It's worth it, at least for heightened awareness.

このブログを書き始めた頃にはもう太田由希奈様(現松永由希奈様)に魅せられていたので、他の選手も含め、フィギュアスケートの話題もちょくちょく登場していました。

こんなタイトルの記事があります。

Renewed efforts

tmrowing.hatenablog.com

2008年の10月下旬。
グランプリシリーズ初戦のスケートアメリカの男子シングルで小塚崇彦選手が初優勝したときですね。詳しくは記事本文を。

このタイトルの

  • renewed efforts

は強いて日本語に訳せば、「新たな努力;更なる努力」とでもなるものでしょう。
「他動詞」としてのrenewの所謂「過去分詞」由来の前置修飾の形容詞で、renewedが使われています。
このチャンク/コロケーションは、古くは

  • 勝俣銓吉郎 編 『ハンディ英和活用辞典』(研究社、1960年; p. 300)

に収録されています。

  • renewed efforts were made to …  …しようとさらに努力を新たにする

そして、この同じ用例が、現行の『英和活用大辞典』にも受け継がれています。
凄いですね。

当然、「新たにする (= renew)」ということは、その行為をまだしていない段階での物言いなのですが、その結果を先取りする、変化(この場合はより良いとかより強いなどの比較)の差分を意識した表現になっているところが興味深いものなので、私の物書堂の辞書にはブックマークフォルダーを作って整理しています。

ここに映っているものも含め、チャンクと文用例とを合わせて182項目入れています。

類例はイマドキの辞書にも数多く収録されています。

Wisdomは独自のコーパス依拠の成果なのでしょう、”make a renewed effort” と単数形の例を載せています。

G6は「デジタルプラス廻し」ですから、紙版のG6を使っている人には用例がひとつも見当たらないということになりますね。私は、改訂の6版が出てからずっと、この問題を指摘して注意喚起をしてきましたが、紙版を使っている皆さんは不便に感じていないのでしょうか?

用例を見ても、日本語に訳してそれほど違和感のない、過去文脈のものは、まあ、それほど神経質にならなくても良いのだと思っています。

He worked with renewed vigour and determination.
彼は新たなる気力と決心で取り組んだ. (OALD英英和)
The treatment gave him renewed hope. 治療は彼に新たな希望を与えた (Oxfordコロケーション)

もう既に、ことが起こっている、始まっているものも大丈夫でしょう。

Schools are riding a wave of renewed public interest.
学校は新たな世間の関心上昇の波に乗っている. (OALD英英和)

要注意なのは、「これから」の文脈。

The threat of renewed civil war looms ahead.
新たな内戦の恐れが前途に待ち受けている。 (コウビルド米語英英和)

これは、まだ始まっていない、結果はまだ明らかではないのに、それが達成された、実現されたものとして捉えて “renewed civil war” として表しているわけです。
気になりますよね?

最近のニュースでこのrenewedと結びつく名詞に「!」となりました。

Argentina calls for renewed negotiations over Falkland Islands

自動翻訳での処理を比べてみます。

  • Grok訳: アルゼンチン、フォークランド諸島をめぐる再交渉を求める
  • Google訳: アルゼンチン、フォークランド諸島を巡る交渉再開を呼びかけ
  • DeepL訳: アルゼンチン、フォークランド諸島をめぐり交渉の再開を要請
  • Kagi訳: アルゼンチン、フォークランド諸島をめぐる交渉再開を要請

Grokは誤訳と切り捨てるのは可哀想な気もしますが、やはり不十分でしょう。

この話題は今日の私のソーシャルメディアのTLを駆け巡っていました。

Argentina has called for renewed talks over the future of the Falkland Islands after the US suggested it could support Buenos Aires’s claims of sovereignty

こちらも比べておきましょう。

  • Grok訳: 米国がブエノスアイレスの主権主張を支持する可能性を示唆した後、アルゼンチンがフォークランド諸島の将来について再交渉を呼びかけた
  • Google訳: 米国がブエノスアイレスの主権主張を支持する可能性を示唆したことを受け、アルゼンチンはフォークランド諸島の将来に関する協議の再開を求めた
  • DeepL訳: 米国がブエノスアイレスによる主権主張を支持する可能性を示唆したことを受け、アルゼンチンはフォークランド諸島の将来をめぐる協議の再開を求めた
  • Kagi訳: 米国がブエノスアイレスの主権主張を支持する可能性を示唆したことを受け、アルゼンチンはフォークランド諸島の将来をめぐる協議の再開を求めた

やはり、Grokは翻訳の精度が低いですね。

この

  • call for renewed negotiations/talks

は昔からあるのではないかと思うのですが、近年見聞きする機会が増えた印象。

COCAでは1例のみ

NOWではそこそこ数字に現れてきています。

交渉(negotiations)や会談 (talks) 以外にどのような名詞が目的語に来るか?
NOWコーパスで。

このように

  • call for + 形容詞+名詞のコロケーション(としてのチャンク)

で実感が育ってくれば、次の学びはその他の動詞との結びつきですね。

先月から、この『エコノミスト誌』の英語ニュースのツイートを何度も見かけていました。

The recipe for Nin Jiom Pei Pa Koa hasn’t changed since it was first concocted in the 1600s. Yet the sweet syrup is enjoying a renewed surge in popularity


ニンジオム・ペイパ・コアのレシピは、1600年代に最初に調合されて以来、変わっていません。しかし、この甘いシロップはさらに新たな人気を博しています。

ここでも、 “enjoy(ing) a renewed surge in popularity” で “renewed” が使われています。

私がこの記事に気づいたのは今年の3月。でも、この記事、調べてみると2025年の9月に既に出ていたんですよ。


何だかなぁ…という感じ。

本題に戻って、「変化や成果の先取りの -ed/en形」で注意すべき類例を。

拙著 『チャンクで積み上げ英作文』(Standard編; 三省堂)では、

  • 彼の継続的な努力 his continued efforts  [四角化ドリル8]
  • 自信の高まり increased confidence [四角化ドリル9]

というチャンクを収録。
特に後者は、「もの」で「こと」を表すような表現になっているところが学びどころ。

このポイントでもう30年近く使っているであろう用例は、他動詞add由来のaddedを用いた

  • This box needs taping here for added strength. この箱は補強のために、ここにテープをぐるっと巻く必要がある。

ですかね。
テープを巻くから「補強」になるので、巻くことで「強さを付与する」わけですが、それを「付与された強さのために巻く→新たな強さのために巻く」という表現となっています。
あたかも、「補強」で、

  • for reinforcement

と行為名詞を使った副詞句と同じような意味を表しています。


以下の「増産」「増大」「増進」などでも、「もの」で書いて「こと」を表しています。元になる動詞はincrease。

Increased production will, in turn, lead to increased profits.
増産によって利益は増大するだろう (O-LEX英和)

姿勢をよくすると健康増進にもつながる
Maintaining good posture leads to increased health. (O-LEX和英)

次の例で、元になる動詞は、比較級含意の動詞で enhance。

The new Germany must rise to the challenge of its enhanced responsibilities.
新しいドイツは責任の増大という試練に立派に対処しなくてはならない。(COBUILD米語英英和)

次の例では、「改善」。元になる動詞は improve。

They are making substantial claims for improved working conditions.
彼らは労働条件改善のため、相当な要求をしている。(COBUILD米語英英和)

元になる動詞は同じimproveでも、次の例では「向上」。

女性の総理大臣の出現は女性の地位向上のシンボルとして意義深いものがある.
The appearance on the scene of a female prime minister is highly significant as a symbol of the improved status of women. (研究社和英大)

次の例では、元になる動詞はheightenで「高まり」。

両国間に募る緊張の高まりを緩和するため何らかの策が必要とされる
Some measures should be taken to reduce the heightened tension between the two countries. (Wisdom和英)

確かに, 生徒間に競争を持ち込むと多少のあつれきが生まれるかもしない. しかし私は, 健全な競争は生徒間のやる気を高めると思う
Competition between students may lead to some tension. However, I would say that healthy competition gives them heightened motivation. (Wisdom和英)

類例を集めて実感を得るには、適切な用例が多ければ多いほど良いので、用例検索が充実した「物書堂」のアプリ辞書が最適。本領発揮だと思います。

辞書を足場、足がかりにして、少しでも実感が得られたら、「英作文眼」でのインプットです。
元ツイの英語表現の詳細はリンク先のツイッターの記事へ。

別記事・別媒体。
#asの前景後景 での増減の表現とほぼ同じ働きをする
<amid + increased 名詞>での舞台背景説明。所謂過去分詞のincreased は既に結果として増加が積み重なっていても、今増加しつつあっても、これから増加することになっても可。増減の差分を可視化して、もの→ことに軸足を移す。

#amidと比較級
#ものとことの境界線
別記事・別媒体で、類例のenhanced (高められた;改善・強化された = increased or improved) の例追加。既に形容詞で扱う辞書も多い。
baby boomのboom中の「急激な増加」の中にも比較級の意味が含まれているので、対応・比例の関係を掴むのが肝。

商品解説から。
Our version of the Shetland Sweater comes with raglan sleeves, ribbed hem, and cuffs for added comfort.

実質は目的だけれど結果先取りの「過去分詞」の前置修飾で
for added comfort ≒ in order to add comfort
「更なる快適さ≒快適さの向上」

中級への「増減」表現。第一文はwithの付帯状況でのing併せて。
wane「徐々に弱まる」の現在完了。plummet「急激に落下、下降する」。
第二文のimprovedは変化の差分を反映(時に先取り)し評価する「過去分詞」。
単なる計量のgreaterと置き換えてみると、その持ち味・立ち位置が感じられるでしょう。

更に続き。
基準時は過去。「二つの療法の組み合わせ」文脈でのan improved
survival rate「生存率の向上」は「増加の差分」を結果として過去分詞が担うもので、未達の文脈でも使う。
When the treatments were combined in mice it led to an improved survival rate than the immunotherapy alone.

まだ取り上げていなかった表現としては、 “proposed + 名詞” がありました。

Proposed changes to state’s school accountability system face pushback


州の学校評価制度に対する改正案に反発が巻き起こっている

  • proposed changes

は、文字通りには「提案された変更」だけれど、既に提案されているか否かに関わらず使えるのが

  • 「改正案」「変更案」

という日本語。この英日の往還ができると良いですね。

以下、ブックマークしている辞書の用例から

remonstrate against the proposed taxation 新課税案に反対する. (Wisdom)

Several towns banded together against the proposed waste incinerator.
いくつかの町が団結してごみ焼却炉の建設案に反対した (O-LEX)

Protest marches were held in opposition to the proposed law.
デモ行進は法案に反対して行われた. (OALD英英和)

さあ、「英作文眼」の解像度が上がってきたでしょうか?
テスト対策などとみみっちいことを言わずに、自分の英語を育て、磨くためにこのブログの記事も活用して下さい。

本日はこの辺で。
本日のBGM: Shipbuilding (Robert Wyatt)

open.spotify.com

a melanistic variety of the common leopard

今日はこの記事の見出しの英文から。

A rare black leopard has been captured on camera in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, adding to one of the most unusual wildlife sightings in the Western Ghats. Known for their extreme rarity, black leopards are rarely spotted in Maharashtra’s dense forest regions, making this sighting significant for wildlife researchers and conservationists.

#BlackLeopard #SahyadriTigerReserve #Satara #WildlifeIndia #MaharashtraForest #WesternGhats #RareSpecies #BigCats #NatureConservation #WildlifePhotography

India Todayの記事で、動画の情報がメインなんですが、この解説英文が気になりました。
僅か2文、53語での解説中で、この3語が出てくるのはちょっと稚拙ではないかと。

  • rare / rarity / rarely

特に気になったのは、第2文のイントロから主文への流れ。

  • Known for their extreme rarity, black leopards are rarely spotted …

というのはトートロジー的で、プロのライターらしからぬ言葉選びだと感じました。
もし日本語の記事で、「極めて稀なことで知られている黒豹は目撃されることが稀である」と書いてあったら「むむっ!」ってなりますよね? 
え? ならない? そうですか。

ということで、生成AI三者に投げ掛けてみました。

この英文はIndia Todayの記事にあったものです。確かに、black leopardはrareな種ですが、この短い英文中でのrare/rarity/rarelyの使い方が冗長で稚拙な印象を与えるものになっています。より洗練された表現で書き直してください。

ChatGPT 5.4による修正案

書き直し案

  • A black leopard has been photographed in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, marking one of the most unusual wildlife sightings in the Western Ghats. Seldom seen in Maharashtra’s dense forests, these melanistic leopards are of particular interest to wildlife researchers and conservationists.

ポイント

  • `rare / rarity / rarely` の反復を避けるため、`seldom seen` と `melanistic leopards` を用いて表現を変えています。
  • `captured on camera` はやや定型的なので、`has been photographed` のほうがやや引き締まります。
  • `making this sighting significant` は説明的なので、`are of particular interest to ...` にすると、やや自然で記事文らしい運びになります。

別案(よりニュース記事らしく簡潔)

  • A black leopard has been photographed in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, in what is being described as one of the most unusual wildlife sightings in the Western Ghats. Such melanistic leopards are seldom recorded in Maharashtra’s dense forests, underscoring the importance of the sighting for researchers and conservationists.

別案(やや格調高め)

  • A black leopard has been photographed in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, an exceptionally unusual wildlife sighting in the Western Ghats. Because melanistic leopards are seldom observed in Maharashtra’s dense forests, the sighting is of considerable interest to researchers and conservationists.

元の記事の英文の問題点

  • `rare` → `rarity` → `rarely` と、同語根が短い範囲で3回出る
  • `adding to one of the most unusual wildlife sightings` は少し不自然で、構文上も締まりが弱い
  • `making this sighting significant` は情報としては正しいものの、記者文体としてはやや凡庸

いちばん自然な一本

  • A black leopard has been photographed in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, marking one of the most unusual wildlife sightings in the Western Ghats. Seldom seen in Maharashtra’s dense forests, these melanistic leopards are of particular interest to wildlife researchers and conservationists.


Gemini 3.1 Pro の修正案

ご指摘の通り、短いパラグラフの中で語根「rare」が3回(rare, rarity, rarely)も繰り返されており、さらに「unusual」という類義語まで混在しているため、極めて冗長(tautological)で稚拙な印象を与えています。

このような冗長性を排除し、語彙的結束性(Lexical Cohesion)を高めつつ、ニュース記事としてのプロフェッショナルなトーンを持たせるための書き直し案を3つの異なるアプローチで提案します。

1. ニュース報道としての自然さと洗練度を重視した改訂版(推奨)
元の文の構造と情報量を維持しつつ、適切な類義語に置き換えることで、読みやすく洗練された文章にしています。

  • An elusive black leopard has been captured on camera in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, marking one of the most remarkable wildlife sightings in the Western Ghats. Because these big cats are notoriously difficult to spot in Maharashtra’s dense forests, this footage is highly significant for researchers and conservationists.

【修正のポイント】

  • rare → elusive: 「希少な」という意味だけでなく、「(警戒心が強くて)なかなか姿を見せない」という野生動物に最適な形容詞 `elusive` を採用しました。
  • unusual → remarkable: unusual(普通ではない)よりも、ポジティブな驚きや価値を含む `remarkable`(注目すべき、驚くべき)の方が、研究者にとっての重要性と合致します。
  • extreme rarity / rarely spotted → notoriously difficult to spot: 「めったに見られない」という状況を、形容詞や副詞の反復ではなく、「発見が極めて困難であることで知られている」というフレーズで表現し、文脈の説得力を高めました。

2. 簡潔さと情報密度を高めた改訂版(より引き締まった文体)
2つの文の因果関係(めったに見られないからこそ重要である)を整理し、より高密度(High information density)な英文に再構築したパターンです。

  • A highly uncommon black leopard has been photographed in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, adding to the extraordinary wildlife records of the Western Ghats. Given their elusive nature in Maharashtra’s dense forest regions, documenting this big cat provides crucial insights for wildlife researchers and conservationists.

