一度見えるようになると次に出会ったときに「それ」とわかる眼

先日のオンラインでの「文字指導/handwriting指導法」のセミナーの受講者からのフィードバックを追加します。
前回、前々回のエントリーもお読みください。

tmrowing.hatenablog.com

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最初は、以前、とある文部科学省委託事業「中学校・高等学校における英語教育の抜本的改善のための指導方法等に関する実証研究」の外部委員でご一緒したこともある柳田綾先生から。

昨日3月20日のセミナーでは大変勉強になりました。また、資料もありがとうございます。
 私は長年高校で勤めていましたので,文字指導をきちんと行ったこともありませんでしたし,意識したこともありませんでした。非常勤で「小学校英語科教育法」を担当することになったので、文字指導についてもっと勉強したいと思い受講させていただきました。
 松井先生がわかりやすく例や生徒さんの実際の文字を見せてくださったことで,文字を写すことや書くこと,音と文字の違いで英語学習に困難を感じる生徒が多いことがよく理解ができました。また,実際に自分が文字を書くことによって,意外にまっすぐ綺麗に文字を書くことが難しいこと,利き手でない手で文字を書くことが難しいということも実感することができました。また,松井先生の豊富な知識と教養に大変感銘を受けました。ユーモアあるコメントも大変楽しかったです。3時間があっという間に終わりました。
生徒によって個人差はあり、勤めている学校にもよるとは思いますが,小中高の校種で文字指導を最低限どこまで押さえておくべきかのリストのようなものがあるとありがたいと思いました。
 第二弾のセミナーが開催されるのであれば,またぜひ参加したいです。本当にありがとうございました。

柳田先生ご指摘の「文字指導を最低限どこまで押さえておくべきかのリスト」は、発達段階・習熟度と併せて考えなければいけないことで、私の今後の課題とさせてください。
次回、「中級編」でそのあたりも参加者と情報・意見の交換ができればと思います。

広島で「きらぼし学舎」を主宰されている植木希恵先生から。

時々、クスッと笑いのある、でも非常に充実した重い内容の講座でした。
特別支援を受けている子どもさん、勉強でつまづき自分に自信がないからやりたくない、そんな子どもさんの個別指導をしています。
今まで意識したことのなかった文字指導ですが、確かに!!とうなづけることがたくさんありました。
特に分岐点を意識してみるとどうして混同してしまっていたのかがよくわかりました。
早速、4月からアルファベットに入る子どもさんがいるので最初の7種類の練習から入ります。(学校での学習を邪魔せずに先駆けてやるにはそこが良いと判断しました)
また、山下先生のフォニックスも学びましたので、文字を書くという場面でより意識して観察して見せる、書くというのをやりたいと思います。
2回しか書かないというのも非常にうなづけました。
ワーキングメモリの容量がすぐにいっぱいになってしまう子どもたちだからこそ、2回を集中して体感覚として感じる、そして時間を空けて復習する、というのがとても理にかなっていると感じました。私こそ、また時間を空けて先生の講座を受講したいと思います。
ありがとうございました。

植木先生、ありがとうございました。学習者の「困り感」への対処法の選択肢が増えていれば何よりです。


続いては、私立の高等学校で非常勤講師をしていらっしゃる山田奈津岐先生から。

昨日の講座を受講しまして、感じたことが3つあります。
一つ目は、知ることの大切さ、
二つ目は、書くことの難しさ、
三つ目は、変えていくことの必要性、です。

一つ目の、知ることの大切さにつきまして、昨日の講座の中にたくさんの「知る」がありました。「フォント」比較の着眼点プリントに関しまして、意味がわかるようになりました。これまで、「目指せ!英語のユニバーサルデザイン授業」の58-59ページを読んでいて、「そういう違いがあるのか~」とぼんやり頭で理解していたものが、実際に先生の説明を聞きながら比較していくことで、文字の見え方が変わりました。教員をしている中で、文法や長文読解の方法について学びを深めてきていましたが、こういったフォントについての知識は、まさに先生のおっしゃるとおり、教職課程にある学生すべてに教えていなければならないと強く感じました。実際に自分自身を振り返ると、教育実習の時に、大文字のWの真ん中の頂が低いことを注意されたことがある程度です。また、思い出せば中学生の頃、保健カードの記録か何かで「体重○kg」の飾りのついたgが、英語のgと同じものだと認識できなかったことがありましたが、そんな自分が生徒だったときの気持ちは忘れてしまっていました。gに対しての混乱はみんな通ってきた道だと思います。それが、フォントが原因だということに気づいたのは、先生のご執筆、本講座からです。

二つ目の、書くことの難しさにつきまして、ワークシートに実際に書くことで、「書く」ことにどのようなモータースキルが必要か実感できました。ストロークパターンの練習は、大人でも簡単ではありませんでした。この練習なくして、生徒の文字のことを言えないなと思いました。私も高校で教えていますが、次年度の4月はここから入ろうと思います。また、最初に勤務した岐阜の私立高校では、中一で入学する前の課題で「ペンマンシップ」が課されていたと記憶しています。その内容を、中一で教える私自身が確認していなかったことは、なんて怠慢なことなんだろうと、今大いに反省しています。生徒の文字でwの真ん中が交差してしまっているものを見たことがあります。これは、一画のwを教えれば、交差しなくなるという理解でよろしいでしょうか。交差するwを書く生徒は、4画のwを習ってきているのかもしれないということも、今ようやく思い至りました。

三つ目の、変えていくことの必要性につきまして、早速講座内でとるメモの文字から、変えていく意識をし始めました。それだけでも、自分自身の文字が読みやすくなりました。先生のおっしゃるとおり、unlearn→relearnは簡単ではないなと感じました。書いている文字はまだまだ意識をしなければ、今までの書き方に戻ってしまいます。高校生の生徒にとっても、今まで書けていなかった生徒には大きな変化だと思います。自分自身の文字が読めるようになる喜びとともに、読める文字を書く指導をしていきたいです。

現在教えている生徒たちは、中学で英語に躓いてきた生徒が多く、単語を読めない生徒がたくさんいます。easyが読めず、隣に書いてある「簡単な」という日本語を見て、それがいわゆる「イージー」だと気づく、という理解の手順をたどっている生徒がいます。先生の「分割&縦書きドリル」は、そんな本校の生徒たちにとっても非常に有益だと感じました。これもすぐに取り入れていきます。

山下桂世子先生のコメントにもありましたが、私も講座第二弾にぜひ参加したいです。誰でも「英語コーチ」を名乗れるこの時代に、本当の学びを続けていくことの大切を改めて感じました。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

山田先生、ありがとうございます。
ご質問の、wの「交差」の件。これは結構悩ましいのです。山田先生への回答を若干修正してこちらでもお示しします。

wの交差の件ですが、Wは、とりわけ大文字であれば、真ん中が交差する「フォント」は多く存在します。これは、UとVがかつては同じ仲間だったこと、ダブルUの「ダブル」が「並べる〜重ねる」で扱われ方に温度差があるところからも、あながちおかしいとも言えないものなのですが、手書きの場合は、交差しないように書くことが「通例」かと思います。そこで問題になるのが、文字の大きさです。

ストロークパターンの7番目のドリル(※注:これは、セミナー受講者にのみに分かる情報です)でコントロールできるようになった児童生徒(再入門の中高生より上の学習者でも)は、小文字は一筆書きで書けると思われますが、大文字の大きさには配慮が必要でしょう。

ニュージーランドの「並行線を先に」というのは、交点/接点で「はみ出さずに書くこと」が、英語を母語/生活言語として学ぶ子どもにとっても「難しい」ものであることを教えてくれるものだと思っています。スライドで「大文字のY」の難しさも示しましたが、屈曲点で止まるような線を新たに引く、別の線の末端に屈曲点をつくって新たな線を引く、というのは、結構難易度の高いスキルです。

本日ご紹介する最後の方は、畏友、有嶋先生。
有嶋先生ご自身のブログ arishima info でレポートしてくれています。
こちらのリンクから是非!

arishima.hatenadiary.jp

有嶋先生、ありがとうございます。リフレーミングを実感するリフレクション!流石です。
であれば、もう次からは見えますね。
第二弾の方は、長い目でお待ちいただければ、と思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: ユリイカ (サカナクション)

I got a mail saying that ....

昨日のエントリーの続きです。

「文字指導」を語るなら、このくらいのことを考えておいてはどうか
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今回のセミナーには、現在英国在住で、ジョリー・フォニックスの指導で日本でも多くのセミナーを開催している山下桂世子先生も受講者に名を連ねておりました。
山下先生からもセミナーのフィードバックが送られてきましたが、前回のエントリーに追記するには長い文章でしたので、日を改め、新たなエントリーとしてアップします。山下先生は昨シーズンの12月の私の「対面」でのセミナーに、ご自身のセミナーで来日(帰国?)中ということもあり参加してくれていました。移動時間等の兼ね合いで、「前半を少し聞き逃した」ということで、今回のご受講を希望されていました (思い返せば、昨シーズンの12月の回では、手島良先生と山下先生の初対面もあったのですね)。

以下、山下先生からのフィードバックです。

先日は、文字指導セミナーでは大変お世話になりました。お時間をイギリス時刻にあわせていただいたため、参加が叶いました。本当にありがとうございました。


1回目に参加させていただいたときは、遅れての参加だったため前半部分を聞くことができず、途中からお話をうかがいました。それでも、そうだったのか、と驚くことと腑に落ちることがたくさんありました。今回は通して参加させていただいたことで、前回からのつながりがよくわかりました。やはり、何度も参加して、理解を深めていくことは大切ですね。また参加し、勉強させていただきたいと思うセミナーです。第2弾の前に、もう一度参加し、第2弾後、また今回のセミナーに参加するといろいろとつながっていくだろうな、と感じています。第2弾の開催もどうぞよろしくお願いいたします。


前回参加させていただいてから実際に私が指導したものが、似た文字のグループを縦に書く、ということです。横に何度も書くよりは字がまとまります。ただ、イギリスで私が指導している子どもたちはまだ年齢が低いので、大きな効果はわかりません。また、似た文字のグループ分けは、ジョリーフォニックスでは、c, o, a, d, g, q をcaterpillar のc として丸くなるグループとしていますが、c, e, o のグループ分けのほうが子どもにとってわかりやすいようです。それにしてもe を書くのは難しいですね。(卵が割れて、というお話しで子どもたちに指導し、卵に割れ目を描いた絵の上に e を描くようにして印象づけています。)


今回のフィードバックです。
今回はまずはタイトルから、うわ!と思った次第です。
~思い込みからの脱却~ Learn, unlearn and relearn.
握りしめているものを手放すことの難しさ、でもそれができると学び直しができる、というのは耳が痛いけれど、納得します (フォニックス指導も同じです)。

先生がHandwriting の階段を説明してくださいましたが、これは文科・自治体の方に聞いていただきたい。読み書きも同様ですが、この細かなステップを日本の英語教育は行わないので、子どもたちが躓いてしまうわけです。スポーツや楽器では一気に上手にできるようになるわけではなく、何度も繰り返し基礎を行うことが重要であることは、みなわかっているわけで、丁寧に指導をしていくわけですよね。文字指導 (も読み書き指導) もそうであることを感じてほしいと思いました。そして、今回は、この階段が 『愛のアランフェス』 とつながるのか~と、今回はストン!と来ました。

