実食

2024年、元日に、能登を中心とした大地震。
翌、2日には羽田空港での航空機事故。
心が安まらないようなときは、映像を流すメディアから離れるのも大事。

年末のエントリーで、「和文英訳・英文ライティング」の指導法セミナー受講者からのフィードバックから抜粋でご紹介しました。
指導者対象の有料のセミナーですが、「明日の授業ですぐに使える技のリスト」といったものはありません。いや、技は結構紹介しているし、手の内はほぼほぼオープンにしています。ただ、処方箋やレシピ集とは対極にあるような何かをずっと志向してきましたので、「まどろっこしいこと言ってないで、手っ取り早く効果的、効率的な指導法を教えて」と請われても、というのが正直なところです。これはかつてのELEC協議会の夏期研修の後日談でも書いていたことですね。

tmrowing.hatenablog.com

ということで、今回のセミナーを受講された方からのフィードバックの続きを。
高校生を指導する先生です。

先日はセミナーを受講させていただき、誠にありがとうございました。
私の学校でも『○○英作文』を採用しています。生徒たちは意欲的に取り組んでいましたが、いわゆる和文英訳に慣れ親しんだだけで、その後のライティング指導に十分繋げられていなかったことを大いに反省しました。
general → specific の流れは言うは易しなのですが、まさに教師の『目利き』が重要で、書き手の視点で英語を読む力を持っていなければ、生徒にそれを指導することができないのだと、叱咤していただいた気持ちです。
生徒の能力の高さに甘えていた部分が少なくとも私にはあったかと思います。今回のセミナーは、英文を上手に書けない生徒がどうすれば書けるようになるかを暗黙知から形式知にまとめあげた実践を知ることができる非常に濃密な3時間でした。

続いては、関西大学の水本篤先生。文字指導関連以外で、私のセミナーに大学の先生が参加してくれるのはそれほど多くないのでありがたいことです。
申込者のリストで「ミズモトアツシ」という文字列を目にした時に、相当ドキッとしたことを記しておきます。

昨日のセミナー、大変勉強になりました。いろいろ立て込んでいたのですが、参加してよかったと心から思いました。
松井先生がお話されていたことはAIには到底できないことであり、目から鱗でした。改めて、松井先生のライティング指導の極意が伝わってくるセミナーでした。3時間があっという間に過ぎていき、あれが3千円というのは安すぎると感じるほどでした。
「ライティングのフィードバックでは誤りの訂正だけではないフィードバックを」というのは全教員が意識すべきことだと思います。その他にも、L1<-> L2 の違いに注意を向ける授業での仕組みや、先生がおっしゃっていた「英文モデルのクオリティーが低くて良いということにはならない」、「誤文訂正問題が修正できるレベルに達するまで、誤文にさらされ続けるのはよくない」といったコメントをはじめ、たくさんメモを取りましたので、いただいた資料を見直して、復習したいと思います。
改めて、あのような準備に莫大な時間と労力がかかるセミナーを安価で提供していただいて、どうもありがとうございました。また機会があれば、セミナーに参加して勉強させていただきたいと思います。

水本先生には、セミナーの途中で、ChatGPTの活用法に関して有益な助言をしていただき誠にありがとうございました。


今回のセミナーでは詳しくお話できませんでしたが、和文英訳と英文ライティングとを地続きにして指導評価するための下準備、基礎工事としての『チャンクで積み上げ英作文』の役割、理解の徹底やレファレンスとしての英文法・語法・語義を解説する資料の充実、というのは物凄く大きいものである、というということを繰り返し訴えておきます。
チャンクに関して、ドリルはしますが、基本的に私がシラバスを作る実践では小テストというものがありません。「問題演習やテストをアウトプットに」ということは想定していない、というか、私はそもそも授業内での小テストというシステムで学力が養成されるとは信じていないのです。これは、学校の教室現場で、1限から6限、7限などの時間割の中で過ごしていれば実感できると思うのですが、あまり賛同は得られません。

  • 自分の授業中の週に1回、小テストを行い、その結果を記録して平常点に加味して、成績に含める。

などというやり方をしているところは多いと思います。これは、もう、私としては本当に大嫌いなんですね。
「毎回の積み重ねが基礎の定着を促すのだ」、などという人がいますが、私の英語の授業の次の時間に、他教科の小テストが入っている時間割になっていたりすると、私のその時の授業を聞かずに内職して、次の時間の他教科の小テストで高得点を取るための準備に労力を割いている生徒がいたりしますから。
そうであるなら、英語の小テストが行われる時間の前の時間に当たる他教科の授業はきちんと成立しているか?ということを考えてみることが大事。前の時間にはその教科の学習はせずに内職して、英語の小テストの準備をして高得点を取り続けることにどれほどの価値があるか?
それでは結局、教室で何も「学び」が発動・成立していないわけです。

今回のセミナーでも一部をそのまま紹介しましたが、私が授業で配布しているハンドアウトには用例だけではなく、その和訳も文法・語法・語義やディスコースに関わる解説も含め予め全て書いています(ディクテーションの場合は、英文のところは空所ですけど)。

  • 文法の説明を読んだり、聞いたりしただけで文法が身につくわけではないし、十分な理解ができたりはしない。
  • 教師が喋り過ぎずたり、教え過ぎたりせずに、生徒に考えさせ、使わせる中で気づかせることが大事。

などということを、私も若い頃からこれまでにさんざん言われてきました。
私が今、目指しているのはそういった批判に対する再反論とでもいう、「読むことで理解できる」「読めば読むほど英語のセンスが増す」「その理解の上に立つと、今まで見えなかった英語の地平を見渡せる」ハンドアウトです。

「もの」を沢山集めてなくさないようにするのではなく、その「もの」の積み重ねから「そういうことなんだな」という「コト」に変換する、集約する回路を整備する、とでも言いましょうか。一度見えるようになったら、次に出会ったときに、ああ、あれだな、と分かる目を作る、という言い方も授業ではよくしています。

生徒もそれぞれですから、

  • ハンドアウトに全部書いてあるなら、後で読めばいいじゃない。

とばかりに授業中に内職をしている生徒もチラホラいますけれど、最近では怒ったりしません。
自分が美味しいとか美味しそうと思っている情報や知識だけをつまみ食いしても、その血肉化は難しいものなので、そのうち気がつきます。まあ、「そのうち」の訪れが早い方が良いとは言えるかもしれませんけど。
過去ログと一部重複しますが、生徒もこのくらいのことを言うまでには成長しますので。

  • 世に溢れている問題集の解答解説よりも、確実に先生のプリントが1番いい教材だと思います。
  • 授業中に「補足」として提示される例文や、使用頻度を表すグラフが最も重要。辞書にもなかなか載っていない用例を採取でき、ぐっとイメージが掴めるようになる。
  • 解答例の英文も大事だけれど、その下っかわにある解説が秀逸なプリントなので、下っかわを熟読した方が、きっと良いと思います。
  • プリントの「補足」は大事。プリントはテストが終わっても捨てないで取っておこう。
  • 高校2年生から先生に英語を教わり始めて、一読して理解できる英文の書き方、generalからspecificの流れや焦点化など、英文の構造を意識したライティングの書き方を学べました。コーパスの活用や自然なコロケーションも知ることができ、現代英語の実態にも触れることができました。
  • 「求められている答えはどのような要素を含む必要があるか?」「論理関係は破綻していないか?」「どのような文脈の問いなのか?」ということをしっかりと理解した上で書くということを学ぶことができた。

