日本では既に12月8日。
真珠湾攻撃の日でもあり、John Lennonの命日でもあります。
前回のエントリーでは、「記憶」にまつわる表現を列挙し、最後に
- as far as I can remember
を知っているが故に間違えかねない
- for as long as I can remember
の例を示したわけですが、今日はその続きから。
前回のおさらいで、用例2つを再録。
In France, cheese and wine have been considered natural allies for as long as people can remember. This view remains valid today, but we must not forget bread, which cements the union.
フランスでは物心ついたときから、チーズとワインは自然の盟友と考えられてきた。この考え方は今日でも有効だが、この結びつきを強固にするパンの存在も忘れてはならない。
Most experts agree that the optimum number of hours is eight, and this has been accepted as common sense for as long as I can remember. However, I was young once and I know that most of you get much less sleep than that ― and in some cases it will be affecting your schoolwork.
ほとんどの専門家は、最適な睡眠時間は8時間であると同意しており、これは私が物心ついたときから常識として受け入れられてきた。しかし、私もかつては若かったので、ほとんどの人がそれよりもずっと少ない睡眠時間しかとっていないことを知っている。
などの “for as long as …” は、あくまでも「期間」を表すものであって
- for a long time
とか
- for so many hours
などと同じ副詞的表現だということを確認しました。
期間を表す前置詞forに語や句が続くものは、恐らく問題ないと思います。そして、as long as に語や句が続いても問題ないでしょう。では、その足し算は?
In Antarctica, where winter can cut scientists and crew off from the rest of the world for as long as nine months, the isolation can lead to strange behavior.
南極大陸では、冬になると科学者や乗組員が9カ月も他の地域から切り離されるため、孤立感が奇妙な行動につながることがある。
ただ単に、for nine monthsというのではなく、その長さを強調するために、as long as nine monthsとしたものですね。
In terms of happiness ― defined as the capacity to enjoy life ― identical twins who were separated soon after birth were considerably less alike than twins raised together. But when it came to unhappiness, the twins raised apart ― some without contact for as long as 64 years ― were as similar as those who’d grown up together.
幸福度(人生を楽しむ能力と定義される)の点では、生まれてすぐに引き離された一卵性双生児は、一緒に育った双子に比べてあまり似ていなかった。しかし、不幸に関しては、64年間も接触せずに別々に育った双子は、一緒に育った双子と同じくらい似ていた。
ここでも、for 64 years の強調で、for as long as 64 yearsとなっています。
では、as long as に節が続くものも、その延長線上で処理できるしょう。
The energy-storing chemical adenosine triphosphate (ATP) is produced from the food we eat for as long as we are alive.
エネルギーを貯蔵する化学物質アデノシン三リン酸(ATP)は、私たちが生きている限り、食事から生成される。
単純な “for life” で「一生;(その後)死ぬまで」とするのではなく、「生きている間はずっと」という意味を強調する上では、動詞が時制を持つことの意味が大きいです。
as long asに節が続く際に S + can + 原形が続くことがありますが、それをpossibleの1語に集約して言うことが可能です。
In the now dim and distant past, students regarded the world of employment as something to be avoided for as long as possible.
今となってはおぼろげで遠い過去だが、学生たちは就職の世界をできるだけ長く避けるべきものと考えていた。
Cultural criticism about art has existed for as long as art itself, because art says as much about the society it was created in as it does about the artist who did the creating.
芸術に関する文化批評は、芸術自体と同じくらい古くから存在しています。というのも、芸術はそれが創造された社会について語るのと同様に、創造した芸術家についても語るものだからです。
一見、語(句)だけに見えますが、実際には比較のas節で省略があることを確認。芸術に関する批評の存在期間と、芸術そのものの存在期間の比較です。
A new app released in South Korea allows parents to monitor kids’ use of smartphones. If you’re a kid in South Korea these days, you might have trouble playing the latest online game on your smartphone for as long as you want.
韓国でリリースされた新しいアプリは、親が子供のスマートフォンの使用を監視できるようにします。最近の韓国の子供たちは、スマートフォンで最新のオンラインゲームを好きなだけプレイするのが難しいかもしれません。
ここでのas節での省略 “want (to play …)” を確認。
文頭に来る例もあります。
For as long as people have watched birds soar far above the earth, they have dreamed of being able to fly.
