辞書活用法:『COBUILDの芸風に慣れよう!』その2

前回の第1回の記事は、

現時点で最新版であるCOBUILDの第9版では、特に「動詞の用法」、「文型」と呼ばれることの多い「動詞型」に関して、どのような記号を用いて、どのように意味と形・構造を整理して扱っているのか、というCOBUILDならではの「芸風」を知っておく、慣れておくことが重要だ。

という趣旨で書きました。私の手元の原稿では、A4版で10ページほどになったのですが、今回の「その2」も同じくらいの分量です。
お時間のあるときにお読み下さい。
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以下、COBUILD Advanced Learner's Dictionary の記述・用例の引用は、書籍版は「桐原書店」が販売している『第9版』に基づくものです。

Collins コウビルド英英辞典 桐原書店編集部

www.amazon.co.jp

一方、アプリ辞書の記述・用例の引用は「物書堂」が販売しているものに依っています。

www.monokakido.jp

COBUILD の現時点での最新版である第9版の『使用の手引き』は小室夕里先生の筆によるものですので、桐原書籍版を購入する方は(既に購入している方も)『使用の手引き』を必ずお読み下さい。


まずは、「前回のおさらい」からです。

COBUILDの第9版では

・原則として「文定義」で、主語に何が来るか、動詞のあとに何が続くか、など動詞の使われる典型的な環境を示し、記号に頼らなくても「動詞型」が分かるようにしている。
・「語義のまとめ」のような、個々の語義の上位概念のようなものは示さない。
・自動詞 Intransitive verb = I / 他動詞 Transitive verb = T というような区別をそもそもしていないので、それに対応する別々の記号はない。
・動詞がとるパターンの表記では、主語は明示されず、目的語にも特別な記号は与えられない。名詞句は全てn という記号で表す。
・v-ing という形で、いわゆる「動名詞」と「現在分詞」を区別していない。
・形式主語、形式目的語などの it であることを明示する記号(とその説明)はない。
・定義文の主要パターンとしては、

  • When SV1, SV2. / If SV1, SV2. のそれぞれ V1 のところに、ターゲットとなる当該の動詞が配置される。接続詞whenやif によって共起する主語や目的語などの語句の制限、使用場面の制限を加えることで、語義・用法を明確に示す。
  • 動詞の前後(主語や目的語など)の名詞句に後置修飾などで選択制限を加え、語義・用法を明確に示す。

ということを確認しました。
今回は、これらのCOBUILD第9版の特徴のうち、前回取り上げたものを踏まえた上で、さらに注意が必要なあれやこれやに光を当てたいと思います。

前回に続き、tell のエントリーから語義の定義を見ていきます。

tell

[5] VERB [no cont]
If you can tell what is happening or what is true, you are able to judge correctly what is happening or what is true.
[V wh] It was already impossible to tell where the bullet had entered.
[V that] You can tell he’s joking.

まず、no cont ですから、進行形は不可。
定義文の if 節の中に当該のtellの動詞句が入っていますが、can tell wh節 という助動詞のcanを伴う動詞型が反映されるような文で記述しています。そして、主節の you are able to judge wh節の方は、単純現在であることに注意して下さい。

進行形は不可だけれども、今の事柄に言及する場合でも、過去の事実に言及する場合でも、tellは単純な現在時制や過去時制ではなく、助動詞のcanと一緒に使われることで、この語義を表す、ということです。旧版 (現行の『米語版』) では、このtellの語義には、

oft with brd-neg 

という記号が付けられていました。oft = often しばしばはすぐにわかるでしょうが、brd-neg = broad negative は説明が必要でしょう。これは、「否定文の中で、または否定語と一緒に、または、否定的な文脈の中で用いられる」ということを表す記号でした。「語用論」といわれる学問的知見を反映させたものでしたが、この記号も、この第9版では使われていません。(※個人的には、この手の注記がないのは、もったいないと思っています)