また、文字が書けておしまいではなく、かたまり、語へ移行していくステップの必要性、音の出し入れができても書けるわけではないという文字と音の関係性について、決して文字指導 (フォニックス指導も) には近道はなく、細やかなステップを入れていくことがキーだと再認識いたしました。

本当に残念なことに、日本ではこの部分が抜け落ちています。自分のセミナーでいつも口を酸っぱくして言うのが「英語ネイティブの子どもたちでも最初から単語が読めるわけではない。日本のひらがな指導と同じように一文字一音をしっかり学ぶ」ということなのですが、小学校の先生や自治体に理解してもらうためには、国語の指導を例に取ると、先生方はわかりやすいのかな、と感じました。文科が動かない限り難しい・・・と思ったのですが、We can! で書体が変わった舞台裏がそういうことだったのか、と初めて知り、文科がこれだけ早く動けることに驚きました。

そして、「補助線はあくまでも『補助』線」!
先生がおっしゃっていた「どういう文字を書かせたいのか」。補助線にそった文字を指導するのではないということ、子どもにあわせた文字から補助線を考える・・・この視点にそうだ!と共感しました。
そこから、どの文字がいいのか、というところを今回はいろいろ考えることにつながり、フォント比較は非常に勉強になりました。

モリサワのUDフォントをこれだけしっかりと検証できたのは私にとって大きな収穫となりました。
モリサワの書体はかたまりになったときの文字と文字との間隔や全体の形が気になっていたのですが、exitや i のdotがそういう意味があるのかと一つ一つ先生が丁寧に説明してくださったおかげで、ようやく理解することができました。先生がおっしゃっていた「優先順位をどこにするか」を考えたうえで、書体もきちんと選んでいきたいです。

10. シラバス設計での配慮での③音韻の操作についてですが、残念ながら日本では全くと言っていいほど指導されていません。小学校では、フォニックスの指導がされているかと思いますが・・・と松井先生がおっしゃっていましたが、現実は全くと言っていいほどされていません。音韻認識という言葉もほとんどの先生は知らないということですから、これを文字とつなげていく感覚は現場の先生には育っていません。文字指導だけでなく読み書き指導もここが大きな課題になっています。

セミナー後にこうして資料もお送りいただきありがとうございました。早速、ダウンロードし復習させていただきます。先生のきめ細やかなご指導に感謝いたします。


途中、地震があり大変驚きましたが、先生の冷静な対応に感動しました。被害がなく本当によかったです。また、先生のお茶目な部分が垣間見えるセミナーでした。また参加させていただきたいと考えています。どうぞ引き続きご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

山下先生、こちらこそ、大変な時期にセミナーを受講していただいたばかりか、こうして有益なフィードバックをいただき、本当にありがとうございました。


山下先生のサイトへのリンクをこちらに記しておきます。小中学校段階の指導者だけでなく、「フォニックス」指導や学習でお困りの方、是非お訪ね下さい。

https://kayokoyamashita.com/kayokoyamashita.com

本日のBGM: pink shadow (山下達郎 from the album "It's a poppin' time")

「文字指導」を語るなら、このくらいのことを考えておいてはどうか

2月期、3月期の「文字指導/handwriting指導法セミナー」計3回が終了しました。
大まかな構成は、昨シーズンと変わりませんが、そこで扱われている内容の深みは、昨シーズンよりも増し、よりリアルになったのではないかと思っています。
告知での「講座内容」には、このような文言があります。

講座内容:小学校の英語教科化や新学習指導要領で、「文字指導」のニーズは小学校段階に移ってくる、などと言われますが、そもそも「中学校」段階で、きちんとした文字指導、handwritingの指導はどのくらい行われてきたでしょうか?また、高等学校段階で、文字を書くことにどの程度配慮がなされているでしょうか?
この講座は、実際に「手で書くこと」= handwriting の指導法をきちんと扱い、その指導体系を考えるワークショップです。
欧文書体のhandwritingの指導体系を持つ、英国などのカリキュラム、シラバス、教材を踏まえ、日本の学習者にとって、より適切な「文字指導/handwritingの指導法」を共有します。

・欧文書体・フォントの基礎知識
・「フォニクス」ではない、handwritingとしての文字指導
・四線など補助線の意義
・シラバスデザインと文字導入の順序
・筆記用具の持ち方・握り方、姿勢への配慮
・筆記補助具、ワークシートの活用法

今シーズンのセミナーには、タイトルに

  • 思い込みからの脱却  Learn, unlearn and relearn.

という文言を付け足しました。私の切実な思いの現れです。
昨シーズンは、対面でのワークショップで、少人数グループでの情報交換や、お互いの書く文字を横目で見あったり、実際に「筆記具」や「筆記補助具」を試してもらう、という環境で行っていました。今シーズンは「コロナウィルス」対応で、Google Meetによるオンラインでの開催となり、実際に「書いてもらう」ものを私が逐一確認したり、「筆記具」「補助具」を試したときにリアルな反応を受けとることができなかったことが残念ではありました。
そんな中でも、受講者の方からは概ね好評なフィードバックを得ていますので、その中から一部を紹介したいと思います。

2021年度にも、今回と同レベルの「ガイダンス」に当たるセミナーを開催する予定ですし、今回の「ガイダンス」を「初級」とすれば、「初級」レベルを受講した方向けの、「中級」とも言える、もう少し具体的で専門的な内容とレベルのセミナーも企画しています。
以下のフィードバックを参考に、受講を検討していただければと思います。
今後とも、ソーシャルメディアでの情報にご注目下さい。

率直に言って、受講して本当によかったと思います。 恥ずかしながら、学部時代でも大学院でも、文字の指導について学ぶ機会はほとんどありませんでしたし、自分から求めることもありませんでした。模擬授業などでも、「よほどミニクイ文字(フォント)」の時にはフロアから指摘がある程度で、多くの学生(私自身も含めて)は文字についてそれほど注意を払っていないのではないかと思います。このように書くと言い訳がましくなってしまいますが、それが現状なのだろうと思います。文字の指導を考えてこなかった自分がいけないのですが、もっと早い段階(教職課程のカリキュラムなど)で文字指導を学ぶ機会があったらどんなによかったことかと思います。 これまでの自分の思いの至らなさを反省するとともに、学びの機会を与えていただけたことに感謝申し上げます。フォントを選択するとき、文字を書くときに、何に注意して選ぶのか・書くのかという視点を得ることができました。それはそのまま指導の視点につながることだと思います。まずは教える側として自分自身がワークシートに取り組むなどして自分の文字を見つめ直し、指導に活かしていきたいと思います。

どのセミナーでも言っていることなのですが、「一度見えるようになると、次にそれと出会ったときに、それだとわかる」眼を手に入れたということなのですね。 次は児童生徒に還元していただければと。

今日は本当にありがとうございました。濃密で、素晴らしい時間でした。
前回申し込めなかったことは残念ですが、今回こうやって参加させていただけて感謝です。
以前お聞きした時も「目から鱗」で、そこからいろいろ改善したこともあるのですが、いやぁ、まだまだでした。
まずは私自身の文字だ!と痛感しています。自分の板書の文字の癖を自覚して、文字の練習をせねばと思いました。まずは今日やった、運筆の練習から!
板書の文字、ワークシートに書く文字。自分の文字の癖をかなり見直さねばと痛感しています。
字が苦手、とずっと目を背けてきましたが、初学者である小学生への文字指導だからこそ、指導者である私が気をつけねばなりません。
4線の間隔について、x-height 部分が大きい方が初学者にはいいとは思いながらも、実はちょっと「不均等な4線だとアンバランスな文字になってしまわないか。将来的に困らないか」という不安がありました。しかし今日、松井先生のお話をお聞きして納得できました。4線はあくまで補助線であるということ。
方眼紙の良さとしておっしゃっていたと思いますが、結局4線も写真のグリッド線と考えればいいのだなと、自分の中で納得できました。カメラをかじっている自分としては、グリッド線は美しく見えるための目安の線、というところで、非常に腑に落ちました。
私は子どもたちを「自立した学習者」に育てたいと思っています。今日何度もおっしゃった「自立した書き手」という言葉がグサグサと刺さっています。私は子どもを自立した書き手として認めていなかったのではないかと思います。英語を書く指導も、日本語を書く指導も。漢字の学習も、英語を書く指導も、自立した書き手にするような手立てを取っていなかったことに気づきました。段階を踏まず、考えずに機械的に書かせるだけの指導はやめます!
文字の中にお顔を書かせるのは、すぐにでもやってみようと思います。3年生の中で、aが極端に小さくなる子がいます。何度訂正しても同じだったのですが、お顔を書かせたらすぐ分かりそうですね。明日やります!かわいいですし。きっと大喜びしながらやると思います。
今日また松井先生のお話を聞いて、小学校での指導の重大さを改めて感じました。
まだまだ至らないところだらけですが、自分にも成長の余地ありと思って頑張ります!
ありがとうございました。

「耳が痛い」「グサグサ刺さる」「児童生徒に申し訳ない思い」というのは、私のセミナーで現場の先生方からかなり多く返ってくる反応です。unlearn する痛みとでもいいましょうか、「思い込みからの脱却」というのは、恩師でもあった若林俊輔氏からの受け売りなのですが、脱却して学び直す、というのは、言うほどやさしいことではありません。「今、握りしめているものを手放さないと、新しいものを手にすることは叶わない」というのは、教職に限らず、色々な局面で私もこれまで痛感してきたことです。

昨年のセミナー参加が体調不良で叶わず,本日のセミナーを1年越しで楽しみにしていました。大変有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。フォントのデザインと認識の関係は,聞けば聞くほど興味が湧いてくるものでした。線の流れが動きに転じるようにデザインされていること,そして,文字を書くという行為には,認知的かつ身体知が複雑に絡んでいることは,最初のワークシートの練習で実感できました。トメではなく,ハネ,払いに近いExitは,語としてのまとまりやfluencyを伸ばすのに重要ですね。 身体と言えば,先生に紹介していただいたPenpals for handwritingでも,準備体操がありましたが,日本の学校でもあのくらい身体と文字の関係を意識した教育を行うべきだと思います。この10年,小学校での取り組みをお手伝いしてきましたが,数年前に研究開発校で一足先に読み書きが入ってきたときに,自分が英語教育の研究者として入門期の大事なことにほとんど手を付けていなかったことに気付き,大いに反省しました(その頃に先生にいろいろとおたずねしました)。また,小中の教員養成も相当に変えていかないと,英語教育は根性論の再生産になってしまいます。その割に,初等教員養成課程での外国語科の指導法に割くことができる時間はごくわずかで,しかも,大人数クラスという状況なのが頭の痛いところです。教員養成は,免許法の改正,英語コアカリ,教職大学院化と良い方向には向かっていません。
また機会があれば,お話をお聞かせ下さい。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

この一連のコメントをお読みいただければ、「大学」や「大学院」で、英語教育の研究や教員養成に関わる方であることは想像に難くないと思います。小中高現場の教師だけではなく、このような「教師を指導する側」の方にも受講していただけるセミナーとなっていることがわかっていただければ幸いです。

