリソースを精査して、以下の手順でライティングに取り組みます。


モデルとして示すのは、13年前の作品。英文で不適切な個所は修正を施しています。

もし、追試してみたいという興味関心のある方はご連絡下さい。

本日はこの辺で。
本日のBGM: Good News (Mari Wilson)

open.spotify.com

2026年10月11日追記:

早稲田大学公式サイトの少し古い記事ですが、白黒写真をAIを使ってカラー化する技術を紹介しています。
この技術で色が付与されることによって「情報量が増える」と期待されているのだと思います。
私の「お弁当描写説明課題」は、この逆の処理をわざわざやって、「情報量を減らす」ことによって、ことばで補わざるを得ないようにしていると思ってもらえればいいかと。

www.waseda.jp

"Does anybody care?"

  • 台風一過。

というと打って変わっての青空などをイメージしがちですが、今回の台風25号が通り過ぎたあとに県内で明らかになった被害は、8月の千葉豪雨よりも大きいかもしれません。前回の記事の危惧が現実のものとなった感じ。

不幸中の幸いで、家屋も家人も(猫2匹を含む)無事でしたが、私も心身ともに疲弊しました。
一撃のボディブローに耐える強靭な体躯、腹筋があっても、それが繰り返されると…。
停電で携帯の中継局もダウンし、インターネットもスマホもつながらず。JRは運休。バスを乗り継ぎ、いつもの倍以上の時間かけて「平時のような街」まで出て行き、カフェでタブレットのPCを充電しつつネットにつなぎ、連休の予定を全てキャンセル。帰路は帰路でバスの便が来ず、通行可能な道路も停電で交通信号が消えている辺りでは渋滞し、往路のさらに倍の時間で帰宅した頃にはもう日も暮れようとしていました。
あとは明るいうちにご飯を食べて、ロウソクの明かりで酒呑んで寝るだけ。


さて、
先日、日本の某女子トップアスリートが「食事」について語っている中で、「グルテンフリー」の食生活を取り入れている、という部分が印象に残りました。

この「グルテンフリー」はメディアで話題になってから、もう随分経つと思いますが、私が初めて意識したのはプロテニスプレイヤーのノヴァク・ジョコビッチ選手の躍進の背景に、この「グルテンフリー」の食事があったというエピソードでした。その後、現在MLBで活躍している大谷翔平選手の事例が紹介されたこともあり、日本のアスリートだけでなく、一般人にも広まっているような印象です。

私の理解では、小麦アレルギーや非セリアックグルテン過敏症などが認められないアスリートでは、「グルテンフリー」食がパフォーマンスを向上させる効果は明らかではないというものです。

最近の論文だとこちらを読んでいます。

www.frontiersin.org

比較的近年のものだとこちらなど。

https://journals.humankinetics.com/view/journals/ijsnem/29/2/article-p236.xml

www.researchgate.net

www.mdpi.com

pmc.ncbi.nlm.nih.gov

風評に流されず、まずは自分にアレルギーなどがあるのかを調べることから、ですかね。

ということで、今日の気になる語法は

  • “-free”

の複合語の語形成。

上記「グルテンフリー」は、英語の表記でも

  • A gluten-free diet

のように、ハイフン形容詞で名詞の修飾が出来ますから「グルテンフリー食」という日本語や、「グルテンフリーダイエット」というカタカナ語は日本語としても適切で、元になる英語に照らしても妥当な例と言えるでしょう。

シュガーフリー (sugar-free)
ストレスフリー (stress-free)
バリアフリー (barrier-free)
デューティーフリー (duty-free)
タックスフリー(tax-free)
ハンズフリー (hands-free)
アイズフリー (eyes-free)

などは、<名詞A+ハイフン+形容詞 free>で「Aのない状態」を表すものです。
英語ではこの語を形容詞として、名詞の前置修飾として用いられますが、日本語では名詞との結びつきのこなれ具合によって、補足説明が必要になることがあります。

  • sugar-free yogurt (無糖のヨーグルト)
  • barrier-free access (バリアフリー対応施設)
  • eyes-free fitness (視覚に頼らず利用できるフィットネス)


最近気になってしょうがないのが、日本のバスケットボールのプロリーグであるB リーグで、選手登録や試合での出場制限のルールとして用いられている

  • オンザコートルール
  • オンザコートフリー

ということば。
そしてその合体の

  • オンザコートフリールール

という複合語です。

Bリーグのチェアマンである島田慎二氏のnoteにも「オンザコートルール」「オンザコートフリー」ということばが当たり前のように出てきます。

B.革新 オンザコートフリー論について
note.com

今シーズンのBリーグの規則の改訂で、チームの選手登録で、「外国籍選手」は3名、「帰化選手又はアジア枠選手」はどちらか1名が可能で、試合でコート上に経つ選手5名のうちの「帰化ではない日本国籍選手」以外の選手の同時出場の人数制限がなくなったことを「オンザコートフリー」と呼んでいるようなのです。

Bリーグの公式サイトでも、「オンザコートルール」「オンザコートフリー」ということばが使われています。

ロスター・オンザコート
www.bleague.jp

私の違和感と、その背景をまとめてみました。

英語の語形成として見ると問題の種類がそれぞれ違います。
島田チェアマンの記事の用法では、「オンザコートルール」は外国籍選手が同時に何人コートに立てるかの規定、「オンザコートフリー」はその同時出場の制限をなくすこと、という意味です。
以下、この意味を前提に整理します。

1. オンザコートルール (? on-the-court rule)

形の上では、英語にも "on-the-job training" のように句を名詞の前に置く複合語があるので、ハイフンを入れた "on-the-court rule" は文法的にはあり得ます。ただし、その場合の意味は「コート上で適用されるルール」、つまり競技規則一般になります。
「外国籍選手」「人数制限」という肝心の要素がどこにも含まれていないので、これでは実態を表すことができません。また、形容詞として使うなら英語では "on-court" のほうがより一般的でしょう。
→ 置き換え案:foreign-player limit、on-court import limit (英語では外国籍選手を "import" と呼ぶのが一般的です)が考えられますが、Bリーグのように「帰化した日本国籍選手」と「帰化ではない日本国籍選手」を区別している場合に、それを英語で説明するのは結構面倒です。

