Does that go against the grain with you?

たまには「英語」そのものの話を。

twitterのTLで見かけた表現が気になったので以前使っていた教材を振り返って見た。
そこでは、次のような英文を完成させる問題が出ていました。恐らく、大学入試の問題から引いたものでしょう。

  • Every time she drinks beer, she feels sick. Beer doesn't agree with her.

彼女はビールを飲むと決まって気分が悪くなる。ビールは彼女の体質に合わない。

かつては「入試頻出」とされていたようで、『クラウン受験英語辞典』(三省堂、2000年)では、
「意外な意味 agree with …『(食べ物、気候が)…に合う』も頻出」として、次の出題例を示している。(p.49, agreeの項)

Strange beds have rarely agreed with me. 普段と違うベッドはまず私に合わない。(早稲田大)
Life in the city has never agreed with me. 都会暮らしは決して私には合わない。(青山学院大)

日本の大学入試英語のデータベースとしての資料価値が高い上述の辞書も、刊行から既に20年以上経っています。

  • では、この表現は実際どのくらい使われるのか?

は気になるところ。

以下、各種辞書の定義・用例を引いて考えてみましょう。

COBUILDの句動詞辞典では、飲食物など口に入れるものを主語とする語義に対して次の定義と用例。

If a particular food or drink does not agree with you, it makes you feel ill. = upset
(COBUILD Phrasal Verbs, 2013年) 用例→ My milk didn’t agree with the baby.
否定の文脈のみで用いられることで、パラフレーズは upsetを示していることを確認。
句動詞辞典ではないCOBUILD (2018年)では次の定義と用例。

  • If some food that you eat does not agree with you, it makes you feel ill.
  • I don’t think the food here agrees with me.

同じCOBUILDでも句動詞辞典ではこの語義とは別に次の語義を立て、old-fashionedと注記を加えている。
If something agrees with you, it makes you feel healthy and contented. = suit

  • The sea air really agrees with her.     

肯定文の用例を確認

Cambridgeの句動詞辞典では

if a type of food or drink does not agree with you, it makes you feel slightly ill. (Cambridge Phrasal Verbs, 2006年)

  • I tend to avoid onions – they don’t agree with me.

この語義に対して、句動詞辞典ではなく、Cambridgeの上級学習者用辞書では、項目そのものをnot agree with sbで示している。定義は同じだが、用例はコンパクトなものに差し替え。

  • Those onions I ate didn’t agree with me.

この語義とは別に次の語義を項目立てして、肯定文の用例を示している。(オンライン版も同じ)
If a situation or new conditions agree with you, they make feel healthy and happy.

  • You look well---the mountain air must agree with you.

上述の句動詞辞典の方では、slightly old-fashioned という注記を加えた上で、次の定義と用例。
If new situations or conditions agree with you, they are right for you and make you feel happy.

  • The sea air seemed to agree with him---he looked fitter than he had in a long time.
  • It’s good to see you looking so well--- motherhood obviously agrees with you.


MW’s の学習用辞典では、先に引いた辞書のように語義を分けていない。

agree の項で+ withとして to be suitable for or pleasing to someone の定義を示しているだけ。
用例は肯定文と否定文が混在で、主語の制約など、特に語法注記はない。

  • The climate agrees with you. [=the climate suits you] ※パラフレーズは suit
  • Spicy food doesn’t agree with me. [=spicy food makes me feel unwell]

MW’s は初学者向けでない上級用辞書でも同じ語義と定義・用例を載せている。


Macmillan の句動詞辞典 (2005年) は追い込みが分かりにくいので、注意が必要。

agree with の項では、
if a situation or away of living agrees with you, you enjoy it and you feel happy and relaxed
という定義の下に、

  • I find that country life really agrees with me.

という用例を配置し、それと並べて、別な定義の語義を追い込んでいるので、実質語義を分けたもの。
if something such as food or drink does not agree with you, it makes you feel ill: Stop taking the medicine if it doesn’t agree with you.
disagree withの扱いは以下の通り。
if something you have eaten or drunk disagrees with you, it makes you feel ill ≠ agree with
agree withをこの語義で肯定文で使う頻度を考えると、この記号は誤解を招くのでは?
同じMacmillanでも上級学習者用辞書(オンライン版も同じ)では、次のように状況・環境と、口に入れるものとで分けている。2の語義では、肯定文の用例、3の語義では否定文の用例であることに注目。(とはいえ、3の定義は分かりにくいと思う)
2. if a situation or way of living agrees with you, you enjoy it and feel happy and relaxed

  • I find that country life really agrees with me.