ほとんどが今まで私が不勉強にして知らなかったhandwritingに関する歴史や指導でしたので、それをあんなに時間をかけてじっくりご教授いただく本当に贅沢な時間だと思いました。
なぜ今回先生のセミナーを受講させていただいたかというお話をすると、A4にして3ページくらいのレポートになりそうなのですが、2回目に受講して気が付いたのは、先生のセミナーは「こうして指導すればいいですよ」という巷に多くある「明日から使える〇〇指導法」ではなかったということです。セミナーの中で、実際に自分が書いてみて、体験させていただいたことはあのまま生徒にさせるのではなく、あの感覚をもって、自分の指導にどう生かすかという貴重な視点でした。小学校英語はともかく指導する時間が限られます。あれもしないと、これも教えてやらなければ、とwishing listのようなものを順番に優先順位を付けながらそのリストをつぶしていくと、結局はたくさんの英語の音声インプットとか、字形を認識させ、音から文字に結び付ける、そこを最優先に(文字指導に関しては)、その文字認識の段階でかつてはフォントすら気にもかけていなかった時代から、We Canとともに少なくともかなり前進したのは先生を始めご専門家の貢献度が高いと感じています。ひとまず、そこは言い方は変ですが、「ご専門家にお任せし、教科書の字体やワークブックが作られまっとうな方向に導いていただく」というのが今までの認識でした。2回の受講を経て、6年生最後の2クラスほどですが、子どもたちの書くアルファベットがとても気になっている自分に気が付きました。卒業を前に4回ほどbridge lessonという単元を入れ、中学校に向けての読み書き指導を入れたのですが、この時期にもっと私は先生の2回のセミナーで学ばせていただいた新しい視点を入れ、練った指導ができればよかったと今、反省しています。この感覚は、なかなかほかのセミナーでは体験できなかったと心より感謝いたしております。私自身も時々セミナー講師をさせていただく立場で、これほどgenerousに、参加者にシェアするものを十分に準備して行ってきただろうか、ということも考えさせられました。大変、失礼な言い方をしていたら申し訳ありません。
もう一度、セミナー開催されるとのこと。 
時間があればまた参加させていただきたいくらいです。
そこで、自分が何を発見し、何に気が付き、何が変わるか…知りたいです。
本当に貴重な機会をありがとうございました。

匿名でしかご紹介できませんが、「小学校英語」(とひと括りにするのはちょっと乱暴な気もしますが、そ)の牽引者のお一人とも言える方からのコメントに身が引き締まる思いです。

  • 先生のセミナーは「こうして指導すればいいですよ」という巷に多くある「明日から使える〇〇指導法」ではなかったということです。

という件の「お手軽なお土産お持ち帰りセミナーにはしない」というのは、私が普段から心がけていることですので、分かっていただけて本当に嬉しいです。

松井先生、昨日は文字指導セミナーをありがとうございました。困っている生徒のために知っておきたい事はもちろんですが、「読みやすい 書きやすい」って教室のみんなにとって嬉しいことだなと実感しながら(反省もしながら)の贅沢な4時間でした!指導者が苦行にしてしまいがちな文字指導ですが、昨日はなぞり書きさえも、楽しかったのです。「文字を書くときに注意をする点が分かると、そこに集中する。集中していると身体が自然にふさわしい動きをしようとする。」そういうことを体感しました。同時に意識しないと直らない自分の癖も発見しました。これが習得したものを手放す難しさか、と。初学時に丁寧な文字指導をする必要性をより痛感しています。
お話を聞いていると、まるで「この生徒にはお日様を」「この生徒には水を」というように、生徒一人一人をよく見て必要なものを与えて育まれてきた松井先生のお姿が目に浮かぶようでした。
先生の圧倒的な知識量や経験の引き出しから得られた多くのエッセンスをこんなにも教えていただき、本当に感謝しています。ありがとうございました。

  • 困っている生徒のために知っておきたい事はもちろんですが、「読みやすい 書きやすい」って教室のみんなにとって嬉しいこと

というのは、「ユニバーサルデザイン」の理念を上手く言い表しているのではないかと感じています。こういう感性の方が、英語教育現場を支えてくれていることに感謝します。


最後は、超(?)長文です。この方のメールを仕事帰りの電車内で開いて読み、落涙しました。
講師冥利に尽きるフィードバックをありがとうございます。

楽しいセミナーでした!ありがとうございます!
アルファベットを習う前によくある子供向けワークシート
mmmmmmmmmm
WWWWWWWWWW
の練習書き、本当の意味が解って驚くのと同時に自分の知識のなさにがっくりしました。
そしてその連続でした。

意識をするとしないでは、同じ作業をするにしてもこんなにも効果が違ってくるものなのかと実際自分で描いてみて実感。それを潜在のうちに埋め込めれたら、最高です。そういう教育を私も受けたかったです。
私は中学の時に器械体操部で、娘はバレエをしています。先日、別の用事でバレエの幼児科クラスの時間にスタジオに行きました。子供たちはシルクのような素敵なハンカチの端っこを指で持ち、頭の上にあげてスタジオを足音たてずぐるっと音楽に合わせて回ってくる、ということをしていました。
「ハンカチがしぼんじゃだめよ~、お姫様になって~、ふわふわ~」
という先生のメルヘンへのいざない言葉を浴びながら。娘がやっていた時期を思い出し、懐かしく目を細めていたのですが、まさにこれでは!
プリマのあの腕の固定された美しさは。
上でも前でもブレない両腕の微妙な輪っか感はこれではなかろうか、と。
こうやってきっと、潜在的に「できるように」指導されていたんです!
きっと。

だからといって今、娘の腕がきれいなプリマ輪っかをいつでもどこでも作れるか、といったら
そうではありません。

「どんな丁寧なカリキュラムでも、困っている子はいる」
という視点を持つ、ということもこのセミナーで学んだことの一つです。

そして
中学から器械体操をしていた私にはこういう一見「なんだろう?」と思われるような 楽しいこと(練習)が実はあの大技につながっていた、なんて記憶はありません。忘れているだけかもしれませんが。やはりこのような「愛の先見」が秘められた指導はこどもにこそ、本人が気づかぬうちにやりたい! と思いました。大人でもこれだけの感動があるんです。内緒で習得させれたら、と思うとなんだかワクワクします。

先生の当日のファッションや文字の歴史、いろんな人の困り感を考えた様々なフォントの話に文字への「愛」を感じます!文字の「入」も「出」も意識したことがありませんでした。横に流れるんですものね。ものすごく達筆な「習字」の文字への見方も変わりました。土曜日までは、ものすごく怒られそうですが「ダラダラと上から続くたぶん素晴らしい字」でしたが、あの中に「入」と「出」が芸術のごとく潜んでいる(わからないからこんな表現になりますが)と思うと自分の見る目もほんの少し成長したか、という気になります。 

子供達が
「この先生、英語の文字、好きなんやなぁ。へんな先生やなぁ。」
と思うクラスができたら英語が好きな子が増えるのではないでしょうか。
単純かもしれませんが。

私は先生のセミナーを受けて「小文字」を好きになりました。おもしろい変化です。そして、「わかる・わからない」や「できる・できない」でなく前よりもっと英語を好きになったような気がします。


週に二回、子供を送り出してから歩くか走るかわからない速度でのジョギングが日課です。
走った後、公園の鉄棒の真ん中の高さのところでゲートボールを横目に足上げをします。前、横、後ろ、40回ずつ。

器械体操部のときは毎日のウォーミングアップでした。この時も中学生ですから、ダラダラと、おしゃべりしながらただただやっていたように思います。娘のバレエをきっかけに、自分の足の上がらなさに愕然とし、過去の栄光を取り戻すべく(少しでも戻すべく)ゆっくりぼちぼちしていますが
今日、私が鉄棒で思ったこと。なんだと思いますか?自分でも笑ってしまいます。
「分岐点」です。
骨盤を分岐点とした、自分の脚のあがる軌跡です。
ただただ上げていた、意識レベルから美しくあげる、に変わったんです。これはかなりなレベルアップではないでしょうか!
だからといってもちろんすぐに脚が美しくあがるわけではありません。
ほんとうに美しくあげたいのならば正しい指導とそれを血肉にするまでの反復(根性も)が必要です。そんな境地を今更求める気はサラサラありませんが

それにしても
それにしても

すばらしい瞬間を経験しました。今日の朝、公園で。マンガによくある、「キラキラ」が頭の中にちらついた気分です。この意識で中学の体操を日々積みあげていたら・・・と思うと、ちょっとだけその当時の先生を恨みます。導いてあげること、大切ですね。これも、先生のセミナーで実感。

ほんとに私は先生のセミナーが楽しかったんだな、と思います。

この方のコメントにも出てきた「分岐点」は、フォントを考えるときに重要な着眼点です。今シーズンのセミナーのために改訂した「フォント比較の着眼点」を note で単品販売しております。セミナーの受講が出来なかった方で、フォントについての理解を深めたい方は購入をご検討下さい。

note.com

本日はこの辺で。

本日のBGM: Your Other Hand (Clare Bowditch & The Feeding Set)

"some have gone and some remain"

2月は更新ができないままでした。
セミナーをいくつか開催し、少人数の受講者に、ではありますが、英語教育の改善・充実に貢献できたのではないかと思っています。

そして、3月もセミナーやります!
ということで告知から。

3月20日(土/祝) オンライン開催

文字指導 / handwriting 指導法セミナー

passmarket.yahoo.co.jp

よろしくお願いします。

  • 入試改革への注文や、受験英語批判や、英語教育への貢献などとエラソウナことを言う前に、自分が今教えている目の前の学習者/生徒の英語力を伸ばせよ!

などと諌言してくれる奇特な方もいらっしゃいますので、今年私が出講している某高校の2年生の「授業評価」と「後輩へのアドバイス」を抜粋しておきます。
全て記名のアンケートで、私にとっては「通信簿」のようなものですが、外にいる方は「リアリティ」を共有できておりませんし、人は、自分の経験を振り返って悪く思いたくはない生き物ですので、良い評価も、悪い評価も「話半分」のさらに半分くらいのつもりで、眉に唾を付けて、または眉を顰めてお読み下さるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。