2. オンザコートフリー (? on-the-court free)

英語の複合語や語形成の原理原則から見ると、問題はここが一番大きいように思います。
英語で名詞に後置される "-free" は「〜がない」という意味になります(sugar-free=砂糖なし、tax-free=非課税)。そのため "on-the-court free" は「コート上のものが無い」というような解釈を生じ兼ねず、Bリーグの規則でいうような意味にはなりません。
→ 置き換え案:no on-court import limit、unlimited imports on court、removal of the on-court foreign-player limit 辺りで補足説明するしかないと思いますが、1. の問題は残ります。

3. オンザコートフリールール (?on-the-court free rule)

2の誤りを抱えたまま "rule" を足しているので、「コート上のものが無いルール」という、さらに解釈しにくい形になっています。加えて、「制限を撤廃する」という内容を「ルール」と名付けているため、意味の上でもねじれが生じています。
→ 置き換え案:the no-limit rule for imports、unrestricted foreign-player rule。あるいは制度変更として abolition of the on-court foreign-player limit と表現するのが自然です。

まとめると、1は「文法的には可能だが意味が伝わらない」、2と3は「"free" の働きが英語と逆」という問題です。

英語を理解できる人に説明する場面では、"import" または "foreign player" と "limit" の組み合わせで表現するのが最も誤解がありませんが、なぜ「帰化した日本国籍選手」を「帰化ではない日本国籍選手」と区別しているのかも含めて説明する必要は残っています。

因に、米国のNBA/WNBAには、

米国人を最低何人登録しなければならない
外国籍選手は最大何人まで
コート上の5人のうち米国人を何人含めなければならない

という規則はありません。
帰化によって米国籍を取得した選手と、出生によって米国籍を取得した選手の間に、NBAロスター上の区別はありません。
そもそもNBAには国籍別の選手枠がないので、帰化によって「外国人枠から国内選手枠へ移る」という現象も基本的には発生しません。
女子の日本代表選手である田中こころ選手がWNBAドラフトで指名されて話題になりましたが、ここで使われる international player は、単純に「米国籍を持たない選手」という意味ではありません。居住地、米国外での競技歴、米国大学への在籍などに基づくドラフト資格上のカテゴリーです。
ですから、

  • 1.米国籍を持ちながらも居住地や育成歴で、ドラフト上は国際選手として扱われる選手
  • 2.米国籍を持っていないが、米国の大学を経由するために、通常の大学選手として扱われる選手

も出てきます。
今野紀花選手はルイヴィル大を4年で卒業していましたから、「たられば」にはなりますが、コロナ禍と膝の故障がなければ、2.の可能性があったと言えます。

一方、カナダの国内リーグのCEBL(夏季開催、FIBAルール)には明確な国籍ルールがあります。
アクティブロスターのimportは最大5人、14人の全体ロスターでは最大6人までで、コート上の5人のうち常に2人はカナダ人 (Canadian players) でなければならないとされます。つまり、登録と同時出場の両方を国籍で縛る、Bリーグに近い方式ですが、Canadian player はカナダ市民権を基準として定義されていますから、正式にカナダ国籍を取得した帰化選手も、カナダ生まれのカナダ国籍選手と同じカテゴリーになります。

www.cebl.ca

女子日本代表の馬瓜ステファニー選手が所属していたスペインのリーグ (ACB) は独自の規則を設けています。
ACBの制度は、国籍ではなく「育成」を基準にしている点が特徴的です。
まず、12人のロスターに最低4人の「地元育成選手」(JFL、通称 “cupo”)を含める義務があります。JFLになる条件は、一定の年齢期間にスペインのクラブの下部組織で少なくとも3シーズン過ごしたことです。そのため、スペイン人でなくてもJFLになれます。逆に、帰化やスペイン国籍の取得によってJFLになることはありません。
次に、国籍に関する枠として、EU域外選手(extracomunitarios)は試合登録メンバーに最大2人までという制限があります。帰化の効果が出るのはここだけで、EU圏のパスポートを取得すると「EU域外」から「EU域内」の扱いに変わりますが、それでJFLになるわけではありません。コート上の同時出場人数には制限がありません。
次の記事などが参考になるかと。

www.eurohoops.net

日本のBリーグはカナダに近いといえば近いですが、「帰化選手」規定がある点で“free” と言いつつ、全然自由ではないですね。

英語教育界に限らず、俗に言う「和製英語」を批判したり、カタカナ語と英語とのズレや乖離を指摘する人は多い印象ですが、今日取り上げた

  • オンザコートフリー

のような複合語や語形成での不備が放置されたまま、学校教育の中だけで教師や児童生徒がいくら頑張っても上手くいかないだろうと思っています。
英語なら英語として適切な語を使うべきで、日本語にない概念や制度なら日本語で適切な語を選び補足説明すべきでしょう。
このブログを読む人は限られていますし、通りがかりで読む人も、記事の最後までは読まないことでしょう。
それでも、今日も今日とて警鐘を鳴らし、英語ということばの実態を示すべく、記事を書き残しています。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Shade I’ll never see (Denison Witmer & Sufjan Stevens)

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Is it tipping down again?

台風の影響で、またもや雨。
当地では雨足もどんどん強くなっています。
8月の豪雨被害のようなことがないように祈ります。

今日の英語ニュース引用RTはこの記事から。

fertility rate は「出生率」の意味で用いられている印象。本来は「出生力指標」であって、birth rateとは異なるもの。経年比較や他国との比較の際には、何をその比較のゴールにするかが重要。
an alarming new low 「最低値更新で危機的状況」を表す。a new low「新最低記録」を限定するalarming。

元ツイはこちら。

Australia’s fertility rate will sink to an alarming new low, passing a critical tipping point as people live longer and have fewer children.


