※注記:この記事で取り上げている『コウビルド英英辞典』に関わる記述は2020年4月段階の事実に基づくものです。
現在では、noteで関連記事&マガジンを公開しています。
note.com
1987年の初版の衝撃から、33年で既に改訂8回。
学習用〜中級用英英辞典として確固たるポジションを占めているCOBUILD の辞書に関して、その特徴と使い方の留意点、そして是非活かしたい使い方を示して行きたいと思います。
以下、COBUILD Advanced Learner's Dictionary の記述・用例の引用は、書籍版は「桐原書店」が販売している『第9版』に基づくものです。
Collins コウビルド英英辞典 桐原書店編集部
一方、アプリ辞書の記述・用例の引用は「物書堂」が販売しているものに依っています。
COBUILD の現時点での最新版である第9版の『使用の手引き』は小室夕里先生の筆によるものですので、桐原書籍版を購入する方は(既に購入している方も)『使用の手引き』を必ずお読み下さい。
本編の文法コードの表記、パターンの類型の中には、日本の英語教育で長らく支配的な位置を占めている「文型」の表示がありません。いえ、本当に、「5文型」であれ、「7文型」であれ、「動詞型」を類型化して凡例/典型例を示す、というやり方を採用していないのです。
巷で多く行われている「文型」はいわば「動詞型」のことですから、その動詞の使われ方の典型的な用例が既に分かっている人にとっては、例文が示されれば、数字・番号であれ、何らかの記号付けであれ、意味や形・構造との対応は容易です。
ところがCOBUILDでは、日本の英和辞典のような文型表示とはなっていないので、どのような記号を用いて、どのように意味と形・構造を整理して扱っているのか、というCOBUILDならではの「芸風」を知っておく、慣れておくことが重要だと思います。
まず、動詞の類型化で用いられる記号付けで、日本で広く見られるのは
- 自動詞/他動詞
といった動詞の大きな分類ですが、これに対してCOBUILDの第9版では品詞分類や記号付けでの対応をしていません。
- 自動詞 Intransitive verb = I
- 他動詞 Transitive verb = T
というような区別をそもそもしていないので、対応する記号もないということです。
※この点はCOBUILDの旧版や、現行の『米語版』『米語英英和版』とも大きく変わっていますので、よく理解しておく必要があると思います。旧版等ではV-I でいわゆる「自動詞」を、V-Tで「他動詞」を表していました。そしてV-T/V-Iの併記で、そのどちらでも使われる動詞(以前の版ではERG「能格動詞」として表記していたもの)を表していましたが、それらの区分を表す記号は廃しているわけです。
その一方で、
be動詞など連結動詞 Linking verb = LINK; V-link
助動詞 Modal verb = Modal
句動詞 Phrasal verb = PHRASAL VERB
のような品詞分類上のラベル付けは採用しています。
英和辞典でも、以前は、
- SVOC
などといった記号を付け、「5文型」に対応していた時代が結構続いたかと思いますが、いまでは、多くの学習用英和辞典が、
- 目的語=目
- that節= that 節
- wh節=wh節
などといった目的語を含めた文構造を示すために、その部分の文法上の「名前」、「文法用語」を使っていることが多いと思います。
COBUILDでもこの点は同様で、
名詞句=noun phrase = n
代名詞=pronoun = pron
that節= ‘that’-clause = that
wh-節=wh-word = wh
という記号を使っています。最後の wh-には、how / if / whetherも含まれます。
また、名詞節を導く when も、副詞節を導く when も同じ見かけになるので、要注意です。(では、なぜそれらが同じ記号付けでも、大きな混乱を生まないと考えられているのかは、後ほどお話します。)
そしてそれらの動詞が、述語動詞としての時制以外にとるさまざまな「形」ということで、
原形 = inf
to+原形 = to-inf
という記号が使われます。
注意が必要なのは次の扱い。
動名詞/現在分詞=v-ing
この二つは見た目、見かけが同じ -ing形となりますが、これらはCOBUILDでは、どちらも v-ing となります。COBUILDでは、日本の多くの英語教材で見られる動名詞と現在分詞を類型上分けていないということは必ず知っておくべきです。
過去分詞 = v-ed
- 所謂「過去分詞」は規則変化動詞や一部の不規則変化動詞では、-edで終わりますか ら、COBUILDではv-edの記号を使っています。※個人的には v-enの方がベターだと思っています。
その他、動詞が使われる環境を示すということで、
時制・相・態に関しての制約/注記もなされます。
進行形=continuous = cont
- 進行形でしか使われない語義の場合は only cont
- 通例進行形で用いられる場合は usually continuous = usu cont
- 進行形が不可の場合は no cont
という記号で使われる環境が表されます。
受動態=passive
- この場合も、only / usu / no などで制約を表します。
では、COBUILDで、何らかの動詞の使い方が知りたいと、引いてみた、調べて見たときに、動詞のとるパターンを類型化できるような工夫、他とは使い分けられるようなしくみとして、どのような記号付けを施しているでしょうか?