では、以下、抜粋を。

松井の授業の評価

  • 今までの学校の授業では、配布されたテキストや参考書を何となく信頼して使っていましたが、先生はこの表現は良くない、とか、これは最近は使われていないなどと、データなども示しながら教えて下さり、すごくためになったと思います。先生ほど、英語の本質を教えてくれる先生は、この先も出会えないんじゃないかと思います。1年間楽しく学べました。ありがとうございました。
  • 1年間ありがとうございました。最初は、正直、毎回テストの範囲がとても広く、日本語→英語に変換する文の問題が沢山出たりと、なれないことだらけでしたが、イディオムだったり、動詞だったりがどれだけ使われているかのデータを見せて下さったり、とても理解を深めることができました。定期テストごとにあるwriting課題が、一番英語力向上につながったような気がします。
  • 独自のファイルをちゃんと読むと分かりやすくてよかったです。ライティングの課題があったことで、中々自分では取り組むことのなかったライティングを書くことになり、段々、書く力が付いたので、ライティング課題はとてもよかったです。今年から『XXX』を使い始めて、その良さが分かってよかったです。1年間ありがとうございました。
  • 何かに喩えながら教えてくれたり、プリントまで用意してくれて、丁寧に教えて頂き、ありがとうございました。『○○○』の、ここの問題がダメ、など自分では絶対に気づかないとことまでやってくれたり、『XXX』も細かく、先生の自作のプリントまで、一つの単元に対して多くのことを学ぶことができました。今まで受けた授業とは違う形で面白くて印象深かったです。本当にありがとうございました。
  • 『XXX』の解説を詳しくしてくれたので分かりやすかったです。(独自の)ファイルは、特に「比較」のファイルが分かりやすかったです。図があったりしたので、比較のイメージが掴みやすかったです。ライティング課題は、私が今まで書いたことのないお題ばかりで勉強になりました。特にグラフの説明とことわざの説明は、どのような構成で書けばいいのか全く知らず、この課題がなかったら一生出会わなかったと思います。毎回とても大変でしたが、ありがたかったです。
  • モニターに映して授業を進めて下さったので、一つ一つ細かいところのメモが取りやすくて良かったです。先生が一部の参考書に書いていることの間違いを指摘し、本当に正しい英語の使い方を教えて下さったので、知識を深めて英語の勉強ができて、良い授業でした。
  • 全体的に良かったです。特に、黒板に書いて説明してくれるところが分かりやすかったです。
  • 分かりやすく、文法、文のつくり方などを解説していただき、とてもよかったです。長文のwriting課題を通じて、文を書くときにいしきすることが身についた。見直しをすることで理解も深まった。とても良かったです。
  • 参考書を批判していて、最初はヤバい人かと思ったけど、それだけ英語愛が強くていいなと最終的には思います。あと、文法で、ここまで理解できたのは、先生の授業だからこそだろうなと感謝します。先生のオリジナルのプリントはとても有用だと思っています。長年の先生の血と汗と涙がこもっていると思って、大事に読み込みます。ライティング課題が定期的に課されるのが良かったです。
  • 先生の「名詞は四角化で視覚化ドリル」は分かりやすかったです。模試の前などに先生のtwitterを見て勉強していました。
  • その文章のどこがいけないのか、不十分なのかを提示してくれるので納得できた。問題集などで無理やり納得していたところも、喩えとかを使って分かりやすくしてくれた。今まで受けてきた英語の授業とは少し変わっていたけれど、とても満足のいく一年でした。
  • 『○○○』では書いてあることは全て正しい英語だと思っていたけれど、実際は変な英語もあることを知れたので良かったと思います。『XXX』は、一問一問解いて解説をよく読むというのをやるだけだったけれど、先生の詳しい解説を聞いて理解し難かった問題が消化できました。
  • 今まではテキストの問題を解いて、解説を読んで終わりだったが、先生の解説を聞いて、問題の本質を読み取ることができた。オリジナルのファイルは、例とともにあって、理解しやすかった。定期的にライティング課題をするので、英文を作る力が付いたと思う。
  • ときどき、よく分からないこともありましたが、基本的にはおもしろく授業を受けられました。先生の英語に対する見方は、私にとって新しい視点も多く、新しい発見が得られてよかったです。
  • オリジナルのファイル配信はとても分かりやすかったです。答えだけではなく、注意点を書かれていたので、見ただけで分かりました。あとは、「現代の使われている英語」に重点を置いて教えているのが伝わってきました。
  • 市販の参考書を全て信じてはいけないことを学びました。少し、自分が苦手な単元もありましたが、分かりやすく、ネイティブと比較もして下さって、とても分かりやすかったです。あと、海外の記事などに触れられる機会があって面白かったです。
  • 『○○○』や『XXX』には載っていない、細かい英語のニュアンスが授業やファイルで説明されていて役立ちました。
  • 教材に対する批判的な視点というのは、生徒である自分の身では絶対に持てないものであったため、振り返ってみると、とても面白かったです。英文の暗記が大変なときもありましたが、実際に多くの種類の英文が書けるようになったため、楽しかったです。ありがとうございました!
  • 最初の方は、記号や独特な言葉が多すぎて、話について行けなかったのですが、慣れてくるとプリントなども詳しく書かれていて理解が深まりました。ライティング課題は、出される時期もちょうどよく、あの課題が一番ためになったと思います。ただ、最初の方の授業は、もう少し進度がゆっくりだと、もっと分かるようになるかな、と思いました。
  • テキストの『○○○』に対しては、とても批判的だったので、最初は戸惑いましたが、今になって、おっしゃっている意味が分かるようになりました。プリントがたくさんあって管理が大変でしたが、ひとつひとつに様々な知識が詰まっていて勉強になりました。Writingの課題は問題が面白くて、取り組むのが楽しかったです。1年間ありがとうございました。
  • 分かりやすいところは分かりやすいが、先生独特の「大関」などの表現が、私的にはよく分からないまま終わってしまうことがあった。先生が作って下さるプリントは分かりやすいのですが、文字の分量が多く、全部すみずみまで読むことは難しかった。
  • 先生の授業は、初め、あまりの未知さに自分が今何をやっているのか理解するだけで数ヶ月かかりました。最初は厳しい先生なのかな、と思っていましたが、2学期くらいからは、先生の言うことなら間違いないと思うようになっていました。テキストに対する評価も、その批評を聞いて、本当に面白い先生だと思いました。プリントは絶対に手元に残しておこうと決めています。1年間ありがとうございました。
  • 面白い喩えや例文で授業を行っていただいたので記憶に残りやすかった。声が優しかった。しかし、「横綱」などそもそものものを知らないがゆえに覚えられなかったものもあったので、最初に少し時間をとって説明するか、もっと身近な例にして欲しかったです。
  • 教材に対する扱いがとてもよく、特にテストのときには、文のまままるごと出るので、何回も読み返してテスト勉強をすることを大切にしていました。そうしたことで理解が深まったのですごくよかったと思います。
  • 先生のこだわりが見られて難しかったですが、英語に詳しい先生が厳選してくださったので、信頼して問題を解けたと思います。英文は初見では気持ち悪いものもあったのですが、その根拠をしっかりと教えて下さったので助かりました。すもうの例は、恐らく今の学生の世代は、ほとんど無知なので、私も、そこだけはよく分かりませんでした。ライティングの課題は、自分だけで考えて長文を作る機会があまりないので力になるものだと思います。
  • 英文法の説明の仕方が分かりやすかったです。塾での習い方とは違い、とてもためになりました。最初は、今までの先生と授業のスタイルが結構違って驚いたけれど、丁寧な説明の間に、たまにギャグをはさんだり、歌を歌ったりするのが楽しかったです。ライティング課題もとてもためになりました。特に2学期にやった、グラフの比較が難しく、英語表現をもっと豊かにしないと、と思うきっかけにもなりました。
  • ライティング課題はとても良かったです。今までこんなにも、文法に気をつけて時間をかけ、論理が通っているかきちんと確認しながらライティングをしたことがありませんでした。細かい直しが役に立ちました。
  • ただの文法ではなく、その奥にある意味、根底にある考え方を知ることは今までなかったので、純粋に新鮮だった。
  • 1年間ありがとうございました。文法の授業にプラスして、そのフレーズの使われ方、他の言い方など、様々なことを教えて下さり、英語にさらに興味が持てました。
  • 『○○○』や『XXX』の解説は、最初、今まで受けていた先生の授業とはだいぶスタイルが違ったので、とまどったし、驚いたりしたけど、やるべきことを限定してくれたので、説明を理解してから解いてみると分かりやすかった。特にライティングは丁寧なフィードバックがついて返ってくるので、自分の間違っている部分が分かりやすく、苦手意識のあったライティングで自分の弱点を知ることができ、成長を感じられた。
  • ゆっくりとした授業の雰囲気が好きでした。毎回リラックスできました。文法の基礎力が上がりました。
  • 毎回のライティング課題が大変だったが、とてもためになった。雑談が楽しかった。
  • ライティング課題がテスト前に出されると、いつも大変で、もっと考えて書きたいっ!と思うこともありましたが、グラフの説明やイラストの説明など、大学受験にダイレクトにつながる分野を練習できたのは本当にありがたかったです。(ファイルの)プリントは、見つけるのと、コピーするのが少し大変でしたが、内容、例文はとても使いやすかったです。
  • 実社会での使用頻度と大学入試で出やすいものを分けて扱っていたのが良かった (グラフや表を見せてくれたのがよかった)。ライティングでは、入試で使うものを、テキストタイプそれぞれ分けて課題にしてくれたのは良かった。また何がダメで、何が良かったかを、他の生徒と比較して自分でも評価できるのは良かった。
  • 英語教材を読み上げたりするだけの授業ではなく、現代英語の本質的な部分を、オリジナルのファイルにあげていただき、実用的な英語を学ぶことができた。受験で点を取るためだけの授業ではなくてよかった。


(来年度この講座を受けることになる) 後輩への親身のアドバイス

  • 先生が面白いときは笑うこと。Twitterをフォローすること。マジで役に立つ。ペンの持ち方注意。
  • 先生のツイッターはフォローしておいた方が良いです。「いいね」をつけるのは少しハードルが高いので、ツイートを見るだけにはなりますが、ニュースなど本当に参考になります。
  • 先生のtwitterは世界のニュースと英語が同時に学べるので、日々見ておくと単語力など色々な力が上がると思う。
  • 今までの授業では得られなかった英語の知識が得られるので、メモをしっかりと取ることが大事だと思います。
  • 試験のために、大量の英文を覚えることが多いですが、覚えると、英文の構成や文法や単語を自然に身に付けることができます。テストはやさしいので、希望を持ってがんばってください。
  • ライティング課題は、出された日から取り組むべき。(オリジナルのプリントの)ファイルも熟読すべき。
  • 最初は参考書に怒ったりしてて、変な先生か、と思うけど、それだけ英語愛がすごいってことだし、実際、授業の分かりやすさと入ってきやすさは他の先生とケタ違いなので、まじめに聞いていた方が良いです。帰国の子も!
  • プリントの例文を理解して覚えると自然と長文が読めるようになると思うので、ひとつひとつ丁寧にインプットを継続することを強くおすすめします。
  • 先生からいただけるプリントは全部神さまだと思った方がいい。
  • 途中から、もしかすると今、自分は日本一の英語の授業を受けているのかも知れないと思ってくる。実際そうかも知れない。先生のファッションを予想するのが楽しい。ペンの持ち方を直したくなる。でも直せない。
  • 先生の授業は他の先生の授業と全然違うので、注意して聞き、先生の独特な世界(?) に入れるようにすると良いと思います。
  • 先生独自の言葉(横綱とかワニなど)が分かっていないと、後々何いっているかついていけなくなるので、最初から真剣に聞いてください。最初は独特な先生だと思うかも知れませんが、真剣に授業を聞けば聞くほど面白いし、得ることも多いです。
  • 英文は何度も唱えると良いかもしれない。「正しい英語」に触れる努力を!
  • たまにボケたり、突っ込んだり、というのをするので、笑ってあげるといいと思います。あと、(フィギュア)スケーターについて少し詳しくなれます。
  • 先生の授業は、一年間を通してつながっているので、最初から集中して一回一回の授業をしっかり覚えるのがいいと思う。あと、先生はフィギュアスケートが大好き。
  • 一度心が折れたらそこで終わり。
  • 頑張れ! 毎週復習!復習するならその日のうちに!後からでは追いつかない!事前に予習してから授業に取り組むと良い。
  • 来年の帰国生へ。この先生のテストは今までの英語のテストではありません。自分は英語ができるから、と過信していると痛い目を見ます。ちゃんとプリントを暗記しましょう。このテストは暗記、暗記、暗記が大切!
  • テストは暗記。やれば取れる、やらなければ取れない。ライティングは早めにやらないと適当になって、それが低いスコアにつながる。とても楽しい授業です。
  • プリントはたくさん英文がのっていて、「やりたくない」と思うかも知れませんが、模試や長文中で、見たことがある形の文章が増え、段々と楽になる部分が多くなっていきます。一つ一つしっかり、長期記憶になるよう、復習して頑張って下さい。
  • 先生のつくる資料は良質な文しか上がっていないと思うから、たくさん読んで、自分で書けるくらいにまでもっていくべき。やれといわれたことはきちんとこなすべき。
  • テストの範囲外の部分も、定期テスト以外の勉強をするときにとても役に立つので読み返すことが大事だと思います。
  • 「ここグリグリしてください」はとても大事です。
  • 問題集など、ひとまずおおざっぱに予習すると「あ、これ、こう言いたいのか!なるほど!」と理解しやすいので、できれば予習はした方が良いと思います。やるとやらないとでは面白さが違います!粘り強く頑張って下さい。
  • 復習に時間がかかるから、勉強した日に復習よ!