DeepL訳:
人々の寿命が延び、出産数が減少するにつれ、オーストラリアの合計特殊出生率は、危機的な転換点を越え、驚くべき新たな最低水準まで低下する見込みだ。

私の更ツイがこちら。

a critical tipping point は「極めて深刻な一大分岐点」。
a tipping point 「重大な分岐点;大きな転換点」をcriticalが限定。

気になる語法/用法は

  • birth rateとfertility rate

の「日本語訳」と「その生息域」です。

辞書の見出し語の語彙項目としては、英和ではどちらも「出生率」を当てているものが多いのですが、少子化対策などで、統計での経年比較や、国際的な比較では、”fertility rate” で、

  • total fertility rate (TPR合計特殊出生率) 

を意味することが殆どでしょう。このTPRは国語辞典でも解説されています。

15歳から49歳の女性の、年齢別出生率を合計した指標。一人の女性が平均して一生の間に何人の子供を産むかを表す。合計出生率。TFR(total fertility rate)。
補説: 平成28年(2016)の日本の合計特殊出生率は1.44。これは、人口の維持に必要な人口置換水準(約2.07)を下回り、少子化が進行していることを表す(数値は国立社会保障・人口問題研究所)。 (デジタル大辞泉)

birth rateの定義は以下の通り。 (Oxford アカデミック)

birth rate
the number of births every year for every 1 000 people in the population of a place

  • a low/high birth rate
  • The war resulted in a further fall in the birth rate.  

両者の決定的な違いはその分母。

  • birth rate(粗出生率, CBR = crude birth rate):分母は総人口。社会全体で人口1,000人あたり何人生まれたかを示す。人口の増減を測る指標。
  • fertility rate(出生力指標, TFR等):分母は再生産年齢(15〜49歳)の女性人口。女性の出産行動そのものの強さを測る指標。

年齢構造の影響を受けるか否かが実務上の最大の分岐点です。
人口置換水準(約2.1)との比較や国際・時系列比較には fertility rate(特にTFR)を、自然増減の算定には birth rate を用いる、と理解しておくのが良いでしょう。

CBRの分母には男性・高齢者・子どもがすべて含まれますから、女性1人あたりの出生数(TFR)が同水準であっても、人口に占める再生産年齢女性の比率が低い高齢社会ではCBRは低く算出されることになります。逆に人口ピラミッドが若い国(すそ野が広い国)では、TFRが2ポイント台であってもCBRは20‰を超えることがあります。

複数国を横並びで比較する場合、各国の統計公表時期が異なるため、全対象国のデータが揃う年次を基準とする必要があります。以下の比較は全5者のデータが揃う2024年を基準年としています。


出典:世界=国連 World Population Prospects 2024/フランス=INSEE「人口動態総括(Bilan démographique)」/オーストラリア=ABS “Births, Australia 2024”/日本=厚生労働省「人口動態統計(確定数)」/韓国=韓国統計庁(暫定値)。
※ フランスのCBRはINSEE公表の出生数と人口から算出した値。他はすべて各機関の公表値。世界のCBRは出典により16.3〜17.0の幅がある。フランスの2024年TFRは公表時1.62であったが、2026年1月の人口動態総括で1.61に改定された(上表は改定後の値)。

当該の記事では、オーストラリアの最低記録更新が危機的だという趣旨でしたが、ここでの数値と、今回明らかになった数値とを比較して、オーストラリアの「危機感」を推測したいものです。
ただし、国際比較で見ると、日本の状況は「危機」を通り越しているようにさえ感じます。

生息域を確認しておきましょう。
birth rate(CBR)を用いる場面

  • 自然増減の算定:分母が総人口で粗死亡率(CDR)と共通のため、CBR − CDR で自然増減率が直接得られる。
  • 人口規模の将来見通し:「人口が増えるか減るか」を論じる文脈。
  • 統計整備が不十分な国の比較:年齢別データがなくても出生総数と総人口があれば算出できる。
  • 国連・世界銀行等の基礎的人口統計テーブル。

fertility rate(TFR)を用いる場面

  • 国際比較・時系列比較:年齢構成の影響を除去しているため、出生行動の変化を直接比較できる。
  • 人口置換水準との対比:2.1という基準と比較できるのはTFRのみ。CBRには対応する基準値が存在しない。
  • 少子化対策の政策評価:施策が出産行動に与えた影響を測る。
  • 都道府県別・自治体別比較:地域間の年齢構成差を除去する必要がある。

英語圏の報道でも “birth rate fell to 0.7” のようにTFRの意味で birth rate が用いられることがあり、混用は共通の現象です。学術論文や公式資料を作成する際は、初出時に必ず指標名を明記すべき、と心得ておきましょう。

当該の記事本文から、学び甲斐のある英語表現を取り上げておきます。

https://www.news24.com.au/politics/australian-politics/australias-fertility-rate-set-to-fall-to-alarming-new-low-new-intergenerational-report-reveals/news-story/fcb87a2ffaf53a17f94cebe2d6649bef

Australia’s fertility rate will fall to an alarming new low over the next 40 years, with the government forecasting the number of children born to the average woman to decline to just 1.34 by 2065-66.
オーストラリアの合計特殊出生率は、今後40年間で驚くべき新たな最低水準まで低下すると見込まれており、政府の予測によると、2065~66年までに1人の女性が産む子どもの数はわずか1.34人まで減少する見込みだ。

ここでの「経過時間」は、経年での推移を表す意図なので、前置詞に “over” が使われていることを確認。
とかく、日本のテストの語法問題では「これからの経過時間」では “in” を求める設問が異常なほど頻出ですが、”in” は経過した先の「点」や、期間を設定する「枠」の中の一点を指すもので、全くの別物。

  • I'll be back in an hour.(1時間後に)
  • It could happen in the next few months. (今後数か月の期間内のどこかで)