誰でも知っているであろう動詞のひとつ、 comeでCOBUILDらしさを覗いてみましょう。
まず「語義」「定義」が示されます。この部分でも、旧版からの変更点があります。旧版では、多義である動詞の場合に、その意味を大まかに下位区分した上で、個々の語義の定義に入っていましたが、それはなくなりました。旧版でも、全ての動詞に、大まかな語義区分が示されていたわけではないので、公平な扱いになったともいえます。
come
[1] VERB
When a person or thing comes to a particular place, especially to a place where you are, they move there.
という定義に続いて、
紙版では
[V prep/adv] Two police officers came into the hall.
[V prep/adv] Come here, Tom.
[V prep/adv] You’ll have to come with us.
[V] Can I come too?
[V v-ing prep/adv] The impact blew out some of the windows and the sea came rushing in.
のように、各用例・例文の前に、記号での表記がなされています。
ここでの記号で、
Vは時制を持った動詞
prepは前置詞
advは副詞(または不変化詞)
v-ingは(いわゆる)現在分詞
となります。
これらの記号付けには全て、「主語」を示す記号がないこと、文型を類型化する番号などもないことに驚いて下さい。
紙版では、用例・例文と記号表記は同じ黒い印字が使われ、用例・例文はイタリック体で、記号は直立体で、とフォントも変えています。
先程、主語を表すSなどの記号・表記がないと言いましたが、定義を見てもらえば、その理由が分かると思います。定義の中で、どのような名詞が主語として使われるのか、「典型例」であったり「必須の資質」であったりといくつかのバリエーションはありますが、既にその動詞が使用される「文」としての環境の説明がなされているわけです。この例で言えば、主語には「人」または「もの」がくることがわかりますから、記号付けで示す必要はないということなのでしょう。
最新の「物書堂」のアプリ辞書の第9版では、この用例・例文が先にしめされ、記号表記は、それぞれの例文のあとにきています。さらに、動詞の例に限らず、用例・例文はイタリック体で表されていますが、品詞ラベルと用例・例文はブルー系で印刷されていて、他の記述とのコントラストがより明確になっています。
comeの続きをもう少し進んで、後半の語義を見てみましょう。
[11] VERB
If a thought, idea, or memory comes to you, you suddenly think of it or remember it.
[V + to] He was about to shut the door when an idea came to him.
[V to n that] Then it came to me that perhaps he did understand.
アプリ版ではこうなります。
先程の定義は when でしたが、今度は if になっていることに注意して下さい。when が「あるある」での通常営業だとすれば、ifは「いつもとはちがって…だとすると」という条件設定のスペシャルな状況です。それでも、主語には「人」ではなく、「考え・考え・記憶」がくるということがわかります。悩ましいのは、thoughtという「考え」とideaという「考え」が担う意味の分担が初学者にはよくわからないことです。
記号付けでも、一例目から、ちょっとドキドキします。ここでの toは前置詞です。では、なぜ、prepとは書いていないのでしょう?答えは、「特定の前置詞に決まっているから」です。典型例としてto が用いられ、勝手にforやwithに置き換えられないので、prepではなく、+ toという表記になっています。不定詞のtoであれば、 to+動詞の原形 を表す、 to-inf という表記となるはずですから、区別は容易でしょうか?
