可愛さ余ってお裾分け

お祭り終了。
普通科は、やり直し問題を選び出してプリント印刷。「テスト返ってこないの〜?」とか「平均点は?」という声を無視して、大問毎に再解答を求め、授業での足跡を辿り直す作業。その後、返却。平均点などは、配点を操作すればどうにでもなりますから、肝心なのはいつも「出来具合」なのだ、ということをしっかりと認識して次のステップへと進んで欲しいものです。
進学クラスの高3に話したのは、「お受験マインド」というか、「過去問マインド」について。

  • 「お受験マインド」の人たちは、『赤本』とか『過去問』をとかく気にするものですが、私が何が嫌いって、「先生、赤本で過去問を10年分やったんですけど、この後何やればいいですかね?」と聞いてくる人。親切心なのか、「最新の2年分くらいは残しておいて、入試直前にやるといいよ。」などという助言をする「先輩」がいたりすると、もう頭がグワグワする。あのね、過去問をやり終えたので、ここからは過去問にこだわったり、囚われたり、縛られたりするのではない、英語との付き合い方を模索したい、というのなら話は分かるんだけれど、たいていの場合はそうじゃない。いいですか、過去問を本当に10年分やったんだったら、その10年分の成果で「英語力」が伸びたわけでしょ。だったら自信をもって試験に臨めばいい。他の教科にエネルギーを割けばよい。次に何をやればいいかが気になるという時、そのほとんどは、自分の「英語力」に不安があるということなのだから、「過去問」を解いたけれども充分には身についていないわけ。だったら、身につくまでやり直せばいいだけの話し。過去問をやるな、とは言わないけれど、身につけるべきなのは「英語力」であって、「過去問力」じゃないでしょ。

繰り返さなくてよいことを祈ります。
実作は、『Upgrade』で扱われている、that節中の動詞の形に気をつけることが求められる、”demand” ”insist” を取り上げ、例文作成。入試問題ではなぜか頻出とされていますね。これらの動詞が主節で用いられる時の時制はだいたいが過去形で、that節中の主語にあたる名詞はたいて三人称単数という問題が収録されることが多いのですが、実際にそんな文ばかりを自分が言ったり書いたりするわけではないので、実作です。
まず、demandという動詞を使って、典型的な用例を一つ自分で作ってみる。それをクラスで摺り合わせた後で、学級文庫にある辞書群から私が数冊選び出し、見繕った用例を覚えて帰ってくるシャトルラン。一つの辞書には demand that 節の解説はごちゃごちゃ書いてあっても、用例は1つ、多くても2つどまりなので、せっかく「斬れば血の滲むような」フレッシュな用例があっても、充分に活かしきれないもの。5つ、6つと並べていけば、そこから「肝」が取り出せるでしょ、という非常に回り道の多い、無駄の多い、効率の甚だ悪い活動。前提にあるのは、「良い辞書」のセレクションと、用例を自分で生き直すということです。とりあえず「過去問マインド」は満足させておいて、Cambridgeの辞書から、英系語法の「直説法」の用例と、MEDからはinsistとdemandが一つの例文で同居している例を板書して、ことばが生き物であることを強調。自分の中に既にある、insistといいたくなるような、insistしたい何かを引き出すことができれば、英語はすぐそこでしょう。
insistを英和辞書で引かせて、訳語での意味を問うと、「2つの意味がある」と確認しても「強く主張する」という訳語でしか覚えていないことが多い。「しなさい」という実質、命令文に相当する場合と、「そうなんだってば」と事実や出来事に言及する場合とが明確に区別できる用例をまずは観察することから。機能をいくら詳細に辞書で解説しても、運用に繋げるにはかなりの距離があるものです。この段階をクリアーしていないのに、「insistはSVO+to原形という文型を取りうるかどうか」のテスト、識別などという「受験勉強」をしているから、英語が身に付かないのではないかと、本気で思っています。

進学クラスの高2は、残った一つのコマの「ライティング」のテスト返却。今回は、『やれでき』と『コーパス』から単文の4択完成、和文英訳、P単のコロケーションの和→英という知識と下位技能のみをテストしているので、一応、どの問題とどの問題が弁別での相関が強いかをフィードバック。P単のコロケーションの構造をパターン化して、類例が今回のテストで取り上げたもの以外にどれだけあったかを問う。ここからが、自分の勉強です。

高1のオーラルは、「番付表」の活用に繋げる伏線としての「動詞+名詞」のコロケーション。普通科の高2がやっているものと基本は同じもの。

  1. 正しく用いられた英語を観察し四角化など自分でなぞってみる段階
  2. 構造を把握し、与えられた1語を適切な場所に補充することで英語表現を完成させる段階
  3. 語句整序で英語表現を完成させる段階
  4. 空所補充で英語表現を完成させる段階
  5. 日→英
  6. 実作としての「英文ライティング」

というような流れが多いでしょうかね。語順と形合わせでの頭の働かせ方、合いの手の入れ方をThink aloudして終了。

本業はオフの日なので、久々に同僚と一献傾けてから帰宅。
Ustreamで高橋幸宏。(http://www.ustream.tv/recorded/10309930)
ゲストは、Pupa3号こと原田知世。
至福。

A書店から職場に届いていた本をパラパラとめくっているうちに寝ていました。

  • Key terms in second language acquisition, Continuum

Bill VanPatten and Alessandro G. Benati による用語解説です。持っていて損はない本だと思います。私の場合は、まあ、”Intake” の扱いを整理したかったのですねきっと。いろんな人がいろんな意味で使っているので困りもの、というだけで、本当はどうなの、というクリアーな回答はありませんでしたが、「オリジナルのPit Corderをきちんと読むこと、Susan Gassと自分 (= Bill) の本を読むことが大事」、というメッセージはしっかり受け止めました。

本日のBGM: Mr. Epigone (Pupa)