上述の “over” が「推移」の表現と共起する例に馴染むことで、理解や運用での柔軟性を増し、体質改善を図りたいものです。

Global electricity demand is forecast to increase at a brisk average annual rate of 3.6% over the 2026-2030 forecast period, supported by rising consumption from industry, electric vehicles, air conditioning and data centres.
https://www.iea.org/reports/electricity-2026/executive-summary
2026年から2030年までの予測期間において、産業、電気自動車、空調、データセンターにおける消費量の増加に支えられ、世界の電力需要は年平均3.6%という堅調なペースで増加すると予測されている。

BLS’ own 10-year outlook, released a week before the August jobs report, projected that the economy will add 5.9 million jobs over the next decade, with employment increasing from 170.3 million in 2025 to 176.2 million in 2035.
www.americanprogress.org
8月の雇用統計発表の1週間前に公表されたBLS独自の10年見通しによると、今後10年間で590万人の雇用が創出され、雇用者数は2025年の1億7030万人から2035年には1億7620万人に増加すると予測されている。

Utah on pace to add 2 million people over the next 40 years, but is growth slowing?
www.ksl.com
ユタ州では今後40年間で人口が200万人増加する見込みだが、その伸びは鈍化しつつあるのだろうか?


最後に、ツイートでも指摘した前置修飾での限定の確認もしておきましょう。
an [alarming + new] + low ではなく、an alarming + [new + low]であるということ。
分詞形容詞が比喩として副詞的に用いられる

  • burning hot
  • freezing cold

とは違うので要確認。

alarming + new + 名詞の結びつきの上位をNOWコーパスから。

上述の “a critical tipping point” も同様の考え方。
記事本文では、複数回 tipping point(s)” が出てきます。

“We’re at tipping points on the things that influence (declining fertility), like housing affordability, economic security, gender equality and climate change,” she said.
DL訳: 「住宅の入手可能性、経済的安定、男女平等、気候変動など、(出生率の低下に)影響を与える要因について、私たちは転換点に立っています」と彼女は述べた。

“We’re at a tipping point on every single one of those matters… We’re standing on the precipice looking over the edge thinking, what are we going to do?”
DL訳: 「これらの問題のすべてにおいて、私たちは転換点に立っています……私たちは崖の端に立ち、その先を見下ろしながら、『これからどうすればいいのだろう?』と考えているのです」

ここでは be動詞に続いて「その状態にある(または「その状態になる)」ことを表していますが、動詞とのコロケーションでは、某学参にある "mark" だけでなく、

  • reach/pass

を押さえておくのが良いと思います。

a tipping pointの辞書の定義。

重大な分岐点
the point at which the number of small changes over a period of time reaches a level where a further small change has a sudden and very great effect on a system or leads to an idea suddenly spreading quickly among a large number of people (OALD英英和)

この定義を見ても分かるように、この語だけで「重大な」に対応する意味を含んでいることに注意。

以下、ODEとMW’sの一般用から。特に、MW’sの定義文にある “critical” に注目。

私がいつも、いつまでもしつこく

  • 語義と生息域

といい続けている背景も少しは実感していただけたのではないかと思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Fortune’s Child (Tot Taylor)

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two of them

今週前半は体調が優れなくて、出講先の授業を何とかやり抜いての週末。
乗り切れたのは「ペットボトル温灸」のお陰。若林理砂先生ありがとうございます。
今回、効いた実感があったツボは「百会(ひゃくえ)」と「中脘(ちゅうかん)」。
こちらの若林先生のサイトなどで確認を。

onkyu.yakan-hiko.com

www.yomeishu.co.jp

今週のニュース英語引用RTで取り上げていた語法の一つ。

The Federal Reserve raised its benchmark interest rate Wednesday for the first time since 2023 in an effort to quell stubbornly high inflation, a move that could spur a sharp response from the White House.

誤字を訂正して私の引用RTを再録。

動詞quellの目的語にinflationがくるのは最近のニュース英語で見聞きするようになった印象。
伝統的には、
抗議行動などに対する権力側の不当な抑圧
の文脈で使われる後 語 だと思うが、inflationが体制側・政策立案側の言うことを聞かない存在と見られていることの表れか。
stubbornly
が効いていますね。

日本関連のニュースではこちら。

shore up (≒ bolster/strengthen; 強化する/支える)のshore は名詞の「(通例傍からの)支柱;つっかい棒」から。
jittery financial markets でjittery (≒ nervous & anxious) が人ではなく金融市場を限定。これもニュース英語で時折見られる形。

Business News はフィリピンのメディア。

BBCでもNYTでもマトモな扱いがないので、欧米基準では余り関心がないニュースのようですが、アジアではどう見られているのか、きちんと把握しておくのが良いでしょう。

関連記事をロイターから。

別媒体関連記事。

signalは人主語で「意向を示す」

元ツイはこちら。

Japan's Takaichi set to signal policy continuity in cabinet reshuffle
https://reut.rs/4yIblbL

こちらのシンガポールのメディアのニュースはロイター依拠。キャプションでも “signal” を使っていました。ツイートの見出しでは “retain” と “key” がキーワード。

Japan PM Takaichi retains key ministers in Cabinet reshuffle

アラブニュースではこんな扱い。andのペアとdespiteの譲歩の論理展開を確認。

Japanese Prime Minister TAKAICHI Sanae retained her key ministers on Thursday in a cabinet reshuffle aimed at solidifying the ruling coalition and advancing a food tax cut despite concerns over how it will be financed.