それでも、「前置詞 to」の目的語に相当する名詞は記号では全く触れられていませんから、定義文を当てはめて、「前置詞toの後なのだから名詞が来る、そしてその名詞はyouとなる」という補助線を自分で引かなければなりません。さらに、この場合のyouは「あなたのこと」という特定の二人称ではなく、一般論を表す場合のyouであることにも注意が必要です。
日本の多くの英和辞典の表記とは異なるので、慣れが必要なところでしょう。
二例目の記号付けと用例との照らし合わせは少々面倒です。
ここでの nは名詞句のひとかたまりを表します。そして、その名詞句にthat節が後続する「見た目」になることがわかります。
用例に当てはめると、
V + to n 「時制をもったcome の後に、前置詞 to 、さらに名詞句が続く」というのですから、
it came to me と代名詞のmeがtoの後に続き、さらにthat節 (that perhaps he did understand) が続いています。
「記号通りの説明でいいじゃないか。どこが悩ましいのか?」と訝る人はいませんか?
私が悩ましい、と言ったのは、
- 「では、次のような例と同じと考えていいでしょうか?」
ということです。
動詞 explain のエントリーにはないexplainの用例ですが、
- I’m going to have to explain to them that I can’t pay them.
という例がCOBUILDには収録されています(前置詞 to のエントリーです)。
ここでのexplainは助動詞have to の後ですから、動詞の原形になってはいますが、その使用環境は
[v to n that] ということになるでしょう。
vがexplain
to+名詞句が to them
そしてthat節のまとめる内容が、I can’t pay them
「あれ?何か違うぞ!」と感じましたね?
そうです、come to 人that 節の場合の用例として、主語に来ていたのは it でした。
日本で広く用いられている(であろう)文法用語でいえば、「形式主語」にあたるものです。そして、that節の内容を予告する働きをしています。explainとは異なり、あくまでもcomeは「自動詞」として使われているのですが、COBUILDのこの第9版では、しつこいようですが動詞の分類に自動詞・他動詞を区別する表記法を採用しなくなりました。
それに対して、explain「説明する」は他動詞で、しかも人ではなく、「ことがら」を目的語にとる動詞ですから、誰に対してその説明をするのか、と「人」を示すためには前置詞の to が必要となる、というわけです。
二つの動詞の由来も、ふるまい方も異なるわけですが、見た目には同じ記号が付くことになるわけですね。旧版では、形式主語などで用いられる代名詞の it には、「予告のit」として、it という記号を当てていましたが、それがなくなりましたから、先程の explainで見たような、純粋な(?)名詞句と、形式主語などの it を動詞型の中で見極める目安となる記号がないということです。
このような現象が、そこかしこで生じるため、COBUILDでの文型・動詞型の記号付けを適切に処理して、例文の意味を的確に理解するためには、やはり最初の「文による定義」を丁寧に読む必要があるのです。
comeからもう少し気になる例を見ておきましょう。
[15] VERB
If someone or something comes from a particular place or thing, that place or thing is their origin, source, or starting point.
[V + from] Nearly half of the students come from abroad.
[V + from] Chocolate comes from the cacao tree.
[V + from] The term ‘claret’, used to describe Bordeaux wines, may come from the French word ‘clairet’.
ここでも条件設定のifで文定義となっていますが、主節の動詞の時制は先程と同様に is と現在時制であることに注意して下さい。この「出身、由来、起源」を表すcome from の用例は全て現在時制となっています。前置詞fromには名詞句が続くことは自明とされ、何も表記されません。
また、用例の提示順は、
- 人
- もの
- ことば
というように、具体性の高い名詞→抽象度が高い名詞の順に並べることで、理解の助けとなるように配慮されていることにも注目して下さい。
そして、この[15]を前提として、次の語義が説明されます。
[16]VERB
Something that comes from something else or comes of it is the result of it.
[V + from] There is a feeling of power that comes from driving fast.
[V + of] He asked to be transferred there some years ago, but nothing came of it.
定義は文の形になっていますが、これまでに見てきた、
When sv, SV.
If sv, (then) SV.
ではなく、
S 関係詞の後置修飾 V.