最後に「下っかわ」や「補足」に何を書いているのかという実例も少しだけ紹介しておきましょう。所謂「文法語法」の頻出問題集の扱いです。
当該の問題そのものをカットしているものもありますが、そういうものでも、「下っかわ」に「補足」されたものから、何がターゲットだったのか推測してみてください。

本日はこの辺で。
本日のBGM:Recipe (Michael Kaneko feat. ハナレグミ)

one inch away from the truth

12/30のセミナー振り返り。
年の瀬にも関わらず、約30名の参加を得て無事開講できました。ありがとうございます。

  • 英文ライティング指導法セミナー:表現も・論理も〜和文英訳の指導と英文ライティングの指導との両立

と題した3時間の長丁場。
おおまかな流れは以下の通り。

用意したスライドは2回ほど作り直して154枚に。作成途中のボヤキをツイートしていました。

途中、10分程度の休憩を二回挟んで、ほぼ定刻通りに終了しました。リハーサルをした甲斐があったというものです。
セミナーの中で寄せられた質問には、概ね回答できたと思います。終了後も15分ほど、会議室は開いたままにして、さらなるQ&As。
明けて、本日の午前に、共有可能なスライド(約半数)のpdfを載せたアーカイブのアドレスをお知らせし、当日のチャットをpdfにしたものと、参考資料のpdfを受講された皆さんに送りました。当日のスライドでは見ていただいた実際の生徒の解答英文・作品の部分は共有スライドではカットしています。悪しからず。

早速コメントが寄せられていますので、事前に許可を得ている方のものをご紹介。匿名希望の方は匿名で抜粋です。

本日はとっても濃い内容の講座をありがとうございました。質問にもたくさん答えてくださって嬉しかったです。テンプレ祭りにならないライティングの指導モデルに触れられて刺激的でした。来年度以降の自分の指導に活かしていきたいと思います。メモを取り切れなかったところや情報の処理が追い付かなかったとことも多いので、開催があればぜひまた参加させていただきたいです!

非常に内容の濃いもので,今からもう一度今日のお話を振り返りながら,どうやって今後の自分の授業に反映させていこうかと検討していきます。松井先生のセミナーは初参加でしたので,ご著書である「パラグラフ・ライティング指導入門」を拝読してから今日のセミナーに臨みましたが,今日の内容と合わせてさらに勉強します。テンプレに依存しすぎない,意見文ばかり書かせないとのお言葉は,特に私の心に刺さりました。先生のツイッター・Xやブログもこれからフォローさせていただき,英語指導者の一人として進化していきます。

次は、桜修館中等教育学校の陣野俊彦先生から。

文字指導のセミナーで以前お世話になりました。本日も年末にも関わらず機会を設けてくださりありがとうございました。講演後に先生のブログを拝読していたところ次の文を見つけました。
「効率よく、技術を身につけたい、身につけさせたい」という流れとは対極にあるのが本来のライティング指導なんじゃないでしょうか、
本当におっしゃる通りで、本日先生にご教示いただいた、多様なメディアを通して調べ、様々な英文にあたりながら行うライティング指導を模索していきたいと思います。

続いては、新潟市立下山中学校の山﨑寛己先生。

昨日のセミナーでは、松井先生の目から見た英語やライティングの指導を追体験することができ、その解像度の高さにただただ圧倒されました。中学校の現場でも、言葉の生息域を確認すること、一読了解を目指すための技術、「お題」に潜む問題点(意見文作文)、テンプレの弊害、書き出しや終末で表現を予め与えることで生徒のライティングをコントロールするコツなどたくさん活かせる視点がありました。
何より、セミナーを通して松井先生のご指導に底流している生徒への愛が感じられ、常に英語力をアップデートし続けたい、指導についても勉強し続けたいと思う良い機会となりました。本当にありがとうございました。

匿名の方の長文から抜粋で。

本日は、貴重なお話ありがとうございました。3時間があっという間でした。先生のお話を聞きつつ、自分であれば、目の前の生徒にどうしてきたか、また、どうすべきか、何が新しくできるのかをずっと考えていました。自分にとって大変有意義な3時間でした。
・和文英訳と自由英作文の連続性
・英語の語義・チャンク・文・passageを行きつ戻りつしながらの指導
・日本語、英語にかかわらずことばの運動性の体感と体幹の重要性
・その体感(幹)を生かした、生成系AIやコーパスの活用とプリント作成(生徒がうらやましい)
上記のどこをとっても、「つぎの授業ですぐに・・・」というわけにはいきませんが、先生がお考えになっていることを聞いたり、読んだりすると、毎度、宿題をもらっている感じがします。そして、その宿題の答え合わせは、何かの本を読んでいるときや授業の準備をしているときに、ふと思いつくことが多いです。「ああ、先生がいっていたことは、そういうことだったのか」とか「あの時の疑問に対する答えが、今の自分ならこうだな」のように。今回の研修で、先生のライティングやことばそのものに対する知識、姿勢、理論と実践を改めて体感しました。そして、もっと頑張らねばと思いました。そのためには、方法論だけでなく、ことばに対する深い洞察力が非常に大切だと再認識させられました。これから一つ一つ自分の頭に残ったものを反芻して、自分なりの答えを探っていきたいと思います。

セミナー冒頭でも話しましたが、今回のように「英語教育」系のセミナー、研修で和文英訳が取り上げられることは少なく、たいていは予備校系の教員研修で入試対応の色が濃いと思います。
私自身が担当した、2012年夏のELEC協議会の教員研修では、次のような切り口で開催し、資料編として、和文英訳や英作文関連の「レガシー」を紹介していました。

そこから10年ちょっと。
当時の研修に参加されていた方の中に、今回のセミナーを受講してくれた方もいらっしゃいますので、何が変わって、何が変わらないのか、じっくりお聴きしてみたいと思っています。

受講者からの声が届きましたら、またご紹介させていただきます。
本日は、セミナーの御礼、
そして、2023年の御礼まで。
ありがとうございました。

本日のBGM: more than words (羊文学) 〜 ぼくらの魔法 (ハンバート ハンバート)
※このBGMの2曲は、以下のプレイリストに含まれています。

もう合わないかもしれない?