来週の連休でオンラインの個別指導も一週お休みなので、某密林のプライム会員特典で、久々に洋画を。
十数年ぶりくらいでの見直しと近年の作品とで、この二本でした。

銀河ヒッチハイクガイド (2005年作品)
youtu.be

プロジェクト・ヘイル・メアリー (2026年作品)
youtu.be

比較する意図は元々なかったのですが、二つを見終えて、自分の「ツボ」にハマったのは、やっぱり荒唐無稽でテンポが良く、仕掛けも明確な『銀河ヒッチハイクガイド』の方ですね。小説の日本語訳もテンポが良かったので、恐らく、吹き替え版でも活かされているのでしょう。

荒唐無稽な映画の典型例としては、

  • 『フラッシュゴードン』 (映画は1980年作品)

に対する、ポルノ版のパロディ

  • 『フレッシュゴードン』(1974年作品)

の両方を(ほぼリアルタイムで)見ている世代というのもあるかも知れませんが、丁度、高市内閣改造で酷い大臣の起用があったことも、荒唐無稽さを意識させるに十分な効果があったかと。

市長として談合で有罪判決を受けた者が、国会に議席を持っていて、今回新たに「規制緩和」などに携わる、

  • 規制改革担当大臣

の座に就くという、まさに「泥棒に法を編ませる」かのような決定。
荒唐無稽というか言語道断というか…。

上述の『銀河…』の小説版の邦訳にはこのような記述があります。

大統領の仕事は権力をふるうことではなく、権力から人の目をそらすことだ。その基準から言えば、ゼイフォード・ビーブルブロックスは、かつて銀河帝国に現れたまず最高の大統領のひとりだった。すでに詐欺で有罪を宣告され、大統領になってからの十年のうち二年を刑務所で過ごしているぐらいだ。大統領も帝国政府も実際にはなんの権力も持っていない、そう気づいている者はごく少数である。そしてその少数者のうちでも、究極の政治権力がどこにあるのか知っているのは六人だけだった。

ダグラス・アダムス. 銀河ヒッチハイク・ガイド 銀河ヒッチハイクガイドシリーズ (河出文庫) (p. 47). (Function). Kindle Edition.

  • ダグラス・アダム .『銀河ヒッチハイク・ガイド』 (河出文庫) (pp. 46-47). Kindle Edition.

オリジナルの該当箇所はこちら。

His job is not to wield power but to draw attention away from it. On those criteria Zaphod Beeblebrox is one of the most successful Presidents the Galaxy has ever had – he has already spent two of his ten presidential years in prison for fraud. Very very few people realize that the President and the government have virtually no power at all, and of these few people only six know whence ultimate political power is wielded.

  • Adams, Douglas. The Hitchhiker's Guide to the Galaxy: The Illustrated Edition (p. 57). Kindle Edition.

選ばれる大臣も大臣なら、選ぶ首相も首相ですね。

本日はこの辺で。

本日のBGM: Vote Beeblebrox (Joby Talbot feat. Neil Hannon)

youtu.be

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ワクワク

推し活のWCロスで,ブログ更新も滞っていました。
今日は通常運転に戻って、「気になる語法」を。

1年ほど前の、このブログの記事で、日常語の window(s) の比喩的な用法を、豊富な実例をもとにまとめていました。

2025-08-26
8月のダイアリー
tmrowing.hatenablog.com

連日の推し活で、FIBAのバスケットボールのワールドカップについてあれこれ読んでいる中で、既に、この分野/トピックでの日常語となっている window の比喩に気づかされたので、こちらで補足し、まとめておきます。

こちらは日本代表の公式アカウント。

NICE SHOT📸ˎˊ˗
FIBAバスケットボールワールドカップ2027
アジア地区予選 Window4より🏀
#TEAMJAPAN のオフェンスが爆発しカタールに勝利!
ロサンゼルス2028オリンピック出場権にも繋がる
ワールドカップ本大会に向けた戦いが続きます。
これからも熱いエールを📣🔥
@JAPAN_JBA

ここでは “Window4” という用語が出てきます。2027年大会予選のWindow4は2026年8月24日〜9月1日で、日本はこの期間にホームでサウジアラビア(8月28日)、カタール(8月31日、123-70)と戦い、2連勝しました。

前回のワールドカップ (2023年)のアジア予選のツイートには “Window6” という用語が出ていました。

WIN👏👏
要所で3Pシュートを決め切り、23点差でバーレーンに勝利!
※日本はグループリーグを3位通過
【試合終了】
🇯🇵日本 95-72 バーレーン🇧🇭
🏆FIBA バスケットボールワールドカップ 2023 アジア地区予選 Window6
#FIBAWC
#AkatsukiJapan

こちらのWindow6は2023年2月23日・26日に高崎アリーナで行われ、日本はイラン、バーレーンに連勝し、2次予選グループFを7勝5敗の3位で終えました(日本は共催国としてすでに本大会の出場権を持っていました)。

どちらの例でも、1つのウインドウの2試合は別々の相手とのホーム2連戦です。「ホーム&アウェー」という言葉から、同じ相手との往復戦を1つのウインドウで行うように思いがちですが、そうではありません。

この点も含めて、これらの名詞 “window” は確かにスケジュールの枠を表すものではあるのですが、少し注意が必要です。

来年、2027年の男子WCの予選(qualification)に関するWikiでの概要説明はこちら。

2027 FIBA Basketball World Cup qualification
en.wikipedia.org

一部を抜粋

Schedule of windows
Similar to the 2019 and the 2023 FIBA Basketball World Cup qualifications, the matches will be held in six windows over a 15-month period across all FIBA regions. 80 national teams will compete during the qualification process. The schedule for the six windows is as follows:

Wikiにはこんな表がありました。

公式球のサプライヤーであるモルテンのサイトにも画像があります。

shop.moltensports.jp


注:Window3の終了日は、FIBA公式サイトとモルテンのページでは7月7日です。「月曜に始まり翌週火曜に終わる9日間」という規定(後述)に合うのも7月7日(火)のほうで、Wikipediaの「8 July」はずれています。

以下、どのようにして、window(s) という用語が使われるようになったのかを整理しておきましょう。

FIBAでいう「ウインドウ(window)」の意味
まず押さえておきたいのは、FIBAの window は報道上の通称ではなく、規則上の用語だという点です。
FIBA内部規則(Internal Regulations)には “International Window Period” と定義された用語があり、代表戦のために国際カレンダー上にあらかじめ確保された期間を指します。
規則の中身を見ると、この期間の性格がよくわかります。
• 選手と契約したクラブは、FIBAカレンダーに載っている代表大会に選手が招集されたとき、その選手を解放する義務を負う(Book 3 第38条)。
• 各国協会は、International Window Period 中に国内1部リーグの試合が行われないようにしなければならない(同 第42条)。
• ワールドカップ予選では、選手はウインドウ期間の全体にわたって代表活動に参加できる状態でなければならない(同 第44条)。