という文構造での定義となっています。
英語にあまり慣れていない人は、この文構造でメインのVにあたる is の主語が的確に捉まえられていないかもしれません。
後置修飾の部分をA、Vの述部が表す内容をB と置き換えると、
Aである、またはAをするSは、Bをする、またはBであるということです。
という定義の仕方となります。
COBUILDの文定義の主要3パターンと私が呼ぶもののうち、この主語に対しての後置修飾部分に、主語となり得る名詞の制約を含めるものは、「自分が調べたい用例」のうち、どの部分をこの文定義のどの部分に当てはめればよいかを知る上でも重要です。
動詞型を示す記号付けだけでは、対応関係の理解が不十分となるような場合にも、文定義をよく読むことで見えてくることがあります。冒頭の文定義のパターンに慣れることはとても重要で、有益です。
名詞の後置修飾のバリエーションとしては、この関係代名詞の他にも
- 名詞+前置詞+名詞
- 名詞+ to V ※COBUILDでは. to-inf
- 名詞+ V-ing
- 名詞+ V-en ※COBUILDでは V-ed
- 名詞+ 関係副詞 ※COBUILDでは、 wh-
があります。
このバリエーションに関しては、他の語を扱う際に、また項を改めて説明します。
[15][16]をアプリ版から。
続いて、動詞bring を少し見てみましょう。
comeが自動詞なのに対して、bringは他動詞として使われますが、COBUILDでは、この自動詞/他動詞を区別するために動詞そのものに用いる個別の記号はない、ということはもう説明しましたね。
bring
[1] VERB
If you bring someone or something with you when you come to a place, they come with you or you have them with you.
[V n] Remember to bring an apron or an old shirt to protect your clothes.
[V n] Come to my party and bring a friend with you.
[V n with adv] Someone went upstairs and brought down a huge kettle.
[V n + for, V n prep] My father brought home a book for me.
動詞の説明の最初に come を取り上げた理由が分かってもらえたかと思います。
comeの説明に bringは不要でしたが、このbringの説明には comeが不可欠ですね。
COBUILDでは、他動詞の表記をしない代わりに、文定義の中で、目的語を明確に示しています。そして、その目的語への働きかけがわかるように、定義文の主節が書かれています。
動詞型の説明で使われる記号では、小文字の n は「名詞句」を表しています。 Vに名詞句 n が続く、という表記ですから、辞書を引いた人は、この部分を読んで「n が目的語の働きをしているのだな」という理解をすることが期待されています。
二例目と三例目の例文と記号付けを読んで違和感を覚えた人はいませんか?
「二例目の例文には、前置詞のwith が使われているのに、記号付けの方には with がない!」
「三例目の例文には、前置詞の withは使われていないのに、記号付けには with がある!」
どういう理由でこうなっているのでしょうか?
四例目が、そのヒントとなるでしょう。
三例目は
[V n with adv] という記号の表す意味は「動詞に名詞句が後続し、副詞と一緒に使われる」ということであって、(X)「前置詞のwith と使われる」ではない
のです。[V n 切れ目 with adv] というまとまりだと思って下さい。
それに対して、特定の語と一緒に使われるのが典型的であるときには、その環境を「+」の記号で表します。
四例目を見て下さい。[V n + for, V n prep] とあります。この記号付けは、「動詞に名詞句が後続し、前置詞の for をとるまたは、動詞に名詞句が後続し、前置詞をとる」と読むことを期待されているわけです。しかしながら、この四例目として示されている英文では、
“brought home a book for me” という環境ですから、正確には、
動詞+副詞+名詞句+前置詞 for (+名詞)
V with adv n + for
という表記がなされてしかるべきところです。
このbringの前に取り上げた come の文定義の主要3パターンを覚えていますか?
要注意といった三番目のパターンは、後置修飾が付くことによって、主語に来ることができる名詞を絞り込む働きをしていました。
come は自動詞でしたから、主語を絞り込みました。
では、今度のbringは他動詞。とすると?
そうです、他動詞の場合は、目的語に来ることができる名詞を後置修飾で絞り込むことが予想されます。
[3] VERB
If you bring something that someone wants or needs, you get it for them or carry it for them.
後置修飾部分が確認できましたか? or での分配を的確につかみましょう。
- something that someone wants or needs 「誰かが欲しがっている、または必要としている何か」
という内容が、この語義で用いるbringの目的語に求められるわけです。では、記号付けはどうなっているでしょう。
[V n + for] He went and poured a brandy for Dena and brought it to her.