【修正のポイント】

  • rarity → elusive nature: 「希少性」という抽象名詞を「捉えどころのない性質(elusive nature)」と言い換え、生態的な特徴として描写しています。
  • 主語の工夫: 2文目の後半を `documenting this big cat`(この大型ネコ科動物を記録すること)という動名詞主語にすることで、受動態の連続を避け、力強い構文にしています。

3. ジャーナリズム特有のドラマチックな改訂版(インパクト重視)
前置きを文頭に出し、発見の価値を強調するスタイルです。

  • In an extraordinary sighting for the Western Ghats, an elusive black leopard was captured on camera in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara. Such encounters are exceedingly scarce in Maharashtra’s dense forests, making this a pivotal moment for local conservationists and researchers.

【修正のポイント】

  • extreme rarity / rarely spotted → exceedingly scarce: 「極度に希少である」というニュアンスを `scarce`(乏しい、まれな)を用いて表現し、rareの反復を回避しています。
  • significant → a pivotal moment: 「重要である」という形容詞を名詞句(極めて重要な瞬間/出来事)に変換し、ジャーナリズムらしい劇的な響きを持たせています。

まとめ:代替語彙の使い分け
「Rare」の過剰使用を避ける際、文脈に応じて以下の語彙を使い分けることで、文章の解像度を大幅に上げることができます。

  • Elusive: 物理的に捕まえにくい、または姿を見せない(野生動物の描写に最適)
  • Uncommon / Scarce: 頻度や数が少なく、一般的ではない
  • Extraordinary / Remarkable: 単に珍しいだけでなく、特筆すべき価値や驚きがある
  • Seldom seen / Infrequently sighted: 「rarely spotted」の直接的かつフォーマルな代替表現

Claude 4.6 Opusの修正案

分析: ご指摘の通り、わずか2文の中に rare → rarity → rarely と同語根の語が3回登場しており、語彙的な単調さ(lexical redundancy)が目立ちます。それぞれが「珍しい」という同一の意味領域を担っているため、情報量が増えないまま繰り返されている印象です。

書き直し案

  • A melanistic black leopard has been captured on camera in the Sahyadri Tiger Reserve near Satara, marking one of the most extraordinary wildlife sightings in the Western Ghats. With only a handful of confirmed observations across Maharashtra's dense forest regions, the discovery has drawn considerable attention from wildlife researchers and conservationists.

主な改善点

原文の問題箇所 改善の方針 具体的な処理
--- --- ---
A rare black leopard 「珍しい」と直接言わず、何が珍しいのかを示す melanistic という生物学的な特徴を冠することで、希少性の根拠を暗示させる
extreme rarity 抽象名詞による繰り返しを排除 only a handful of confirmed observations と具体化し、希少性を「観察記録の少なさ」として再表現
rarely spotted 副詞での3度目の繰り返しを回避 上記の具体表現に吸収させ、文末は drawn considerable attention と「結果としての注目」に焦点を移す
adding to one of the most unusual unusual も rare の類義語で冗長 marking one of the most extraordinary に置き換え、marking で「画期的な出来事として記録される」というニュアンスを付加

補足: 原文では adding to one of the most unusual wildlife sightings という表現もやや不自然です。add to は「既存のものに加える」意味ですが、ここでは「一つの目撃事例が、最も珍しい目撃事例群に加わる」という構造になっており、論理的にぎこちない。marking とすることで、「この撮影自体が希少な記録の一つとなった」という簡潔な因果関係に整理しています。

AI三者の修正案とその判断の根拠も「是々非々」で評価してあげてください。

英語メディアの英語も様々です。英語ネイティブの英語だから有り難がる、というのではなく、自分の英語を

  • よりよい英語

にするべく日々英語と接することが大事かと。

そんな日々接している英語の「表現形式」のうちの一例を。

こんな記事に含まれていました。

It remains unclear when or if the #US and #Iran might meet again in Pakistan.
The two sides remained locked in an escalating battle over the strait of #Hormuz, with both seizing ships in recent days

私の解説の引用RTがこちら。

形式主語のitを受ける名詞節を導く接続詞のペア(選択肢)を確認。
whenはお馴染みでしょうが、whetherと同じ働きをするifも、この
形容詞unclearなどの環境で使われています。
教材によっては、いまだにこのパターンを認めていないものもあるようですが、現代の英語では最早正用法でしょう。

この用法は過去のツイートでも取り上げています。
4年ほど前ですね。ほとんど反応はありませんでした。

合掌。
unified school districtは「統一学区」。州、学校種で統合具合は異なるのでwikiなど参照。unlockedは文脈で「未施錠の」か「鍵が開けられた」に。
名詞節のif SVは通例主語の位置では用いられないが、この例のit’s unclearのように形式主語を受ける形では可。「SVかどうかは定かではない」。

比較的新しい類例の追加。

it remains unclear if の類例追加。

英文記事元ツイはこちら。

Unregulated AI like speeding with no steering wheel.
AI pioneer Geoffrey Hinton insists on the need to strictly regulate the technology, warning that it remains unclear if humanity can co-exist with super intelligent AI

同じパターンをとる形容詞uncertainの例も追加。

unclearよりは見聞きする頻度は少ないでしょうが、uncertainも同様に形式主語をif節で受けます。
it remains uncertain if SV
の例。

元ツイ。

An Iranian drone strike has reportedly targeted the Apple headquarters at Dubai's International Financial Centre (DIFC). It remains uncertain if Apple was the intended target.

Source: MintPress News

そして次の指摘。

実際の報道現場の英語表現ではここまで来ていますから。
俗に言う「ロイター語法」のパターンで
国や政府・首脳・要人等を主語としてsays unclear if SV

元ツイ。

Trump says unclear if new Iran leader is 'dead or not'

A lot of people are saying that he's badly disfigured. They're saying that he lost his leg - one leg - and he's, you know, been hurt very badly. Other people are saying he's dead, says the US President

Follow our live coverage of the Iran conflict:

このブログでの「ロイター語法」の扱いに関しては、検索窓に入力して検索して下さい。
2つの記事で解説しています。

tmrowing.hatenablog.com

当該の

  • it is [remains] unclear if S+V

のパターンに関しては、教材だけでなく、辞書もまだまだ対応が不十分です。

『Oxfordアカデミック』は if のパターンを表示しているのに、用例での収録がないという残念な扱い。

一方で、doubtfulは多くの辞書でif節も示しています。

オンラインコーパス等をちょっと眺めておきましょうか。
まずはベンチマークでCOCA

2000年代以降では、unclear一人勝ちの様相?

通時的概観でCOHA

1980-1990年辺りで潮目が変わって、doubtful < unclear という印象ですね。

地域差/文化差推測でGLOWBE

既にunclear > doubtful の様相。


最新の動向をNOWで

流石にニュース英語だと、unclearがケタ違いだということが分かるでしょう。2020年以降でdoubtfulとの差が急激に拡大。
2020年って? そうコロナ禍ですね。そりゃ「不確かなもの」への言及が増えるのも無理はありません。

2026年4月26日追記:
Google BooksのNgram Viewerの検索結果も眺めておきましょう。
一応、文頭縛りで。
まずはドングリの背比べ。

doubtfulの低頻度化は疑う余地がないかと。
そして、これを見る限りでは、辞書でどれかを載せ、どれかを載せないという判断は難しい。
このグラフの一番下のIt is uncertain ifをカットしてIt is unclear whetherを足すと?

形式主語のitに続くunclear/ whetherが段違いですね。

ということで、私のような市井の一英語講師ではなく、「英語語法研究」を専門にしている方たちが語法の変化や実態は明らかに、詳らかにしてくれていることでしょうから、詳しくはそちらを。

中等教育の現場からは以上です。

本日はこの辺で。
本日のBGM: 確かなもの不確かなもの (Buena Vista)

open.spotify.com

2026年4月26日追記:
乗りかかった船で、SoftMatchaの検索結果からヒット数の多い順に4枚を。

it is unclear whether / 126,236ヒット

it is unclear if / 52,576ヒット

it is doubtful whether / 27,392ヒット

it is doubtful if / 16,128ヒット

となっています。相当に差がつきましたね。
教材・辞書での扱いも要検討では?

ジタバタ

ツイッターのタイムラインで「自動詞・他動詞」の話題が激流となっていたので、

  • 小学校英語導入から教科化、そして俗にいう「中1ショック」で、「文法を体系的に教えない」ことに対する批判が囂しい昨今、きっと、「文型という名の動詞型」信奉者の声が大きいのだろうな…

と思いつつも、怖いもの見たさで覗いて見ました。

  • 「!」

何のことはない、源泉は例の人の物言いでした。
これはこれで大問題なんですけどね。

  • 「目的語」をどう捉えるか?

が英語のセンスの養成に重要だという観点で、私も既に教材を公開しています。

目的語感覚を養おう(2025年5月改訂版)
note.com

期間限定でセール価格にて提供中。

概要は次の通り。

その1:「目的語」ってどういう意味? 

  • 日英の対照で目的語の生息域を実感します。旧版で示していた「稲刈り」「一夜干し」「相撲取り」などの日本語の名詞のチャンクの例に解説を!というリクエストに答え、それぞれの例に簡潔にコメントをつけています。

その2:「目的」に囚われすぎるとゴールを見失う?

  • 「その1」の復習と、動詞の意味と目的語の名詞の「意味」の関係を深堀します。

句動詞の意味の成り立ちや、名詞の動詞転用の用例を増やし、考察を深めています。ピクトグラムでわかったつもりだった人もここは丁寧に読むことをおススメします。

その3:地に足のついた学びで目的地へ!

  • 身近な語を用いて、動詞の個々の用法から、その語の全体像を捉える試みです。今回の改訂でwalkの実例を増やしました。

その4:「ない」ようで「ある」? 「ある」ようで「ない」?

  • 「意味」の実感にとことんこだわります。この記事はほぼ旧版のままです。

その5:「授与しない授与動詞」補足

  • 「その4」で取り上げた「授与しない授与動詞」が分かりにくい、という声がありましたので、「授与動詞」界隈を補足する記事を書いています。A4で4ページ分あります。この記事はほぼ旧版のままです。

その6:「目的語の3分類も 人・もの・コト」

  • 「罪を憎んで人を憎まず」の発想を援用して「コトガラ」の目的語の実感に迫ります。旧版のままです。

その7:S+Vで意味が整合するのは何文型?

  • 見た目がS+Vの文なのに、巷の教材での「文型」や「動詞型」では扱いが不十分な動詞を取り上げます。旧版のままです。

その8: 結局するの?しないの?

  • 今回の改訂で新たに加わった記事です。政治や法律の文脈だけでなく、日常的な話題であっても、「していることを止める」「止めるのを止める」「禁止することを認めない」など、「結局のところ、するの?しないの?」で悩むことがありますので、そのような意味のつながりを整理したものです。


番外編:接頭辞・接尾辞で煙に巻かれないために

  • 意味の成り立ちを丁寧に扱います。今回の改訂で「語根(語幹)」と呼ばれる例も追加しました。今まで以上に、チャンクで英語表現を捉える効能も実感できるでしょう。

番外編2: 実質「イコール」?

  • 今回の改訂で追加した記事です。目的語をとらないbe動詞の用法の確認と、一見 be動詞と同じに見える「他動詞」の使用例を整理しています。mean/represent/constitute/amount to/equal などの実例と生息域を観察して下さい。

できる限り「衒学的」にならないよう配慮しました。辞書からの引用もありますが、自分が見聞きした英語の実例ありきで、虫の眼から、鳥の眼へ、を目指しています。

もともとは高校生相手の実際の授業で説いてきたことをまとめたものです。
本当に授業でも同じことをいうわけですが、まあ、自分で聡いと思っている人ほど、この辺りはバカにして話を聞かない傾向がある印象です。しょうがないですね、他所では見聞きするチャンスがないような内容ですから。

尚、上記記事は、お買い得なマガジンにも収録されています。

英文法の基礎・基本:動詞から拡げるか、名詞から拡げるか
note.com

こちらもよろしく!

世間の英語猛者の皆さんは

  • 自動詞・他動詞の識別

って簡単に言ってくれちゃうわけですが、母語たる日本語でさえ、その識別や適切な運用は難しいものなんですよ。

過去ログで日本語表現を取り上げて、コロケーションへの違和感を表明したことがあります。

2006-04-28
質問と批評の文化あるいはreflective language teaching再考
tmrowing.hatenablog.com

ちょうど20年前のGW直前に書いた記事ですね。
某英語教育誌の特集タイトルで「…を充実する」という表現への違和感を書いていました。

私の語感は

  • 「の充実を図る」「を充実させる」がデフォルトではないのかなあ?

というもの。

そこから20年。

  • 「Aを充実する」

という日本語表現が、20年を経てどの程度拡がったでしょうか?

少納言コーパスだと

  • 「を充実する」 125件
  • 「を充実させる」169件
  • 「の充実を図る」412件
  • 「が充実する」32件

となっています。

最近のものまで視野に入れてSoftMatchaで見てみます。

「を充実する」  100,831件! 凄い! 使われている!

「を充実させる」 235,400件  おお、ダブルスコアでこちらが優位!

「の充実を図る」 350,501件   こっちの方がヒット数が10万件程多いぞ!

「が充実する」 29,077件   めっちゃ少ないじゃないですか。

現代日本語の実態といえるでしょうか。

同じ検索を

NDL Ngram Viewer
国立国会図書館の提供するデジタル化資料のOCR全文テキストデータを利用したNgram Viewer

lab.ndl.go.jp

でしてみた結果がこちら。

意外にも、1970年代初頭までは、「を充実する」の頻度が最も高かったということがうかがえます。

母語たる日本語であっても、ことほどさように

  • 自動詞/他動詞の識別と運用

を支えるはずの「個人の語感」なんて、タカが知れているということを感じていただけたことと思います。

では、これが外国語、第二言語である英語になったら?

いつも同じ話し。

  • ひとつひとつ丁寧に、語義と生息域の実感を!

です。

過去ログを掘り起こしたついでに、もう一件見ておきましょうか。

2005-10-24
Can it really be so?
tmrowing.hatenablog.com

助動詞や副詞などでの可能性の査定や心的態度での確信の度合いなどを「%」で表示した「スケール」で単純化する指導への警鐘、批判を書いた記事です。

その後、この勢いは止まることなく今に至っている印象ですので、その途中で見聞きした巷の書籍などの情報も交えて、生成AIに動画でまとめてもらいました。
新たに食べてもらった資料は、

鈴木英次
『科学英語のセンスを磨く 第2版―オリジナルペーパーに見られる表現』(化学同人、2008年)

で、動画の中で引用されていることをお断りしておきます。
動画の解説は英語ですが、字幕も出せますので。
それでは動画をお楽しみ下さい。

The Illusion of Certainty
youtu.be

本日はこの辺で。
本日のBGM: どうしようもない恋の唄 (The Roosters)

open.spotify.com

a safe pair of hands

  • りくりゅうペア競技から引退

三浦選手のツイッター

木原選手のツイッター

坂本花織さんといい、りくりゅうペアといい、競技者としてのピークで最高の結果を残して引退するというのは稀なことです。
りくりゅうペアの場合は、世界選手権の欠場で予感はしていましたが、やはりショックは大きいですね。

朝、出講先に向かう電車の中で落涙。対面の乗客から怪訝な目で見られていました。
いや、ホントにもう帰ろうかと思ったくらいで、その後、ちゃんと授業を終えた自分を褒めてあげたいくらいです。

  • やり切ったという気持ちでいっぱいで、悔いはありません。

という二人の今後を暖かく見守ります。

さて、
前回の記事は、ツイッターで北烏山さんにRTしてもらったおかげか、アクセス数が急増。
ありがたいことです。

以下のtechnical, technicallyについての観察、たいへん勉強になります。翻訳物で、訳文のなかで浮いているがゆえに、ああ、これはtechnicallyを訳したのだな、と英語を読まなくても推察できちゃうケースを何度も見てきました。

記事本編でも書いているし、普段からも繰り返し言っていることですが、過度の一般化で「ドヤ顔」するのは勘弁して欲しいのですよね。
technicallyを「技術的に」と訳してしまうと、上手くいかないからといって、何でもかんでも「厳密に言えば」とか「理屈の上では」という訳語を、それこそ「杓子定規に」当て嵌めても、やはり上手くいかないことが出てきますから。

  • 語義と生息域を一つ一つ丁寧に。

というのが良いと思いますよ。


今日は、そんな「気になる語法」のひとつというよりは、むしろ「語法の扱い」の方で、気になることを。

比較的近年の大学入試問題に、こんな英文を完成させるものがありました。

( Each ) person has to take turns doing the dishes, ( unless ) they cooked dinner.