最新の学習用英和辞典であれば、「語法注記」のような形で

  • 通例可能性を暗示する語句を伴って(『ウィズダム英和』 三省堂)
  • 通例可能性や難易を示す表現(can, impossible, hardなど)を伴って

という但し書きがあるところですが、旧版では配慮のあったCOBUILDでも、第9版では、冒頭の「文定義」で、使用する文脈、場面を捉まえておかないと、英和辞典が提供しているような語用論的情報は得られないことになります。

用例の一つ目は、形式主語のitを受ける to+原形=不定詞のtell の部分が、ターゲットとなる動詞型の表記なので慣れが必要です。多くの英和辞典では、動詞の語義に続く用例の一つ目には、文のメインの述語動詞としての用法で、時制を持った動詞として示されることが多いと思いますが、COBUILDは「生きた英語」で「フルセンテンス」の用例を謳っていますので、このように、文の中でさまざまな形合わせをした末の「動詞の姿」を捉まえなければなりません。
ここでは、tellの目的語がwh節であることを示しています。

二例目には、肯定文で接続詞thatが省略されたものが使われています。

どちらの例でも、記号付けに nという記号はなく、wh/that節をとるとだけ示されていますから、この語義では、二重目的語をとらないことがわかります。


tellの語義を続けます。

[6] VERB [no cont]
If you can tell one thing from another, you are able to recognize the difference between it and other similar things.
[V n + between] I can’t really tell the difference between their policies and ours.
[V n + from] How do you tell one from another?
[V wh] I had to look twice to tell which was Martin; the twins were almost identical.

この[6]の語義の冒頭にも [no cont]とありますから進行形は不可です。
そして、定義文のIf節の中に、can tell と助動詞のcanが使われているのも、[5]と同じです。
この語義も、旧版では、 [oft with brd-neg] の注記がつけられていたものです。

用例を見ると、[5]よりも一つ例が多く、
一例目:否定文
二例目:How の疑問文(助動詞は doであり、canは使われていない)
三例目: 見た目は肯定文でcanもimpossibleも、hardも使われていない

というように、

  • [5]よりも使われ方の幅が広いのかも?

という印象を持つかもしれません。
ここは、もし、旧版のようにbrd-negという記号が付けられていたとしても、学習者が適切な理解ができる保障はありません。三例目では、セミコロン以降で、「その双子はほとんど同じだから」という文脈が、「難しさ」の背景・理由を表している、という(分かっているひとには何でもない)ことを補う必要があります。
今、私が示したような「補助線」がなければ、せっかくの「生きた用例」も宝の持ち腐れだ、ということは学習者だけでなく、指導する側が弁えておくべきだと思います。


語義を少し戻って、tellも一区切りつけようと思います。

[3] VERB
If you tell someone to do something, you order or advise them to do it.
[V n to-inf] A passer-by told the driver to move his car so that it was not causing an obstruction.

日本の「中学英語」でもお馴染の、tell+目的語+不定詞ですね。COBUILDでは、目的語という表示はありませんから、一貫して、nで「名詞句」として示しています。不定詞は、to-infですから、
the driverがn、そのdriverに命じてしてもらう行為行動が to move his car ...の不定詞となることがわかります。一見、日本の英和辞典の記述との差が余り感じられないところです。
語義では3番目に記述されていますから、「使用頻度」は高い語義であることがわかります。しかしながら、
・不定詞の否定 tell n not to-inf
・受け身. (be) told to-inf
については何も情報がありません。

COBUILD 第9版には、

  • I already told you not to come over. (alreadyのエントリー)
  • Because of the danger of identity theft, we are told not to give personal information over the phone. (identity theft のエントリー)

という用例は収録されていますので、「もったいない」印象を受けます。
こういったところこそ、「アプリ版」を使う利点を感じられると思いますので、是非活用を。

続いて see を見てみましょう。
アプリ辞書の定義のうち、[1]と[2]と[4]に着目します。
このうち [1]と[4] は [no cont] で進行形不可です。
先に、文定義だけを比較しますから、これだけで、それぞれのseeの意味、使われる場面を実感できるか自問自答してみて下さい。

see

[1] When you see someone or something, you notice it using your eyes.
[2] If you see someone, you visit them or meet them.
[4] If you see that something is true or exists, you already realize by observing it that it is true or exists.