年度当初は、新型コロナウイルスに関わるあれやこれやで、満足の行く授業を提供できていたとはとても言えませんが、それでも辛抱強く授業に取り組んでくれたことに感謝します。ありがとうございました。

本日はこの辺で。

本日のBGM: イン・マイ・ライフ (田村玄一/藤原マヒト/伊賀航)

恒例の…

昨シーズンも、大好評のうちに東京と大阪で計4回開催しましたが、今年も「文字指導/handwriting指導法」のセミナーを開催します。
静岡の亘理先生/稲葉先生を中心に展開している「英語授業を語る会・静岡」とのコラボだけは特別に無料ですが、その他は有料のオンラインでのセミナーです。静岡以外の先生方は、こちらのオンラインセミナーをご検討下さい。
教員だけではなく、文科省の担当者や、教科書会社の担当者の方、大学の教科教育法の担当者、教員免許更新講習の企画に行き詰まっている方など、奮ってご参加下さい。

2月13日(土)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

2月23日(火/祝日)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

※両日とも同内容ですので、ご都合のよい日時でご検討下さい。

さて、
ソーシャルメディアで「来年度からは、中学校では文字指導をしない」というようなミスリーディングな文言を目にしたので、危機感を持っています。いや、中学校で導入したことが、高校でも定着していない、なんてよくある話じゃないですか?小学校で導入した「文字」の指導を、中学以降でも継続するのは当然だと思うんですけど。

ということで、来年度から使われることになる「中学校の検定教科書」での、「文字」の扱いを見ていきます。
たまたま、いや、本当に偶然に、『英語教育』(大修館書店)の2020年2月号の第3特集が「新しい中学校検定教科書 試し読み」なんですよ。この企画って、高校の検定教科書も発行している大修館書店の雑誌では、「高等学校検定教科書 読み比べ」なんてできないので、小中の教科書を発行していない偶然が生んだ、ということですね。


私は昨年の「展示会」で見てきました。
中1のBook 1 での見開き構成で、
・レッスンタイトル
・セクションタイトル
・指示文
・本文
・生徒が書くであろう部分の例

など、求められる活動ごとに、教科書のフォントがどうなっているか、というところを中心に6社の教科書を見てきました。

One World Book1 (教育出版;中1)

今回の改訂、小学校教科書で各社で見られる「UDフォント」の採用を謳いますが、本文のディセンダー (pqyなどの基線からはみ出る部分が) とにかく見づらい。小文字の y がなどはボールドになるとつぶれてしまいます。
セクションタイトル (小文字のSpringboardのgやa、Part 1の a、Classroom Englishのa)ではUDフォントの配慮はナシ。Book1 でも、メインレッスンではサンセリフのフォントを使っているのですが、Further Reading で読みに特化したレッスンになって初めて、セリフのフォントになるのですね。
これは他社本にも言えるのですけど、「読みの技能への依存度が増す」活動なのに、どうして、文字の認知負荷がより高いセリフにするのかは理解に苦しみます。

New Crown Book1 (三省堂;中1)

伝統のCrown。ところが、表紙見返しのLanguages around the world のタイトルからしてフォントへの配慮に欠け、極めて残念。小文字のa/gをよく見ましょうよ。同じことは、レッスンのセクションタイトルにも当てはまります。Part 1 / Read / Take Actionなどの小文字の a はこれでいいですか?
本文フォントはサンセリフ。yは左に曲がって終わります。この教科書もReading for fun の課(ハンプティ・ダンプティ?)で「セリフ」に変わるのです。「とにかく読む」という、読みに特化した活動で文字認識関わる負荷は下げて、語義や文構造の理解にリソースを割けるように、という配慮がなぜできないのか、と思います。
これは、Book2(中2)でも同じこと。読んでいるときくらい読みに集中させてあげて下さい。「全集中!」ってやつですかね。

New Horizon Book1 (東京書籍;中1)

判型が大きい!Book 1に関してはフォントへの配慮は一番行き届いていると言えるでしょう。そりゃ、小学校用教材のWe Can! から、NH handwriting (字游工房からの発売ではJK handwritingフォント) のフォントを開発して使用してきたのですから。セクションタイトルなどのフォントと、本文のフォントとでのギャップがほぼないのは歓迎できる。Let's Read の2になると、「セリフ」に変わり、その後のOptional Reading の本文もセリフとなっています。
ただし、Book2 になると最初からセリフです。

Sunshine Book1 (開隆堂;中1)

カラーUDへの配慮、対話文での手書き「風」フォントの採用など、一見小学校からのスムーズな接続を考えているように見えるのですが、フォントのデザインは「プロ」が関わっているとは正直思えません。本当に、この文字でノートなどに手書きしてから、書きやすさや読みやすさを確認してますか?まあ、「文字」に関しての専門的な知見のある著者が不在なのでしょうね。
そして、中2のBook 2 からは「セリフ」が一気に増えるのに、そこへの段階的な移行がBook 1で考えられているようには見えないのが残念。今回の教科書の中で、文字の扱いに関しては、私の評価は最も低いです。

Here We Go Book 1 (光村図書;中1)

光村は「コロンブス」という名を捨てましたね。時代の変化を見越していたということでしょうか?
文字に関しては、独自開発のUDフォントを謳います。このフォントのデザインには、プロが関わってますね。でも、セクションタイトル Part 1/ Goal などの a は…。ということで、結局は「教科書著者陣」の見識なんです。
歌のコーナーなど、メインレッスン以外ではセリフが使われていますが、その意図は?
Book 2(中2)からは本文はみなセリフになります。

Blue Sky Book 1(啓林館;中1)

啓林館かぁ…。個人的には、高校の教科書で良い印象のない出版社なんですが、小学校のチームは良識派なんでしょうか。
UDフォントでの配慮を謳っているのに、セクションタイトルは…。
Part 1 / Let's Talk / Get Ready / Practice の a。
Let's Read と歌のセクションはセリフ。
そして、Book 2(中2)では、最初から皆セリフ。

私は展示会で見ましたが、実物をご覧になっていない方も、こちらからリンクを辿ると、各社のカタログやパンフレットがありますから、少しは私の指摘したことを感じることができるかもしれません。

一般社団法人 教科書協会
教科別発行教科書の紹介
中学校
www.textbook.or.jp

私が指摘しているのは、ここで取り上げた「中学校用教科書」にとどまらない問題です。
むしろ、市販教材のほうが、配慮がなされていないというか、気づきさえしていないことが多いのではないかと思います。

難関大進学を目指す意識高い系の中高一貫校などで採択されていると言われる、某Z会の検定外教科書 『新お宝』 も、中学1年生用のBook 1 に相当する、Stage 1 が改訂に合わせて、フォントが変わりました。

www.zkai.co.jp

『お宝』の初版を作ったときにStage 1 の本文フォントを Sassoonにしようと頑なに言い張ったのは私なんですけど、私が抜けた改訂2版でも、Sassoonが踏襲されていました。
今回は、小学校の検定教科書に配慮したのか、モリサワのUDデジタル教科書体のLatinが使われています。
その改訂に合わせて、ペンマンシップの教材も変わったようなのですが、指導体系としては、感心しない構成と内容で残念でした。せっかくUDフォントを使っているのだから、その良さを反映できるような教材が求められるのではないかな、というのが正直な感想。
もっとも、初版を出した時にも、ペンマンシップをどうするか、など私は全く相談を受けたことがないまま、編集委員会を去りましたから、初学者への配慮とか技能の習得/発達段階への配慮というようなことは何も考慮されていなかったということなのだろうと思います。
当時、一緒に編集委員をしていた両K先生、U先生、事実誤認があればご指摘よろしく。

ということで、

  • ライティング指導の第一歩は文字指導から
  • native speakers は存在しても、native writers は存在しない

本日はこの辺で。

本日のBGM: Free (ポルカ・ドット・スティングレー)

ロマンス抜きでも『浮かれモード』

本当に嬉しいことがあったのでこちらでも幸せのお裾分けを。

12月18日は、世界の安藤美姫さんのお誕生日なのですが、ツイッターでおめでとうと呟いたら、なんと、ご本人から直接リプライが!
一日中、浮かれ浮かれで、舞い上がっておりました。

またアリーナで素敵な演技、プログラムを堪能したいという思いが募っております。


さて、生業の英語教育でのセミナーの告知・続報です。

指導者対象セミナー (12/27)
「名詞句」関連ですが、この日はオンラインでの実施です。何分、はじめての試みですので、暖かい目で見ていただければと思います。

passmarket.yahoo.co.jp


続いて、「受験生」対象のオンライン&メール併用のセミナー。
「英文ライティング/自由英作文」に対応する講座です。
受験生の方、受験生をお持ちの保護者の方、お知り合いに受験生がいらっしゃる方、ご自身の塾・予備校ではきめ細かなサポートができない英語講師の方などなど、よろしくお願いします。

「A講座」は二日程とも同じ内容で、ガイダンスの講義と「お題」1題。

12/28

passmarket.yahoo.co.jp

12/30

passmarket.yahoo.co.jp


「B講座」は、早慶など私立大入試で課される「自由英作文」に対応する講座です。

2021年1月4日

passmarket.yahoo.co.jp

両講座とも、これまでに、過去問を解いて添削してもらい、その英文を暗記して乗り切ってきた受験生には「英文ライティング」の原理原則を学んでもらい、既に塾や予備校で「(自由)英作文」の講座を取ってきた人には「セカンドオピニオン」の場を与え、そして既にかなり「英語が得意だ」という人には、「群を抜くための着眼点」に気付いてもらうことを主眼としています。
過去問は使用しますが、解答が「エイブン」ではなく「英文」になっていることを目指す講座ですので、それぞれの講座の趣旨を理解した上で受講して下さるようお願いします。

詳しくはそれぞれリンク先の「詳細」をお読みください。

Stay Safe.