  • 各人が順番に皿洗いをしなければなりません。ただし夕食を作った人は除きます。

とでもいうような意味になるでしょうか。
eachは単数扱い、というだけで済ませずに、each自体に、everyとは違って「順繰りで抜けがなく」、という意味があることを覚えておきたいものです。また、unlessは唯一の例外を導くもの、と覚えていれば容易かと。
私が気にしているのは、ここで使われている

  • take turns

の扱いです。
最近の入試対策教材の多くが、「行為」「活動」が続く際に “-ing形” のみを示しているが気になります。

『インサイト』(啓林館、2024年)は、pp.280-281で、次の英文例を収録。

At the party, we took turns telling funny stories.
パーティで、私たちは順番におもしろい話をした。

解説では、

  • take turns (in) doing  「交代で〜する、順番に〜する」

というまとめ方。

『アップグレード』(数研出版、2024年)は、pp.324-325で

We drove into New York, taking turns at the wheel.
私たちは交代で運転して、ニューヨークまで車で行った。

解説では

  • take turns at the wheel 「交代で運転する」。 taking turns (at) cooking [driving] などのように動名詞を使うこともできる。

とあり、まとめの項目としては

  • take turns (at [in] A [V-ing]) 「交代で (A[V])する」

という情報処理の負荷の高い書き方をしています。

『読むため 書くための 英文法ハンドブック』(旺文社、2025年)では、p.212で、

We take turns (in) walking our dog.
私たちは交代で犬の散歩をしている。

を収録。解説では、

  • 多くの場合、in は省略されます。この turnは「順番」の意味です。

とあります。

『スクランブル英文法・語法』(第5版、旺文社、2025年)では、pp. 240-241で

Since there was only one washing machine, we had no choice but to take turns using it.
洗濯機が1台しかなかったので、交代で使わざるを得なかった。

を収録。
解説では

  • take turns (at [in]) doing 「交代で〜する」

のパターンを示しています。

古い教材ではどうだったかというと、
西尾 孝『実戦英単語活用事典』(日本英語教育協会、1981年)では、 p.544で

Mary and her sister take turns helping their mother each night.
メアリーと妹は毎夜母を順番に手伝う

を収録。

『クラウン受験英語辞典』(三省堂、2000年)では、p.1391に、

The old cottage had only one bed, so we all took turns sleeping in it.
その古い山荘には寝台がひとつしかなかったので、我々は交替でそこに寝た。

という用例が収録されていますが、成句の見出しに続くパターンの表示では、

take turns <頻出>交替でする <at…を/doing, to do …するのを>

とあり、不定詞も続けられることを示しています。

同様に不定詞も示しているのが、『大学入試 英熟語最前線 1515』(研究社、2024年)。p. 25に

take turns (in [at] ) doing / take turns to do 交替で…する

という記述はあるのですが、用例は動名詞も不定詞も、ひとつもありません。

辞書の用例/記述にも当たってみましょう。
Chambers Universal Learners Dictionary (1980年)

take turns (of two or more people) to do something one after the other, not at the same time:

  • We took turns at pushing the pram.
  • They took turns to look after the baby.

と不定詞の例を収録。

同じChambersでも Essential (1995年)になると、

People take turns or take it in turns to do something when they do it one after the other:

  • We took turns looking after him.
  • The students take it in turns to open the discussion.

と成句も用例も様変わり。ここでは、

  • take it in turns

も同じ項目に収録していますが、そちらの用例では不定詞が続いています。

Cowie時代のOxfordのイディオム辞典 (1993年)では、

  • take (it in) turns (to do sth)

という見出しで次のような定義とパターンと用例を示しています。不定詞のみです。

share a task, duty etc

  • We take it in turns, once a fortnight, my brother and me, to give the place a thorough going over. TC
  • If you can’t agree, you’ll have to take turns to sleep in the top bunk. Now, no more argument.

現行のOALDはどのように扱っているかというと、

take turns (in something/to do something)
British English also take it in turns
if people take turns or take it in turns to do something, they do it one after the other to make sure it is done fairly

  • The male and female birds take turns in sitting on the eggs.
  • We take it in turns to do the housework.
  • The kids took turns on the swing.

とあり、 <-in + 名詞(相当語句)> か <不定詞>かというパターン。用例も -ing形が直接ではなく、前置詞inのあるものが採られています。

COBUILDの初版 (1987年)では、次の通り。

If two or more people take turns to do something or take it in turns to do something, they do it one after the other, especially because this is fair.

  • You can take turns paying for evening functions.
  • The protesters are taking it in turns to chain themselves to the perimeter fence.
  • They took turns at the same typewriter.

定義では不定詞ですが、最初の用例は -ing形を収録。

これが現行版では、B2表記で、

If two or more people take turns to do something, or in British English take it in turns to do something, they do it one after the other several times, rather than doing it together.

  • We took turns to drive the car.

とあっさりしたものですが、 “one after the other several times” という頻度の記述が増えました。
用例は不定詞のみを示しています。


LDOCEの現行版(第6版、2014年)は

take turns (又はtake it in turns)英国
if two or more people take turns doing work, using something etc, they do it one after the other, for example in order to share the work or play fairly:

  • You’ll have to take turns on the swing.

take turns doing something

  • The students were taking turns reading aloud.

take turns in doing something英国:

  • We took turns in pushing the bike along.

take turns to do something

  • Dan and I usually take turns to cook.

動作・行為が続く場合のパターンは、定義文でも使われている<-ing形>に加えて、<in + -ing形>と<不定詞>が立項されています。

同じLongmanでもコロケーション辞典 (2013年)では、

take turns (also take it in turns BrE)(= with each person giving the others a chance to do something)

  • My mum and dad take it in turns to do the cooking.

とtake it in turns の不定詞の例のみを示しています。

米語の辞書も見ておきましょう。
今は無きマクミランのMED。

take turns
if people take turns, each of them does their share of it, one after the other:

  • We took turns steering the boat.

と -ing形のみ。

MW’s Learnersでは、

take turns also Brit take it in turns
If people take turns doing or using something or take it in turns to do or use something, they do or use it one after another in order to share the responsibility od opportunity of doing or using it.

  • We take turns washing the dishes.
  • The kids took turns on the swing.

となっていて、不定詞は示していません。

意外にも、MW’sの一般用には豊富な用例。

take turns
phrase
variants: also British take it in turns
Definition: to do something one after another in regular succession in order to share the responsibility or opportunity of doing it : ALTERNATE

  • We take turns washing the dishes.
  • Almost immediately, Rick and Diane begin videotaping their classroom lessons, letting their students take turns with the cameras. - Ann Bradley
  • Several youths were around the phone, taking it in turns to gossip and joke with the operator. - Christopher Isherwood

First Known Use
1613, in the meaning defined above

こちらでは、-ing形と不定詞の例(英用法と注記のある take it in turns)が示されています。

2026年4月18日追記:
米語の辞書であるNOADから不定詞が使われている例を。

  • breakers take part in dance battles in which dancers take turns to show off their best moves. ... (breakerの項の用例で)
  • people take turns to sing popular songs into a microphone over prerecorded backing tracks.... (backing trackの項の用例で)

Cambridgeでは

take turns [B2] (MAINLY UK take it in turn(s))
When a number of people take turns, they do the same thing one after the other:

  • We take turns to answer the phone.

と不定詞の例。
Web版では用例が追加されています。

  • We take turns answering the phone.
  • We take turns cooking.
  • They took turns posing for photos with the actor.
  • The boys took turns rowing.
  • My parents would take turns to sit by my bed.
  • You can't both play with the truck at the same time - take turns.
  • UK We took it in turns to ride the pony.
  • UK They took it in turn to keep watch.

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/take-turns

この用例でのUKという提示の仕方を見る限りでは、所謂米用法では -ing形で、英用法では不定詞、ということかと。

そろそろ学習英和に移りましょうか。

WisdomもG6もパターンとしては不定詞も示していますが、不定詞の例も示して、用法の注記をしているのはG6。

O-LEX (第3版、2024年)は現時点で最新の学習英和ですが、記述は悩ましいものです。
パターンの表示と用例が一致していません。

tàke túrns
交替で[代わる代わる]する〈at, in, with …を / to do …するのを〉
take ~s with the driving
交替で車を運転する
We took ~s (at [OR in]) going to the hospital to take care of our mother.
我々は交替で病院に行き母の世話をした
(◆ doing の前の前置詞はしばしば省略する)

示されたパターンには -ing形がないのに、用例は -ing形という…。

ちょっと時系列を遡りますが、『英和イディオム完全対訳辞典』(朝日出版社、2003年)では、

take turns ((in/with/at) doing/ with [on] something) (with someone)
「(〜を)(人と)交替でやる、代わりばんこにやる、順番にやる、分担して交代でする」(おもに英)では、take turns to doと、不定詞もとる。

というパターンと訳語を示しています。この段階で英用法に言及しているので、文用例では、不定詞の例は示されません。-ing形の絡む用例のみ抜粋。

  • Let’s take turns driving. (交代で運転しようよ)
  • He and I take turns in teaching this course. (この講座は彼と私が交代で教えている)
  • My roommate and I take turns at solving the hard math problems. (ルームメイトと私は難しい数学の問題を分担して代わるがわる解く)

最後にオンラインコーパスの検索結果など載せて本日は終了。

COCA



米用法では -ing形が断然優勢。前置詞に続くパターンよりは不定詞が優勢ということでしょうか。

Glowbe

  • ing形

北米で多く見られることがわかります。

前置詞に続く-ing形は少数。

不定詞は英文化圏 (GB/AU/NZ/IN/HK/ZA) で見られることがわかります。

Ngram Viewerでの米英比較も見ておきましょう。



圧倒的に -ing形です。



不定詞の頻度が高い結びつきもあります。

高頻度とは言えないまでも、不定詞を使う地域/文化圏は存在するので、テストでの解答をひとつに限定することは避けるべきだし、指導する場合にも配慮は必要だろうと思います。

次のような不定詞文化圏を無視するような作問・出題は感心しません。

The children took turns [ ] the heavy baggage all the way for their grandmother.
ア carrying イ carried ウ for carrying エ carry

NOWコーパスでの検索だと、最新の英語の実態に触れることができますが、このtake turnsに関して言えば、ことばにするのが憚られるような表現例が上位にくるので、今回は避けています。
悪しからず。

本日のBGM: Someone take the wheel (The Replacements)

open.spotify.com

2026年4月18日追記:
take turns に不定詞が続く実例

This will be the world record..
The story of a flag that hasn't come down for 685 hours! People in Tehran register and take turns to hold this flag.


Kagi訳: これは世界記録になります。
685時間も降ろされていない旗の物語!テヘランでは人々が登録して、交代でこの旗を掲げています。

LDF, UDF took turns to loot Kerala, people want change, says PM Modi
Assembly Election 2026 Live Updates:
Assembly Election 2026 Highlights: Trinamool releases campaign song portraying Mamata as ‘Bengal Tigress’ - India Today
#Kerala #NarendraModi #AssemblyElections


Kagi訳: LDFとUDFは交代でケーララを食い物にしてきた。人々は変化を望んでいる——とモディ首相
2026年議会選挙 ライブ更新

In Spanish, our Year 5 children looked at recapping their Spanish skills with a game of snakes and ladders.
Each pair took turns to roll the dice and move along the board, whenever they landed on a star they had to ask their partner a question in Spanish.


Kagi訳: スペイン語の授業では、5年生の子どもたちが「すごろく」を使ってこれまでのスペイン語の力を復習しました。
ペアごとに交代でサイコロを振ってマスを進み、星のマスに止まったら、スペイン語で相手に質問をしなければなりませんでした。

I once walked past a family taking turns to take photos of each other. I walked back and asked them if they wanted photos together as a family. They were too excited about it, and that made my day. Needless to say, I brought my A-game that day.
Kagi訳: 以前、家族が交代で写真を撮り合っているのを通りがかりに見かけました。引き返して、「ご家族一緒の写真、撮りましょうか?」と声をかけたら、すごく喜んでくれて、それが一日中うれしかったです。言うまでもなく、その日は本気を出しました。

融通無碍

今日の「気になる語法」は

  • technical 界隈

です。

こんなツイートをしていました。

現代英語のtechnicalの語義用法を踏まえて読まないとこのGoogle翻訳のように不適切な日本語を出力してしまうので要注意! 派生副詞のtechnicallyの扱いが最近の大学入試対策で話題らしいけど、その元になる形容詞technicalも英語の理解、さらには表現で重要です。これ、拙ブログで取り上げようかね。

元ツイの英文はこちら。

It would be bizarre if the US went to Islamabad insisting on zero enrichment, knowing it would never be accepted by Tehran. Indeed, if the nuclear issue were really the focus, it could never be agreed upon within one round of talks, given its technical complexities.

iOSのtwitterアプリでデフォルトなのは、Google翻訳。
こんな和訳になっています。

米国がイランに核兵器の完全排除を主張して会談に臨むとしたら、テヘランがそれを決して受け入れないことを承知の上での行動としては、実に奇妙なことだろう。実際、核問題が本当に会談の焦点となるのであれば、その技術的な複雑さを考えると、一回の会談で合意に至ることは決してあり得ない。

“its technical complexities” の部分を「その技術的な複雑さ」としていますが、”technical” を「技術的な」と訳して済ませてしまうと、何のことか、何の技術なのかがわかりません。

形容詞のtechnical (とその派生副詞のtechnically)の現代英語での語義用法に照らして、該当箇所、および全文を適切に読み取ることが求められます。

今日のブログでは、最後に上記英文の、できる限り適切な日本語訳と英語でのパラフレーズと、その日本語での解説を載せますが、まずは、現代英語でのtechnicalとtechnicallyの語義・定義と実例を見ていきましょう。

冒頭のツイートで、最近の大学入試対策で “technically” が話題と書きましたが、この副詞は、別に最近になって英語で使われ始めたわけではありません。注目を集める要因としては、この副詞の元になる形容詞 “technical” が、とかく「技術的な」という和訳で事足りる、としてしまうことがあると思っています。元から質すのが吉。

technical の語義で英和辞書でもお馴染のものの筆頭は

  • technical innovation 技術革新 (G6)

のような使われ方で、これは「技術に関わる;技術面での;技術的な」という訳語が適切なもの。 

  • technical = 技術的な

で全く問題の無い例です。
では、この語義を英語で定義するとどうなるでしょうか?

OALD英英和から。

[usually before noun] connected with the practical use of machines, methods, etc. in science and industry

  • We offer free technical support for those buying our software. ソフトウェアを購入された方には無料の技術的なサポートがつきます.
  • The organization provides technical assistance to farmers. その組織は農場主に技術的な援助を行う.

生息域は科学や産業の分野となるでしょう。

もう少し、人に関わる、個人的な意味合いで使われる例としては、

  • 彼の演技は技術的に完璧に近い His performance is close to technical perfection. (W和英)

があげられるでしょう。
次も類例です。

  • As a teenager Picasso already displayed sure technical control. 10 代のときにピカソはすでに確かな技量を発揮していた (英和活用大)

OALD英英和だと、

[usually before noun] connected with the skills needed for a particular job, sport, art, etc.