3. (agree with someone) if something such as food or drink agrees with you, it does not make you feel ill

  • Stop taking the medicine if it doesn’t agree with you.

Longman の句動詞辞典 (1983年) では、agree with に対して次の定義 to suit the health of (someone)を与え受け身不可で時制は単純形という制約を示している。用例に「疑問文」もあり。

  • The onions did not agree with me, and have given me a pain.
  • Does the thin mountain air agree with you?

disagree with の定義には、 (of food, air, or weather) to harm the health of (someone) とあるが、weatherを主語とした用例はなし。 飲食物以外の主語では、City air disagrees with me. がある。
最新版のLDOCEでは disagree with を項目立てして次の定義と用例を示しているが、気候も含め状況・環境の例はなし。
if something such as food or weather disagree with you, it has a bad effect on you or makes you ill.

  • Seafood always disagree with me.

一方のagree with では、項目立てを not agree withとし、次の定義を与えている。気候や環境の意味は含まれず。用例も口にするもののみ。
if a type of food does not agree with you, it makes you feel ill

  • Green peppers don’t agree with me.

Oxfordの句動詞辞典 (1993年)では、disagree with に have a bad effect on (sb’s health etc) という定義を与え、主語には food, meal; fish, wine; heat, humidity と典型例を列挙している。

用例に気候の例あり。 

  • Hot climates disagree with her.

OALDの最新版ではdisagree with は定義のみで口にするものも含めて用例はなし。
if something, especially food, disagrees with you, it has a bad effect on you and makes you feel ill
agreeでは、句動詞 not agree with somebody を立て、主語に縛りを与えた (of food) to make you feel ill と定義づけし、次の用例を示している。

  • I love strawberries, but they don’t agree with me.

少し旧い米用法を反映していると思われる、Thorndike & Barnhart High School Dictionary (5th edition, Scott-Foresman, 1968年)では、語義の6. としてagree with を入れており、次の定義・用例を示している。 have a good effect on; suit:

  • This food does not agree with me; it makes me sick.

この定義・用例はその後のWorld Book Dictionary (私の所有するものは1987年版)では、句動詞の項目立てにはなったがそのまま引き継がれている。

こうして見てくると、肯定の文脈でも使われるとされる「気候や環境」が人に合う/心身に好影響を与える、という用法が現代でどの程度用いられるか、というあたりが悩みどころ。

「米」文脈をCOHAでざっくりと眺めてみると気候だけでなく1970年代以降は見当たらず。

NOW コーパスで現代のニュース英語を眺めてみると、気候などを主語にするのは、それほど頻度は多くない印象。



使用域は「英」文化圏とまでは断定できず。



肯定をざっくりと眺めてこの項目一段落。






出講日の朝の日課でもある 「英語ニュース引用RT140字紹介&詳解」での興味深いニュースがこちら。

学びどころ満載のツイートなんですけど、反応が殆どありませんでした。
もし「英語」に興味関心があって、私のアカウントをフォローしているのだったら、こういうのをチェックしないのなら意味がないと思うんですけどね。

ハッシュタグも付けている 「#asの前景後景」 も、今年になってから既に30本強投じています。
こちらが書き初め。

こちらが先週初めの投稿。ここまでで36本でした。

その中でも学び甲斐のあるツイートがこちら。

昨年度の高2にはよく読んでいた人がいましたね。続けているうちに、どんどん「眼」ができ、英語のセンスが豊かになっていきますので、まず始めること。始めたら続けることですかね。多くの人は始めるまでが大変で、しかも続かないから。

合う合わないは確かにありますけど、「テスト依存体質」を改善するだけで、いろんなものが吸収できるようになるものですよ。
本日はこの辺で。

本日のBGM: Temperamental (Everything But The Girl)