とはいえ、世界中のクラブ活動が一斉に止まるわけではありません。NBAはFIBAの規則の外にあり、11月や2月のウインドウはNBAのシーズン中です。8月のWindow4で八村塁・河村勇輝の両選手がそろったことが話題になったのは、オフシーズンのウインドウだったからです。欧州でも、ユーロリーグとの日程の衝突が長く論争の種になってきました。


2027年ワールドカップ予選の方式は次のとおりです。
• 各ウインドウは、月曜に始まり翌週火曜に終わる9日間(FIBA公式)。この9日間のうちに集合・練習・移動・試合をこなします。
• アジア・米州・欧州:1次ラウンドは4チーム1組。同組の他の3チームとホーム&アウェーで計6試合を、Window1〜3の3つのウインドウで(原則各2試合ずつ)戦います。上位3チームが2次ラウンドへ進みます(開催国カタールと同じ組は上位2チーム+カタール)。
• 2次ラウンドでは1次ラウンドの成績を持ち越し、別の組から来た、まだ対戦していない3チームとさらにホーム&アウェーで戦います(Window4〜6)。
• アフリカ:4チーム×4組の構成は同じですが、ホーム&アウェーではなく、複数チームが1会場に集まる集中開催(FIBAの英語表記では “tournament format”)で行います。ウインドウも5つで、2026年11月のウインドウは使いません。日本語で「トーナメント方式」と書くと勝ち抜き戦を連想させますが、実際は総当たりの集中開催です。

以上がモルテンのページの図の中身を説明したものです。

つまり window は、第一義的には「期間」です。“Window4” は「第4試合」や「第4節」ではなく、「予選日程の4番目の期間(と、そこで行われる試合のまとまり)」を指します。そしてその期間は同時に、選手の所属クラブが選手を代表に出す義務を負う期間でもあります。

クラブ側の負担を和らげる仕組みとして、FIBAは2016年11月の執行委員会で、2017年11月に始まるワールドカップ予選について、ウインドウ中の試合・練習を対象とするスポーツ傷害保険の費用をFIBAが負担すると確認しています。この保険は、代表活動中に負傷した選手について、給与と離脱日数に基づく補償や手術費をクラブに支払うもので、補償には保険契約上の条件があります。


語源・由来
window はもともと、壁や屋根に開けた開口部を指す語でした。ここから「限られた開口部」→「限られた時間帯」という比喩が生まれています。
歴史的な整理としては、Etymonline は “window of opportunity”(1979年)を、それ以前の米国宇宙計画での比喩的用法、たとえば “launch window”(1963年)から来たものと説明しています。なお、これらの年号は「その年までに用例が確認できる」という意味で、その年に生まれた言葉という意味ではありません。
ここから先の「好機の窓」→ ビジネス・スケジューリング用語 → スポーツの代表ウインドウ、という流れは筋の通った見立てですが、Etymonline が直接述べているのは宇宙開発から window of opportunity への部分までです。スポーツの window が launch window から直接派生したことを示す資料は、私には確認できませんでした。「同じ時間の比喩が各分野に広がった」くらいに見ておくのが安全ではないかと。


「窓」を開けるのは誰か?
launch window も代表ウインドウも、「限られた時間だけ開いている開口部」という基本の比喩は同じで、意味そのものは共通のものと言えます。
違うのは、窓を開ける主体です。打ち上げの窓は、天体の位置や軌道といった自然条件によって「開く」もので、人間はそれを見つけて合わせるしかありません。一方の代表ウインドウは、リーグ戦という連続した日程=壁の側に、競技団体が規則によってあらかじめ穴を「開けておく」ものです。そこにしか代表戦を入れない、という運用です。見つける窓か、作っておく窓かの違いになります。このあたりが面白いところです。


FIBAでいつから使われたか?
確認しやすい最初期の公的用例は、クアラルンプールでのFIBA中央理事会が2017年以降の新方式を承認した公式リリース(PR N°20)です。ここでは、ワールドカップの予選期間は2年間にわたり、6つのウインドウ(2017年11月、2018年2月・6月・9月・11月、2019年2月)で構成されること、ウインドウの正確な時期と長さは今後関係者と協議して決めることが示されました。
現在のFIBAサイト上のこのリリースには日付表示がありませんが、カナダのバスケットボール協会による転載(2012年11月12日付)や、Wikipediaが出典として挙げる日付(2012年11月11日)から、2012年11月のものと判断できます。リリース本文には理事会が「土曜日」に決定したとあるので、2012年11月10日(土)の決定とみられます。
その後、方式の詳細が関係者との協議で詰められ、2015年8月の東京での中央理事会に最終案が諮られたうえで、2017年11月の2019年大会予選から実際に運用が始まりました。
なお、これが「FIBAが window をこの意味で使った最初の例」だと断定するには、それ以前の理事会資料や内部文書まで当たる必要があります。ここでは「公開資料で確認できる最初期の例」としておきます。


他競技での用例(window の生息域)
スポーツの window は、大きく3つの型に分けると整理しやすくなります。

• サッカー(代表):FIFAの国際マッチカレンダー。2023年3月に承認された2025–2030年の男子カレンダーは、3月・6月・11月に9日間・2試合のウインドウを置き、2026年からは9月末〜10月初に16日間・4試合の長いウインドウを導入する構成です(2025年は9月と10月に9日間のウインドウを2つ残しました)。2026年の長いウインドウは9月21日〜10月6日です。クラブの選手解放義務は「選手の地位および移籍に関する規則(RSTP)」附属書1に規定されています。FIBAの制度は構造がよく似ており、発表当時の報道もサッカーの国際試合方式になぞらえていますが、「FIFAを手本にした」とFIBA自身が明言した一次資料は今回確認できていません。