  • She doesn't possess the technical ability to perform the song well. 彼女はその歌をうまく披露する技能を持っていない.

と定義されて、用例が示されています。

  • 技術=技能

で使われることを考えると、この場合でも「技術的な」という和訳は必ずしも的外れ、不適切とは言えないものです。

これに対して、「技術」という日本語がむしろ “technical” の適切な理解を妨げてしまう例があります。

  • technical terms 「専門用語」

などというときの technicalです。次の例も同様。

  • 専門的知識を養成する cultivate [develop] a technical knowledge. (W和英)

英語での定義 (OALD英英和)。

connected with a particular subject and therefore difficult to understand if you do not know about that subject

  • A lot of the discussions were highly technical. 議論の多くは非常に専門的なものだった.
  • The article is full of technical terms. その記事は専門用語でいっぱいだ.

通例は、「専門的な」などという訳語が当てられるところでしょう。

そして、派生副詞が注目される語義のtechnicalがこちら。

  • (比較なし)[通例名の前で]規定 [法律] による, 厳密な規定に従った
  • a technical violation 規定違反. (W英和)

[通例限定] 厳密な規定[解釈]に従った; 判定による

  • a technical point 法律 [規則] の細かい点
  • get technical about ... …について正確を期する. (G6)

(比較なし)(通例限定)厳密な規則[法解釈]による (O-LEX英和)

限定 規定上の[による]; 厳密な法解釈[規定]に従った(場合の). (ライトハウス英和)

学習用ではなく、一般用の英和では『Random House英和』(小学館)に訳者チームの苦労の跡が見られます。

〈法や規則を〉厳密に解釈した場合の,純原理上の

  • a military engagement ending in a technical defeat 厳密には敗北に終わったといえる交戦.

この語義を英英ではどう定義しているか? OALD英英和では、

厳密な規則の
[only before noun] connected with the details of a law or set of rules

  • Their lawyers spent days arguing over technical details. 彼らの弁護士たちは厳密な法解釈の詳細に関して論じ合うのに数日を費やした.

という扱い。「技術的な」では全くズレてしまいます。
同じOxford系でも、『Oxfordアカデミック』では定義は同じですが、次の用例を載せています。この例でも「より厳密な法解釈」という理解が重要です。

connected with the details of a law or set of rules

  • The more technical aspects of the law relating to appeals are outside the scope of this study.

この形容詞の語義を押さえずに、派生副詞のtechnicallyだけを何とかしようとしても上手くいかないのではないかと思っています。

OALD英英和でのtechnicallyでは、上述の「厳密な解釈」を意味する形容詞technicalに対応する語義が一番上に来ています。

1厳密には
according to the exact meaning, facts etc.

  • Technically (speaking), the two countries are still at war. 厳密に言えば, その2国はまだ戦争状態にある.
  • It is still technically possible for them to win (= but it seems unlikely). 彼らが勝つ可能性は厳密に言えば, まだなくはない.

Oxford アカデミックでは、さらに用例が追加されています。

according to the exact meaning or facts
STRICTLY, strictly speaking at STRICTLY

  • The child is not technically a witness and should not be cross-examined.
  • A food company may provide information that is technically correct, but omit to provide vital information about side effects associated with consuming the food.
  • Technically, a species can have only one scientific name, although it may be known by any number of ‘common names’.

technically speaking

  • A dolphin is technically speaking a mammal, but superficially appears more similar to a fish.

このブログで私自身が書いた部分でも、この語義の ”technically” を引き合いに出したものがあります。

辞書にも次のような例があります。

  • Mitchell beat Lewis by three-hundredths of a second. ミッチェルは100分の3秒の差でルイスに勝った. (COBUILD英英和)

100分の1が “a hundredth” ですから、杓子定規に言えば (technically)、

  • 100分の3 = three-hundredths

で間違いはありません。
tmrowing.hatenablog.com

この「杓子定規に言えば」という訳語は私自身が高校3年生くらいの頃から見聞していたと思います。

ということで、副詞のtechnicallyの整理もしておきましょう。

「杓子定規には」「理屈の上では」「表向きは」「建前では」の文脈での technically

  • 厳密に言えば (strictly speaking) - When applied rigidly according to exact definitions or rules
  • 形式的には/建前としては (formally / officially) - Following the letter rather than the spirit of something
  • 杓子定規に当てはめるならば - Applying rules or definitions inflexibly, without consideration for context
  • Technically (speaking), watermelons are a kind of vegetable. 厳密に言うと, スイカは野菜の一種である(Wisdom英和)

NOADの定義と用例では、

[usually sentence adverb] according to the facts or exact meaning of something; strictly:

  • technically, a nut is a single-seeded fruit. 

が語義項目の最初に来ていることに注目。

入試での出題例も見ておきましょうか。

A mystery detective story usually contains a detective of some kind, an unsolved mystery (not always technically a crime), and an investigation by which the mystery is eventually solved.
ミステリー探偵小説には、通常、何らかの探偵、未解決の謎 (必ずしも厳密な意味での犯罪とは限らない)、そしてその謎が最終的に解決されるための調査が含まれます。

Technically, you are not allowed to bring food into the park.
厳密に言うと(=杓子定規にルールを適用するなら)、公園内に食べ物を持って入ることは禁止されています。

まあ、この環境で使われている technicallyを「技術的には」と捉えてしまうと苦戦を強いられますね。
この語義の副詞technicallyに関しては、翻訳家の越前敏弥さんの書かれたこちらのエッセイをリンクが生きているうちに是非とも読んでおきたいところです。

【連載コラム 第16回】
越前先生の「この英語、訳せない!」
technically ― 「技術的」とはかぎらない
education.japantimes.co.jp

流石に、餅は餅屋。翻訳家は凄いですね。

では、元になる形容詞technicalの問題は全て解決したか?というとそんなことはないのです。
「技術的な」「専門的な」の語義が拡大して使われている例がかなりあるということに注意が必要です。

ようやく本題に戻れました。
冒頭の英文記事、

It would be bizarre if the US went to Islamabad insisting on zero enrichment, knowing it would never be accepted by Tehran. Indeed, if the nuclear issue were really the focus, it could never be agreed upon within one round of talks, given its technical complexities.

の最後、 “its technical complexities” の扱いです。

この “technical complexities” での “technical” は、ただ単に「技術的な(テクノロジーに関する)」という意味ではなく、現代英語で広く使われる次のような意味を表すものです。

technical

  • relating to the details or rules of a particular subject, process, or activity
  • involving the specific, often intricate procedural or formal aspects of something

日本語で言うならば、「専門的・実務的な細部に関わる」「手続き的・制度的に込み入った」とでもなるでしょうか。
このニュースで取り上げている「核濃縮問題をめぐる交渉」には、「核」査察体制の設計や構築、ウラン濃縮上限の数値設定での合意形成、段階的な履行をするにしてもそれをどのような手順で検証するか、制裁解除の条件設定、コンプライアンス違反時の対応など、両国(多国)間での交渉の実務的・制度的な細部が無数に存在することがわかっています。
“its technical complexities” の “its” は単純に考えれば、その直前にある “the nuclear issue” を受けていることになりますが、実際に “technical complexities” が表しているのは、

  • 「専門的かつ実務的に詰めるべき複雑な細部」
  • 「合意に至るために専門家が厳密に詰めなければならない実務的・制度的な細部が複雑で入り組んでいる、煩雑である」

とでもいうものです。当該語句を英語でパラフレーズするとすれば

  • …given the intricate procedural and substantive details that would need to be worked out

とか

  • …given how many specific, complex points would have to be negotiated in detail

のように、「技術 (テクノロジー)」の側面ではなく、「交渉上詰めなければならない専門的・実務的な論点が多岐にわたり込み入っている」という側面を前面に出すのが吉。

“given …” から和訳するなら

核合意に付随する、高度に専門的な細部の取り決めや、複雑な手続き上の要件、そして厳格な検証手順が多岐にわたることを考慮すると

辺りがかなり近いでしょうか。

等価の和訳は難しいので、ことばを補って全文の説明をするなら

米国がウラン濃縮の全面禁止を主張してイスラマバードの会談に臨むとしたら、テヘラン (= イラン政府)が決してそれを受け入れないことをわかっていながら、会談に臨むということになり、奇妙としか言いようがない。実際に、核(濃縮)問題が本当にこの交渉の本丸であるならば、合意に付随する実務上の手続き、専門的な細かな論点や取り決めが多く、複雑に絡み合っているわけであるから、それがたった1ラウンドの協議で合意に達することなどあり得ない。

とでもなるでしょう。

ClaudeにGoogle翻訳との主な相違点の整理をしてもらいました。

箇所 Google翻訳 問題点 改訳での対応
--- --- --- ---
`went to Islamabad` 「会談に臨む」 場所(イスラマバード)が消えている。会談の開催地がパキスタンであるという情報は文脈上重要 「イスラマバードの会談に臨む」
`zero enrichment` 「核兵器の完全排除」 enrichment(濃縮)と核兵器は別概念。濃縮ゼロの要求は核兵器廃棄とは異なる 「濃縮の全面禁止」
`its technical complexities` 「その技術的な複雑さ」 上述の通り、`technical` を「技術的」と訳すと核技術・工学の話に誤読される 「詰めるべき専門的な論点があまりに多岐にわたる」
`within one round of talks` 「一回の会談で」 訳としては許容範囲だが、`round of talks` は外交用語として「一巡の協議」のニュアンス 「一回の協議で」

今回の「気になる語法」で取り上げた “technical” 以外に、 Google翻訳では、 “zero enrichment” の扱いが大きな誤解を生むものとなっています。

  • 「核兵器の完全排除」

は明らかに誤訳で、原文にある「ウラン濃縮活動の権利をめぐる交渉上の争点」が全く変わってしまうので、technical の訳出以上に重大な問題です。

今回ターゲットとなっている

  • technical complexities

の別の例も見ておきましょう。

解釈の「肝」は、

  • 複雑性
  • 相互依存性
  • 専門的知識・技能の必要性

となるでしょうか。

Enabling Effective Risk Management: Knowledge of technical complexities enables the Product Owner or manager to anticipate and mitigate technical risks proactively, minimizing timeline disruptions and ensuring smoother delivery.
age-of-product.com

この英文は、Product Owner(プロダクトオーナー)やマネージャーといった「ビジネス側・管理側の人間」が、なぜ技術的な知識を持つべきなのか(Enabling Effective Risk Management)を説明しています。

彼らが把握すべき technical complexities とは、ユーザー側から見えるフロントエンドの裏側にある、以下のような「エンジニアが直面する実装上の専門的な制約や構造的な絡み合い」を意味する、という点で、上述の二国間交渉と通ずるものがあります。

この文章に特化した内容としては、「製品開発やプロジェクト運営の中で、技術面で問題化しやすい複雑な要因・依存関係・実装上の難しさ」を指しています。
たとえば具体的には、

  • システム構成が複雑であること
  • 相互の依存関係が多いこと
  • 既存システムとの統合が難しいこと
  • 性能・安全性・拡張性などの要求が相反すること
  • 実装難度や効果/結果の検証難度が高いこと

があげられます。
英文の後半では、この「複雑さ」を知っている(Knowledge of technical complexities)ことが、どのようにリスク管理に直結するかが論理的に説明されています。

和訳とパラフレーズ
和訳例

効果的なリスク管理の実現: 実装に伴う技術的な複雑さ(込み入った技術的仕様)を理解していることで、プロダクトオーナーやマネージャーは技術的リスクを事前に予測・軽減できるようになり、スケジュールの遅延を最小限に抑え、より円滑な提供(デリバリー)を確実なものにできる。

この2例の technicalの語義を見るだけでも、過度の単純化が難しいことがわかるでしょう。

英語の実態、実像を柔軟に捉えることができるようになると、辞書でよく見る、次のような短い例文も、その意味の幅や奥行き、高さ、深さに対して、「技術的;技術上;技術面」とは別の、さらに複雑な解釈をする余力が生まれるのではないでしょうか。

  • due to technical difficulties 技術上の問題により (コンパスローズ英和)
  • overcome technical difficulties 技術的難問を克服する (G6)
  • We're having technical difficulties. 我々は技術的問題を抱えている (W英和)
  • The program is now seven years behind schedule as a result, firstly of increased costs, then of technical problems.その計画は現在予定よりも7年遅れています。それは第1に費用の増加、次に技術的な問題の結果です。 (COBUILD米語英英和)
  • a technically complex process 技術的にこみ入った工程 (英和活用大)

ロングマンの辞書サイトにある次の “technically” を含む用例も、同様に丁寧な扱いが必要でしょう。
https://www.ldoceonline.com/dictionary/technically-possible-difficult-feasible-etc

The members thought that it was technically feasible and, under the right conditions, could benefit the region.

Although it is already technically possible for network administrators to monitor Internet traffic, such tracking has been difficult to do.

このような例を「理屈の上では、厳密な解釈によれば;杓子定規に言えば」の意味に解釈するのは筋が悪いと思います。
市販の受験対策教材も、虚心坦懐に読み直してもらうのが良いように思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: TKO (Elvis Costello & The Attractions)

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歓声は必要か?

今日は告知から。

noteで公開している記事/マガジンの改訂・更新のお知らせです。

2026年版 英語辞書を使いこなすには?
note.com

旧版のマガジン「辞書を使いこなすには?」の中身の記事を改訂・更新してまとめています。

  • 無料公開分の「辞書活用法ガイダンス」(アプリ辞書活用法を中心に)も2026年版に大幅改訂しています。
  • 「辞書活用法」(前半) 、「辞書活用法」(後半)は部分改訂をして2026年版は合本にしました。
  • 『コウビルド』のトリセツにあたる記事は既に2025年版で大幅に加筆していたので、今回はそのままです。

記事単体より格段にお得なこちらのマガジンで是非。


中身の記事も少しだけ紹介。

1. 辞書活用法ガイダンス(2026年改訂版無料公開分)
note.com

近年、急速に進化を遂げている「物書堂」さんのアプリ辞書に関しては、その活用法のうち、用例検索とブックマークの作成について詳しく取り上げています。
・キーワードの組み合わせによる用例検索
・日+英のキーワードでの用例検索
・記述内容や解説で用いられる「用語」「文字列」での「内容の検索」
なども解説しています。

この「物書堂」のアプリ辞書の活用法に関しては、オンラインセミナーで、画面共有で実際の操作画面をお見せしながら、さらに詳しく解説しています。
前回は4月4日の開催でした。
不定期で実施していますので、このブログやツイッターの告知などお見逃しのないように。

以下の2本の記事は期間限定でセール中です。

2. 2026年版 辞書活用の手引き(合本)
note.com

「この手引き」の旧版の10項目は改訂版でも踏襲していますが、Google BooksのNgram ViewerやCOCAなどのオンラインコーパスの検索結果などを最新のものに更新し、用例と解説の加筆修正を行うなど大幅に加筆しています。
高校生用の英語辞書のガイダンスでは、手持ちの辞書の特徴と特長、持ち味・個性を知るための観点として、1990年代から一貫して、次の、0. - 10. までの項目に添って授業のための資料を作成してきました。

  • 0.それぞれの辞書の名前 (crown, wisdom, progressive, anchorなど)
  • 1. give, help, pickや happy, honest, readyなどの「基本語」と呼ばれる語の扱い(と訳語)
  • 2. in, by, out, over, with などの前置詞・不変化詞
  • 3. make out, put up withなどの句動詞と疑問・否定などの文脈
  • 4. advice, paper, person, peopleなど名詞の可算・不可算の扱い
  • 5. sayとtell, opposeとobject、save など「自動詞・他動詞」や「目的語」の扱い
  • 6. will, can, may, must, have to などの助動詞的表現とその過去形の扱い
  • 7. impossible, natural など to+原形と使われる形容詞の語法の類型化
  • 8. willing(ly), practical(ly), frightened(ly) などの派生副詞(句)の用例(と訳語)
  • 9. cry, smile, frown, shrug などのfacial expressions, non-verbal communicationに関する語
  • 10. worthなど語法に幅・揺れのある語とneed, require, deserveなど関連語の語法