定義の [1] の接続詞はWhenで事実や状況の説明。[2]と[4]は接続詞If を用いた条件設定です。
[2] には但し書きがないので、「人を訪ねる;人と会う」というときのseeは、[1],[4]とは違い、進行形になることがあると考えられます。
[1]と[4]では、「目的語」の中身が異なります。[1]は「人」または「もの」であるのに対して、[4]では「ことがら」です。

以上の留意点を踏まえて、それぞれの用例に当ることで、用例から読み取れる情報が変わってくるのではないかと期待します。以下、記号付けで注意が必要な部分を取り上げます。

[1]
[V n] You can’t see colours at night.
[V n v-ing] I saw a man making his way towards me.
[V that] As he neared the farm, he saw that a police car was parked outside it.

二例目の [V n v-ing] のnは目的語となる名詞句、v-ingは日本の教室でいわれることの多い目的格補語となる現在分詞、に対応するものでしょう(教材では、SVOCなどといった記号が付けられがちな動詞型です)。
この用例は、旧版では見られなかったもので、日本の学習者にとっては歓迎すべき改訂と言えるかもしれません。

三例目では目的語がthat節ですから、

  • 定義文にあるような、単なるsomethingではなく、「ことがら」を表していて、[4]の語義に分類すべきではないのか?

という印象を持ちますが、文定義の接続詞が Ifではなく when である、という「縛り」が、この用例をこの[1] の語義に留めておく鍵なのかもしれません。

[2]
[V n] Mick wants to see you in his office right away.
[V n] You need to see a doctor.

どちらも「目的語」として名詞句をとるのは同じで、その名詞が「人」であることも同じですが、二例目のseeを「会う」という日本語で理解する学習者はほとんどいないだろうと思います。「(どこか)具合の悪い(であろう)あなたと、医者とが顔を合わせる」機会というのは、「診療」や「治療」に関わる行為でしょうから、日本語の慣用から適切な理解や表現としては「医者に見てもらいに行く」とでもなるところでしょう。

[4]
[V that] I could see she was lonely.
[V wh] A lot of people saw what was happening but did nothing about it.
[V n v-ing] You see young people going to school inadequately dressed for the weather.
[V] My tastes has changed a bit over the years as you can see.
[be V-ed to-inf] The army must be seen to be taking firm action.

「ことがら」を目的語にとる用法での seeの語義。この項目は、旧版でもあまり上手く整理されていなかったように思いますが、第9版ではどう扱われているでしょうか?

一例目のthat節、二例目のwh-節とも、いわゆる「名詞節=ことがら」ですから、問題はないでしょう。
三例目の [V n v-ing] の nは目的語の名詞句、v-ingは、いわゆる「目的格補語」としての現在分詞ということです。
ここで気になるのは、
[1] の語義に配されていた用例、

  • [V n v-ing] I saw a man making his way towards me.

と、
この[4]の語義に配されている、

  • [V n v-ing] You see young people going to school inadequately dressed for the weather.

とでは、見た目の動詞型は同じでも、「語義」が異なる、ということになります。
その場合の、「語義の違い」を学習者が本当に理解できるか、という疑問が浮かびます。ここでも、最初にあたえられた「文定義」の whenとif の違いが鍵なのでしょうか?
何らかの補足、補助線が必要なところだと思います。

四例目の記号が [V] だけ、というところが気になりました。これは「目的語などをとらない」 という理解でいいのでしょうか?ここでは、関係詞的な使われ方をする as に続く節ですので、seeは言い切って終わりというわけではありません。その次の部分に来るべき「理解する内容」を先取り/抽出して as で括りだしているわけです。この記号 [V] を適切に処理するためには、この語義のseeを理解するだけではなくて、as の用法が分かっていなければならないということです。COBUILDが、いくら「生きた英語」しか用例として使わない、といっても初学者にはちょっと負荷が強すぎると思います。