今年度の授業で取り上げた「表現」のうち、

  • 合う・合わない、似合う・似合わない

の意味を表すものをまとめておきたいと思います。
昭和の頃の入試問題から、つい最近の出題まで、次のような英文が取り上げられています。
空所補充完成だったり、同義語選択だったり、読解素材文中に含まれていたり、とさまざまです。

他動詞のsuit
I like your dress. I think that blue suits you. 
あなたの服はすてきですね。そのブルーがあなたに似合っています。
How do I like you in that uniform? You look great. It really suits you.
その制服を着たあなたをどう思うかですか?カッコいいです。とってもお似合いですよ。
The word “politician” does not suit Mahatma Gandhi.
マハトマガンジーに「政治屋さん」ということばは似つかわしくない。

他動詞のfit
This coat fits me beautifully. この上着は私に(サイズが)ぴったりと合う。
I had to send back the jacket because it did not fit me. 
     そのジャケットは(サイズが)私に合わなかったので,送り返さなければならなかった。
This glove is too big and the other too small. Neither fits me, so they can’t be mine
     このグローブは大き過ぎて、もう一つは小さ過ぎる。どちらも私(の手)には合わないから、私のではない。
Your reaction didn’t fit that situation. あなたの対応はあの状況に相応しくなかった。

go with とmatch
She wanted to buy a new sweater to go with (= match) her favorite skirt. 
彼女はお気に入りのスカートに合う新しいセーターを買いたかった。
Which dressing goes with (= match) this kind of salad?
この種類のサラダにはどのドレッシングが合いますか?
Her dress matches her age. 彼女のドレスは年相応である。
Japan could not match American style housing.
日本にはアメリカ式の住宅は合わないだろう。
名詞としてのmatchは可算扱い。
Your shirt and trousers are a good match. あなたの(着ている)シャツとパンツはよく似合っている
That scarf is a good match for your blouse. そのスカーフはあなたのブラウスにとてもよく似合っている。
Your coat is a good match for your gray trousers. 君の上着はグレーのズボンとよく似合っている。

ただし、「合う/合わない」「似合う/似合わない」は、単に語義(=訳語)をリストとして示したり、まとめたりしても、殆どご利益がないと言えるでしょう。やはり、語義に加えて、主語と目的語の選択制限を確認する必要があります。

以下、Wisdomより引用。

似合う=[服装などが] suit, (書) become*;
(色・柄が調和する) match, go* (well) with …. (!いずれも人を目的語にとらない)
その青いドレスはあなたにとてもよく似合っている
That blue dress suits [(書) becomes, ×matches] you very well.
(!日本語の「…ている」にひかれて進行形にしないこと. 次の2文の方が口語的)
That blue dress looks very good [nice] on you. / You look very good [nice] in that blue dress.
彼女には長い髪がいちばん似合う
She looks best with long hair. / Long hair suits her best.
このセーターに似合うスカーフを探しているのです
I’m looking for a scarf to go (well) with [match] this sweater.
彼女の短いドレスが長い脚によく似合っていた
Her short dress looked good over long legs.

以下、動詞 fitの例。

The key fits the lock. その鍵は錠に合う. (W)
この服を私に合うよう(仕立て)直してくれませんか
Can you alter this dress [make this dress over] to fit me? (W)
このドレスが気に入ったんだけど, サイズが合うかしら
I like this dress, but I wonder if it will fit me. (G6)
Try these shoes for size ― they should fit you.
この靴のサイズが合うかどうか履いてみて―ぴったりのはずですよ (Oxford類語)
This dress fits me very well [perfectly]. このドレスは私にぴったりです
⦅[注意] fit は大きさや型が合うこと; suit は人に 「似合う」 こと⦆ (コンパスローズ)
The sash, kimono, and other garments were made to fit a child.
帯,着物,その他の衣類は子供に合うように作られた. (COBUILD米語英英和)

fit / suit / matchの使い分けに関する、COBUILDの注記を引いておきます。

このうち、特に注意が必要なのは、動詞matchでしょう。
語義として、「調和する;つり合う」という意味成分と「対となる;揃う」という意味成分が含まれているからです。
この「意味成分」のうち、どちらが前面に出るかで、次のような表現が一読了解できるかを左右します。

I must find a new pair of gloves which match a gray coat.
グレーのコートに似合う新しい手袋を探さなくては. (W)

彼女は青いサテン地の服を着て, それとお揃いのハンドバッグを持っていた
She was dressed in blue satin and had a matching purse in her hand. (W和英)

現在分詞由来の形容詞 matching の語義にも注意が必要です。裏を返せば、英語の指導で動詞matchを扱う時に、ここまでの見通しを、少なくとも指導者は持っておくべきだろう、と思っています。

A business suit usually consists of matching pants, coat, and vest.
ビジネススーツはふつう揃いのパンツと上着とベストからなっている (G6)

あの双子の姉妹はいつもおそろいの服を着ている
Those twin sisters are always (dressed) in matching clothes. (O-LEX)

前者は、色・柄とか生地が揃っていることを表すのだろうし、後者では、上着なら上着が同じ製品/デザインということを表すことになるでしょう。後者で、もし、姉の上着と妹のスカートの柄が同じ、というような場合には、いくら「揃って」いても、当然、上述の英語表現では表し切れません。
辞書には <matching +衣類>の用例は多いと思われるので、ブックマークを作って整理するのが吉。

日本語では同じ、「合う/合わない」という語を使いますが、「体質などに合う/合わない」の場合は、英語では全く異なる表現をしています。
そちらについては過去ログの

tmrowing.hatenablog.com

をお読みください。


さて、上述のWisdomの例で示されている他動詞としてのbecomeに関して、現代英語の使用頻度はそれほど高くないように思うのですが、高校上級用の教材や大学入試対策教材などでは、いまだに語義が示されていることが多い印象を持っています。
そこで、ソーシャルメディアのtwitter (今ではXと呼ぶらしい)で、簡単な調査をしてみました。

ここでの質問の背景には、私の更なる「?」がありました。

現代英語での使用頻度が教える/教えないに影響しているのか?
自分では使うけれど、教えないのはなぜなのか?
教えているのに、自分では使わないのはなぜなのか?

164アカウントから回答をいただきました。ご協力ありがとうございます。
この結果は結構、興味深いと思います。

https://twitter.com/tmrowing/status/1740266398176411991


この問い以外にも、Q2 & Q3では助動詞としてのneedに関わる調査をしています。回答数は少ないですが、Q1で興味を示した方が答えているのではないかと、推測されるので、「英語教師あるある」みたいな解釈も、あながち無理ではないのかもしれません。

https://twitter.com/tmrowing/status/1740269712259592652

https://twitter.com/tmrowing/status/1740270579691987075

先に、noteで改訂版を公開していた、こちらの記事と併せてお読みいただけると、面白さもまた格別だろうと思います。まだ読まれていない方は是非。

note.com

本日はこの辺りで。
ごきげんよう。


本日のBGM: It suits me well (Sandy Denny)

近況報告&告知

2023年も残すところ僅かとなりました。

現時点でのセミナー等のお知らせをしておきます。

12月30日(土)
英文ライティング指導法セミナー:表現も・論理も 〜和文英訳の指導と英文ライティングの指導との両立
※こちらは、おかげさまで既に定員が埋まりました。

passmarket.yahoo.co.jp

思い返せば、2012年のELEC協議会の教員対象講習会で講師を務めた時に、和文英訳教材の変遷や指導の流れなどもお話していたんですよ。
当時の記録は過去ログのこの辺りで。

tmrowing.hatenablog.com
tmrowing.hatenablog.com

あれから10年以上経ちましたので、私の方で変わったところ、変わっていないところなどもお話できればと。


告知としては、年明けの受験生対象のオンラインセミナー&個別指導。

受験生講座B
2024年1月20日(土)
国公立大学入試対応講座
共通テストのデータリサーチも終えた段階でしょうから、志望校を明確にして、英作文力/英文ライティング力の総仕上げに。
passmarket.yahoo.co.jp