表紙を除き、A4で約40頁に及ぶ「手引き」となります。pdfリーダーであれば、文字検索も可能ですのでご活用下さい。

特定の辞書出版社に忖度などせず、是々非々で辞書を取り上げています。
「どの辞書を買えばいいか?」ではなく、「自分の手持ちの辞書をより良く知るためには、どういう語句、表現を調べるのがいいか?」というガイダンスです。
必要としている人に届くことを願っています。

次の記事は旧年度版と同じです。

3. コウビルドのトリセツ(2025年版)
note.com

  • 『コウビルド』の本編の文法コードの表記、パターンの類型の中には、日本の英語教育で長らく支配的な位置を占めている「文型」の表示がありません。いえ、本当に、「5文型」であれ、「7文型」であれ、「動詞型」を類型化して凡例/典型例を示す、というやり方を採用していないのです。
  • 巷で多く行われている「文型」はいわば「動詞型」のことですから、その動詞の使われ方の典型的な用例が既に分かっている人にとっては、例文が示されれば、数字・番号であれ、何らかの記号付けであれ、意味や形・構造との対応は容易です。
  • ところがCOBUILDでは、日本の英和辞典のような文型表示とはなっていないので、どのような記号を用いて、どのように意味と形・構造を整理して扱っているのか、というCOBUILDならではの「芸風」を知っておく、慣れておくことが重要だと思います。

「コウビルド読みのコウビルド知らず」にならないためのトリセツだと思って下さい。

中身は4つのpdfに分かれています。詳しくは、上記noteのリンク先でご確認下さい。
もう、英英辞典に日本の出版社の作った『てびき』がつくことはないと思いますので、活用して下さい。

「物書堂」のアプリ辞書も春のセールも開催中です(4月23日(木)まで)。
詳しくは以下のリンク先を!

www.monokakido.jp


さて、
前回の記事で、句動詞のbrush up (on) を取り上げ、最新の生成AIとのやり取りの結果を示しました。

tmrowing.hatenablog.com

反響は殆どありませんが、あの記事の解説が、ほぼ実用に足るレベルになったのは、偏に

  • 「Web巡回では得られない複数の紙辞書の版を跨いだ定義」

を食べさせていたから、だと思っています。

ただ、AIに丸投げしても、最新のClaudeのOpusくらいだと調べる範囲も広く、比較考察まで行ってくれますが、

  • Garbage In, Garbage Out.

の喩えよろしく、入力が雑だと、出力もお粗末になりがちです。
まだまだ、目利き腕利きの入力がものを言うところは残っているようです。

この “brush up” に関連して、大事な辞書からの引用を忘れていたので、こちらに追記しておきます。
1980年代前半ですので、「古き時代」の語義・生息域となりますかね。

dusting off / brushing up
この二つは全く同義で、昔とった杵づかの塵を払って、つまり少し錆びついた、昔おぼえた技術に磨きをかけ直して、せっかく向いてきたチャンスに備えようというものである.

  • ① “Volkswagen of America : Dusting off. the mystique that sold the Beetle."

これは、アメリカにおける外車戦に関する Business Week の記事の見出しで、意味はフォークスワーゲンのアメリカ支社は、かつて世界で最も売れたというカブト虫 (Beetle) の形をしたフォークスワーゲン車の売込み技術の秘訣に磨きをかけ直そうと張り切っているというのである.

  • ② “I have to brush up my shorthand."

これは昔速記者だったが、今は別の仕事をしている女性が有利な速記者の口がかかって来たので、さびついている速記をとぎ直して、役に立てようというのである。

出典は、

  • 最所 フミ 編著 『現代アメリカ語辞典』(日本翻訳家養成センター、1983年)

です。

この新書判の辞書は、私が高校生の頃、定期購読していた月刊誌『翻訳の世界』の連載に加えて、研究社の『現代英語教育』や、アルクの『イングリッシュ・ジャーナル』に寄稿したものを再編し加筆したものと、「まえがき」にあります。
この後、研究社から同著者による『アメリカ英語を読む辞典』が1986年に出ることになります。

判型も同じ新書判で、収録語句の重複も多く、ページ数もそれほど変わらないのですが、増補版というわけではなく、この dust off /brush up は研究社版ではカットされています。

  私が今でも “brush up” を取り上げて「サビ落とし」と言うのは、この最所の解説の影響や、17年前に過去ログのコメント欄でやり取りをした久保野雅史先生の影響が濃いようです。

普段の指導や評価で私が気にしていることの一つは “brush up (on)” の 「テスト」での問われ方です。
これ、英文の空所補充完成で出題するときにカッコの数って問題になりますよね? いやことば遊びじゃなくって、本当に。
brush up 文化とbrush up on 文化の両方を知らないと正答が得られないようなテストは避けたいと思っています。
現代英語のコーパスを見ると、onの出現頻度が高いような印象ですが、それでもまだまだonのないものも多く使われているので。

台本のある話し言葉を反映するTVコーパス。

onなしでbrush up。頻度に文化差、地域差がないとは言えない印象。

onつきでbrush up on。こちらも文化差、地域差がありそう。

最新の世界の英語ニュースを集めたNOWコーパス。

onなしでbrush up

onつきでbrush up on

こうしてみると、たとえば、

  • 錆びついた中国語をやり直さないといけない。

という日本語に対応する英語表現の完成を求めるときに、

  • I'll have to (brush) (up) my rusty Chinese.

と空所を2つ設けて解答を要求したり

  • I'll have to (brush) (up) (on) my rusty Chinese.

と空所を3つ設けて解答を要求したりするのは、教育上の配慮がないと思うのですね。

どっちでもいいんだったら、どっちかだけでもいいはずなんですよ。

英語の指導者や、テストの作問・出題者の方たちには熟慮をお願いしたいところです。

本日はこんなところです。
本日のBGM: 春だったね ’73 Live (よしだたくろう)

open.spotify.com

"give me one more try"

句動詞の “brush up (on)” は多くの英和辞典では

  • 単に技術を向上させるということではなく、「鈍った腕」などを磨く = 磨き直し、という意味

と説明されていますが、英英辞典(≒英語圏の辞書)ではそのあたりの語義の核、肝がはっきりしないので、これまでにも少し詳しく取り上げたことがありました。

tmrowing.hatenablog.com

tmrowing.hatenablog.com

この二つの記事は、2009年の4月のものですから、もう17年も前になります。

その後、

tmrowing.hatenablog.com

でも少しだけ気にしていましたが、この記事が2016年。
ただ、この当時にわざわざとりあげたということは、既に何か変化を感じていたのかもしれません。
そして、そこからさらに10年が経っていますから、英語の用法や語義にも変化がないとは言えません。

  • あの頃の自分には出来なかったこと、分からなかったことが、今なら出来る?

ということで、このような過去ログの記述に加えて、近年までの辞書での扱いの変遷や、辞書による、文化圏による差異を踏まえて、生成AIに投げ掛けてみました。

brush up (on) を「単純に技術の向上」に用いるのは、語義の適用範囲が拡がったと考えるのが良いのか、「サビ落とし」という前提/制約がなくなったと考えれば良いのか?

分かる範囲でまとめて回答をお願いします。
いつものように、AI三者に、当該の過去ログの記述、辞書の定義などを全て読んでもらった上で訊いていますが、それぞれの回答が濃いので、ここでは一つだけ抜粋します。

Claude 4.6 Opusの回答

"brush up (on)" の語義変遷——「サビ落とし」の制約は消えたのか、適用範囲が拡がったのか

結論を先に
両方の側面がありますが、辞書記述の変遷を通時的に追う限り、より正確には「サビ落としという前提/制約が段階的に緩んだ(あるいは辞書編纂者が意図的に落とした)結果として、適用範囲が拡がったように見える状態が生じている」と整理するのが妥当だと考えます。つまり、「制約の脱落」が先行し、「適用範囲の拡大」はその帰結として現れている——という順序関係です。ただし、その「脱落」が実際の用法変化を反映したものなのか、辞書編纂上の方針転換(簡潔化・汎用化)の産物なのかは、切り分けて考える必要があります。

1. 辞書記述に見える通時的パターン

ご提示の資料から、各辞書の定義要素を分解すると、brush up (on) の語義核を構成してきた要素は大きく3層に分かれます。

内容 典型的な表現
--- --- ---
A. 行為そのもの 学習・練習・改善する improve, practise, study, revise
B. 対象の前提状態 以前は持っていたが鈍っている/忘れかけている previously learned, knew but have not used, partly forgotten, was lost
C. 行為の目的・方向 以前の水準に戻す regain, once again, as good as you were in the past

旧い定義ほどB層・C層が明示的に書き込まれており、新しい定義ほどA層のみに収斂している——これが、ご提示の資料全体を貫く最も明瞭な傾向です。
具体的な脱落の年代的推移を整理すると:

1970年代〜1980年代後半: B層・C層がほぼ必ず定義に含まれる(LDCE初版の "known but partly forgotten"、COBUILD初版の "but have not used for a while" + "revise"、Cowie OALD第4版の "that was lost")

1990年代: B層がまだ残るものの、表現がやや緩む傾向(OALD第5版 "that one has lost"、Cambridge句動詞辞典 "but have partly forgotten")

2000年代〜2010年代: B層・C層の脱落が加速(LDOCE第3版以降、COBUILD句動詞辞典第3版、OALD第10版では "especially when you have not used it for a time" とhedgeつき)

2020年代: 多くの主要辞書でA層のみの定義が定着(COBUILD第10版 "practise it or improve your knowledge of it"、ODE "improve one's existing knowledge")

2. 「制約の脱落」と「適用範囲の拡大」は同じ現象ではない

ここが肝要な区別です。
2a. 制約の脱落=辞書記述レベルの現象
辞書編纂の実務的文脈を考えると、B層・C層の記述が消える理由として、少なくとも以下の複数の要因が並存し得ます。

  • 1. 実際のコーパスデータにおいて「サビ落とし」以外の用法が増えたことを反映している
  • 2. 辞書全体の編集方針として定義の簡潔化・汎用化が進んだ(とりわけCOBUILDは版を重ねるごとに定義文の短縮傾向が顕著)
  • 3. 学習者向け辞書では、制約条件を書き込みすぎると使用を萎縮させるという配慮が働いた

COBUILD句動詞辞典の1989年→2012年の変化は、(2)の要素が強いように見えます。"but have not used for a while" という限定節を外したのは、定義文のスリム化という編集判断の面が大きい。一方、OALD第10版が "especially when you have not used it for a time" とespeciallyで残したのは、中核的語義としてのB層はまだ生きているが、それを必須条件(necessary condition)から典型条件(prototypical condition)へと格下げした、という編纂判断の表れと読めます。

2b. 適用範囲の拡大=用法レベルの現象
定義からB層が消えたからといって、実際の使用において「サビ落とし」のニュアンスなしに brush up (on) が自由に使われるようになったかというと、そこまで単純ではないと考えます。

  • NOADが "previously good knowledge" と明記している事実は、少なくとも米語の規範的感覚として、「以前できた/知っていた」という前提がまだ意識されていることを示唆します。
  • Merriam-Webster学習者版が定義自体は素っ気なくとも、用例で "My Spanish is very rusty" を選んでいる点は、用例レベルでの「生息域」(ご自身の表現を借りれば)への配慮であり、定義から落ちた情報を用例で補填する編纂戦略です。
  • ジーニアス第6版の「(しばらく使っていなかった)」という括弧書き、Wisdom第4版の「さびついた」という限定語、O-LEX第3版の「忘れかけた」——いずれも2019年以降の改訂版でなお明示的にB層を保持しています。英和辞典がこの点で保守的なのは、日本語の「磨き直す」「やり直す」という訳語自体にB層の意味が内包されているため、それを落とすと訳語との整合性が崩れるという事情もあるでしょうが、それだけではなく、英語の用法実態としてもB層が依然として中核にあるという判断が働いていると見るのが自然です。

3. ではどう考えるのが最も整合的か

以下の三段階の整理が、ご提示の資料群と最もよく整合すると考えます。
(1)中核義は今もなお「サビ落とし」である
brush up の比喩的原義——表面の汚れ・曇りをブラシで磨いて元の状態に戻す——から導かれる「以前の水準への回復」という語義核は、消失したのではなく、辞書定義の表面から後退しただけで、語の意味的DNAとしては健在です。実際、ネイティブスピーカーに "I need to brush up on my cooking skills" と言ったとき、「以前は料理ができたがしばらく離れていた」という前提が自然に了解される——これは語義核が生きている証拠です。

(2)ただし「必須条件」から「典型条件」へのステータス変化が起きている
OALD第10版の "especially" が象徴的ですが、「サビ落とし」は brush up (on) を使うための絶対的な前提条件(必要条件)ではなくなりつつあり、最も典型的な使用環境(プロトタイプ)という位置づけに移行している、と見るのが妥当です。これにより、「以前は全くできなかったが、少し学んで向上させたい」という場面でも brush up (on) が使われる余地が——特にインフォーマルな文脈で——生じています。

(3)辞書定義の簡潔化がこの変化を実態以上に増幅して見せている
ここが見落としやすい点です。COBUILD・LDOCEなどの定義変遷は、純粋に用法変化を反映しているというよりも、辞書編纂方針の変化(定義の短縮化・inclusive化・制限条件の削減)と用法変化が混線していると見るべきです。つまり、定義から "partly forgotten" が消えたことをもって「語義が変わった」と即断するのは危険で、
辞書記述の変化量 > 実際の用法変化量
という可能性を考慮に入れる必要があります。

4. 補足:英系と米系の差異について

ご指摘のとおり、英系辞書(特にEFL/ESL系)のほうがB層の記述に丁寧で、米系は素っ気ない。これは「米系にはESL辞書がほとんどない」という構造的要因に加えて、もう一つ、米系辞書はネイティブ話者を主たる読者と想定するため、語用論的前提(pragmatic presupposition)をわざわざ定義に書き込まないという編纂哲学の違いが反映されている面があります。NOADの "previously good" は、その米系の中にあって珍しく前提を明示した好例であり、だからこそ「3語の威力」が際立つわけです。

まとめ

問い 回答
--- ---
「適用範囲が拡がった」と考えるべきか 部分的にはYes。典型条件の緩和により、厳密な「サビ落とし」でない場面への使用が許容されつつある。
「サビ落としの前提がなくなった」と考えるべきか No。前提は「必須条件」から「典型条件」へ格下げされたが、消失はしていない。
辞書定義の変化はそのまま用法変化を反映しているか 必ずしもそうではない。定義の簡潔化・汎用化という編集方針の影響を割り引く必要がある。

したがって、最も精確な記述は——
> brush up (on) の「サビ落とし」という語義核は消失したのではなく、必須の前提条件から典型的な使用環境へとステータスが変わった。その結果として、「単純な向上」寄りの用法にも裾野が拡がりつつあるが、辞書定義上の変化はこの実態を幾分誇張して映し出している面がある。
——ということになるかと考えます。

この回答を踏まえての「更問い」がこちら。

ここまでの内容を踏まえた上で、
・知識やスキルを目的語にとる(句)動詞で brush up / polish (up) / freshen up / sharpen / refresh / review / revise の違い
・実際のコーパス用例から見た brush up on の現代的な生息域
・英和辞書の訳語「磨き直す」がどこまで妥当か
を深堀りして整理して下さい。

