when spring comes around

ツイッターやFBでも紹介していましたが、2024年度入試関連の情報提供。
私の母校でもある東京外国語大学のリスニング&ライティングの技能統合問題に関連して。


問題冊子のレジュメにあるタイトルとキーワード&合格した受験生の聞き取りの際のメモを元に出典を検索しています。
「思しき」と書いたのは、出典はこれに間違いないはずですが、年によって実際のスクリプトが部分的に書き換えられている場合がある(当然音声も新たに収録することになる)ためです。

大学入試に関わる情報、と言えば、田中健一先生のツイートで紹介されていた某記事は、読んで見て結構な衝撃を受けましたので、今日の記事はその辺りを中心に。

当該のツイートがこちら。

元記事はこちら。

「I made for the school.」「I am.」を訳せる?東大生が伝授!英語攻略法 | ニュースな本 | ダイヤモンド・オンライン

私の率直な反応はこちら。

ここで私が書いた、「義務的な要素を含むSVAの動詞型」というのは、例えば次のようなものを指します。

  • I live in Chiba prefecture. 私は千葉県に住んでいます。

ここでの「場所句」である in Chiba prefecture は省略することができません。

  • I shouldn’t belong here. ここは私のいるべきところではない。

ここでのhereも省略することはできません。
イマドキの学参でも、この辺りとの兼ね合いは押さえているでしょう?という趣旨のツイートです。

既にnoteの記事/マガジンでも公開していますが、私はもう随分長い間、所謂「文型」の扱いの再考を訴えてきました。
「目的語感覚を養う #6」で取り上げている内容とも重複しますが、SVで意味が整合する動詞の用法からいくつか抜粋して、ここでも考えてみたいと思います。

記事単体では販売していませんので、こちらのマガジンをご検討願います。

note.com

それでは本題です。
日本の「英文法」の教材の多くが「文型」という名の「動詞型」を重視しています。
中でも根強いのが「五文型」という考え方。最近では S/V/O などの記号で示されることが多く、「第何文型か?」と型の番号を使うことは少ないのではないかと思うのですが、教材や指導者によっては今でも、第1文型から第5文型までに動詞型を分類し、当てはめているようです。

その中で、基本的にS+Vで構成される表現なのに文型=動詞型ではSVの典型例として扱われ難いものがあります。
そのような表現で使われる動詞をいくつか取り上げます。

まず、「変化」に関わる動詞のdiffer。
1. Tastes differ.       
人の好みはお互いに似ていない/人の好みはそれぞれです。 

無冠詞・複数形の名詞tastesと動詞differの現在形で一般論を述べる文です。ここでのtastesは可算扱いで「人の好み;嗜好」。動詞differは「お互いに似ていない」という意味ですが、その意味を形容詞ではなく動詞一語で表します。主語が複数(形)の場合には、その主語相互の相違を表すので、from each otherなどの前置詞句がなくても文として成立します。
敢えてパラフレーズすれば、次のような言い方になります。
  1’ Everybody has their own likes and dislikes.
   誰でも皆、その人ならではの好き嫌いがある。
また、諺でよく知られた文であれば、日本語の「蓼食う虫も好き好き」に対応する次の文になります。
  1’’ There is no accounting for taste.   「人の好みは説明できない」
      
※因に、この諺での「好み」は、かつてはtastesと複数形で使われていましたが、現代英語では無冠詞のtasteが優勢となっていることは知っておいた方が良いでしょう。

COCA系


Ngram Viewer

話しを戻して、Tastes differ. の類例を見ていきます。
「意見は分かれます/意見は人それぞれです。」
という意味では、
2. Opinions differ.         
3. Opinions vary.
の二つの表現をよく見聞きします。
動詞 vary にも、複数形主語を取り、「様々である」意味を表す用法がありますので、differとの差をちょっと見てみましょう。

NOW

GLOWBE

COCA

動詞varyの典型的な主語には、prices「価格;物価」 がありますが、意外(?)なところで、answer(s)があります。
4. The answers vary. 答えは一つに決まりません。/回答はバラけます。

※状況によっては、定冠詞で単数の the answer varies も使われますが、その場合は通例、specificな状況を同じ文中か前後(背景)の文脈で示すことになるでしょう。
Q: What do the crews eat on long flights? – Harry Carley, Japan
A: Pilot meals vary from airline to airline. Usually on long flights, the crew meals are prepared in a similar way to passenger meals. The flight attendants bring the meals to the pilots once the passengers have been served. The menu varies depending on the departure airport and the catering request.
www.usatoday.com
(Q: 長時間のフライトで乗務員は何を食べていますか? - ハリー・カーリー、日本
A: パイロットの食事は航空会社によって異なります。通常、長時間のフライトでは、乗務員の食事は乗客の食事と同じように用意されます。乗客の食事が終わると、客室乗務員がパイロットに食事を運びます。メニューは出発空港やケータリングのリクエストによって異なります。)

「重要である」という意味の動詞。
「…である」という日本語の感覚では、形容詞として捉えてしまうので、動詞の用法を用例でしっかりと押さえておくことが重要な動詞がmatterです。
5. Context matters. 文脈が重要な意味を持ちます。
  matterには「重要な意味を持つ;重要な影響を与える」という意味があり、形容詞ではなく動詞として使われます。否定の文脈で使われることが多いですが、このように、肯定文でも使われます。noteの記事でも、次の文を取り上げていました。
6. Quality matters more than quantity.   質が量より重要です。