• サッカー(移籍):“transfer window” は規則上の正式名称ではなく、RSTPでいう “registration period”(登録期間)のメディア用語です。欧州委員会との妥協として導入され、2002-03シーズンからFIFAが義務化しました。契約の安定性を保ちつつ、決められた時期にのみ移籍を認める、という妥協の産物です。なお、期間で制限されるのは主に新クラブでの選手登録で、無所属の選手は期間外でも加入できる場合があります。

• ラグビー:World Rugby 規則9(Availability of Players)。男子では “Global Release Periods” として7月と11月のウインドウ(各3週末、解放を求められる試合は各3試合まで)が定められ、これとは別に北半球・南半球・シックスネーションズ・ラグビーチャンピオンシップ向けの解放期間もあります。夏のウインドウは以前は6月でしたが、2020年から7月に移りました(同年はコロナ禍で変則運用)。2026年からは新設のネーションズカップが7月・11月のウインドウを使っています。

• クリケット:ICCの Future Tours Programme(2023–27年)では、IPLのために毎年約2か月半、国際試合をほとんど組まない期間が確保され、以前から続く3月末〜6月初旬の「ほぼ公式な枠」が約2週間広がりました。イングランドのThe Hundred、オーストラリアのBBLにも、自国の日程の中に同様の枠が設けられています。ただしこれは予定表の「空白」として成り立つ事実上のウインドウで、FIBA・FIFA・World Rugbyのように統括団体が規則で選手解放を義務づける代表ウインドウとは性質が違います。向きも逆で、国内リーグのために国際日程の側に穴を開けている、と言えます。

日常語の “window(s)” と、その比喩的な用法が、どのような生息域で使われているのか、まとめる良い機会となりました。

今回はChatGPTやGeminiの回答を鵜呑みにせず、Claude Opus 5に検索と検証、そして編集で支援を受けています。深謝。

本日はこの辺で。
最後に、今回調べた、Web上の一次ソースを記しておきます。

本日のBGM: 窓(大橋トリオ・矢野顕子)

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今回検索した一次ソースのリンク

• FIBA: PR N°20(新方式承認、“six windows” の最初期の公的用例)
PR N°20 - Central Board gives green light to new format and calendar of competition | FIBA Basketball

• Canada Basketball: 上記リリースの転載(2012年11月12日)
Fiba Announces New Format And Calendar Of Competition

• FIBA: 競技方式解説(9日間・6ウインドウ)
FIBA Basketball World Cup | About FIBA

• FIBA: アジア地区予選の方式
How to Qualify for the World Cup - FIBA Basketball World Cup 2027 Asian Qualifiers | FIBA Basketball

• FIBA: アフリカ地区予選の方式(集中開催・5ウインドウ)
How to Qualify for the World Cup - FIBA Basketball World Cup 2027 African Qualifiers | FIBA Basketball

• FIBA Internal Regulations Book 3(選手解放義務)
https://assets.fiba.basketball/image/upload/documents-corporate-fiba-regulations-internal-regulations-book-3.pdf

• FIBA: 保険費用の負担を確認(2016年11月)
A year to go to FIBA’s New Competition System marked by positive news | FIBA Basketball

• FIBA: 代表選手向け保険制度の内容
New worldwide FIBA insurance extends and enhances cover for national team players | About FIBA

• FIFA: 国際試合カレンダー承認リリース
FIFA Council approves international match calendars

• Premier League: 移籍ウインドウの起源
https://www.premierleague.com/en/news/60258

• World Rugby: Regulation 9
Regulations | World Rugby

• ESPNcricinfo: FTP 2023–27 とIPLの枠
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The show must go on!

推し活ネタも一区切り。

ベルリンで開催中のFIBA バスケットボール女子ワールドカップ。
日本代表チーム(通称、Akatsuki Japanと呼ぶようですが、これは男女共通の名前ですね)は、準々決勝進出決定戦でハンガリーに敗れ、目標としていたベスト8には届かず。

連日タイトなスケジュールでタフな試合を戦い続けた選手のみなさんには、ひとまずお疲れ様と言いたいです。
これからも応援し続けます。

私の今の女子バスケットボール選手での「推し」筆頭は、SGの今野紀花選手(所属はENEOS)です。

結果として今大会の日本チーム最終戦となったハンガリー戦、私は、深夜、こんな格好をしてWEB配信で応援していました。

今野紀花選手は高校時代に既に類い稀なポテンシャルでオールラウンダーとして注目されていたのですが、当時私は山口でrowingのコーチをしていたので、インターハイや国体、ウィンターカップを見に行く機会を作れませんでした。
私は2019年に関東に戻ってきましたが、彼女はその年から、米国のNCAAの名門チームであるルイヴィル大に進学。初年度の活躍の様子をWebで知り、「卒業時にはWNBAのドラフトにかかったりするのかな…」などと期待は大きかったのです。
でも、コロナ禍、膝の手術など、決して順風とは言えない4年間だったと、インタビューで語っていました。ルイヴィル大時代にも、東京五輪の日本代表候補として合宿に招集されたこともありましたが、コンディション的にも万全とは言いがたかったようで最終選考には残れず。2022年に、3人制の3X3のワールドカップで日本代表となりました。大学卒業後は帰国し、Wリーグのデンソー・アイリスでプレイをする中で、2025年に初のA代表となりました。
彼女のポテンシャルからすれば、「遅咲き」とも言えるA代表デビューです。

ワールドカップの今大会で、

  • 今野紀花

という選手の素晴らしさを初めて知る人、あらためて称賛する人の反応をソーシャルメディア等で見聞きして,ファンの一人として嬉しく思っています。

結果として4試合だけ。タイムシェアで、そのほぼ半分の時間しかプレイできませんでしたが、ゲームのスタッツで選手評価の指標となる「貢献度」では、今野選手が唯一、4試合を通じて、

  • +/−
  • Efficiency

の両方でプラス評価となっています。

この指標での「プラスマイナス」は、それ自体は単純で、

  • その選手が出場している時間帯でのチームの得失点

を表しています。
ただ、勝ち試合で引き離したプラスも、負け試合で追い上げたプラスも同じ数値であることには注意が必要です。

これに対して、「効率(=efficiency)」のポイントは複雑。
近年では、

(得点数+アシスト数+ブロック数+スティール数+被ファウル数+トータルリバウンド数)
-(ターンオーバー数+被ブロック数+ファウル数)
-(2Pシュート試投数-2Pシュート成功数)
-(3Pシュート試投数-3Pシュート成功数)
-(フリースロー試投数-フリースロー成功数)