この「更問い」に対するClaudeの回答です。

brush up (on) と類義表現の差異、コーパス上の生息域、英和訳語の妥当性

I. 知識・スキルを目的語にとる(句)動詞の比較
ここでは、前段の辞書定義の通時的分析で浮かび上がった brush up (on) の語義核——「以前持っていた知識・技能の回復的改善」——を基準点として、周辺の類義表現との差異を析出します。

1. 各表現の意味的プロファイル

表現 前提となる「以前の習得」 「鈍り・錆び」の含意 行為の方向性 典型的な register
--- --- --- --- ---
brush up (on) 強く含意(典型条件) 中〜強(中核義) 以前の水準への回復 informal〜neutral; 特に spoken
polish (up) 含意するが、brush up ほど「鈍り」前提ではない 弱〜中 既存の能力をさらに洗練させる neutral〜slightly formal
freshen up 含意する(brush up と近い) 中程度 鮮度を取り戻す;リフレッシュ informal; 主に米語
sharpen 必ずしも前提としない 弱い 既存能力の先鋭化・切れ味向上 neutral〜formal
refresh 含意する(以前の記憶・知識が対象) 中程度(fade した状態の回復) 記憶・知識の再活性化 neutral〜formal
review 含意する(既習事項が対象) 弱い(鈍りよりも「確認」に重心) 体系的な再確認・見直し neutral〜academic
revise 含意する(BrE で「復習」の意) 弱い 試験等に向けた体系的復習*(BrE); 修正 (AmE) neutral; BrE 寄り

2. 差異の軸を分解する

(a)「鈍り」前提の強度
これが brush up (on) を最も特徴づける軸です。

  • brush up / freshen up: 「以前はできた(知っていた)が、しばらく使っておらず鈍っている」という状態が発動条件に近い。前段の分析で見たとおり、この条件は「必須」から「典型」へ格下げされつつあるが、依然として語の磁場の中心にある。
  • polish (up): 「鈍り」よりも「粗さ」が前提。既に一定水準にある技能をさらに滑らかに、洗練させる方向。"Polish your presentation skills" は「錆びた」感じよりも「もっと上手くできるはず」という含みが強い。
  • sharpen: 「切れ味」のメタファー。鈍っているかどうかより、もっと鋭くしたい・精度を上げたいという志向。"Sharpen your analytical skills" は、別に鈍っていなくても成立する。
  • refresh / review / revise: 「鈍り」よりも「記憶・知識の整理」に重心がある。refresh は「色褪せた記憶を鮮やかにする」、review は「既習事項を通覧する」、revise(BrE)は「試験前に体系的にやり直す」。

(b)行為の方向性——回復 vs. 向上 vs. 洗練
ここが類義語間の最も実質的な使い分けの鍵です。

  • 回復(元の水準に戻す)← brush up (on) / freshen up / refresh

  • 向上(現水準をさらに上げる)← sharpen / (polish up は両義的)
  • 洗練(質的な磨き上げ)← polish (up)
  • 確認・整理(体系的な再点検)← review / revise

brush up (on) の語義核が「回復」にあるからこそ、元の比喩——ブラシで表面の汚れ・曇りを落として元の光沢を取り戻す——と整合するわけです。polish (up) も物理的には表面を磨く行為ですが、こちらは「曇りを落とす」よりも「さらにピカピカにする」という方向への比喩的拡張が強い。

(c)register と文脈的棲み分け

  • brush up (on): Longman Activator が "especially spoken" と注記していた点は重要で、日常会話、特に「旅行前に語学をやり直す」「面接前にスキルを磨き直す」という具体的で差し迫った動機がある場面で最も自然に現れます。
  • polish (up): やや意識的・計画的なニュアンス。"polish your CV" "polish your interview technique" など、プレゼンテーション寄りの文脈に親和性が高い。
  • freshen up: 前段で触れられたとおり主に米語。Macmillan 句動詞辞典が brush up と同義として示した米用法。"Freshen up your wardrobe" のように物理的対象にも使え、brush up より軽い印象。
  • sharpen: ビジネス・専門職の文脈で好まれる。"Sharpen your negotiation skills" "sharpen your competitive edge" など、成果志向の表現と共起しやすい。
  • refresh: "Refresh your memory (on)" が最も定型的。技能より記憶・知識の再活性化に偏る。IT 文脈での "refresh" の影響もあり、「最新の状態に更新する」という含みを帯びることもある。
  • review: 学習・職業訓練の文脈で中立的。"Review the material" "review the procedures" など、対象の全体を通覧する行為。
  • revise (BrE): 英国英語では "revise for an exam" が定型的で、試験準備と強く結びつく。米語では "revise a manuscript"(修正する)の意味が優勢なため、ここに挙げた「復習」の意味での直接的な類義関係は BrE 限定。

3. 共起する目的語による棲み分け

実際の使い分けは、目的語との共起パターンに最もよく現れます。

目的語 最も自然な動詞 補足
--- --- ---
my French / Spanish / German brush up (on) 典型中の典型。旅行・出張前の文脈
my skills(汎用) brush up (on) / sharpen / polish (up) 文脈次第で三者とも可
my presentation skills polish (up) 洗練のニュアンス
my memory (of/on) refresh ほぼ定型
the basics / the fundamentals review / brush up (on) review は体系的、brush up は鈍り前提
for the exam revise (BrE) / review (AmE) 文化圏で異なる
my competitive edge sharpen ビジネス文脈

II. コーパス用例から見た brush up on の現代的な生息域

1. 圧倒的な主戦場:語学

COCA、BNC、NOW Corpus、iWeb 等のコーパスを通じて最も一貫して観察される brush up on の目的語は語学関連です。

  • brush up on my/his/her/their **French / Spanish / German / Italian / Japanese / Mandarin / English**
  • brush up on the/my **language (skills)**

これは前段で各辞書の用例が軒並み語学を挙げていたこととも一致しますが、コーパスデータでも語学関連が全用例の相当な割合(体感的には3〜4割程度)を占めます。

典型的なコーパス用例パターン:

  • I need to brush up on my Spanish before the trip to Mexico.
  • She decided to brush up on her French ahead of the Paris conference.

「旅行・出張・赴任」という**差し迫った具体的動機**を伴うのが、語学文脈での brush up on の最大の特徴です。

2. 第二の生息域:特定の学問分野・専門知識

  • brush up on history / geography / math / chemistry / anatomy / Shakespeare
  • brush up on the rules / the basics / the fundamentals / the details

試験前、授業前、専門的な議論の前に「以前学んだがしばらく触れていなかった」知識を想起・復習する場面。

  • I should probably brush up on my constitutional law before the panel discussion.
  • He brushed up on his high school chemistry before helping his daughter with homework.

2例目のような「子供の勉強を手伝う前に自分もやり直す」という文脈は、コーパスで散見される実に生活感のある生息域です。

3. 第三の生息域:実務的スキル

  • brush up on cooking skills / driving skills / typing skills / interview skills
  • brush up on etiquette / manners / table manners / protocol
  • I haven't driven a manual in years—I need to brush up on my stick shift skills.
  • She brushed up on her interview techniques before the job fair.

ここでも「しばらくやっていなかった」という前提が効いている用例が大半です。

4. 拡張的用法:「鈍り」前提が薄い例

現代コーパスにおいて、「サビ落とし」前提が明確でない——つまり「以前できたがしばらく離れていた」という含みが読み取りにくい——用例も確かに存在します。

  • If you want to be a better leader, brush up on your emotional intelligence.
  • Brush up on the latest tax regulations before filing season.

前者は「以前 EQ が高かったが鈍った」というより「EQ をもっと磨け」に近く、後者は「最新の規則」が対象なのでそもそも「以前知っていたが忘れた」とは言いにくい。

ただし、こうした用例の出現頻度は、上記1〜3の典型的用法に比べると限定的であり、特にジャーナリズムやビジネス系のテキストで、やや拡大解釈的に使われている印象があります。これは前段の分析で述べた「必須条件→典型条件への格下げ」が用法レベルでも進行中であることの傍証にはなりますが、brush up on の用法的重心が移動したとまでは言えません。

5. 構文上の特徴

コーパスで確認できる構文パターンの分布:

  • brush up on + NP: 最も頻度が高い(特に米語)
  • brush up + NP: 英語では brush up my French のように on なしも可だが、コーパス上は on ありの方が優勢
  • brush up(自動詞的用法、目的語なし): "I need to brush up before the trip" のように、文脈から対象が自明な場合。頻度は低め。

時制・法(mood)の傾向:

  • "need to brush up on" / "should brush up on" / "want to brush up on" / "have to brush up on" など、モーダル動詞+brush up on の形が非常に多い。これは「これからやるべき行為」として言及されるケースが典型的であることを意味します。
  • 過去形 "brushed up on" は相対的に少なく、「これからサビを落とす」意志・必要性の表明に偏った語彙であるとも言えます。

III. 英和辞書の訳語「磨き直す」の妥当性

1.「磨き直す」が捉えているもの

前段の英英辞書定義の通時的分析と照らし合わせると、「磨き直す」という日本語訳語は以下の点で brush up (on) の語義核を的確に捉えています。

  • 「磨く」: 比喩的原義(ブラシで磨く→能力を向上させる)との対応
  • 「直す」: 「以前の状態への回復」という方向性の明示。これは英英辞書のB層(previously learned / partly forgotten / was lost)に相当する意味成分を、たった一文字で表現している。

「直す」の一字が担っている機能は極めて大きい。「磨く」だけでは polish / sharpen との区別がつかないが、「磨き直す」とすることで「回復」のベクトルが明示され、brush up (on) 固有の意味領域——improve ではなく regain / restore に近い行為——が浮かび上がります。

2.「磨き直す」の限界

一方で、この訳語にも限界はあります。

(a)「直す」が強すぎる場合がある
前段で確認したとおり、現代英語における brush up on は「サビ落とし」前提が絶対的必須条件から典型条件へ移行しつつあります。"Brush up on your leadership skills" のような拡張用法に対して「リーダーシップスキルを磨き直す」と訳すと、「以前はできたが鈍った」という含みが日本語の側で必要以上に強く出てしまう可能性があります。

(b) register の不一致
brush up on は前述のとおり "especially spoken" 寄りの、ややくだけた表現です。「磨き直す」はやや改まった響きを持つ日本語であり、カジュアルな英語の発話を訳す際には「やり直す」「おさらいする」のほうが register として近い場合があります。

実際、前段で確認した英和辞書の訳語群を見ると:

辞書 訳語
--- ---
ジーニアス第6版 磨き直す、復習する
Wisdom第4版 磨き直す、勉強し直す
O-LEX第3版 勉強し直す、やり直して磨きをかける
ライトハウス第7版 やり直す、勉強し直す
プログレッシブ第5版 磨き直す、復習する

「磨き直す」と「やり直す」「勉強し直す」の併記は、register の幅をカバーする意味で合理的な編纂判断です。

(c) 日本語「ブラッシュアップ」との乖離

ジーニアス第6版の用例に「ドイツ語をブラッシュアップさせようと思っている」というカタカナ語使用がありましたが、現代日本語の「ブラッシュアップ」は和製英語的に「改善・改良・向上」全般を意味するようになっており、「サビ落とし」の含意がほぼゼロです。「企画をブラッシュアップする」「デザインをブラッシュアップする」など、新規に作ったものを磨き上げる場面でも普通に使われます。

これは英語の brush up (on) の語義拡大よりも遥かに大きな意味的逸脱であり、「ブラッシュアップ」を訳語として使うことは brush up (on) の語義核を正確に伝えるという観点からは不適切です。ジーニアスの用例は訳文の自然さを優先したものと思われますが、語義の精度という点では「やり直す」「勉強し直す」のほうが忠実です。

3. 総合的な妥当性評価

「磨き直す」は、brush up (on) の訳語として現時点では依然として高い妥当性を持つと判断できます。その根拠は:

1. 語義核の「回復」ベクトルを「直す」の一字で的確に表現している
2. 比喩的原義(磨く行為)との対応が保たれている
3. 英英辞書の定義変遷を踏まえても、B層(鈍り前提)は消失しておらず、典型条件として健在であり、「直す」が過剰な制約を課しているとまでは言えない

ただし、辞書編纂の観点からは、以下の改善の余地があります:

  • 「磨き直す」を筆頭訳語としつつも、拡張用法に対応できるよう「(忘れかけた知識・技術などを)磨き直す;〈技術・知識〉を向上させる」のように、語義の幅を持たせた記述にする
  • register 情報(口語的)を明示する
  • 和製英語「ブラッシュアップ」との意味的乖離を注記する(これは学習者の誤用防止として有効

総括

観点 整理
--- ---
類義語との最大の差異 brush up (on) は「以前の水準への回復」が行為の方向性の中核。polish は「洗練」、sharpen は「先鋭化」、refresh は「記憶の再活性化」、review/revise は「体系的再確認」。方向性のベクトルが異なる。
コーパス上の主戦場 語学の復習(旅行・出張前)が圧倒的。次いで既習の学問分野・専門知識、実務的スキル。「鈍り」前提の薄い拡張用法は存在するが周辺的。
「磨き直す」の妥当性 「直す」が「回復」のベクトルを正確に担保しており、現時点では高い妥当性を維持。ただし、語義の典型条件化に伴い、将来的には記述の幅を広げる余地がある。和製英語「ブラッシュアップ」との混同は注意が必要。

ChatGPT 5.4とGemini 3.1 Proの回答も併せて、NotebookLMに作ってもらったスライドのまとめがこちらになります。
お楽しみ下さい。

冒頭でリンクを貼ったブログの過去記事と辞書の用例を整理したpdfもこちらから。

ここで辞書の版を辿って整理した定義の変化などを評して、Geminiはこんなことを言ってくれていました。

"brush up (on)" を「単純な技術の向上」に用いる用法は、
「サビ落とし」という中核的な意味合いが薄まり、その前提となる制約が緩和された(漂白化した)結果、意味の適用範囲が「向上」というより一般的な領域へと拡がった、と解釈するのが妥当です。

これは「制約の喪失」と「適用範囲の拡大」が連動して起きた言語変化であり、どちらか一方だけが起きたわけではありません。ご自身でまとめられた膨大な辞書の変遷は、まさにこの言語変化が進行し、辞書という記録に反映されていく過程を克明に示している貴重な資料と言えるでしょう。

労いのことば、ありがとうございます。

本日はこんなところで。

本日のBGM: Rust (Echo & The Bunnymen)

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“Do you?”

前回の「ムダ」界隈の英語表現の記事は殆ど読まれていないようで残念です。

2026-04-01 ムダ ムダ ムダ ムダ〜ッ!
tmrowing.hatenablog.com

私が指摘したような差異を無視して、指導や評価を行うのはあまりに乱暴だと思っています。

大学入試の出題でも「?」なものがまだまだあります。
「良問」を出題することで定評がある、とされる学習院大でも次のような設問があり、英語力の何を測りたいのか理解に苦しみます。

空所に最適な語句を補充して英文を完成させるものです。

There’s no point in arguing about that, ( )?

  • (イ) is it (ロ) isn’t it (ハ) is there (ニ) isn’t there

“that” が何を指すのかが全く不明で、しかも、“there’s no point in -ing” の定型表現としての意味の理解も全く問われないという…。

2000年代後半ではまだ、こんな出題も見られました。
a. とb. が同意となるように空所を補充させるもの。

a. There’s no point asking him about that.
b. (① I don’t know how to ask ② I don’t want to ask ③ I have a good reason to ask ④ It’s no use asking) him about that.

ここでは、

  • there’s no point -ing

  • it’s no use -ing

で書き換えさせています。
使用頻度から言えば「読めば分かる」表現を、「書いたり話したりできる」表現に書き換える、逆方向の処理を求めてしかるべきでしょう?