受験生講座C
2024年1月27日(土)
難関私立大の「お題型英作文」への対応
イラスト問題などは、巷の教材がイヤハヤナントモ…という感じですので、解答例に関するセカンドオピニオンも対応したいと思っています。
passmarket.yahoo.co.jp

昨年までも同様の講座を開きましたが、自分が通っている予備校の先生から奨められた、という受験生もいましたし、英語の先生が、ご自身のお子さんに受講を促したという例もあります。
少人数で、オンラインでの対応ですから、首都圏以外の、全国からも受講可能です。
よろしくご検討下さい。

和文英訳の指導

現在出講中の高校での高3のレギュラーシーズンが終了。

例によって「総括票」を書いてもらっているのですが、今シーズンはちょっと趣向を変えて、

  • この授業で扱った「問題」のうち、もっとも学び甲斐のあったものベスト5

を回答してもらっています。

「英作文」は、入試対策という目的もあり、昨年度担当者からの引き継ぎではありませんが、こちらの改訂版を使ってきました。

  • 『入試必携英作文(四訂版)』(数研出版)

以前のバージョンも使ったことがあるので、差し替えられた問題などは、今年初めて扱うものの、これまでの経験知や、先輩たちの残した資産(血と汗?)が活かせるものではあったとは思います。

既にtwitterで小出しに情報は出していましたが、

一部誤記もあったので、こちらにまとめ直しておきます。

2023年度 授業で扱ったうちで最も学び甲斐のあった問題: 和文英訳編

1位: Unit 9 補充 
私の暮らす北国の町は例年になく冬の訪れが早かった。確か初雪は11月の中旬で、これは珍しくない。いつものように、積もるのは年を越してからだと見ていたのだが。寒さは次第に厳しさを増し、12月になると町はすっかり白く化粧したのである。クリスマス前に完全な雪景色となったのは私の記憶だと20年振りぐらいのことだ。
2位: Unit 12 補充1 
あなたがタイムマシンに乗って往復で時間旅行ができて、過去でも未来でも、どこまででも行けるとしたら、どの時代に行ってみたいと思いますか?
3位(同率) Unit 11 補充: 
次の下線部を英語に直しなさい。
ほめられて育った子が、ほめられるためにがんばるようになる。そしてそこから抜け出せない。これが最悪のシナリオである。例えば、一人暮らしをしたとしよう。もしほめられるためにがんばることしかできないならば、誰もほめてくれない部屋の掃除など、がんばる気にはならないだろう。部屋がきれいになるとうれしい。このささやかな達成感があるから、掃除をする。何かを為すときには、そのこと自体がもたらす達成感こそが、その行動の原動力になるのである。
3位(同率) Unit 8 補充:
あるとき私は幼児期を過ごした町を通る機会に恵まれた。記憶のなかの光景をたぐりよせながら、なんとかそれらしい場所まで来たが、自信がない。周囲の町並は完全に変わってしまっていた。そこに建っていた家はいかにも新しく、30年前からそこにあったものとはとても思えなかった。
5位  Unit 8 (5):
昨日は部活でクタクタだったので,電車の中で本を読んでいたら,眠ってしまった。あやうく乗り過ごすところだったけれど,たまたま同じ電車に乗っていた中学のときの友だちが,起こしてくれた。
6位(同率) Unit 12 (4):
初対面の人物とほんの少し言葉を交わしただけで,その人とまるで何十年も前からつきあいがあったかのような錯覚に陥ることがある。
6位(同率) Unit 12 補充2:
下線部を英語に直しなさい。
この先生が、ChatGPTを作文の宿題に使った子どもを叱責しなかったことは大きなプラスです。使った子どもは、新しい対話型AIに興味を持ち、自分も使ってみたかったのでしょう。そしてそれを丸写しにして作文の宿題を提出することが、大人ならもしかしたら不正行為といわれるかもしれないことだ、という認識もなかったでしょう。それなのにいきなり先生に叱られたら、子どもの気持ちは大きく傷ついたことでしょう。学校が嫌いになり、不登校の原因にもなりかねなかったと思います。確かに、新しい道具をどんどん使ってみようとする態度はポジティブに捉えるべきでしょう。
6位(同率) Unit 10 補充:
紀元前8000年には地球の人口は、東京の人口の3分の2ほどだったと推計されております。紀元1年には、2億人ほどになりますが、その間の人口増加率は年0.04%で、ほとんどゼロに近い。本当に人口が増え始めたのは17世紀くらいで、農業の発達と、死亡率の低下によるものです。人口問題というと古くからの問題というように受け取られるかもしれませんが、爆発的に増えてきたのは比較的最近の現象だということをまず認識して欲しいのです。
9位  Unit 4 (1):
学生時代に昼休みの食堂で,ひとりでご飯を食べるのがひどく苦手だった。テーブルの前にいる見知らぬ他人と目線を合わせるのが苦痛だったからだ。

以下10位タイ
Unit 10 (1):
世界では全員を食べさせるのに必要な食糧のほぼ半分が毎日捨てられている一方で、9人に1人が充分な食糧を得られていない。
Unit 9 (2): 
故郷の町を15年ぶりに訪れましたが,子どものころを思い出させる建物は何一つ残っていませんでした。
Unit 9 (3): 
WHOは太りすぎの大人が世界全体で16億人に上ると見積もっている。この数値は向こう10年間で40パーセント増加すると予想される。
Unit 4 (5):
最近の親は、自分たちが子ども時代にコンピュータゲームをやっていたせいもあって、ゲームを受け入れやすいようです。実際、休日はこどもといっしょにゲームをして過ごすという人も多いと聞きました。
Unit 1 (3):
新メディアの登場で「紙」の新聞を購読する代わりに、パソコン画面に無料で提供されるニュース情報の閲読で済ます人々が年々増えてきた。
Unit 18 (1):
海外で日本語を教えていて一番有難いのは,学生の素朴な質問に触発されて日本語や日本人に関して教師の我々自身が思いもかけない発見をすることである。
Unit 18 (5) ※問題そのものを修正して提示:
生活の至るところでプラスチックを用いている私たちにとって重要なのは、私たち人間が排出するプラスチックごみが地球の自然環境を汚染していることを、私たちひとりひとりが日々の暮らしのなかで自覚することである。この環境はかけがえのないものなのだから。


※「補充」とあるのは、2学期以降の授業で、各Unit のテーマ/ターゲットを考慮して補充した、やや長めの和文英訳問題のこと。入試過去問を採ることもあれば、一般の書籍やWEBの記事から採ることもある。
※入試過去問で、オリジナルの問題の日本文に難のあるものは、それを修正して課している。