本日のBGM: I believe (絢香)

「開放」?「却下」?それとも…。

またしても更新が滞りましたが、その間も、生き延びておりました。ありがたいことです。

指導者対象の対面でのセミナーも2回行い、さらに今月2回行う予定です。
昨シーズンの「名詞句を教えるならこのくらいのことを考えておいてはどうか?」というセミナーの発展編という位置づけです。

2020年12月20日開催
指導者対象セミナー:名詞句の捉え方・教え方
kokucheese.com

noteの公開記事でも、「比較三原則」「比較表現の発展」を公開済みです。
私自身が学習者としても、指導者としても、「最も難しい文法項目」の一つ、と感じているのが、この「比較」ですので、三部作+補遺、というような位置づけで記事を4本公開しました。
最上級で表された文を、比較級や原級を使って言い直す、というような、「雑な書き換え問題」に頼らずに、その表現形式で伝えたい意味、話者としての意図、を重視し、実例をひとつひとつ丁寧に「生き直す」ことを求めています。

比較表現の基本(その1): 原級を中心として 
note.com

比較表現の基本(その2): 比較級を中心として
note.com

比較表現の基本(その3): 最上級と比較の否定と
note.com

比較表現の発展・少し高いところで、より広い地平を眺めて
note.com

今週はさらに、いわゆる「仮定法」関連の記事を2本公開しました。
これまでに公開していた、「助動詞」関連と合わせた、「お買い得パック」も用意しています。

助動詞の過去形が出てくるたびに

  • (?) 「仮定法」です
  • (?) 控えめな表現です
  • (?) 可能性がより低いことを表します

という「?」の続出するような学参の記述を何とかしたいという思いが常々ありました。

現代英語の言語事実を踏まえて、「実例」ありき、「生息域」ありきで、英語の運動性能を高めるための教材としています。

いわゆる「仮定法」その1
note.com

いわゆる「仮定法」その2
note.com

お買い得パックの「マガジン」はこちらから。

助動詞と心的態度そして世界のミカタ
note.com

例によって、「練習問題」など、一つもない教材です。
「四択」完成問題や整序完成問題、連立完成の「書き換え問題」などに現を抜かしているうちに「語感」が鈍ってしまうことがないようにという、私の「祈り」だと思ってください。

この冬休み期間中には、喫緊の受験生を対象とした「英文ライティング・自由英作文」の講座も企画しています。
メールでのフィードバックが中心で、一部オンラインでのサポートをする予定です。詳細は近日中にお知らせできると思いますので、twitterやFB、このブログなど、ソーシャルメディアでの告知にご注目下さい。

本日はこの辺で。

本日のBGM: 星に願いを (綿内克幸; 2020年11月28日@三軒茶屋 Grapefruit Moon バージョン)

deceptively simple, but ...

しばらく更新できずにいました。
辛いニュースがいくつか飛び込んでくる中、まずは、この2ヶ月を生き延びた自分を褒めてあげたい。
「怒濤」でした…。

朝の日課の「英語ニュース140字紹介&詳解RT」も扱える数が減ってしまっていましたが、少しずつ持ち直してきているところです。

朝日CCのライティング講座も開講の部分は終了し、今は、提出された課題のFBをメールでしているところです。
巷の「英作文講座」とか、「ビジネス英文メール&プレゼンテーション」などでは触れられることのほぼない、「英文ライティングの基礎基本」は扱えたと思っています。受講者からは、「続編を」という声もありましたが、リクエストは私の方にではなく、「朝日カルチャーセンター新宿」の方へお願いします。


非常勤をしている某高校でも、所謂「2学期」から、担当するコマが一つ増え、その準備が思いの他大変でした。高3の入試対策演習ということで、問題の選定は過去問データを見ればまだ労力は減らせるのですが、解答・解説を全て自前で作るのは結構手間がかかります。「何もここまで…」というくらいきめ細かく、丁寧な解説を提供しておりますので、受講者は安心してくれていいとは思います。

さて、
ここで告知・宣伝です。
noteで配信している「有料記事」ですが、今最新の記事がこちらです。
「大関の生息域」番外編:大関による時制の遡上
note.com

「大関の助動詞 have 」の特集で番外編です。
時を担う「過去形」と 心を映す「過去形」
相を担う「大関」と 時を遡る「大関」
これまでの記事を「統一した主題でまとめ」横断的に整理してみました。

a. That accident could have been worse.
あの事故は、もっと酷いものになっていたかもしれない。
b. I’m really sorry to have kept you so long.
大変お待たせしてどうも済みません。
c. He’s proud of having been a successful athlete when young.
彼は若い頃卓越した運動選手だったことを誇りにしている。
d. Having known her personally, I was very saddened to know she killed herself.
彼女とは個人的に知り合いだったので、自死したと知ってとても辛かった。

のそれぞれで使われている「大関の have」を、まずは一つひとつ実感してもらうために、まず「英語の過去形」というものをしっかりとつかまえ、それを踏まえた上で、英語ということばが時系列を表すために、どのように「大関の have」を使いこなしているか、精選された実例を通して感じてもらいます。

他にも、以前、公開した有料記事を、あるテーマでまとめて、「お買い得」なマガジンを設定してみました。

「助動詞の番付表」 お買い得パック
note.com

大相撲の力士の序列を英語の助動詞の階層性に見立てた「枠組」です。
法助動詞 
完了形
進行形
受動態
に加えて、助動詞としてのdoまでの体系を実例重視で示しています。
「簡易版」と用例が共通していますが、個々の「助動詞」の用例の精選ぶりと的確な解説とで類書とは一線を画すでしょう。 価格設定はものすごくお買い得だと思います。

  • 助動詞の番付表(2020年簡易版)
  • 大関の活躍の場を追体験する
  • 関脇は懐が深い<be + -ingの世界>を学ぶ
  • 英語の「受け身表現」:小結の生息域
  • 助動詞の生息域と番付表の活用#1

の5本の記事をパックにしています。

「名詞は四角化で視覚化」ドリル お買い得パック
note.com

第1弾:その1-その7 第2弾:その8-その14 第3弾:その15-その20 に加えて、 用例が「第3弾」に一部共通していて解説もある「中級への入り口」 の4点セットに、「助動詞の番付表」の簡易版を加えての販売です。
マガジン初公開時に「付録」だった、「文と文の要素を識別するドリル」は、新たな「関係詞」関連の記事として、別売りで公開しています。あしからず。
文を作る要素としての「名詞句」にとことんこだわったドリルです。 基本的に、空所補充もなし、並べ替え完成もなし、ひたすら四角で囲んで実感するドリルです。 用例の精選が肝なので、このままお使いくださるのが一番かと。

  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル その1〜6まで
  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル 7-14
  • 「名詞は四角化で視覚化」ドリル 15-20
  • 名詞句の限定表現〜中級への入り口
  • 助動詞の番付表(2020年簡易版)

こちらのパックにも「助動詞の番付表(簡易版)」が含まれています。

『意味順』と「四角化」で作る英文法の見取り図 お買い得パック
note.com

田地野彰先生の開発した『意味順』というしなやかなOSを援用して、文型分類ではない、記号付けに終わらない、英文法の見取り図を作るための記事を集めました。それぞれの「意味順スロット」の中に名詞句が来る際に、ひとかたまりになる、つまり後置修飾で下線延長となるのか、それとも知覚動詞、使役動詞のように、下線は延長しないのか、が最初のうちはわかりにくいので、「見取り図」で確認してください。 「四角化」の例文と共通しているものもありますが、併せて読むことで理解が深まることでしょう。

  • 『意味順』スロットで確かめる英文法の見取り図(2020年7月修正三訂版)
  • ワニ使い動詞で整理するthat節とwh-節とhow節
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #1
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #2
  • 「知覚動詞」「使役動詞」って簡単に言うけれど…

入試素材文を活用して「つながり」と「まとまり」感覚を養う
note.com

「センター試験」の「不要文指摘」や、私大入試の「文整序段落完成」問題の素材文を活用して、英文の「つながり」と「まとまり」の感覚を養うための記事を集めました。 細かい解説はありません。素材の良さを噛みしめ、私の手書きノートの記号付けやコメントを活かしていただければと思います。
「名詞は四角化で視覚化」という記号付けは、実際の英文例の中でどのように行われているのか、を知る材料ともなることでしょうし、「私自身が、英文をどのように読み進めているのか」「その英文、英語表現、語義のどこに着目して解説しているのか」を知ることにもつながるでしょう。
センター試験型「不要文指摘」問題を読む #1

  • 「センター試験」「私大入試」素材文を読む:「つながり」「まとまり」感覚を身に付けよう!
  • 「センター試験」不要文選択問題のパラグラフを咀嚼する#1
  • 「センター試験」不要文選択問題のパラグラフを咀嚼する#2
  • 「センター試験」不要文指摘問題記号付け

名詞か?形容詞か?副詞か?その都度しみじみ味わうパック
note.com

名詞句の限定表現に習熟してきたら、次は文中での識別です。
とはいえ、「文型ありき」での後だしジャンケンではありません。
後置修飾なのか?使役動詞・知覚動詞での形合わせなのか? それとも分詞構文や付帯状況での形合わせなのか? 「強調構文」で語順が歪に見えたり、「足あと」の有無が分からず「ウム厶…」となったり。 でも、そういうものは、その都度「意味と形」をすり合わせて「しみじみ」味わいながら身に付けるしかないように思います。 そんなことを想定した教材です。 既に公開しているマガジンの他の「お買い得パック」の内容と重複しているものもありますので、購入の際には十分お気をつけください。

  • 『意味順』スロットで確かめる英文法の見取り図(2020年7月修正三訂版)
  • 後置修飾に習熟しよう(簡易版) #1
  • 「知覚動詞」「使役動詞」って簡単に言うけれど…
  • いわゆる「分詞構文」: 2020年10月版
  • いわゆる「強調構文」のお話

老婆心ながら、補足しておくと、これらの記事、マガジンには、ほとんど「練習問題」というのがないんですよ。私自身、問題を解くことで英語ができるようになった、という実感がほとんどないので、こればっかりは「生存者バイアス」で申し訳ないのですが、偽らざる心境というか信念、視座と言っていいでしょう。

このエントリー冒頭でも書きましたが、実際に「受験学年」の生徒や、受験生の指導をすることがありますが、四択にしろ、整序にしろ、誤文訂正にしろ、問題演習って、本当に好きじゃないんです。時に「ああ、良い問題だな」と思うものもありますが、その場合もたいていは、その問題の「素材としての英文テクスト」が良いから成立しているんですよ。

ということで、「問題演習」を謳う「教材」を扱わざるを得ないときにも、完成した英文に関する言語事実に関してはできる限り丁寧に説明するようにしています。最近は、教材に付属する解答解説が「見開き2ページの両面印刷で、個別シートのバラ納品」などというものが増えましたが、私の場合は、解説の殆どを自分で書き直して生徒に伝えています。入試過去問のデータは同じですから、「市販教材」と同じ問題を扱ったりもするのですが、最近では、この完成した英文の「解説」「和訳」が酷かったですね。

  • I’ve never met him but ( from what ) I've heard, he's supposed to be as charming as he is deceptive.