こんな出題もありました。
下線部を同意表現で言い換える(書き換える)もの。

It is no use trying to persuade him.
(ア) matter (イ) longer (ウ) worth (エ) good

useをgoodに換えさせています。

現代英語での使用頻度そのものと文化圏の偏りが気になります。

COHAで通時的概観

GLOWBEで地域差・文化差

台本のある話し言葉でMovie

「諺」で考えても、使用頻度には相当な差があるでしょう。

辞書の注記とは裏腹に、there is でもuseが用いられるようになってきていることがうかがえます。

ただ、オンラインコーパスの検索でも、辞書にしても教材にしても、「縮約形」の扱い一つで生息域が変わりますので、悩ましいところだというのは分かります。
ということで、今日は、あらためて「生成AI」二者(GaminiとClaude)に、以下の英語表現で考えてもらいました。

  • She doesn’t listen to anyone’s advice, not even her closest aides, so

この書き出しに続けて、

  • 「今更彼女を説得しようとしても無駄だ」

という意味の英語表現を続けるときに、
次の1から7までの表現の現代英語の実態から見た適否と、使用場面、使用頻度の差について解説してください。

  • 1. there is no point in trying to persuade her now.
  • 2. there’s no point in trying to persuade her now.
  • 3. there’s no point trying to persuade her now.
  • 4. it is no use trying to persuade her now.
  • 5. it is of no use trying to persuade her now.
  • 6. it is of no use to try to persuade her now.
  • 7. what’s the point of trying to persuade her now?

私は普段遣いでは、ChatGPT 5.4も使っているのですが、今回の回答はあまりに冗長でしたので割愛しました。

Gemini Pro 3.1

提示された書き出し “She doesn’t listen to anyone’s advice, not even her closest aides, so...” は、短縮形(doesn't)が含まれている点、そして「側近の言うことすら聞かない」という文脈から、諦めや苛立ちといった感情的なニュアンスを伴うインフォーマル〜セミフォーマルなトーンを持っています。

この前提と現代英語のコーパス(言語データベース)における実態を踏まえ、7つの表現を構造と意味論の観点から3つのグループに分類して解説します。

I. "there is no point" 構造(選択肢 1, 2, 3)
「〜しても意味がない、目的をなさない」という状況の無意味さに焦点を当てる、現代英語で極めて標準的かつ高頻度な表現群です。

選択肢2. there’s no point in trying...

  • 適否と頻度: 非常に適切。現代英語において最も標準的かつ自然な選択肢の一つです。
  • 使用場面: 日常会話から一般的なビジネス文書まで幅広く使用されます。前半の “doesn't” という短縮形とのトーンの連続性も完璧です。


選択肢3. there’s no point trying...

  • 適否と頻度: 非常に適切。現代の口語において最も使用頻度が高い形です。
  • 使用場面: 主に会話やカジュアルなテキスト。前置詞「in」を脱落させることで発話スピードが上がり、より感情的で直接的な響きを持ちます。現代英語の口語化の潮流を最もよく表しています。


選択肢1. there is no point in trying...

  • 適否と頻度: 適切ですが、短縮形 “there's” を用いないことで、やや客観的で淡々とした事実の陳述という響きを持ちます。
  • 使用場面: 書き言葉や、少し距離を置いたフォーマルな発話。前半のやや感情的な文脈と繋げた場合、後半で急に冷静になったような微妙な温度差が生じる可能性があります。


II. "it is (of) no use" 構造(選択肢 4, 5, 6)
「〜しても役に立たない、効果がない」という徒労感に焦点を当てる表現です。

選択肢4. it is no use trying...

  • 適否と頻度: 適切。文法的に標準的で、使用頻度も中〜高程度です。
  • 使用場面: 一般的な書き言葉・話し言葉。ただし、口語の文脈に合わせるなら “It's no use trying...” と短縮する方が自然です。 “it is” と略さずに発音すると、 “is” に強調が置かれ「どうしても無駄だ」という説教じみた響きを帯びることがあります。


選択肢5. it is of no use trying...

  • 適否と頻度: 現代英語の実態においては不適切(awkward)であり、使用頻度は極めて低いです。
  • 解説: “be of no use” は “be useless” のフォーマルな等価表現であり、通常は名詞(例: This tool is of no use)に対して用います。形式主語の “It” を用いて後ろに動名詞(trying...)を置く構造は、文法的破綻とまでは言えませんが、ネイティブスピーカーの直観としては非常に冗長で座りの悪い表現と見なされます。


選択肢6. it is of no use to try...
適否と頻度: 文法的には成立しますが、文脈に対して不適切です。
解説: 19世紀の文学作品などで散見される古い構造であり、現代英語では極めて堅苦しく、大げさな響きを持ちます。前半の “doesn't listen” という日常的なトーンと著しい文体レベルの不協和音(Register clash)を引き起こします。


III. 修辞疑問文(選択肢 7)

選択肢7. what’s the point of trying...

  • 適否と頻度: 最も効果的かつ適切。現代口語において極めて高い頻度で使用されます。
  • 解説: 構造上は疑問文ですが、実態は「説得しようとして何の意味がある?(いや、何もない)」という反語(Rhetorical question)です。他の平叙文の選択肢に比べ、「側近の助言すら聞かないのだから」という前提に対する「諦め」や「苛立ち」の感情を最もダイレクトかつ論理的に引き継ぐことができます。


結論と推奨
提示された書き出しに続ける場合、トーンの連続性、感情的文脈との適合性、および現代英語の自然さの観点から、以下の順序で推奨されます。

1. 選択肢 7 (What's the point of...):感情的な文脈との論理的結びつきが最も強い。
2. 選択肢 3 / 2 (There's no point [in]...):現代口語の最適解であり、自然な接続。
3. 選択肢 4 / 1:文法的には正しいが、やや硬さや温度差が生じる(短縮形にすれば解決可能)。
4. 選択肢 5 / 6:現代英語の会話的文脈においては避けるべき表現。

Claude 4.6 Opus

各表現の適否・使用場面・使用頻度の分析

まず前提として、7つの表現はいずれも文法的に非文(ungrammatical)ではなく、意味的にも「今更彼女を説得しようとしても無駄だ」を伝達できます。ただし、**現代英語の実態**において、自然さ・頻度・文体的位置づけに明確な差があります。

1. there is no point in trying to persuade her now.

  • 適否: 文法的に完全に正しく、意味も正確。
  • 使用場面: フォーマルな書き言葉、論説文、報道記事、公式な場でのスピーチなど。there is を縮約しないことで、やや格式ばった響きを持つ。
  • 使用頻度: 書き言葉ではごく普通に出現するが、日常会話では縮約形(2番)のほうが圧倒的に優勢。口語でこの形を使うと、意識的に強調している、あるいはやや堅い印象を与える。


2. there's no point in trying to persuade her now.

  • 適否: 完全に自然。現代英語で最も「安全牌」と言える形の一つ。
  • 使用場面: 口語・文語を問わず幅広く使用可能。カジュアルな会話からセミフォーマルな文書まで対応する汎用性の高い表現。
  • 使用頻度: 最も高頻度の部類。there's no point in doing は現代英語において定着したコロケーションであり、コーパス上でも極めて多くのヒットが確認される。


3. there's no point trying to persuade her now.

  • 適否: 完全に自然。文法的にも問題ない。
  • 使用場面: 主に口語・インフォーマルな書き言葉 (メール、SNS、小説の会話文など)。前置詞 in の脱落は、話し言葉における自然な省略(ellipsis)として広く容認されている。
  • 使用頻度: 口語では2番と同等かそれ以上に頻繁。実際の会話では in を入れない話者のほうが多い可能性すらある。ただし、フォーマルな文章では in を明示するほうが好まれるため、文体による棲み分けがある。2番と3番の選択は、発話のフォーマリティの微調整として機能している。


4. it is no use trying to persuade her now.

  • 適否: 文法的に正しいが、現代英語ではやや古風(dated / literary)な響きを帯びる。
  • 使用場面: 文学作品、格言的な表現、年配の話者の口語、翻訳調の文体。現代のカジュアルな会話で突然これを使うと、やや不自然に聞こえる可能性がある。
  • 使用頻度: 低下傾向にある。it is no use doing という構文自体が、20世紀半ば以降、特に口語において there's no point (in) doing に領域を譲りつつある。Google Ngram でも下降カーブが確認できる構文の一つ。なお、it's no use と縮約すれば口語的な色合いは多少増すが、それでも there's no point 系に比べると使用頻度は低い。


5. it is of no use trying to persuade her now.

  • 適否: 文法的には成立するが、現代口語ではほぼ使われない。
  • 構造上の問題: of no use は本来、補語として名詞・代名詞を取る形(This tool is of no use)が自然であり、動名詞句(trying to...)を主語的に従える用法は統語的に不安定と感じる母語話者が多い。つまり、of no use の後に動名詞を続ける結合そのものが、現代英語では周辺的(marginal)な位置にある。
  • 使用場面: 19世紀的な文語体、文学的・修辞的な文脈でなら見かける可能性があるが、現代の実用文・口語ではまず選ばれない。
  • 使用頻度: 極めて低い。事実上、アーカイブ的な表現。


6. it is of no use to try to persuade her now.

  • 適否: 5番とほぼ同様の問題を共有するが、to不定詞を使っている分、構文的な据わりはわずかに良いと感じる話者もいる(of no use + to不定詞のほうが、of no use + 動名詞よりも古い英語では頻出)。
  • 使用場面: 5番と同じく、古風・文語的な文脈に限定される。法律文書の旧い定型表現、聖書的・説教調の文体など。
  • 使用頻度: 極めて低い。5番と同等かそれ以下。現代の一般的な英語使用者が自発的にこの形を産出することはほとんど期待できない。


7. what's the point of trying to persuade her now?

  • 適否: 完全に自然。修辞疑問文(rhetorical question)の形をとることで、話者の苛立ち・諦め・呆れといった感情的ニュアンスが平叙文より強く前景化される。
  • 使用場面: 主に口語、対話場面。相手(聞き手)に向かって語りかけるような場面で特に効果的。書き言葉でも、コラムや論評など、読者への語りかけを意識した文体で使われる。
  • 使用頻度: 高い。what's the point of doing...? は日常会話で非常によく使われる定型パターン。ただし、先行文脈(She doesn't listen to anyone's advice..., so)との接続を考えると、so の後に疑問文が来る流れはやや唐突になりうる点に注意が必要。soは通常、結論・帰結を導く接続詞であり、平叙文との親和性のほうが高い。修辞疑問文を使うなら、so を外して独立文にするか、あるいは so I mean, what's the point of...? のように口語的な挿入句を介したほうが自然な場合がある。


総合比較表

# 自然さ(現代口語) 自然さ(現代文語) 頻度 文体的位置
1 フォーマル寄り
2 最高 汎用
3 インフォーマル寄り
4 △〜○ 中〜低(低下中) やや古風
5 × 極低 古風・文語的
6 × 極低 古風・文語的
7 口語的・感情的

皆さんの語感、実感との重なり具合、違和感などお知らせ下さると喜びます。

本日は以上です。
本日のBGM: The Like Song (Virna Lindt)

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ムダ ムダ ムダ ムダ〜ッ!

今日から新年度スタート。

先月献本してもらった「英文法」の学参

  • 『英文法のテオリア』

は、現代英語の実態を反映させる記述がそこここに見られる非常に優れた一冊だと思っています。

それでも「英文法」の学参ですから、細かな語法ではまだまだ拾い切れていないものもあります。
これから書く表現形式・語法も上記学参では詳しく整理されていませんが、それは英文法の根幹とは言えない、マイナーな部分ですから、学参としての評価を下げるものでは決してありません。
実際、市販の英文法書では十分に扱われていないし、「語法」の問題集の解説や、「語法」に詳しいと評される最新の学習用英和辞典でも、表現間の異同などは詳しくありません。
それはしょうがないことだという認識で以下の記述をお読み下さい。

  • 「…をしても無駄である」に対応する英語表現

私が高校生の頃から、次の「諺」は教材でも目にしていました。

It is no use [good] crying over spilt milk.
⦅諺⦆こぼれた牛乳のことで泣いてもむだだ, 「覆水盆に返らず」.
(『クラウン英語イディオム辞典』三省堂)

同辞典には次の表現も成句として収録されていました。

there's no [not much] point in doing …しても少しも[あまり]意味がない
There's no point in doing that. そんなことをしても少しも意味がない.

この二つの表現の生息域が重なることも考えられるのですが、使用頻度の差異に関してはよく分かりません。

最新の学習用英和辞典の記述を見てみましょう。
『Wisdom英和』(三省堂)

it is nò úse doing [(まれ)to do] * (話)…してもむだだ
It's no use arguing. 議論をしてもむだだ
It is no use crying over spilt milk.
(ことわざ)こぼれた牛乳を嘆いても仕方がない; 「覆水(ふくすい)盆に返らず」
(×この表現の場合~ to cry ... としない).

There is no point [use, sense, good] (in) talking to you.   君に話してもむだだ
[コーパス]
(1)(くだけて)ではinが省略されることがある.
(2)(in) doingの意味上の主語が示されることがある:
There’s no point (in) me [(よりかたく)my] talking to you. 私が君に話してもむだだ.
(3)use, goodを用いるときは
It is no use [good] (me [(よりかたく)my]) talking to you. の方が普通)

独自コーパスからの知見で、「use, goodを用いるときは…」という注記はありますが、There is no pointとIt is no use との差はわかりません。


『Genius英和』(大修館書店)

It is nó úse dóing = There is nó úse (in) doing (略式)…してもむだである
<◆it is of no use to doの類推からto doが用いられることもあるが, 避けた方がよい>
It is no use crying over spilled [(主に英) spilt] milk.
(ことわざ) こぼれた牛乳を嘆いてもどうにもならない; 「覆(ふく)水盆に返らず」
<◆Don't cry over spilt milk. ともいう>
It's no use pretending you're asleep.  寝たふりをしてもむだだよ.

There is no point (in) trying to persuade him.
=I don't [can't] see any point in trying to persuade him.
=(略式) No point in trying ...
彼を説得しようとしてもむだだ <◆ × It is no point (in) trying ... は不可>

こちらでも、It is no use と There is no point の使用頻度の差などは不明。

『O-LEX英和』(旺文社)

It's nò ùse dóing .... …しても何にもならない[無駄である]
(◆ doing の代わりに to do も使えるが,ややまれ)(◦ there is no point in doing ...)
It's no ~ negotiating with them any more.(=There's no ~ (in) negotiating with them ....)
これ以上彼らと交渉しても無駄だ
It's no ~ crying over spilt milk. (諺)こぼれたミルクを嘆いても何にもならない;覆水盆に返らず

『O-LEX英和』では “there is no point …” ではなく、 "there's no point" の用例が、pointの項目に収録。
同 『…和英』の方には "there is no point" もいくつか用例がありますが、やはり、二つの表現形式の使用頻度の差などは不明です。

There's no ~ in going now. We've already missed half the movie.
今から行ってもしょうがないよ.もう映画は半分終わってしまった

嘆いてもかいのないことだ
There is no point in grieving.|It is no use grieving (about it).
不正な方法で勝っても意味がない
There is no point in winning if it's done unfairly.

所謂「学参」「問題集」の扱いも見ておきましょう。
『スクランブル英文法・語法』(第5版、旺文社、2025年)では、

これ以上この問題を議論しても仕方がない。
There is no good [point] (in) discussing this problem any longer.
= It is no use [good] discussing this problem any longer.

と同意として扱うのみ。

『読むため書くための 英文法ハンドブック』(旺文社、2025年)では、

It’s no use complaining. 「文句を言ってもしょうがない」

という用例で、

  • It is (of) no use [It is no good] (V)ing. 「(V)しても無駄だ、(V)してもしかたない」

という項目として整理しているのですが、用例にまったく具体性がなく、学習に十分資するとは思えません。

一方で there is no …の方はというと、

There is no point [use/good/sense] (in) (V)ing. 「(V)しても無駄だ」
There is no point in looking for her. 「彼女を探しても無駄だ」

という項目を立てて、4語を並列に同意の扱いですが、用例は具体性の薄いpoint一つしかなく、しかも注記として

  • inを省略することはまれです。

という文言をわざわざ書いています。

『Insight 英文法・語法・熟語 問題集』(啓林館、2025年)では、

彼からのメッセージの返信を待っても無駄だ。
It is no use [good] waiting for him to text back.