私は『パラグラフライティング指導入門』(大修館書店)の著者でもあり、セミナーやワークショップでも、どちらかといえば、所謂「自由英作文」的な、お題に基づく英文ライティング指導を熱心にする英語教師、という印象をもたれているかもしれないのですが、「和文英訳」とはいえ、完成したものが「エイブン」ではなく「英文」になっていないと困るわけですから、お題に基づく英文ライティングと並行して、かなりの労力をこの「和文英訳」の指導に割いてきました。

ということで、以下、一題を取り上げて

  • 授業での主な取り扱い

を示しておきます。

1.問題文の提示:数名の生徒に割り当てて事前提出させてフィードバック。
言葉には不思議な力がある。どんなに疲れていても,「ありがとう」と言われるだけで,疲れは吹き飛ぶ。

2.割り当て生徒含む全員に着眼点のハンドアウトを事前配布:以下は抜粋
※「疲れは吹き飛ぶ」の「は」には余りこだわらないのが吉。ただ、「吹き飛ぶ」の目的語にするには、 名詞化が必要。そして、このような日本文での名詞表現をそのまま英語でも名詞にするかどうか は吟味のしどころ。tiredness とか fatigueって今まで自分の会話で使ったことある?
※因みに、国語辞典の大辞泉(三省堂)では「疲れが吹っ飛ぶ」という用例が「吹っ飛ぶ」の項にあるのだが、この「吹っ飛ぶ」の定義が「すっかり消えてなくなること」となっている。え? 消えてなく なるのは「疲労」ではなく「疲労感」の方ですよね? であれば、この問題文でも「疲労感がなくなる」 という「感覚」「気持ち」の表現を活用することもできますね。

3.授業での扱い:誤りの添削だけではなく、語彙選択や語義そのものの注意点や再考すべきポイントなども指摘し、代替案などを提示。以下は抜粋。
※英語の定義を確認しておく
tiredness = the feeling that you would like to sleep or rest
fatigue = a feeling of being extremely tired, usually because of hard work or exercise
exhaustion = the state of being very tired

4.先輩たちの汗と涙…:同じ問題で前年度までのストックがある時は、そこから見繕って蔵出し。
A. Words have *1. a mysterious power. However tired you are, if *2. someone says “thank you” to you, you *3. feel relaxed.
※1. power は通例不可算。形容詞がつくと可算扱いすることがある。複数形は極めて稀。 2. someone は文脈からは「当人に近しい、状況を把握している人」であると思われるが、その細かい説明をしようとすると流れを止めないのが大変。かといって say にはSVOOの動詞型はないので、(X) you are said +ことば は不可。 3. relaxed よりは feel refreshed の方がベター。

B. Words have *1. mysterious power. However tired you feel, *2. what you are only told words of appreciation let you refresh.
※1. 解答例Aのコメント1参照。 2. ここは文構造が破綻。無生物主語を活かすためには、名詞化と動詞の選択。A makes you feel refreshed の動詞型で文の骨格を作る。→ Aの部分を名詞句の限定表現に→words of thanks [appreciation] (from someone who knows you well) など。

※この2例を見て分かるように、「ありがとう」のことばは、どこで、いつ、誰から言われるのか、がこの文の解像度の高さに関わってくる。そこを考えると、そもそもなぜ「疲れているのか?」という根本に気づくことができる。

5.オンラインコーパス等の検索結果を示して、頻度やコロケーションの提示。


6.(必要に応じてDeepL訳やChatGPT訳の検討→)テキスト著者提供解答例の提示と解説。
この解答例や別解も必要に応じて修正します。
※「誰が誰に対して、どこでいつ、どのような目的や意図、理由でその文を言っているのか?」
を検討し、一読了解できるよう、General からSpecificへ、一番の主題/焦点にくるまでに、接続詞S+Vで、時制や助動詞の「山や谷」を増やさない、ということを常に説いています。
※この問題文のDeepL訳は以下の通りで、第2文があまりに稚拙だったので使わなかった。
Words have a mysterious power. No matter how tired you are, just a simple 'thank you' can blow away your fatigue.

7.関連表現の用例を辞書から抜粋&簡単に解説
※Unitごとや問題ごとにキーワードで「物書堂」のアプリ辞書のブックマークをフォルダー化しておくことが多い。
※実際の授業では、フォルダー内の用例を授業の狙いに併せて並べ替え、スクショを撮っておいて、それを拡大してプロジェクターやモニターに投影することが多い。

8. 試訳とその解説
Words can work [perform / do / make] miracles. In and out of your workplace, with a few words of thanks (from someone), you will be rewarded for all your efforts and feel revitalized for tomorrow.

和訳:言葉は奇跡を起こす。職場の中でも外でも、(誰かからの)ちょっとした感謝の言葉があれば、これまでの努力が全て報われ、 明日への活力が湧いてくる。

※どのようなプロセスを経て、この試訳の英文を産出したかを補足。必要に応じて、さらに重要表現に関して、オンラインコーパスなどの検索結果(動詞+miraclesなど)を見せる。



総括票にはいつも通り、「来年度この授業を受けるであろう後輩への親身のアドバイスとメッセージ」という項目での自由記述欄があるのですが、そこから抜粋。

  • 世に溢れている問題集の解答解説よりも、確実に先生のプリントが1番いい教材だと思います。
  • 授業中に「補足」として提示される例文や、使用頻度を表すグラフが最も重要。辞書にもなかなか持っていない用例を採取でき、ぐっとイメージが掴めるようになる。
  • 先生の授業は教材やプリント1枚1枚に貴重な学びや新たな発見があるため、一瞬たりとも気を抜けません。貴重で質の高い教材を活かすも殺すも自分自身だと思います。先生のtwitter(注:ママ)など、活用できるものは全て駆使して、本当に良い英語に触れ続けるべきだと感じました。
  • 自分の中で特に大きな価値があったのは、年代別・地域別で使う言葉や、その使い方にどのような違いがあるのかを説明してくれる点や、例として複数の辞書を参照したりすること。
  • 解答例の英文も大事だけれど、その下っかわにある解説が秀逸なプリントなので、下っかわを熟読した方が、きっと良いと思います。
  • プリントの「補足」は大事。プリントはテストが終わっても捨てないで取っておこう。
  • 最初はとても大変だと思うけど、そこをどうにかがんばれば、見えてくる英語の世界が本当に変わるよ!応援してます、がんばれ!!

ありがとうございます。みなさんが、期末試験で実力を出し切れることを願っております。

本日はこの辺で。

本日のBGM:カサナルキセキ (KAN + 秦 基博)

How that debate played out: 定期試験作問での後日談

本当に久々に英語の話を。

定期試験の共通問題を作問する際には、同じコマを持っている他の先生方に事前に見てもらうわけですが、今回は、次の項目に対して質問が寄せられました。結果的には、その部分は試験では問わないことにしたのですが、そこに至る過程で調べたことを記録として残しておきたいと思います。
検定教科書(『ジーニアス I 論理・表現』v大修館書店) に次のような表現が出てくるのです。

  • some current students gave a presentation focusing on their classes and other school activities

私の当初の目論見では、この focusingの形合わせを問う設問にしていたのですが、

  • focusing on の部分はfocused onになることはないのか?