[V n n] The stewardess kindly brought me a blanket. [ Also V n, Also V n + to]
一つ目の用例と、記号付けが対応していませんね。記号では 「前置詞 for が典型例」とありますが、forが使われているのは、pour n for という結び付きであって、brought の方は、前置詞 to が後続しています。むしろ、2例目の補足で示されている Also V n + toの V n + to が当てはまるところでしょう。
二例目では、V n n と名詞句を表す n が二つ示されていますから、動詞に名詞句が二つ続く、所謂「二重目的語」をとるということがわかります。
ところで、今、紙版を中心に説明してきましたが、物書堂のアプリ版では、これらの記号付けは全て、用例の後にカッコで示されますから、この2例目の表記は、
The stewardess kindly brought me a blanket. [ V n n , Also V n, Also V n + to]
となることに注意が必要です。いずれにせよ、動詞型の類型全てに用例が対応しているわけではないことは頭のどこかに置いておいた方がよさそうです。
V n の例としては、COBUILDにはありませんが、
- Just bring yourself! 手ぶらで来てよね。
- Please bring your wife to the party next time. 次にパーティするときには奥さんも連れてきてね。
などが考えられます。
続いて、コミュニケーションなど、伝達に関わる動詞を見てみましょう。
tell です。
tell
[1] VERB
If you tell someone something, you give them information.
随分とあっさりとした定義ですが、用例は豊富です。この文定義で、所謂「二重目的語」がとれることがわかります。さらに、人を目的語にとり、もの・ことがらをその次に前置詞なしで続けることができることもわかります。
[V n that] In the evening I returned to tell Phyllis our relationship was over.
[V n wh] I called Andie to tell her how spectacular the stuff looked.
[V n n] Claire had made me promise to tell her the truth.
ここまでの例では、動詞に後続する名詞句 n は人であることが共通していて、「ことがら」に当る名詞句が、that節、wh節、名詞句で表されることをそれぞれ示しています。
特に、三例目では、2つ目の目的語は単にn としか示されていませんが、このような提示順であれば、the truthは 名詞ではあるけれども、「ことがら」の性質が感じられるものであることにも納得が行くことと思います。
四例目以降も見てみましょう。
[V n + to] I only told the truth to the press when the single was released.
+表記の to ですから、典型例として、前置詞のto (とそれに後続する名詞句)が続くことを示しています。情報を与える「相手」を、前置詞 to以降で示すものです。
[V n + about] Tell us about your moment on the summit.
今度は、+表記で about が来ています。この場合は、情報を伝える相手、ではなく「情報の内容」を補足・絞り込むための前置詞です。
[V with quote] Her voice breaking with emotion, she told him: ‘It doesn’t seem fair.’
この例では、+のない with ですから、単に共起する物を示すものです。動詞との位置関係は自由であることに注意してください。
quote は「引用する直接話法の内容」に相当します。 that節や wh節のように文に埋め込まれた文ではなく、誰かの発言を引用するのに、その部分の表現、文言を、原則書き換えずに “ “ で囲んで伝達していることを表しています。
この例では、動詞told のあとに、himという nが来ていますから、記号付けとしては、
- [V (n) with quote]
とでもしていてくれればわかりやすかったとは思います。
前回の bring同様に、[Also V of n] という記号付けが一例、宙ぶらりんになりました。
この tell のエントリーには、肝心の用例はありませんが、COBUILD内に収録されている用例で[Also V of n] に相当するものに、
- The story tells of a runaway slave girl in Louisiana, circa 1850.
というものが見つかります。ただ、初学者には、circaという語は未習でしょう。
ここでの of は about と同様で「伝達する情報」の内容・要旨・主題が続いています。
まだまだ、押さえておきたい「芸風」はあるのですが、「その1」としては、この辺で一区切りとしたいと思います。
「その2」は、また日を改めて。
本日のBGM:ハミングバード(綿内克幸)
追記:「物書堂」さんのアプリを使っている方は、こちらの noteの記事(期間限定で無料公開です)も是非お読みください。
note.com