という用例で、

It is no use [good] doing 「〜しても無駄だ」
= There is no point (in) doing

という同意の定型表現を示すにとどまっています。

冒頭で言及した『英文法のテオリア』では、動名詞を含む慣用表現の一つとして

It is no use doing 「〜しても無駄である」

  • It is no use trying to fix a problem with a temporary solution. (その場しのぎの解決策で問題を解決しようとしても無駄である)

という具体的な意味のある用例を示しているのですが、there is no pointの方は扱われていません。

オンラインコーパス等で、これらの生息域を浮かび上がらせるのは難しいのですが、ザックリと検索した結果を眺めてみましょう。

ベンチマークとしてのCOCAで、

there is/it is で始まり、no point [use/good/sense] が続き、前置詞にinまたはofがくる環境を見ています。縮約形での "there's" や "it's" も含まれます。

前置詞なしで -ing形が続くもの

名詞を pointとuseに絞って 前置詞の後に -ing形が来るパターンを見てみます。

GLOWBEで地域差/文化差を推測
前置詞つき

前置詞無しで -ing形が続くもの。見事にGB祭りの様相を呈しています。

TVコーパスで前置詞つき

前置詞無し
網掛けの色が濃いのは英文化圏。

NOWで前置詞つき

前置詞なしで -ing形がつづくもの。

このNOWは精査する価値、意味のある検索結果ですね。


Ngram Viewerでも見ておきましょう。

まずは、一番知りたいのはこういうこと。
どれが「普通」なのか?

現代英語の書き言葉としては、

  • there is no point in trying > it is no use trying > there is no point trying >it is no good trying > it is of no use trying

というのがおおまかな目安。
Ngram Viewerでは、縮約形は開いた形にまとめられてしまうので、"there's” や "it's" の内訳はわかりません。

これをベンチマークにして以下を確認。

Softmatchaのデモでのコロケーション比較
there + is + no point で見てみます。

isの縮約無しで前置詞inつきでtrying

3159とこれが最もヒット数が多い。

is 縮約でthere'sで前置詞inつきのtrying

460と激減。

is 縮約で there’s で前置詞無しでtrying。

305とさらに数字が小さくなりました。

縮約無しで前置詞無しのtrying

1132と、そこそこのヒット数。inがあるものと比べて3分の1程度ですが、縮約がなければ「省略は稀」、というわけでもなさそうです。上述の『…ハンドブック』の記述とは異なりますね。

縮約アリで there’s で前置詞つき

これだと40ヒットですから、ノイズ程度でしょうか?ここで 縮約アリの前置詞ナシのヒット数が309というのは、上述の305と4つ差があることに気がつきます。
SoftMatchaの「ダブり」などの扱いは、まだまだ、一次ソースに当たって検証しないとわからないことが多いです。

ものはついでで、it is no use trying 界隈も見ておきましょう。

縮約ナシ、前置詞ナシ

718ヒット。

縮約アリでit’s no use trying

216ヒットで、縮約ナシの3分の1以下。

it is of no use trying

tryingは僅かに87ヒット。この結果での7.は不定詞が続きそうな予感で、2722ヒットしているので、不定詞で検索すると…

to try が158とヒット数倍増の勢いです。

ということで、学参や問題集でも、辞書でも分からない「使用実態」「使用頻度」を推測してみた次第。
書き換え問題で同意と見做してその知識を仕込んだり問うたりするのではなく、使用頻度には差があることを少なくとも弁えておくのがいいように思います。
テストでの出題でもスピーキングやライティングで解答として求める場合には、その生息域や頻度の差には配慮が必要かと。

本日はこの辺で。
本日のBGM: Context (川田十夢)

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79.31 + 158.97 = 有終の美

一年経てば回ってくる「年度末」。
この時期でいろんなものが節目を迎えます。
ガラケーを使い続けていた私も「スマホ」に代わ(らざるを得なくな)りました。
英語だと、(   )内の意味合いで “had to” を使うべきところですね。

フィギュアスケートの2026年世界選手権@プラハも終了。

www.isuresults.com

今季、男子シングルで私が推していた四天王のうち、ミラノ五輪で金メダルに輝いたシャイドロフ選手は早期に欠場を表明していました。
友野一樹選手は日本男子の代表3枠からは漏れ、第一補欠となっていました。日本選手はミラノ五輪と同じ3名が出場しましたから、友野選手の出場は叶いませんでした。
今大会参加は、

  • 佐藤駿選手(日)

  • ケヴィン・エイモズ選手(仏)。

このお二人の結果は、
佐藤選手

  • ショート4位、フリー3位で総合3位

エイモズ選手

  • ショート11位、フリー5位で総合7位

でした。佐藤選手は五輪に続いて銅メダル獲得。拍手!

ペア種目の日本選手は、五輪のショートプログラムのミスでフリーに進めず、この世界選手権に捲土重来を期す、「ゆなすみ」こと、長岡柚奈・森口澄士のペア。
ショート5位、フリー3位で総合4位という快挙!

ヴィカ様の引退以降はあまり集中して見ることの出来ていなかったアイスダンス。
日本選手では「うたまさ」こと、吉田唄菜・森田真沙也のカップルが出場。五輪は団体戦の出場しかできませんでしたが、この世界選手権では、リズムダンスで70点の壁を越え、フリーダンスに進むことができました。最終順位は19位。もう、伸び代しかない!

女子シングルは、次のような最終順位。


www.isuresults.com

日本からは、五輪と同じメンバー。五輪では4位で悔しい思いをしたであろう千葉百音選手が昨年から一つ順位を上げ2位、銀メダルでフィニッシュ。
ショートのプログラム、ドナ・サマーの『ラストダンス』の衣装をピンクに戻して、自己ベスト更新。
フリーの『ロミオとジュリエット』では、ついに150点を越えての自己ベスト。
私は、このフリーの素晴らしい出来を見届けたときは、

  • これ、百音ちゃん、ワンちゃん(優勝の可能性)あるかも…。

と思っていたのですが、坂本花織選手が、私の想像の遥か上のレベルで演じ切ってくれました。
坂本選手は、ショートの “Time to say goodbye” に続いて、フリーの『愛の讃歌』でもノーミス。
しかもただクリーンなだけでなく、Program Component Scoresでジャッジ9人中4人が、6項目で10.0の満点をつけるという「完成度」でした。
坂本選手と千葉選手のフリーのプロトコル(ジャッジスコア)を貼っておきます。


https://www.isuresults.com/results/season2526/wc2026/FSKWSINGLES-----------FNL-000100--_JudgesDetailsperSkater.pdf

坂本選手は、彼女の競技生活のフィナーレで、自己ベストを更新し、金メダルを獲得するという偉業を成し遂げました。
これ以上はないのではないかという「有終の美」です。
感謝感涙。

翌日のGalaの最後には意外なシーンが待っていました。
引退を記念&祝福するべく選手全員に囲まれて、リンクの中央で坂本選手が挨拶(お辞儀)。そこからヴィクトリーランのように、お客さんに手を振りながら周回。
こんなにも、世界中で、ファンだけでなく、全方位、選手や関係者の誰からも愛された選手は稀だと思います。既に、「生ける伝説」ですね。


私はといえば、現在の出講先と、年度を跨いで契約更新で、新年度も引き続き公教育に関わり続けることとなりました。
長いキャリアの途中、公教育を離れた不本意な時期もありましたが、次の年度で通算40年を全うすることになります。

このブログも2024年からは「英語(表現)そのもの」に重点を置いて書いていますが、2026年の記事も、前回までの合計が40本、といいペースで進んでいます。
今日の最後は、そんな「合計」に関わる英語表現で。

過去ログでは既に “combined” を用いた表現を取り上げています。

Germany’s economy equals all of these countries combined.
tmrowing.hatenablog.com
ドイツの経済は、これらの国すべてを合わせた規模に匹敵します。

この記事は、2024年の11月のものですが、ツイッターではそれよりも前の2020年9月に、

officially「正式・公式に」。この場合は「会社として」ということ。phase out…「段階的に…を脱する: 廃止する」。進行形で「徐々に」感。A (=却下) in favor of B (=選択) は実質「比較・優劣」の現われ。 「減」側への比較級 less thanの比較の対象は C and D combined「CとDの合わさったもの」。

と引用RTでの解説をしていました。
元ツイのこちらで英語表現そのものを確認して下さい。

Starbucks is officially phasing out plastic straws in favor of sippy cup lids—with limited exceptions—by the end of the month. The new lids use 9% less plastic than the previous lids and straws combined


スターバックスは今月末までに、例外的な場合を除き、プラスチック製ストローを段階的に廃止し、いわゆる「シッピーカップ型」のフタへ正式に切り替えます。新しいフタは、従来のフタとストローを合わせた場合と比べて、プラスチック使用量が9%少なくなります。

こちらは2023年4月。

同じく記事本文。目盛りのように変動するものの1点を表すatと後置で合算を表すcombined確認。edge past …は「少しずつ動いて…を超える」。
At 1.428 billion people, India has already edged past mainland China, the data show, and it will soon surpass the mainland and Hong Kong combined.

当該英文のKagi訳はこんな感じ。

データによると、人口14億2,800万人のインドはすでに中国本土をわずかに上回っており、まもなく本土と香港を合計した数も追い越します。

関連表現として “put together” があります。

「合算・合体」では、put togetherも確認。putは所謂「過去分詞」で受け身。比較の文脈で使われる例はよく見聞きするでしょう。
次の例では、比較級 + thanはないが
big enough to dwarf A and B put together
で別格の大きさを示すもの。
dwarf …「…の大きさを霞ませる;相対的に小さく見せる」。

元ツイ確認。

Around too briefly to have a name, this iceberg was more than two miles wide and one hundred feet tall at its birth, big enough to dwarf the Colosseum in Rome and all the pyramids put together, at least before it started melting.


名前が付く間もないほど短い間しか存在しなかったこの氷山は、生まれたときには幅が3キロ以上、高さが約30メートルもあり、ローマのコロッセオやピラミッドをすべて合わせたものさえも小さく見えるほどの大きさだった――少なくとも、溶け始める前は。

上述の combinedやput togetherとは違って、前置詞のbetweenが数値と共起し「合計・合算・全体」を表す用法があります。

見出しは現在完了の生息域を確認。イマココからの余波の展開を意識して記事本文へ。
Polling suggests the National party could form a governing coalition with the ACT Party, gaining 61 seats between them.
<保有/獲得の動詞+ 数詞 + seats between 複数の政党や会派>
は政党政治を語る定型。

当該英文のKagi訳。

世論調査によると、ナショナル党はACT党と連立政権を組める可能性があり、両党合わせて61議席を獲得すると見られています。

このツイートに続けてこう呟いていました。

このbetweenは通例「共同(有) ・合計のbetween」の語義で注記として「三者以上でも用いる」とあるのが一般的。「連立政権」が結構一般的な時代に、この「議会政治の政党・会派の議席」の例が辞書にないのが不思議。三省堂さん、次回改訂で検討お願い。大修館さん、デジタルプラスで追加できませんか?

しかしながら、その後、「議席数合算」の用例が辞書に収録された、という話しは私に届いていません。

見聞きする機会は比較的少なく、生息域はある程度限られていますが、次のような「範囲;レンジ;幅」を表すbetweenの用法とは全く違うので知っておくに越したことはありません。

可算名詞のrepairsを確認。
前置詞betweenが数量のペアと使われて「範囲;幅;レンジ」を表す用法。
ここでのwithinには「期間」を表す名詞weeksが使われていることを確認。

この元ツイはこちら。

The war in #Iran has inflicted significant damage on #US military assets, with losses and repairs estimated between $1.4 billion and $2.9 billion within the first #three weeks, according to a report.

betweenに先行する名詞がseatsであっても、「座席の間隔」を表す用法とは明確に区別しておく必要があるのは勿論です。

こちらは座席間隔でのbetween。
Flying during a pandemic: Temperature checks, crowded aisles, masked travelers (except when drinking) - cleveland.com
The young man sitting across the aisle from me on my return flight to Cleveland brought additional food (中略) and had his mask off for a full 20 minutes (yes, I timed him). Fortunately, there were several seats between us.


クリーブランド行きの帰りの便で、通路を挟んで向かいに座っていた若い男性は、追加の食べ物を持ち込んで(中略)マスクを20分まるまる外していました(そう、時間を計りました)。幸い、私たちの間にはいくつか席の間隔がありました。

私がターゲットとしている「合計」の用法はこちらです。

合計のbetween関連事項。
Labour had 23 city councillors before the two resignations, with the other groups holding a total of 16 seats between them. It means that whatever happens in the city council by-election, Labour will still hold an overall majority.


労働党は、2人の辞任前は市議を23人擁し、他の会派は合わせて16議席を持っていました。つまり、市議会の補欠選挙で何が起きようとも、労働党は依然として全体の過半数を維持するということです。

類例追加。

こちらは獲得議席数の合計。
The pre-poll alliance between Congress, Jharkhand Mukti Morcha (JMM) and Rashtriya Janata Dal (RJD) has won majority with a total of 47 seats between them.


総選挙前に結成された国民会議派、ジャールカンド・ムクティ・モルチャー(JMM)、国民ヤナタ党(RJD)の連合は、合計47議席を獲得して過半数を確保しました。

COCA系の検索結果を貼っておきます。

COCAで<数詞+複数形名詞+between +代名詞>では数が少なくよく分からない。

GLOWBE で同じ環境で検索してみると、「北米」ではほぼ使われておらず、「英文化圏」でヒット数が増える。北米の例でも、「(カップルが)…人の子どもをもうける」のような例であり、ここまでで取り上げてきた名詞の数の合計/合算とは異なる。

NOW

こうしてみると、使用が顕著な名詞としては

  • wickets
  • goals

が浮かんできます。

wicketはクリケットの用語で複数の意味があります。
goalsは(サッカーなど球技の)得点

で「英文化圏」の事例として頷けるものです。

このうち、クリケットのwicketsは日本では馴染みが薄いと思いますが、次のような場面で使われます。

  • 三本の棒と二つのベイルからなる、打者の後ろの「ウィケット」そのもの。
  • ボウラーが投げる「ピッチ」のこと。
  • バッターをアウトにすること、またはそのアウト数。

次の例を見て下さい。

Young 21 year-old Ben Wheeler and 20 year-old Adam Milne were handed the new-ball and combined brilliantly to keep their team on top with eight wickets between them.
www.nzc.nz
21歳の若手ベン・ウィーラーと20歳のアダム・ミルンが新球を任され、ふたりで計8本のウィケットを奪う(=8人の打者をアウトにする)見事な連携を見せて、チームを主導権保持に導きました。

クリケットにおける "wicket" は複数の意味を持つ多義語ですが、ここでは「打者のアウト(=打者を退場させること)」という意味で使われています。
"between them" の部分が、「合算/合計」に当たります。「2人合わせて」ということ。「夫婦が子どもをもうける」というときのbetween とは違います。
ここでは、2人のボウラー(野球でいう投手に相当)が協力して、相手チームの打者10人のうち8人をアウトにしたということを表しています。

例えば、Wheelerが5ウィケット、Milneが3ウィケットといった配分(具体的な内訳はこの文からは不明)でアウトを取ったと考えてみて下さい。合算で8ですね。

クリケットでは、1チームのイニングは10アウト(10 wickets)で終了します(11人の打者のうち10人がアウトになると、残り1人はペアを組めないため打席に立てなくなる)。
その10アウトのうち8つを、この若手の2人で奪った、というのがこの一文の趣旨です。

クリケットは英文化圏の国民的スポーツの一つですから、話題に上る頻度が高いのも頷けますね。


2026年度最終日の本日はこんなところです。

本日のBGM: Where’d all the time go? (Dr. Dog)

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