鳥がこの大地のはるか上空を飛ぶのを見て以来、人々は空を飛ぶことを夢見てきた。
現在完了形での継続期間を確認。
Brandon Green says he had to agree with his roommate’s assessment of his personality. For as long as he could remember, he says, he had felt negative, frustrated, and “drawn inward.”
ブランドン・グリーンは、自分の性格についてのルームメイトの評価に同意せざるを得なかったという。物心ついたときから、彼はマイナス思考で、フラストレーションを感じ、「内向きに引き込まれる」と感じていたという。
回想の内容なので、助動詞はcouldになっていますが、基本の考え方は同じで、あくまでも期間を表すのでlongであり、期間を表すマーカーとしての前置詞forは外せません。
「物心」類例追加。
Papa had always made a big deal out of Christmas. For as long as I could remember, the tree had always been at the center of our celebrations, along with a special little Kewpie-doll ornament that Papa always kept in its own little box.
パパはいつもクリスマスを盛大に祝っていた。物心がついたときから、ツリーはいつも私たちのお祝いの中心で、パパがいつも小さな箱に入れていた特別なキューピー人形のオーナメントも一緒に飾られていた。
このくらい見ておけば、大丈夫でしょうか。期間を表すマーカーのforに続く語句の柔軟性のようなものを感じ取れるといいですね。
では、同じforの後に、次のような語句(節)が続くものはどのような意味と働きを持っているでしょうか?
Baltimore is the ninth busiest port in the US for international trade, meaning the effects of the crash will ripple across the regional, US, and even global economy for however long the 47-year-old bridge takes to fix—a timeline, experts say, that’s still unclear.
記事本文から
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年3月28日
Baltimore is the ninth busiest port in the US for international trade, meaning the effects of the crash will ripple across the regional, US, and even global economy for however long the 47-year-old bridge takes to fix—a timeline, experts say, that’s still unclear. https://t.co/Px4m1vwzsc
この記事本文から引用した英文をDeepLで和訳させると
ボルチモアはアメリカで9番目に国際貿易が盛んな港であり、この事故の影響は地域経済、アメリカ経済、そして世界経済にまで波及することになる。
となって、肝心なところはスキップしてしまいます。
最近公開のKagi Translateでも
ボルチモアは、国際貿易において米国で9番目に忙しい港であり、事故の影響は地域、米国、さらには世界経済に波及することを意味しています。47年の歴史を持つ橋の修理にかかる時間は専門家によればまだ不明です。
のような処理で、この英語表現を適切・的確に理解表現できていません。
今日のタイトルで示していた
- for however long
これは比較的新しい言い方に入るだろうとは思うのですが、要不要の文脈に多くでてきます。
- for however long S takes 「…にかかるだけの時間(が長かろうとも、その間)ずっと」
という意味であり、先ほどの英文の後段は、
「…事故の影響は、この47年の歴史を持つ橋の修理にどれくらい長い時間がかかろうとも、その間ずっと、この地域、米国、さらには世界経済に波及することを意味しています。専門家によれば修理完了までのスケジュールはまだ不明です。」
とでもなるところです。
高校卒業までに見聞きする表現では、
いくら待っていても幸運は降ってこないよ
However long you wait for it, good fortune won't come to you. (G和英)
のような「譲歩の副詞節」での “however long” がありますが、ここではそれとは異なり、期間のマーカーの前置詞forに続いて、あくまでも期間を説明するものです。
次のツイートなどは話題になりましたね。
We will work with our friends and allies around the world – for however long it takes – to ensure that the sovereignty and independence of Ukraine is restored.
We will work with our friends and allies around the world – for however long it takes – to ensure that the sovereignty and independence of Ukraine is restored. pic.twitter.com/wFwxi3HMyl
— UK Prime Minister (@10DowningStreet) 2022年2月24日
DeepLの和訳は
ウクライナの主権と独立が回復されるよう、我々は世界中の友人や同盟国と協力していく。
Kagi Translateの和訳は
私たちは、ウクライナの主権と独立が回復されるまで、世界中の友人や同盟国と協力していきます。
どちらも肝心なところをスキップしています。受験生の部分点狙いと同じ心理なのでしょうか?