五例目の [be V-ed to-inf] はここで初めて取り上げました。
受け身であることはすぐに分かると思いますが、V-edとVが大文字になっているところに注意して下さい。
このエントリーで扱う動詞そのものが受け身になっている例ですので、当該の動詞は大文字のVで表します。そして、過去分詞が後続するのではなく、その当該の動詞が受け身の環境で使われることを示すのに、 be V-edの記号が使われます。後続するのは、to-inf いわゆる「不定詞」であることに注意が必要ですから、ここに記号を配していることは頷けるものです。

能動態であれば、[V n v-ing] という動詞型で使われる語義だということは三例目でわかっているのに、その語義に対応する受け身では、v-ingではなくto-inf と「不定詞」を必ずとる、と理解してもいいのでしょうか?頻度が高いものを選んで載せている、ということでしょうか?
この部分に関しては、何も情報が与えられていません。

日本で使われている教材では俗な言い方ですが、「知覚動詞のSVOCの文型」というような項目立てで、焦点が当てられて扱われているのではないかと思います。

『ウィズダム英和』(三省堂)では、次のような語法注記を加えています。

私は彼が通りを横断する [横断している]のを見た
I saw him cross [crossing] the street.
((1) cross は私が見たときはほぼ横断していたことを、crossingは横断している途中にあったことを含意する。(中略)。
(3) 受身では He was seen to cross [was seen crossing] the street となるが、前の方は「誰かに見られた」、後の方は「話し手が目撃した」の意)

COBUILDではこのような文法・語法上の補足説明はありませんし、ここで引用したような用例の対比で、語義・文意 (含意?)の違いを示すこともないように思います。

日本の教材で学んでいる場合に、この see の語義で、

  • 受け身では「to のついた不定詞」となる。

というところは多くの人が理解できているでしょうが、

  • では対応する「能動態」では、原形ではないのか?

という疑問の浮かぶところです。第9版の seeのこの語義には、原形をとる用例は示されていません。

では、COBUILDの第9版では、知覚動詞の能動態で V n に続く語が原形になる例はないのでしょうか?
いえ、あるのです。しかもかなり平易な例で。

  • I saw him do his one-man show in London, which I loved. (one-manのエントリー)
  • I saw him take off his anorak and sling it into the back seat. (slingのエントリー)

どちらも、目的語の後には動詞の原形=infが続いていますから、 [V n inf]で表すことができる動詞型ですが、このパターンは、肝心の動詞seeの項目には示されていないのです。
使用頻度が低いのであれば、他のエントリー (上記、one-manやsling) の例文としても適切さを欠くように思いますが、どうしてこのような扱いになっているのか、編集のさじ加減が私にもよく分かりません。

seeの語義の中では、慣用度が高いと思われるものを取り上げます。

[12] VERB
If you see that something is done or if you see to it that it is done, you make sure that it is done.
[V that] See that you take care of him.
[V to it that] Catherine saw to it that the information went directly to Walter.

「ちゃんと…するようにする;…であるようにする」という、私が「ちゃんとちゃんと系」の動詞と呼ぶものです。しかも定義には、「ちゃんとちゃんと系」のもう一つの代表例である make sure that節が使われています。この make sure の方も、多くの学習者は「確かめる」という訳語で覚えがちなので、この定義で、日本の学習者が的確&適切な理解ができているかは甚だ疑問です。

that節中の動詞の時制が現在形、または過去形であることに注意が必要な表現で、「受験に頻出」などと言われたりもするようですが、日本の学習者の習熟度は余り高くないと思われる表現で、何か「補助線」が欲しいところです。しかしながら、COBUILDのこの文定義と記号からだけでは、この表現を使う際の節中の時制など、「留意点」は見えてこないようにも思います。

形式主語の it (同様に、形式目的語に相当する it)自体を項目立てて記述していないのが、第9版の文法語法の扱いですから、この2例目の [    ] 内にある、 to it という語句の働きはよくわからないまま、「定型表現」として覚えることになってしまうのでは、という危惧を覚えます。

that 節を見たついで、ではありませんが、次は、suggestにどのような形が続くかを見てみましょう。日本の英語学習者にとっては、試験でもお馴染で、重要な項目という認識が強いことでしょう。

suggest
[1] VERB
If you suggest something, you put forward a plan or idea for someone to think about.