という疑義がよせられたのでした。
私の語感では、-ing形一択だったのですが、オンラインコーパス等を調べてみた結果、近年の英語では名詞の後置修飾としてのfocused onの使用例が見られる、ということがわかりました。

ということで、担当の先生方にも、私が調べた結果を共有して

テストで動詞+a (形容詞) presentation + focused on …を不正解にするのは問題があるということは言えそうですので、出題では -ing形は文中に出して、別の箇所に (  ) を作れるか、検討してみたいと思います。

という落とし所としたのでした。

以下、調べたことをざっくりと。

まず使用の実例でSKELLから。ただしどちらも使用頻度は百万語で1以下の割合です。
後置修飾の -ing形(=現在分詞)で focusing on


後置修飾の -en形 (=過去分詞)で focused on
※過去形(= -ed形)と過去分詞(= -en形)が同じものは、検索では、その前とのつながりを見る必要がある。この場合は直前がmade なので、目的語の名詞チャンクのなかでのfocusedは-en形(=過去分詞)の読みしか出来ない。

ニュース英語コーパス (2023年10月12日のデータまで反映されています)での、-ing形の後置修飾
※focussingの綴り字のミス、本来他動詞のstressにonをつける誤用も含まれるので、それ以外では7例。


  • en形での後置修飾  ※3例がヒット。

その3例の内訳。

私(松井)の認識・理解では、名詞の内容を詳述する後置修飾では、主として伝達動詞の -ing形が基本。

  • en形の後置修飾

私が gave a presentation focused on … に違和感を持ったのは、-ing形がデフォルトだという自分の理解・知識が前提です。この-ing形はtimelessな=時制を持たない-ingで、能動の関係性を表すもの、と考えていたからです。ですから、関係詞節にパラフレーズをしても、a presentation that is [was] focusing onにはならずに、a presentation that focuses [focused] on になる、という理解に基づき、判断をしていました。
関係詞節での後置修飾で能動態 vs. 受動態

次は、その中の実例で前後のつながりを。

次は同じ能動の関係詞節での後置修飾の例ですが、2例目と3例目は同じソースですので、実質2例です。

関係詞節での受動態の例。

presentationに形容詞など前置の修飾語がつく場合の関係詞節能動だと少しヒット数が増える模様。

この前置の修飾語つきの関係詞節での受動態はヒットせず。

振り出しに戻って、presentationが動詞の目的語に来ていて、presentationに前置の修飾語がついていて、後置修飾が分詞の場合を調べてみました。

ing形

  • en形 実例が6件ヒット



  • en形の実例6件の内訳を見ておきます。

最初の例は、動詞がmake。ヒット数は2ですが、実際は同じソースですので実質1例です。

receive

prepare

include

have

以上、実態調査の報告でした。○○先生、重要な指摘をしていただきありがとうございました。
今回の争点では、focus on という表現の特殊性が大きく影響をしているのだと思います。
重点・焦点化の文脈でも、emphasizeとかstressや、highlight; underline; underscore; weight などの他動詞や、 put stress onなどのような動詞表現の場合は、後置修飾の分詞では -ingがデフォルトで、-enと両方が可能とはならないのではないかと思います。

その翌日に、さらに追加で調べた結果がこちら。この情報も担当者間で共有しました。

昨日から追加で調べてみて, focus onと似た振る舞いをする語句としてはrelate toくらいしか見つかりませんでした。

今回は、定期試験の作問での後日談でしたが、私の場合は、普段からこのように、英語に慣れ親しんでいる、英語の運用能力が十分にある、という者が、英語の授業で遭遇する英語表現で理解に困る事態とか、テストを受けた時に、解答に困るような問いが生じるのを極力避けるべく、日々準備をしています。
先日の「英語コーパス学会」での私のスライドでも示しましたが、オンラインコーパス等は概ね次のような使い方をしています。

授業で提示するひとつの用例の背景にも、このくらいの下準備や裏付けがあるということを、世間で学校教育の英語を批判されるような方たちにも知っておいていただきたいものです。

そして、つい先日、ツイッターの「英語ニュース引用RT140字紹介&詳解」で取り上げた、

  • debate が主語で自動詞相当のplay out「…が繰り広げられる;決着を見る」

の用法などは、上述のfocus onやrelate to のような <V 名詞 on 名詞>の動詞型とは異なる、<play+out +名詞>の他動詞として、人主語で用いられるところまで語法が拡がっていることは、大変興味深いと思っています。

詳しくは、ここからのスレッドをご覧下さい

Ngram Viewerでざっくり

NOWコーパスで

COCAで

debateが主語でplay outが受け身となる例

本日はこの辺で。

本日のBGM: From the start (Laufey)

11月以降の個別指導受講者を若干名募集します。

tmrowing英語研究会主宰の松井孝志です。

現在9月〜12月までの期間でオンラインでの「英語」の個別指導を行っていますが、11月以降の日程で若干名を追加募集します。
スケジュールのご都合がつく方はお問い合わせください。

対象は主に高校生〜大学受験生となります。ただし、私の出講している高校に在籍する方は不可となります。
現在、高校生・受験生だけでなく、一般の方も受講されています (一般の方はD講座が中心です)。
リクエストをお寄せいただき、スケジュールや、ご希望の講座内容、目標などをガイダンスで確認させていただきます。
必ずしもご希望に沿えるわけではないことはご承知おき下さいますよう、お願いします。


A. 主な指導メニュー

1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習
2.「診断テスト」+英作文
3. テクストタイプ別英文ライティング
B. オンラインでの指導の流れ
概ね以下の通り。

①Google Meet Session:(前回の講評)新教材・課題配信とガイダンス90-120分
②受講者が各自取り組む → 課題の指示に応じて必要があれば事前提出
③Google Meet Session:Google Meetを用いた対話型の指導が90-120分。
④そのフォローとしての課題のやり取り、メールでのやり取り。
ガイダンスを経て基本的に曜日と時間帯を固定して進めます。

C. 受講料
受講料は受講者とのガイダンスを経て、現在の英語力と目標に応じて指導内容・時間と併せて決定しますが、60分換算で7500円を基準とします。

D.スケジュール
現時点でオンラインで指導可能な曜日と時間は、

月曜日 16:00-18:00      19:00以降応相談
水曜日 16:00-18:00      19:00以降応相談
金曜日 19:00以降応相談
となっています。

受講を希望される方は、メールで
tmrowing.ELTアットマークgmail.com
まで、お問い合わせください。メールのやり取りだけでなく、Google Meetを使った個別のガイダンスを経て、最終的に受講を決めていただければと思います。
お問い合わせの際には、氏名、高校生の場合は学年を、高校卒業以上の方は年齢を並記の上、上記Aの受講内容の希望とDのスケジュールの希望
をお知らせください。追って、ガイダンスの候補日と時間帯をお知らせします。