私の修正訳はこちら。
どれだけ長い時間がかかろうとも、ウクライナの主権と独立が回復されるまでずっと、私たちは世界中の友人や同盟諸国と協力していきます。
次の記事内では引用符つきですので、実際の発話でも使われる表現だということがわかります。
But Barbara Shaw, 54, a homemaker from Los Angeles who backed Mr. Gore, said: ''I haven't lost patience, and I'm absolutely willing to wait for a firm solution to this problem. I am willing to wait for however long it takes.''
www.nytimes.com
しかし、ゴア氏を支持したロサンゼルスの主婦、バーバラ・ショーさん(54歳)はこう言った。「私は忍耐を失っていませんし、この問題の確固たる解決策を待つつもりです。どんなに長く時間がかかってもそれまでずっと待つつもりです」。
私は比較的近年気づいたのですが、
- By Richard L. Berke and Janet Elder Nov. 30, 2000
とありますから、四半世紀近く前に既にNYTの紙面には載っていたことになります。
話しことばでも使われるということは、次のリンク先の動画クリップなどで確認して下さい。
for however long it takes to beat them back
https://getyarn.io/yarn-clip/8ba4fda8-81b6-41e0-8e69-be0f964e8891#O9eZpEC1.twitter…
for however many nights it takes Channel 4
https://t.co/e03HXN81wO
ツイッターのタイムラインでもびゅんびゅん流れていっていますので、きっと目にしてはいると思います。
This is Batool, her daughter Talene, and her 5-day-old baby Assel
They fled Southern #Lebanon yesterday and have no idea how they’ll cope for however long they’re exiled from their home…or if there’ll be a home to go back toThis is Batool, her daughter Talene, and her 5-day-old baby Assel
— Paul McNamara (@PGMcNamara) 2024年9月24日
They fled Southern #Lebanon yesterday and have no idea how they’ll cope for however long they’re exiled from their home…or if there’ll be a home to go back to
Tune in to @Channel4News tonight at 7pm pic.twitter.com/rzFtksg4iC
典型例は、要不要の文脈。
"for however long it takes to"
https://x.com/search?q=%22for%20however%20long%20it%20takes%20to%22&src=typed_query&f=live
入試問題でも、本文ではもう出てきているんですよ。
Writing, however, is all present at the same moment of time. Readers can look back at the beginning of the book if they get lost, look forward to the end if they get bored, or set the book aside to read at a later time. So, if readers forget what a pronoun refers to or get lost in a grammatical construction, they can effectively press replay and try again. It is like the difference between watching a play and reading a book. The play is not under the spectators' control and proceeds even when they have lost the hang of the plot. The book can be read at the readers' own pace for however long they want; any misunderstanding can be cleared up by going back a few pages.
DeepL訳
しかし、文章は同じ瞬間にすべてが存在する。読者は、道に迷ったら本の冒頭を振り返り、飽きたら終わりを楽しみにし、また後で読むために本を脇に置くことができる。そのため、読者は代名詞が何を指しているのか忘れてしまったり、文法的な構文に迷ったりしても、効果的にリプレイを押してやり直すことができる。演劇を見るのと本を読むのとの違いに似ている。芝居は観客のコントロール下になく、筋書きがわからなくなっても進行する。本は読者のペースで好きなだけ読むことができ、誤解は数ページ戻れば解ける。
Kagi訳
しかし、書くことはすべてが同じ瞬間に存在します。読者は、迷ったときに本の最初に戻ったり、退屈になったときに最後を見たり、後で読むために本を脇に置いたりできます。したがって、読者が代名詞が何を指しているのかを忘れたり、文法構造に迷ったりした場合、効果的に再生ボタンを押して再試行することができます。これは、劇を見ることと本を読むことの違いのようなものです。劇は観客のコントロール下にはなく、プロットの流れを失っても進行します。本は、読者が望む限り自分のペースで読むことができ、誤解は数ページ戻ることで解消できます。
どちらも下線部が読めていませんね。
最後に、ざっくりとした検索結果を貼っておきます。
COCAで for however long
比較的近年の実例 Spoken
News
COHA
TVコーパス
NOWコーパス
NOWから最新の例。
パーミルで経年推移推測
GLOWBEで地域差を推測
次に出会ったときには、「お、あなたは確か…」というくらいには、この表現に慣れたのではないでしょうか。
本日はこの辺で。
本日のBGM: Love You For A Long Time (Maggie Rogers)