[V n] He suggested a link between class size and test results of seven-year-olds.
[V that] I suggest you ask him some specific questions about his past.
[V + to] I suggested to Mike that we go out for a meal with his colleagues.
[V wh] No one has suggested how this might occur.
[V with quote] ‘Could he be suffering from amnesia?’ I suggested.
[V v-ing] So instead I suggested taking her out to dinner for a change.

定義文の接続詞はWhenではなく、 Ifです。目的語には人ではなく、somethingと「もの」が来ています。

ここで注目すべきは、二例目、三例目、六例目です。
二例目で、that節をとることはすぐに分かると思いますが、肝心なのは、その節中で用いる動詞の形合わせです。この例では、主節のsuggestは現在形ということはわかりますが、節中のaskが現在形なのか、原形(= inf) なのかを示す記号や補足情報はありません。

三例目の [V + to] で、この語義のsuggestは人を目的語にとらないことがわかります。誰に対して、ということを示したい場合には、前置詞のtoを使う、という記号です。重要なのは、この三例目のthat節の扱いです。主節の suggested が過去形であるのに対して、that節中では goという形が用いられています。これは原形ということでしょう。であれば、先程の二例目の節中のaskも原形だったのではないか、というように、すぐに頭が働くでしょうか。そう簡単ではないように思います。

六例目、v-ingはCOBUILDでは現在分詞という扱いですが、このv-ingには、日本の教材の多くで「動名詞」として扱われているものも含まれています。
ここでは、taking her out to dinner for change 全体の、このv-ingのかたまりそのものが、「ことがら」を表しているという「読み」がもとめられるところです。

このCOBUILDのv-ingの扱いには、慣れておく(慣れて行く?)しかないのですが、語義とのすり合わせには、多くの学習者が苦労するだろう、とも思います。

insistを見てみましょう。

insist
[1] VERB
If you insist that something should be done, you say so very firmly and refuse to give in about it.
If you insist on something, you say firmly that it must be done or proved.

[V that] My family insisted that I should not give in, but stay and fight.
[V + on] She insisted on being present at all the interviews.

一例目の that節をとること自体はすぐにわかります。では、節中の動詞は?ここでは、助動詞のshould +動詞の原形となっています。先程の suggest のように、原形=infではない、という理解でいいのでしょうか?

二例目ではどうでしょうか?人が目的語にこないことはわかりましたが、前置詞のonに続くのは人でも、ものでもないように見えます。一般的な名詞を直接目的語にとることはなく、ことがらを表すv-ingの形に変えて、前置詞onに続ける、という風に考えればよいのでしょうか?補助線が欲しいところです。日本の教材であれば、insist on + 動名詞というような処理で済ませているのではないかと思います。

かつて (20世紀末)のCOBUILDでは、動詞型にはかなり細かい「下位区分」がありました (書籍としても販売され、今でも中古市場では高値がついているようです。)
私も随分と学ばせていただきました。
その「レガシー」は、こちらに残されています。

THE COBUILD SERIES
/from/
THE BANK OF ENGLISH
COLLINS COBUILD
GRAMMAR PATTERNS 1: VERBS

arts-ccr-002.bham.ac.uk

コリンズ社のオンライン辞書関連のサイトでも、動詞型の下位区分は示されています。

https://grammar.collinsdictionary.com/grammar-pattern/verbs
こちらにもあることはあるのですが、ブラウザの設定によっては広告が煩わしいので、私は上記の「レガシー」版とでも呼ぶべきリンクから入って下位分類を参照することが多いです。

