eatables and drinkables

4月に入ってから、10年以上も前のこの過去ログのアクセスが急増していたのが解せなかったのですが、「もしかしてだけど…」案件が浮上。
ツイッターでも紹介していました。


もしかしてだけど…
これからやって来た?

こちらでも写真をアップしておきましょう。



ありがたいやら、驚くやら。


私がレジェンドというか巨人の本を読むのは、まあ、借りるなら高い肩だからそうするだろ、とは思うけど、レジェンドが市井の英語教師のブログを読んでいるって、あらためて凄いなと。
こちらの本は、チャンキングのところと、最後のコーパスの分析のところくらいしか読んでなかったけど、再読します。

今日は花祭り。
今年は桜の開花が遅く、お花見シーズンなのに、雨模様が続いたので、結局一度も花見に行かずに終わりました。

旨い日本酒で花見酒、は来期にお預け。

ということで、気になる語法シリーズは、飲食に関わる名詞の単複です。

まずはベタに、「飲食物」そのものから。
「食」を表す名詞foodの単複。

  • The basic necessities of life are food, clothing, and shelter. 生活必需品は衣食住です。
  • The season finale provided thought for food. このドラマの最終回には考えさせられた。

では不可算扱いが基本だけれど、具体的な「食べ物」を指す場合に、単複は悩ましいもの。

辞書で「飲食物」を引くと、日本語の「飲」先、「食」後との違いばかりが強調されている印象。

food and drink 飲食物(!この語順で用いる) (ウィズダム英和;以下W4)

food and drink 飲食物 (通例この語順) (ジーニアス英和、第6版;以下G6)

一方で、次のような記述もあるのですね。

food and drink (英)/food and drinks (米) 飲食物
Gina had prepared food and drink / drinks for the party.
ジーナはパーティーの飲食物を準備していた (Oxford コロケーション;以下Oxford連語)

辞書で検索できる範囲で用例を見てみると、同じOxford系でも、「類語辞典」では、

Gina had prepared food and drink for the work party.ジーナは作業班のために飲食物を用意してあげていた

とdrinkは単数形(辞書形)表記の用例だけが示されています。原著の出版年は類語が2008年、連語が2009年で1年しか違いませんから、コーパスが改訂された、とは考え難いです。

同じジーニアス英和でも、第5版 (2014年;以下G5) では、

Food and drinks may not be consumed in this room.
この部屋で飲食はできません.

と "drinks" は複数形になっていたものが、G6では、

Food and drink may not be consumed in this room.
この部屋で飲食はできません.

と単数形(辞書形)の表記になっています。G6は2022年ですから、この8年で単数形にしようという見直しがなされたのでしょうか?
同じG6の用例でも、

The old table groaned under the mountain of food and drinks.
古いテーブルは山のような食べ物と飲み物の重さにきしんだ.

ではdrinksと複数形ですし、ジーニアスの和英では

先日取引先から飲食の饗応を受けた
The other day our business partner treated us to food and drinks.

と複数形で対応させています。ジーニアスの和英第3版は2011年ですから、時代の変化に合わせた、というのは当たらないように思います。
O-LEXでは、英和も和英も

food and drink 飲食物
飲食物 food and drink

と、drinkには単数形(辞書形)を示していますが、O-LEX和英(第2版、2016年)の用例の中には、

高級レストランでの飲食では,しばしばサービス料が別に取られる
At fancy restaurants, they often charge you for service on top of your food and drinks.
飲食物を集会所に持ち込んでもいいでしょうか
Is it alright to take food and drinks into the assembly hall?

と 複数形drinksの例が見られます。そして、どこにも注記はありません。


ということで、オンラインコーパス等に頼って、いつものざっくりとした検索。
Ngram Viewerで。

全体

米。これを見る限りでは、米でも food & drink are [were] >food & drinks are ですね。
food & drinks は1980年代終わり頃から増加傾向。
food & drink の足し算/合算でも単数扱いでis [was]は少ないです。

英。英でも、food & drink で複数扱いが優勢だけれども、合算でも is と単数扱いするのは、米よりも比率は高いか。 これを見る限りでは、food & drinks はそれほど頻度が高くない。

COCA系で見てみましょう。

ベンチマークを期待してCOCAを見るも、ヒット数が少なく、得られる情報も少ない。

GLOWBE。 やはり文頭縛りは厳しい。米でヒットなしという衝撃。

ヒット数を期待してNOWで。food & drinks とdrinksだけ複数のものの頻度上昇。
food & drinkの合算で複数扱いするものと単数扱いするもののヒット数自体にはそれほど差は表れず。最新の地域差データを知るには、NOWの用例をしらみつぶしにするしかない?

ということで、”food & drinks” で78ヒットの用例で出典を見て、

US 35
UK 7
AU 6
CA 5
NZ 2

という結果。所謂「6大メジャー」で、約70%。米&加の北米で50%強。米のみで約45%という割合になりました。
NOWコーパスは均衡コーパスではないので、この数値から何かを断定するのは難しいですが、Ngram Viewerでの米の概況で、

  • food & drink > food & drinks

という頻度であっても、food & drinks という言い方が、より多くなされる文脈は地域や文化圏で言えば米国、北米ということは言えなくはない、と感じます。
今回は文頭が Foodで始まるもの、という縛りで検索していますので、もう少し柔軟に文中の環境で、コロケーションの指定で拾ったりすれば、もう少し言語事実が明らかになるかも知れないと思います。

「飲食物」のついでに、「野菜と果物」でも、fruit and vegetablesか、fruits and vegetables か、そして単複での動詞の呼応は?という悩みどころかを見ておこうと思います。
学習用の辞書ではこんな扱いです。

種類をいうときはCだが, 複数形はfruitの方が普通)
いろいろな果物
various fruits / various kinds of fruit. (!後の方が普通)
新鮮な果物や野菜は健康によい
Fresh fruit and vegetables are good for your health.
(W和英)

そうかと思うと、英和では次の用例を収録。

I eat a diet rich in fruits and vegetables.
私は果物と野菜の多い食事をとっている
(W4)

ジーニアスでは、

数えるときはa piece of fruit; 特に種類を表すときはC
fruit(s) and vegetables
果物と野菜, 青果(物)
(G6)

O-LEX英和では、

(果物全般を表す場合は集合名詞 U,種類を表す場合は普通名詞 C,食品を表す場合は物質名詞 U扱い.ただし個々の果物を指すことはまれ)
Eat more fruit and vegetables to stay in good health.
健康を保つためにもっと果物と野菜を食べなさい

こちらもざっくりと検索してみましたので、そちらを載せて本日はお終いです。

Ngram Viewer全体


英。この英での近年の動きは、更なる精査・吟味に値すると思います(既に先行研究がありましたら、教えて下さい)。

COCA

GLOWBE

NOW


本日のBGM: ベジタブル live version 2022 (大貫妙子)

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