慶應・商の空所補充四択完成での出題です。正解は容易だけれど、特に he’s 以下の意味を市販教材や学校採択教材の解説でもまともに扱えていないものがあるのががががが…、という感じ。
この英文のポイントは三つほど。
1. 一般には「同等比較」と呼ばれるas A as Bの「肝」。
2. 形容詞deceptiveの語義の把握。もとになる動詞は deceive。
3. <be supposed to 原形>の原形がbe動詞となる場合の語義の知識。「一般に…だと思われている;…と目されている」。
≧ の気持ちを踏まえた上で、同じ尺度での二者の比較なら「勝るとも劣らない」で、類似の性質を同一物で比較するなら「だけではなく;に加えて」、相反するような性質を同一物で比較するなら、「補って余りあるような」という解釈をすることで、出口が見えることでしょう。

お手持ちの『過去問演習』本でこの問題が収録されていたら、その「和訳」や「解説」を見てみてくださいな。

本日はこの辺りで。

本日のBGM: やさしい悪魔 (キャンディーズ)
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「始まってしまったから…」

8月もいよいよ「夏も終わり…」への最終コーナーにいます。
昨日は久しぶりに雨が降りました。
「降ればなんとやら」で雷雨でしたけれど。

休み明けの高校の授業の準備をしているフリーランスの講師である私ですが、少し前に買ったまま読んでいなかったある本が気になっていたので、ちょっと本気を出して読んでみました。
で、愕然。ワニの口。憤りはなかなか収まらず、ツイッターで連投していました。

少し時間が経ち、頭と気持ちの整理ができましたので、こちらにまとめることにしました。

この本は、『現役本』ではありますが、これがこのまま広まったりすると困るので、ここで取り上げ問題点を指摘します。

その本とは、
『高校英語授業における文法指導を考える 「文法」を「教える」とは?』(アルク、2020年)

副題にあるように、「文法」を「教える」とはいえ、実際は「解説しているだけ」ではないのか?「教え込み」で「身に付いた」という勘違いが高校現場に強く根付いているのが問題では?
旧来型の高校の授業と著者グループの関わった中学/高校のような実践との違いは何か?

というような問題提起もなされています。
かねてより、著者の金谷憲氏のグループでは、「名詞句の限定表現」が指導から定着まで、どのような推移・経過を見せるのかリサーチをしてきましたが、この本でも、「授業」の「成果」としての「生徒の英語力」を測ための「テスト」を開発し、それを使って「文法力」の検証をしていることが書かれています。

調査結果の分析・考察で、とりわけ後置修飾を含む英文の理解度に大きな差があることが取り上げられています。 (p. 69)

ある高校では、高1段階で55%の理解だったものが、高2では85%の生徒が理解できている。別の高校では、高1の段階では34%、高2で52%、高3では54%の理解度でした。

では、これはどのような「テスト」によるものでしょうか?
「FMテスト」と呼ばれるものに、このような設問があります。

John opened the door Mary closed.
問題: ドアはどうなっていますか?
(a) 開いている
(b) 閉まっている
(c) わからない

この問題の正答を (a)に限るとすれば、その正答率が低いのは関係詞による後置修飾、この場合はいわゆる「接触節」の理解が乏しいことのみによるものであると言い切れるでしょうか?
私にはそれだけが原因・理由とは思えません。
関係詞の後置修飾(所謂接触節)の定着を診るのなら、この文のように、主節と形容詞節(接触節)のどちらも過去形というような文は避けるべきでしょう。時制が同じであることによって、どちらが時の上流かの判断に迷う可能性があるでしょうから。
時の上流から今へと順行するのではなく、ある過去の時点から、さらに時の上流へと逆行するので、過去完了で

  • John opened the door Mary had closed.

のように書かれていれば、「今ドアが閉まっている」という誤解は減るはずです。(もっとも、これを現行の学習指導要領で学んでいる中学校段階の生徒や、高校1年生段階でテストしても、過去完了形の理解度の低さによって、正答に至らない可能性があることは充分承知しています。)

関係詞で作られる形容詞節での過去完了は規範的な文法では義務的で、かなりの割合の英語使用者が、過去完了形を好むとされています。

まず、使用者の多い辞書から用例を引きましょう。

I lost the dictionary that my sister had bought for me the day before.
前日に姉に買ってもらった辞書をなくした。
The book I had lost turned up.
なくした本が出てきた。  (以上『ジーニアス英和』大修館書店)

次に、使用者の多い文法書から引きます。

After a few weeks’ trial he was shifted to another department, because he was not up to the work that had been given to him.
(数週間試しに働いてみた結果、与えられた仕事は荷が重すぎたので他の部門に移された)
『英文法解説』(改訂三版、金子書房)

関係節の時制の解釈で、

  • 前方転移
  • 同時
  • 後方転移

の読みの可能性があることは良く知られていると思いますが、ここでは深入りしません。

詳しくは、
千葉修司『英語の時制の一致 時制の一致と「仮定法の伝播」』(開拓社、2018年)
長原幸雄「過去完了の代用としての過去形について」(英学論考 (26)、1995年、東京学芸大学レポジトリ)
Ogihara, Toshiyuki (1996) , Tense, Attitude, and Scope, Springer
を参照されたし。

この問題の正答率が低いのは、「接触節」の理解が乏しいことのみによるものではなく、「時制」「相」の理解が乏しい、または未成熟であることも起因しているのではないか、という「素朴な疑問」がこのテストの作成者、リサーチを支援する研究者の側にありさえすれば、今指摘した「過去完了」での修正以外に、例えば、次のような英文を使うことも可能だったはずです。

  • John has opened the door Mary closed.
  • John was opening the door Mary was closing.

同じ「ドアの状態」を尋ねるにしても、前者であれば「開いている」と答える者の比率は上がり、後者であれば、「わからない」という選択肢の意味が出てくると思うのです。


しかしながら、問題の根はもっと深いところにあります。
もし、上述の「ドア」の英文が正しいとして、「メアリーの閉じたドアをジョンが開けた」という文は、いつ、誰が誰に対して、何のために、どのように伝えるものなのでしょうか?
この書、そしてこれが依拠する調査・実践では、「英語を使う」ことで「文法」も身に付くということを盛んに強調しているのに、その「文法」が身に付いているかを測るテストがこれでいいのでしょうか?

高校生レベルではより詳細な調査が必要、として開発された「テスト」があり、「KBテスト」と呼ばれています(「高校生用のビリーズテスト」とでもいうのでしょうか)。
後ほど、細かく検討しますが、そのテストのうちの一つの問題がこちらです。

(   )の語を加えて文を完成させるとき、もっとも適切な箇所はどこか?
(18) The ① little ② girl ③ who ④ was ⑤ eating ⑥ candies ⑦. (jumped)

正答は、④か⑦だそうです。
では、この (18) で完成する文はどういう意味になるのでしょう?

girlは定冠詞theで限定。
jumpedは単純過去形。
was eatingは過去進行形。
candiesは無冠詞複数形。

「意味が分からない」と正答できないと思うのです。
でも、「意味がよくわからない」のは、後置修飾への習熟が不十分だから、という理由だけではないように思います。

以下、このKBテストで、「正答」として完成する 33 ある英文のうち、不自然なものを取り上げてコメントします。

(3) ? The tall man liked by everyone is Koji.
前置の形容詞が既についている名詞でも、後置修飾は可能だ、ということを分からせたいのか?何かのCMの悪影響だろうが、the そのものの「指示性」は弱いのです。「同定」が主たる機能。tallは尺度のある形容詞。原級のままだと主観的形容。この二つの要素だけで、他のman (またはwoman) との弁別・識別を図るのには無理がある。
like が受け身で容認されるのは、「不特定多数」による場合だが、中学や高校段階でどれだけの学習者が、likeという語の特性・制約をそこまで理解しているか?

(4) ? The girl that you invited to the party cooked.
cookedという過去形はどういう意味で用いられているのか?「調理した」?
The girl that you invited to your birthday party was [turned out to be] a very good cook.
なら分かりますよ。
「みな驚きました。それが後のカリスマ家政婦シマさんだったんですけどね」とかね。

(5) ? Which small clock is yours?
その他にも複数の小さな時計がある中で、直接話している相手に「小さい」という情報を含めて確認してもらわなければならない状況がイメージできません。
「『ミニ時計』自慢大会」に出品したけれど、ブースとかショーケースの中で他の出品者のものと混ざって分からなくなった?だったら、「小さな時計」という旧情報は言う必要がないのだから、Which is yours? で十分では?

(8) ? The student that reads many books likes English.
関係代名詞による修飾である必然性はどこに?「たくさんの本を普段から読むその生徒」という制限的な関係詞で何を表しているかが不明。何かの調査結果をレポートしている?
次のような文ならまだ分かります。でも、中学生のテストには不向きでしょうね。
The student, who reads a lot (of books), likes English the best of all school subjects.
「その生徒は、普段から読書家なんですけど、英語という科目が一番好きなんです。」

(9) ? The man eating in the restaurant is popular.
レストランには外に何をしている者がいるのだろうか?「飲むだけの人」?
man ではなくwoman? 繰り返すが、the そのものの指示性は弱いのである。popular は liked by a large number of peopleで不特定多数の人に好かれていることを表す形容詞。 「…を…している男は人気者です」って、どういう情報価値を持った文なの?
たとえば、「このレストランで、男性が最も多く注文するメニューが…です。」ならまだ「主題化」して、その答えだから、名詞一語で十分ですけど、「…を食べているあの男性が、若者の間で多大な人気がある声優です」とか、主語の重みと釣り合うだけの「意味」の濃さが必要では?

(13) ? The old painting of my brother is in the box.
後半の「テスト」では、二つの解を示すものがあるのに、なぜ、この13では、
The old painting is of my brother in the box. にならないのでしょう?
いや、この文でも、「この古い絵画は、箱に入っている私の弟を描いたものです」といって、齢百歳を越えようかという老人は、死産となった弟のミイラが入った箱を示した。」などというスペシャルな場面はあり得ますよ?

(14) ? That blue music player is popular.
(9) と同じ疑問ですが、なぜ、この文だけthe ではなく that なのでしょうか?
また、ひょっとすると、playerは人なのでしょうか?「ブルーマン」?

(15) ? The girl that the student taught studied very hard.
the studentの正体が分からないと、「生徒/学生が女の子に教える」の意味が漠然としすぎていてよく分かりません。そもそも「何を教えているのか」も不明。
大学生がお受験の小学生の家庭教師をしている場面?だったらそう書くべきでしょう。

(17) ? The big park in our city is beautiful.
私たちの市に大きな公園はいくつあるのでしょうか?bigは原級のままでいいのでしょうか?次の例と比べると、この (17) がいかに不自然かが分かろうというものです。
The cherry blossoms in Yoshino are most beautiful.
「桜は吉野にとどめを刺す」(O-LEX和英より)

(18) ? The little girl who jumped was eating candies.
  基準時制が過去。jumpedは単純過去形で副詞句が何もない=自動詞。どういう動作なのか、絵が描けません。「その跳ぶ少女」って?そして、過去進行形で「線」を表すwas eating candies の「お菓子;アメ」が「無冠詞複数」。「アメを複数頬張っている」?「アメを一個食べるごとにひと跳びした」?どちらにせよ、何を跳び越すのか言わないと。
あの〜、ところで、「過去進行形」って結構制約が多いって、分かってますか?
? The little girl who was eating candies jumped. こちらも同じ。

(20) ? The cute girl l pushed met the man.
  私が押したのが、時のより上流で、その男に会ったのは、それよりも下流だから、両方過去形でOKですけど、「私が強く押したその幼くか弱そうな女の子はその男に会った。」ってどういう意味なんですか?meet を「接触する」という意味で使ってる?
? The cute girl l met pushed the man
「私が初めて会ったそのか弱き乙女はその男を押した」。このmeetは初対面?「押した」ってなぜその男を押すの?まさか、このpushはスラングの「殺る」?

(22) ? The old man who(whom) l met called.
meetの意味は? callが自動詞で単純過去形って、どういう意味?いや、これ、目的語がないですから。その人と私は会ってたんですよね?誰かと会っている時にcall する、ってどのような行為?「電話をかけた」?「叫んだ」?

(23) ? Which person is your teacher?
teacherって普通は人ですよね?選択疑問文でも、疑問詞が人の場合にはwhichではなくwhoを使うのがより一般的だと思います。
ということは、敢えて「人」という情報を前面に出したい?
AIが教師・教育者として完全に定着した未来の世界で、人を敢えて選んで教育を受けている珍しい人の話?