前回のその1、今回のその2で、私が拾った動詞型がどのように扱われているのかを、この下位区分まで辿って読む意欲とヒマのある学習者は稀でしょう。
でも、指導する側の人には、できれば目を通しておいて欲しいと思います。


「その1」同様に、長々(くどくど?ぐだぐだ?)と欠いてきた「その2」ですが、「COBUILDの芸風」に少しは馴染めたでしょうか?
最後に、COBUILDの文定義のうち、これまでに示した3大パターンに加え、もう一つの主要パターンを示して締めくくりとしましょう。

動詞 afford の項を見て下さい。旧版であれば brd-negのラベルが貼られる動詞ですね。

afford
[1] VERB
If you cannot afford something, you do not have enough money to pay for it.

この文定義は、かなり見慣れてきたことでしょう。

次の文定義です。

[2] VERB
If you say that you cannot afford to do something or allow it to happen, you mean that you must not do it or must prevent it from happening because it would be harmful or embarrassing to you.

この定義文を読んで「語義」は十分に理解できたでしょうか?「十分」ってどのような基準に達したら「十分」なのでしょうか?
接続詞は、語義[1]と同じ Ifが使われていますが、その後のSVのV が単なる動作・行動ではなく、sayなどの「発話」に関わる動詞が使われ、その発話の中身として、当該のエントリーの語(語句・表現)が続いているところが大きく違います。また主節との意味のつながりでも大きく異なっており、主節のSVのV にmeanが来ていることが特徴的です。

この If you say that A, you mean that B. という文定義は慣れると、「便利だな」と思えてきます。

  • (あなたが) Aという語(語句・表現)を言うとすると、(そのあなたの)意味する [意図する] ところは、Bということですよ。

というつながりとまとまりになるものです。語義を他の語に置き換えて直接示すのではなく、語義そのものを説明するのでもなく、「あなたの言いたいこと、言わんとしていることは、こういうことなのですよ」という定義の仕方です。

ここで、用例と照らし合わせてみましょう。
[V to-inf] We can't afford to wait.
先程の定義文の、"must not" 「禁止;だめ、ぜったい!」の「意図」が表れている用例です。
私は、「ただこのまま待っているわけにはいかないぞ!」というような「語気」 を感じました。
先程の定義文も、「あなたが、affordできないというときには、あなたの意図は、そうすることがあってはならない、とか、そうはさせておかないぞ、というものですよ」と読むべきで、このaffordを「余裕がある」という訳語で済ませてしまうことがあってはならないと、言われているかのようです。
日本が誇るお笑いトリオの「我が家」のローテーションコントで、「言わせね〜よ!」と杉山さんが突っ込むところまでが、一つのユニットとなるようなものでしょうか。

私:それって、もう「語義」じゃないでしょ?
COBUILD:え?でも、この語をどう使うのか知りたいんじゃないの?

と諭されているみたいで、「語義」命、の私のようなものにとっては、この文定義の仕方は革命的とすら感じられます。

文字通りの意味ではない場合も含めて、語(句)を他の語(句)で単純に置き換えられない場合、発話の背景・理由が複雑な場合に、いったん you mean that 節で落ち着く「踊り場」のようなものを与えて、その後にさらに詳細な内容を続けることがままあります。読む側がmean that節そのものに慣れていないと全く役に立たない文定義なのですが、that節に続いてさらに、接続詞 SV, SV を続けたりすることで、説明の呼吸、リズムを整える効果もあります。
このような、文定義の効能を味わい、

  • 「コウビルドが使いにくい、なんて言わせね〜よ!」

と嘯くだけの余裕はあるでしょうか?

以上、COBUILDの芸風に慣れよう、の「その2」でした。

前回、今回と私が参照した書籍を写真で紹介しておきます。

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借りるなら、「巨人の肩」
過ごすなら、「我が家」
Stay Home
Stay Safe
ですね。

本日のBGM: Monday Monday (綿内克幸)

追記:「物書堂」さんのアプリを使っている方は、こちらの noteの記事(期間限定で無料公開です)も是非お読みください。
note.com