お問い合わせの段階から、皆様からお預かりした個人情報は、tmrowing英語研究会主催のワークショップ・セミナーの運営に関する情報管理のみにて使用させていただきますことをお約束致します。

以下、受講内容の参考に、
1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習   
三省堂『チャンクで積み上げ英作文』を使っている高校生は、その教材に関する著者自らの痒いところに手が届く指導助言を行います。この教材を使用していない高校生や大学受験生は、オリジナル教材で、英語のチャンクの捉え方を踏まえた、理解&表現で使える語彙力増強と英語のセンスの向上を図ります。
noteで、公開している

note.com

note.com
を見ていただくとどのようなチャンクを扱い、拡充していくのか理解できるかと思います。

2.「診断テスト」+英作文
noteで公開しているマガジンの「診断テスト」

note.com
note.com
のうち、受講者のレベルと目標に応じて、どちらか(または両方)をメインテキストにして、更なる「英作文」の力を養い、鍛えます。

3. テクストタイプ別英文ライティング
講師・松井孝志の本領が遺憾なく発揮される講座となるでしょう。
このブログ「英語教育の明日はどっちだ!」の検索窓を利用して、英文ライティングやつながり、まとまりに関する記事を検索していただければ、松井がこれまでに実践してきた具体的な指導や評価の中身も知ることができます。

tmrowing.hatenablog.com

9月以降の個別指導を若干名募集します

tmrowing英語研究会主宰の松井孝志です。

9月以降オンラインでの「英語」の個別指導で若干名募集します。
対象は主に高校生〜大学受験生となります。ただし、私の出講している高校に在籍する方は不可。一般の方は、高校生・受験生の方の受講が決定した後で、スケジュールの空きがあればお引き受け可能ですので、リクエストはお寄せいただいても構いませんが、必ずしもご希望に沿えるわけではないことはご承知置き下さいますよう。


A. 主な指導メニュー

  • 1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習
  • 2.「診断テスト」+英作文
  • 3. テクストタイプ別英文ライティング

B. オンラインでの指導の流れ
概ね以下の通り。

  • ①Google Meet Session:(前回の講評)新教材・課題配信とガイダンス90-120分
  • ②受講者が各自取り組む → 課題の指示に応じて必要があれば事前提出
  • ③Google Meet Session:Google Meetを用いた対話型の指導が90-120分。
  • ④そのフォローとしての課題のやり取り、メールでのやり取り。

基本的に曜日と時間帯を固定して2週間で1サイクルで行います。

C. 受講料
受講料は受講者とのガイダンスを経て、現在の英語力と目標に応じて指導内容と併せて決定しますが、60分換算で7500円を基準とします。

D.スケジュール
現時点でオンラインで指導可能な曜日と時間は、

  • 月曜日 16:00-18:00      19:00以降応相談
  • 水曜日 13:00-15:00      16:00-18:00       19:00以降応相談
  • 金曜日 16:00-18:00      19:00以降応相談

となっています。

受講を希望される方は、メールで
tmrowing.ELTアットマークgmail.com
まで、お問い合わせください。メールのやり取りだけでなく、Google Meetを使った個別のガイダンスを経て、最終的に受講を決めていただけれ場と思います。
お問い合わせの際には、氏名、高校生の場合は学年、高校卒業以上の方は年齢を並記の上、上記Aの受講内容の希望とDのスケジュールの希望
をお知らせください。追って、ガイダンスの候補日と時間帯をお知らせします。

お問い合わせの段階から、皆様からお預かりした個人情報は、tmrowing英語研究会主催のワークショップ・セミナーの運営に関する情報管理のみにて使用させていただきますことをお約束致します。

以下、受講内容の参考に、
1. 四角化ドリル+チャンクでの語彙学習   
三省堂『チャンクで積み上げ英作文』を使っている高校生は、その教材に関する著者自らの痒いところに手が届く指導助言を行います。この教材を使用していない高校生や大学受験生は、オリジナル教材で、英語のチャンクの捉え方を踏まえた、理解&表現で使える語彙力増強と英語のセンスの向上を図ります。
noteで、公開している

note.com

note.com

を見ていただくとどのようなチャンクを扱い、拡充していくのか理解できるかと思います。

2.「診断テスト」+英作文
noteで公開しているマガジンの「診断テスト」

初級編
note.com

中級編
note.com

のうち、受講者のレベルと目標に応じて、どちらか(または両方)をメインテキストにして、更なる「英作文」の力を養い、鍛えます。

3. テクストタイプ別英文ライティング
講師・松井孝志の本領が遺憾なく発揮される講座となるでしょう。
このブログ「英語教育の明日はどっちだ!」の検索窓を利用して、英文ライティングやつながり、まとまりに関する記事を検索していただければ、松井がこれまでに実践してきた具体的な指導や評価の中身も知ることができます。

tmrowing.hatenablog.com

月に願いを

2023年も半分が過ぎました。
昨年は6月で体調を崩し、廃業も考えたくらいだったので、今年は極力、ストレスマネジメントに気をつけて過ごしてきました。
中旬で、父の17回忌の法要も終え、一区切り。

本業はいつの間にか、競技名そのものが変わっていましたが、微妙なカタカナ語で「ローイング」。

  • Rowing

が正しい英語表記なので、「ロウイング」が相応しいかな、と思うけどね。

で、生業では、夏と初秋にお座敷がかかりましたので、こちらでも告知を。

まずは、7月の名古屋大学の公開講座。
大名 力(おおな つとむ)先生が第一部の二日間、私が第二部で一日担当します。
ここ数年、オンラインを中心に、初級編&中級編で行ってきた「文字指導 / handwriting指導法」を、一日にまとめて再編した、基礎からの確かな道筋を示すものになると思います。資料価値も高いので、大学の教科教育法担当者や、文科省の現任の英語の担当者、各自治体の英語系指導主事の方などは、この機会を逃さずに、知識のアップデートを図っていただければと思います。

2023年度 名古屋大学 人文学研究科 英語学 公開講座
英語の発音と文字・綴り

7月10日(月)で申し込み締め切りですので、お早めに。
詳しくは以下リンクを。

www.hum.nagoya-u.ac.jp

そして、9月は英語コーパス学会のシンポジウムに登壇です。
私は学会員ではないので、完全にアウェイな気もしますが、私を選んだ方の思いとか思惑は、受けとめて臨もうと思います。

大会自体は2日間の日程。

9月9日 午前  ワークショップ
9月9日 午後  開会式・総会、研究発表、シンポジウム
9月10日 午前  ワークショップ
9月10日 午後  研究発表、基調講演、閉会式

シンポジウムは、9月9日(土)の午後に予定されています。

モデレーター:石井康毅先生(成城大学)
シンポジスト:
中邑光男先生(関西大学)
松井孝志(英語講師)
西垣浩二氏(三省堂辞書出版部)
による
「辞書編集におけるコーパス利用の現状と今後の展望(仮)」