(24) ? The large room in my house is clean.    (17) と同じ不自然さです。

(25) ? The boy who laughs is talking with Nancy a lot.
? The boy who is talking with Nancy laughs a lot.
どちらも不自然なのですが、上の例の方がより不自然ですね。laughsの現在形は「恒常性」を強く感じさせますが、どういう意味でしょう?「お笑い君」?「笑い少年」?「いつもは笑う人」?talk にしろ、laughにしろ、動詞+a lotなら可ですが、talk with を進行形でしかも、a lot で「計量化」するというのは、already の気持ち?
「いつもは笑うその少年が、今、ナンシーとたっぷりと話しこんでいるところです」という場面?テストされた中高生は、そういう理解に達している?
正解を得たとされた高校生に、どんな意味だと思って、その英文にしたのか尋ねてみたのかしら。

(26) ? The girl reading a book is very cute.
「とある一冊の本を読んでいるその少女はとても cuteです」ってどういう意味?
かろうじて許容した(2) This new red sweater is cute. の文でも、先程ダメ出しをした (20) の文でも、cute という形容詞が使われているのだが、いったいどのような語義だと思って「テスト」しているのか? 本来cuteは、生き物に用いる場合は、赤ちゃんや子犬、小猫など「幼い、か弱い」愛らしさを表すもの。この少女は普通は本など読めるはずもない、2歳くらいなので「幼くて可愛らしさ倍増」という感じなのか?
cuteが「未熟さ」のイメージかと思いきや、ところが、米語法では、人に用いた場合に、「性的魅力のある;セクシーな」という意味を持つ場合と、「抜け目のない;ずる賢い」というネガティブな意味を持つ場合がある。
このような後置修飾で、その少女のどんな特性・性質を付加したり、そこにいるその少女以外のどんな少女との識別を図っているのか?

(27) ? The famous singer everybody knows sang.
これは酷い。「歌った」という情報に何の価値があるのか?「有名歌手」なら歌うでしょ。歌手なんだから。「国民的歌手だから、もったいぶって歌わない」の? それだって、「5年ぶりで、公の場で生歌を披露した」とか、スポーツのイベントでの「国家独唱」とか、一文であれ、文脈は存在しますから。テストで「出来不出来」を決めるんだから、もっとまじめに例文作りなさいよ。

(29) ? The young man that smiled was swimming.
? The young man that was swimming smiled.
どういう状況なの?過去進行形って、大変なの分かってる?
点と線?線と線?どちらが点?
「その若い微笑み男は泳いでいた」?「水泳中の若い男は笑みを浮かべた」?
私だったら、息継ぎできないけどね…。
私にイメージできる状況とか場面って、こういうのですよ。
「その若い男性スイマーは、厳しい練習中も、笑みを絶やさなかった」

(30) ? Which baseball team is strong in Japan?
そもそも、この英文を日本語に訳したらどうなるの?
「日本ではどの野球チームが強いのですか?」ですか?
これ、「野球チーム」と「日本で」というのが乱暴すぎるでしょ?
プロ野球で何チームあるの?社会人、大学、高校…それらを含めたら全部で何チーム?
昔、前世紀ですね、PL学園の全盛期に、「今のPLはプロとやっても勝てる」とかいわれてましたよね?で、strong って原級のままでいいの?どこかのチームが一強でその他は全部弱いの?少なくとも限定とか、比較とかにならないと、何も言ってないのと同じでは?

(32) ? The watch broken yesterday is Mika's.
どういう意味ですか?
「昨日壊(さ)れたその腕時計はミカのものです」ですか?
過去分詞は、「完了由来」で「…し終わった」、「受動態由来」で「…された;…してある」を表しますが、本来分詞って、時制を手放すものなんですよ。にもかかわらず「特定/限定の過去の日時」でyesterday。新聞の見出しで、be 動詞の省略でもないと不自然ですね。
「受け身にすることで、動作主を曖昧にして、責任も曖昧にする」というよう状況・場面で考えるとすれば、
The watch broken in an accident yesterday is Mika’s. She said that is a keepsake from her grandmother. 昨日の事故で壊れた腕時計はミカのものです。お祖母様の形見だそうです。
のように、事故の修飾語句としてyesterdayを使うなら可能ですかね。

疲れました。ホントに。
KBテスト33問のうち、3分の2弱にあたる20問に「?」を付けました。
この「テスト」そのものの機械的な作業を抜きにしても、個人的には、これらの不自然な(「酷い」と言い換えたいものもある)「英文」を学習者に作らせるのは耐えがたいのです。
完成した、つまり正答だとみなされる「英文」がこのようなものなのに、それで「文法」の理解度が本当に測れるのでしょうか?

  • 単文・短文の空所を補充することで、簡便に名詞句の限定表現の理解度を測る

というコンセプトやリサーチの基礎デザインは結構です。
ただ、中学段階で学んだことの定着をその後に「診たい」のなら、テスト設計そのものを吟味精査すべきだと言っているのです。
3年前に開発したもので調査したものを、3年後に再検証することに意味があるからといって、「昔これでテストしたから」と問題のある同じテストを使い続けるのでは困ると思うのです。

本書の「第5章」 (pp. 164-200) まで30頁以上を割いて、調査結果の考察がなされています。

調査結果: ① 中2までの文法事項は、活動中心の授業であまり解説しなかったとしても、中学校卒業時までに身に付く(インタビュー、KBテストその他)。 (p.164)

とあるのですが、3分の2弱が、意味のよく分からない文で構成されている「KBテスト」で、いったい何が分かるのでしょうか?

私が担当した第4章のタイトルにSLA研究で文法指導について「分かっていること」と「まだ分からないこと」に加えて「分かり得ないこと」としたのはそういう意図です。SLAのような科学的研究と実践の付き合い方について今回は考えさせられました。 (p.172)

SLAとか、科学的研究というかなり前の段階の、「英語そのもの」に関わる不備が、この「KBテスト」にはあると思うのですが、それは改善されないのでしょうか?ひょっとして、このままで英文として問題がないと思っているのでしょうか?

使えるようにするのは音読などの練習(パイ生地)部分だけではうまくいかず、教科書で扱っている会話やストーリーに関することについて、先生が生徒と英語でやりとりするクリームの部分もなければならない。音読などの練習(パイ)を何回かしたら、先生が教材と生徒の生活との接点を付けるようなやりとり(クリーム)が入って、また練習(パイ)という、まるでミルフィーユのように何段にも重ねられることが大切ということです。(p.179)

お洒落な比喩は結構ですが、なぜ「文法の習得」のプロセスモデルが「ミルフィーユ」というお菓子の構造や製造法で喩えられるのでしょう?「食べ物」を食べる比喩ではなく、作る比喩であることが重要なのでしょうか?では、「バームクーヘン」の構造や作り方とは何が違うのでしょうか?
食べ物ではなく、「和紙を漉く」プロセスの比喩では、文法習得のプロセスモデルとして何が漏れてしまうのでしょうか?

よく分かりません。

そんなことよりも、「KBテスト」を早く修正して、その上でリサーチをやり直してくれませんかね?

私は教師として駆け出しの90年代の初めから、金谷先生の諸々のプロジェクトは見続けてきて、随分参考にさせてもらってきました。
しかしながら、今回の「KBテスト」は全くもっていただけません。
これがパイロットであれ、事前事後であれ、文法事項の「理解度」を測る「テスト」になってしまうとすれば、その結果に乗っかる、実践にしろ、考察にしろ、それらはもう、研究成果の体を成していないのではないかと思います。5Rシステムにしろ、Tモデルにしろ、実践そのものは結構なのですが、その「基礎」が揺らいでは価値は薄まります。早急に「手当て」が必要でしょう。

仕切り直すなら早い方がいい。

本日のBGM: 優しい雨 (小泉今日子)

小泉今日子 優しい雨

The show must go on!

通常であれば、もう夏休み。
公教育現場に再び関わるようにはなりましたが、「学期」「授業」「評価」のあり方も、それぞれそれなり。それに加えて、COVID-19対策での変則的なスケジュール。四捨五入して60歳になろうかという私も、毎度毎度、新鮮な体験をさせてもらっています。

前回の記事で書いた、

自分では決して選ぶことはないであろう教材を横並びで教えるというのも、久しぶりの経験で、受け入れられることと、我慢できないこととがより鮮明になったようにも思います。

の延長線上で、私のオリジナル教材を世に問うています。

note のページで有料記事として小売りをしていますので、「自分の興味関心の高い項目を選んで」とか、「一定の体系が見渡せるように関連記事をまとめて」とか、それぞれ、それなりのアプローチが可能だと思います。

番付表関連を見渡せるよう、こちらで大まかな説明をしておきます。リンク先は note の販売ページになります。

助動詞の番付表(2020年簡易版)
横綱から小結までの概観ができる(簡易版)
横綱(法助動詞)
大関(完了形)
関脇(進行形)
小結(受け身)
のそれぞれの助動詞で、また新たな記事を書いていますが、全体を早く見渡したいという場合はこちらをまず最初にどうぞ。
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助動詞の生息域と番付表の活用#1
横綱と大関、大関と関脇、関脇と小結 など、番付表の組み合わせが実際にどのような場面で使われるのか、を例文と解説で示したもの。note.com


助動詞の生息域と番付表の活用#2 (慣用表現)
横綱の助動詞の「慣用表現」を取り上げ、巷の「トンデモ」な解説や、現代英語に当てはまらない用例を排して、「生息域」を実感しやすいように提示したものです。note.com


大関の活躍の場を追体験する
完了「相」というのは、なかなかに奥が深いのですが、「肝」を押さえることが重要です。
「現在完了」を中心に取り上げていますが、have been -ing の「肝」。
had + -enの実感など、用法分類でごまかさず、英語史的説明に逃げず、書き換えなどの練習問題を一切使わず、徹頭徹尾、実例を通じて学ぶ教材です。
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関脇は懐が深い
いわゆる「進行形(進行相)」です。この記事が一番苦労しました。
先行研究を踏まえ、動詞の「意味特性」を精査吟味した上で、敢えて、一覧表などの形で「動詞の分類」を示すことはしませんでした。
一つ一つの実例を「生き直す」ことこそが、「関脇感覚」を身に付ける最短コースだと思います。
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英語の「受け身表現」:小結の生息域
受動態、いわゆる「受け身」を扱っています。
何の目的もなく「受け身」の姿勢ではいけない、ということは分かっていますが、能動態との書き換え問題は一切扱っていません。
とにかく、英語の「受け身」っていう生き物は、どこに行くと見つかるのか?と自問自答しながら書いた記事です。
とかく、他の学習者と差がつく難しい問題を解きたがる人が多いのですが、難しい問題を解いた数量の分、英語ができるようになるわけではなりません。
収録例文の難易度ではなく、英語の運動性能を身に付ける上でのクオリティは高いと思います。
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ここまでの「三役」以上の助動詞は有料記事ですが、平幕の do (does / did) は無料で公開しています。(大人の事情です)
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他との競争ではなく、「英語」ということばの森を、虫の足で歩み、虫の目で見ることから始める、またはやり直すことが大事だと思っています。
ここで紹介した以外にも、まだまだ優良な記事がありますので、是非ご覧下さい。
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本日は告知で終了です。

本日のBGM: 蜃気楼 (萩原健一)