コウのトリ

更新が暫く空きましたが、『コウビルド』の改訂10版が物書堂版のアプリでリリースされたのを受けて、私が2021年に書いた「トリセツ」をせっせと改訂していました。

noteのマガジンと記事を更新しています。

辞書を使いこなすには?(2024年版;暫定版です)
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『コウビルド』活用法(暫定版)
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今回の物書堂さんの改訂では、

中上級レベルの
『コウビルド』(第10版)

米語に特化した
『コウビルド米語』(第3版)

中級学習者向けの
『コウビルド中級』(第5版)

がリリースされています。

物書堂さんのサイトはこちら。
www.monokakido.jp

今回の改訂で、『コウビルド米語版・第2版』と、それに基づく日本独自企画の『コウビルド米語英英和』は販売を停止しました。
この二つを既に購入済みの方は、統合アプリ内で管理している場合には、今後とも使えるとの回答を物書堂さんからは得ています。

C10 vs C9

C米3 vs C中5

C米2 vs C米英英和


先週の土曜日には、物書堂さんの春のセールに合わせた、「辞書活用法/指導法」に関するセミナーもオンラインで開催しました。
今回リリースされた3つのコウビルドの特徴や改訂の目玉、他の辞書との比較での得手不得手など、いくつかのポイントは、このセミナーで先取りで報告をさせてもらいましたが、私の「トリセツ」の方でも、その1〜その3に加えて、新たに「その4」で詳しく扱う予定で鋭意執筆中ですので、完成版は今暫くお待ち下さい。
現時点で noteのタイトルに「暫定版」とあるのは、そのためです。

ツイッターの方でも情報提供やアドバイスはしていました。


オンラインセミナー受講者からの声も匿名でご紹介。

本日の辞書活用セミナーではどうもありがとうございました。圧倒的な知識と膨大な情報でついていくのがやっとでしたが、iPadでの辞書の使い方や用例の検索の仕方など、やったことのないもの、知らなかったことがたくさんあり、非常に刺激的でした。また、コーパスを使用してさまざまな用例を確認していらっしゃる様子なども 大変参考になりました。noteも購入させていただいたので、これから 再度丁寧に読み直し、自身の実践にも活かしたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。

※こちらこそ、緊急開催でのご参加ありがとうございました。「物書堂」さんの春のセールに間に合えば何よりです。

もうお一方は、超長文でいただきました。ありがとうございます。

「やっぱり辞書を引くのは楽しい」というのが一番の感想です。物書堂+LDOCE, CALDでの横断的な辞書検索、コーパスとの併用を行う中で、このような語義、用例、使用域があるのかと気づき理解が深まるというこの過程がいかに重要かを再認識しました。自分でブックマークを作り整理するという作業もこの理解をさらに深くし、自分の中のことばの感覚を成長させるために大変有効であるとも感じられました。

学生時代から数冊の辞書に当たるというのを基本としていました。近年は物書堂のおかげで検索の利便性がこれまでとは比べ物にならないくらいで、調べる際には大変助かっていますが、自分はまだまだ物書堂の可能性を自分が引き出せていないことを痛感しました。特に示して頂いた後方検索は感動ものでした。

またこのセミナーは辞書活用に留まらず、これまでの辞書変遷史、松井先生の語法・語義指導の一端を学べるということも重要かと思います。ライティング指導のセミナーでも教えていただいた語法・語義指導のポイントをさらに深く理解できる機会にもなりました。これ自体が単独でセミナーになると思います。

セミナーの中で言及されていましたが、学校現場ではスマートフォンを使用禁止やタブレットもiPad以外のものというのは本当に多いと実感しています。生徒は与えたものを意外と使いこなすものなので、その中の選択肢にベストなものがあるのにそれをそもそも使えない環境にしてしまうことが1番の問題だと思います。

とりあえずブラウザの検索窓から直接意味を調べる、翻訳サイトを使う、という最悪な状況はなんとかしないと行けないと思い学生への辞書指導をきちんと行いたいと思います。このセミナーを自分の中に十分に落とし込んで、伝えていければと思います。

欲を言えば、これは松井先生に言っても仕方ないのですが、OSの環境によらず全ての生徒、学習者が利用できるようになれば良いのにな、と思うのが正直なところです。松井先生による活用法がこれだけ確立されているのですから。

※お役に立てていれば何よりです。私の開催する他のセミナーも受講していただいたことがあるので、講座内容に関するミスマッチの心配があまりないというのは、お互いの安心材料ではあるかなとも思います。

noteで公開している、ガイダンスのマガジンや記事は、物書堂さんのセールが終わってからも、アプリ辞書では有益な情報を提供できるものだと思っていますし、『コウビルド』のトリセツに関しては、現時点で考え得る最良・最高のガイドブックとなっていると確信しています。


最後に、辞書に関連して英語そのものの話も、ちょっとだけしておきましょう。

天体としての地球を表す大文字のEarthの使い方/使われ方をどのように扱っているか?
物書堂さんのアプリ辞書で比較。

W vs G

O-LEX vs CR

COBUILD 10th vs OALD

COBUILD 米語 vs COBUILD中級

この中で、無冠詞で大文字の用例を(   ) なしで示しているのは、O-LEXとCOBUILD&米語のみ。
そして、その定義は他とは大きく異なるもの。

N-PROPER
Earth or the Earth is the planet on which we live. People usually say Earth when they are referring to the planet as part of the universe, and the Earth when they are talking about the planet as the place where we live.

  • The space shuttle returned safely to Earth.

大文字だけでなく、定冠詞の有無での使い分けの傾向にまで言及している。
同じCOBUILDでも、中級ではこの辺りには全く触れず。

実態はどうなのか?Ngram Viewerで見てみましょう。
「地球から離れて」

全体





小説

かつては米国語法と言われていたようですが、英の実態を眺めても、十分定着した用法であることが窺えます。
「地学」という科目が、日本の高校での開講が少ない理科科目であることの影響があるのか定かではありませんが、日本の教材ではこういった語法の変化に対する反応が鈍いような印象を持っています。
辞書の記述の更なる精査が必要な項目でもあるしょう。

本日はこの辺で。

本日のBGM: コスモポリタン (佐藤隆)

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