が用いられていると思います。
それぞれの項目の価値づけ、意味づけに競技特性が現れていると言えるでしょう。

この

  • A: プラマイ
  • B: 効率

の二つの指標を並べたときに、

  • Aのマイナスが大きいのに、Bの効率がプラス評価

という選手も出てきます。
多くの場合は、チームとしては結構な差をつけられての負け試合でも、相当なプレイタイムの中で地味な活躍を続けていることを示すものです。

今大会の日本代表チームで言えば、対ドイツ戦での東藤なな子選手、対スペイン戦での宮澤夕貴選手が該当するでしょうか。フィジカルの強さだけでなく、メンタルの強さ、イマドキのことばで言えば「レジリエンス」も必要になってきます。

詳しくは、WCの公式サイトで見てみてくださいね。
↓はの写真は、対ハンガリー戦。

www.fiba.basketball

試合後の私のツイートを転載。

#AkatsukiJapan
ベンチに戻った後の今野選手の悔しい表情が忘れられない大会となってしまったよ…。

ここでは「悔しい」と書いていましたが、印象的だったシーンは二つありました。

スペイン戦では、ベンチに戻って、林咲希選手の隣に座っていたのですが、ベンチから戦況を見ていた目線が1回、もっと右に動いた瞬間がありました。このとき、林選手のことを見たのか、それともそのもっと先のヘッドコーチを見たのか、が気になっていました。

ハンガリー戦では最終Qの残り時間が2分ないくらいのところでの交代でした。今まで見たことがないくらい厳しい目をしていて、悔しさ以上の、怒りの現れとも感じられるものでした。
この辺りの彼女の心の動きも、後日、バスケをよく知る人にインタビューして欲しいと思っています。

インタビュアーは中川聴乃さんが良いかなぁ。

TLで、

  • 今野選手ってこんなに上手かったんだ!

というツイートをちらほら見るけど、みなさんもっともっと言ってください。
日本の女子選手で私が一番好きだった人が、今、私が一番好きな選手にインタビューしている7年前の記事がこちら。
上手いだけじゃないんです!


さて、
前回の記事で,

  • 英語教育をスポーツに「たとえる」ことの難しさ

の話しをしましたが、殆ど反響はありませんでした。
でも、「安易な類推や比喩」で分かった積もりになるのは、英語教育にもスポーツのコーチングにも良くないと思うのです。

英語教育分野での比較的新しい論考、考察でも「学習ストラテジー」での「類推」や「比喩」が出てきます。

堀 越 悠 佑・渡 部 孝 子
非認知能力の育成から捉えるスポーツ科学コースで学ぶ高校生の英語教育の実態に関する基礎研究
群馬大学教育実践研究 第43号 103~110頁 2026
https://share.google/OBnYKMz98Kf7AnyuQ

この実践研究で参照しているのが、日本語教育の分野での論考

浅岡信義(2017)「言語学習とスポーツ分野のストラテジーの類似性についての一考察」
2017CAJLE Annual Conference Proceedings,34-43
https://share.google/YqprKpKy3KyGuOnbr

です。

この浅岡 (2017) で言語学習とスポーツの対照をしている「表2 (p. 39)」を見ておきましょう。

案の定、「宣言的」「手続き的」がでてきましたね。
この表のうち、「認知資源の配分」での類推/たとえに関して浅岡は、

「認知資源の配分」では、スポーツでも競技の最中、運動能力が伴った認知資源の上手な配分が必要になってくる。更に、実践的な運用能力やスポーツの試合運びとなると、対応すべき言語及び競技課題は、他にも多くある。言語であれば、相手の発話や意図を理解する等があり、理解できなければ、聞き返しをしたり、限られた言語知識を補うために身振り手振りを交えながら話す。一方で、バドミントンの試合だとシャトルのスピードとコントロール関係性だけでなく、意識的に緩急をつける戦略やコート内のフットワーク、スタミナ配分等と多岐に渡り、相手の動きを予測したりと様々なことを考えながら打つショットを瞬時に決め、遂行しなければならない。

と述べているのですが、ここで取り上げられている言語の運用での「相手の発話や意図を理解する」という認知をともなう行為が、スポーツ競技での何の遂行に相当するのか、は明らかにされません。

浅岡は、この2017年のカンファレンスの大会要項のような部分でも次のように述べています。

初級学習者が発話の際、限られた認知資源を流暢さ、文法の正確さ等への上手な配分の必要性があるのは、野球の投球やテニスのラケットを振る際、パワーを重視すると、コントロールが疎かになるのとよく似ている。
https://tamaoka.org/conference/poster/CAJLE2017.pdf

「…とよく似ている」というのですが、これって、何がどのように似ているのでしょうか?
言語の発話での「流暢さ」が、スポーツでの「パワー発揮」に、「文法的正確さ」が「コントロール」に対応するのでしょうか?
では、この「流暢さと文法的正確さ」は「バスケットボールのフリースロー」の遂行であれば、どのように対応するでしょうか?
類推の対象の選択が恣意的に感じられます。

浅岡 (2017) の論考の最後にはこうあります。

管見の限りでは、本稿のようなスポーツ分野との類似性を扱った研究は見当たらなかった。そのため、スポーツ分野に関しては、科学的根拠がないものが中心となった。萌芽的研究として、今後は身体運動学等との連携で実証を試み、言語学習ストラテジーの更なる解明に繋げたい。

そこから約9年が過ぎています。
先行研究は恐らくないであろう中、スポーツの専門家とのコラボでの研究の継承、ブレークスルーに期待しますが、個人的には、安易な類推や比喩には警鐘を鳴らし続けたいと思っています。

本日はこの辺で。
本日のBGM: Hoops (Weezer)

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