このmatterと意味が似ている動詞に countがあります。
countは、主語が人・ものに関わらず、「重要である;価値がある」という意味で使われます。
7.Every Mother Counts.  
一人一人の母親に皆意味がある/大切じゃない母親なんていません。
everyは単数扱い。「ひとつひとつ取り上げ、漏れなく」です。
私も継続的に支援している米国の団体にEMCがありますが、そのイニシャルの元になる文で、メディア等では上述のようにEMCを大文字で示すことが多いです。
元スーパーモデルの、Christy Turlington Burnsさんが主宰している団体です。
直接のdonationも、関連・提携グッズの売り上げからの一定の割合の寄付も可能です。
詳しくはこちらを是非。

Pregnancy and childbirth should be safe, respectful, and equitable for everyone, everywhere.
everymothercounts.org

本来は人主語の筈の伝達動詞がモノやことがらを主語に取る場合に、 SVのみで意味が整合することがあります。
動詞はtellやtalkが使われますが、主語に来る名詞で結びつきには相性の善し悪しがあったり、時制による頻度の差があったりするので注意が必要です。
「血は争えない; 血統がものを言う」
という意味では、
8. Blood will tell.
9. Blood tells.  
の両方が使われますが、諺・格言のような使い方では頻度は極めて低いので注意が必要です。

Ngram Viewerの頻度では will tell > tells となっています。

一方のCOCA系で見ると

NOW でwill tell。 ことわざ的言い切りの例も少しは拾えそうです。

NOWでstands。目的語を取る例の方が優位で、言い切りの例は極めて少ないことが見て取れます。

やはり一つ一つみていかないとダメですね。

noteの記事でも取り上げていた「お金」と「経験」。
主語になる名詞と動詞の結びつき・組み合わせを確認。

10. Money talks. お金がものを言います。
11. Experience tells.  経験が物を言います。
が、あるある、ですね。

以下、noteの記事とも重複しますが、動詞standを取り上げます。
12. My decision stands. 私の決断は揺るがない。
直立している=揺らがない;崩れない;倒れない という比喩的な意味。
この動詞standの用法に関しては既にツイッターで、有益な投稿が成されていますので、是非お読み下さい。

興味深いのは、このstandが現在時制で使われるときの副詞の扱い。
主語として典型的な名詞は、offer, point, decision ですが、これらと副詞のstillが結びつく強さと、使用頻度には関連性があるようです。

全体概況



小説

offerではstillのある、なしで2倍ほどの使用頻度の差があるのに対して、pointでは英米で差があり、米はなし優勢、英はあり優勢、decisionではほぼほぼstillなし、という結果です。

COCA系でも見ておきましょう。

NOW でstill stands

NOW でstandsのみ

GLOWBEでsill stands

GLOWBEでstandsのみ

COCAでstill stands

COCAでstandsのみ

この3つの比較で見る限り、decisionの頻度そのものが低いことが見て取れます。
日頃の観察がより重要であるということですね

ここまでに出てきた主な動詞の使用頻度をざっくりと見てみましょう。

全体



英 (1985-1995までに「一分一秒を争う」 何があったのか、凄く気になります。)

小説

本日はこの辺で。
Whatever works.

本日のBGM: 春になれば (中村一義)

youtu.be

open.spotify.com

2024年4月4日追記: 
このエントリーでは、基本的にSVのみで意味が整合するものを取り上げましたが、他にも

  • Day breaks. / Day dawns. 夜が明ける。
  • Her voice broke. 彼女の声が詰まった/彼女は声を詰まらせた。 ※「悲しみや恐怖など、感極まって」が多い。男子の変声期の声変りにも使うことがある。

など、SVのみで意味が整合するものは色々あるのに、英文法の学参等では
<SVの文型>
という項目では取り上げられられていないようです。

また、英文法の一般書でも、英語学の知見を借りてくるのか、「1項動詞」「2項動詞」などの概念を用いて動詞型(文型)の異同の説明をしているものがある印象ですが、例えば、

  • I don't drink. 私は酒はやりません。/お酒は呑みません。 
  • He doesn't smoke.  彼はタバコを吸わない。

はどう扱っているのでしょうか?

上記2例では、目的語はないけれども、動詞そのものの中に「アルコール飲料」「タバコ類」という目的語の意味を含んでいるわけで、このような動詞の用法はハナから例外的な扱いをして、都合の良いものだけを奇麗に分類しがちなところが、本当に大嫌いです。

この  drink/smoke 程には明確ではありませんが、

  • It stinks! 全くダメ/酷いね /クソ
  • It sucks!  最低/むかつく
  • His new song rocks! 彼の新譜サイコー!

のような SVのパターンも主語に来る名詞の内容・性質・実態は当事者には共有可能であり、その上で、動詞の元々の意味よりも広い・深い意味を比喩として表している、と柔軟に捉えた方が良いでしょう。

  • That depends. それはことと次第による。

というときも、聞き手・読み手はともかく、話者には "On what?" に当たる 「ことと次第」の思惑くらいは見えているわけで、

  • Only time will tell.  時が経てばわかるさ。

という時も、「何が分かるか?」の前提である、 that SVや、whether/if SVや wh-は通例、共有済みでしょう。

「文型」分類が大好きな指導者の方々におかれましては、このような例も大きな心で受け入れて丁寧に扱って欲しいと切に願います。