詳しくはこちらの大会リンクから。
jaecs2023.sakura.ne.jp


これ以外にも、1学期が終了すると、夏休み中、2学期以降で、英語(主として英文ライティング)の個別指導では、新たな受講者の募集を開始します。ご相談はメール等で、素性を明かした上でお願いします。
一般の方からも講座開設のリクエストがあるのですが、、高校生や大学受験生と同じ教材・課題でよければ要相談&応相談です。


以下、オンラインセミナーの告知。

名詞句を中心としたチャンクの捉え方・学び方
2023年8月6日(日) 13:00-16:00

一番いいのは、『チャンクで積み上げ英作文』(三省堂)を使っていただくことなのですが、いかんせん、学校採択教材ですので、noteに「名詞句の限定表現の得手不得手」の記事を公開しました。
そちらの記事では、類型化と表現のリストだけでしたので(それだけでも類書は殆どありませんが…)、その解説を中心に行います。

passmarket.yahoo.co.jp

noteで公開中の記事はこちらから。

前半
note.com

後半
note.com


父の法要を終えて色々考えていたところに、狭山のハイドパークのフェスのダイジェスト放送があり、録画で見ました。
1曲目で伊賀航さんが出てきただけで、涙腺が緩んでしましたが、ムーンライダーズを見たところでひとしきり泣きました。
思いを馳せることでつながれる、ということもありますが、会いたい人には会っておこう、ということで、7月になってすぐの週末に、綿内克幸さんの新曲お披露目会に行ってきました。
新曲の雰囲気やセットリストの流れに合うように、リクエストに応じて懐かしの曲も演ってくれたのですが、

  • 遠い旅人
  • 遠い渚
  • Walk on the Moon

が聴けて本当に良かったです。
終演後はファンの方同士の交流もあり、まだまだ「やり抜けそうな」気がしてきました。

帰宅途中で見上げた空には、こぼれそうなくらいに輝いた月がありましたとさ。

本日のBGM: Grapefruit Moon (Tom Waits)

知識と智慧と不易と流行

またしても、自分が若い頃からインスパイアされてきたアーチストの訃報を受けての心身の不調と折り合いをつけながら始まった新年度。
始まったばかりだと思っていたのに、もう連休直前。

春休み中の「文字指導/handwriting指導法」関連のセミナー初級&中級編を無事終えられたのは良かったと思います。皆さんの新年度への準備に貢献できていれば何よりです。

そして、「物書堂」さんの春のアプリ辞書セールに合わせた「辞書活用法」のセミナーも好評のうちに終了しました。
既にnoteで公開済みの「マガジン」をテキストととしていますが、やはり画面越しであれ「実演」で見られる効果は大きいのではないかと。
最近は結構いろんなところで「アプリ辞書」活用法の情報が得られるかと思いますが、一味違う使い方を紹介&詳解できたと自負しています。フル活用して下さい。
既に、受講者からのフィードバックをいただいていますので、こちらで匿名で紹介します。

「英語辞書の明日はどっちだ!辞書活用法」

先生のTwitter上での「思わせぶり」な(と「読解力」に欠ける私には思われた)文言の真意/詳細が伺え、納得することしきりでした。
今日も沢山の辞書が紹介されました。手持ちのものも多かったのですが、未見のものもいくつもありましたので、少々心が揺れ動いているところです。
松井先生の紹介される本は、財布の許す限り、そして入手が可能な限り、購ってきましたが、高い買い物だと思ったことはありません。
また、財布が軽くなりそうな予感が…。

今日のお話の中で、個人的に最も有り難いと思ったのは、物書堂の辞書アプリの使い方(多様な検索方法など)です。
IT音痴の身ではありますが、これまでただ単に一般の電子辞書のようにしか使っていなかったことを、勿体無いと思い、また恥ずかしいと思いました。
教えていただいた(私にとっては極めて画期的な)使い方で、世界が大きく広がりそうです。

ありがとうございました。

※セミナーご受講ありがとうございます。 「物書堂」のアプリ辞書で「英語」に限っていえば、今回ご紹介したiPadでの活用法は極めて有益だろう、と思います。紙と活字の辞書でも電子辞書でも得られない情報への最短アクセスは一度手にしたら元には戻れない気がしています。

別な方から。

本日はありがとうございました。
iPadの機能としては知っていましたが、
2画面で2冊を見比べることができるとは思っていませんでした。
iPadで物書堂は1年ほど使っていますが、今後かなり使い方が変わるかもしれません。

また、前半部ではレイアウトの話が興味深かったです。
右不揃いでは確かに読みやすさが大きく違いました。
twitterを時々拝見しており、フォントに関する発信をされていることは存じておりますが、
それに通じるところがあると感じました。
今回のセミナーでこのような観点からお話が聞けるとは思わず、予想外の収穫でした。

最後に、重ねて本日はありがとうございました。

※今回のセミナーで取り上げたWorld Book Dictionaryのフォントとレイアウトに関しては、大昔の1994年に三省堂さんの『ぶっくれっと』に寄せた拙稿でも指摘していたことでもあります。
そこからだとそろそろ30年ですね。



この当時の拙稿では、日本の学習英和辞典の年表を出版社ごとに整理して提示していましたが、この機会に、その語の約30年も含めたものを作ってみました。
暫定版でまだ完成ではないので、ご利用はご自身の責任でお願いします。

コウビルドの第10版も販売されたようですので、こちらのマガジンにも収録の「トリセツ」の更新も予定しています。

note.com

noteでの過去記事に関しては、大幅な改訂で全く別物だと「私が」判断した場合には、旧版を削除し、新たな記事として公開しています。この場合には、旧版をお持ちの方で改訂版が欲しい方も、新たに購入していただくことになります。
一方、加筆修正で部分改訂のような場合には、同じ記事の更新版として提供しています。この場合には旧版を既に購入した方は、再ダウンロードすれば新たなファイルを入手できるように設定しています。「note公式」を通じて、お買い求めの際に登録していたメールアドレス等に、記事が更新されましたよ、という通知が行く設定になっているはずです。

これらの記事やマガジンは、あくまでも、私が普段の英語指導で使っている、英語学習や指導・評価で有益だと実証済みのものを、私が直接教えられない学習者や、私がこれまで、または今現在、英語指導でチームを組んで指導法を共有していない方にも届けられるように、公開記事やマガジンで提供しているものだということを、ご理解いただきたいと思います。

直近のセミナーとしては、連休最後の5月7日(日)に「教材研究の楽屋裏」をまた開催します。
2021年の夏に開催したもののアップデート版だと思ってください。ICTやAI利用も進化が著しく、教材も改訂されたりと、あらたな情報も盛り込んで濃密な2時間をご用意します。
詳しくはこちらを。

英作文からライティングへ:教材研究の楽屋裏
passmarket.yahoo.co.jp

チケットは「無料」で、セミナー後に、受講者それぞれが価値を評価して「お代」をサポートしていただくという試みです。

  • 「なんだよ、この内容じゃ、金払うまでもなかったな」

という方はタダでいいというセミナーですので、「そこんところよろしく!」というわけです。

本日はこの辺りで。

本日のBGM: Outdated and Antiquated (Ron Sexsmith)