一度見えるようになると次に出会ったときに「それ」とわかる眼

先日のオンラインでの「文字指導/handwriting指導法」のセミナーの受講者からのフィードバックを追加します。
前回、前々回のエントリーもお読みください。

tmrowing.hatenablog.com

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最初は、以前、とある文部科学省委託事業「中学校・高等学校における英語教育の抜本的改善のための指導方法等に関する実証研究」の外部委員でご一緒したこともある柳田綾先生から。

昨日3月20日のセミナーでは大変勉強になりました。また、資料もありがとうございます。
 私は長年高校で勤めていましたので,文字指導をきちんと行ったこともありませんでしたし,意識したこともありませんでした。非常勤で「小学校英語科教育法」を担当することになったので、文字指導についてもっと勉強したいと思い受講させていただきました。
 松井先生がわかりやすく例や生徒さんの実際の文字を見せてくださったことで,文字を写すことや書くこと,音と文字の違いで英語学習に困難を感じる生徒が多いことがよく理解ができました。また,実際に自分が文字を書くことによって,意外にまっすぐ綺麗に文字を書くことが難しいこと,利き手でない手で文字を書くことが難しいということも実感することができました。また,松井先生の豊富な知識と教養に大変感銘を受けました。ユーモアあるコメントも大変楽しかったです。3時間があっという間に終わりました。
生徒によって個人差はあり、勤めている学校にもよるとは思いますが,小中高の校種で文字指導を最低限どこまで押さえておくべきかのリストのようなものがあるとありがたいと思いました。
 第二弾のセミナーが開催されるのであれば,またぜひ参加したいです。本当にありがとうございました。

柳田先生ご指摘の「文字指導を最低限どこまで押さえておくべきかのリスト」は、発達段階・習熟度と併せて考えなければいけないことで、私の今後の課題とさせてください。
次回、「中級編」でそのあたりも参加者と情報・意見の交換ができればと思います。

広島で「きらぼし学舎」を主宰されている植木希恵先生から。

時々、クスッと笑いのある、でも非常に充実した重い内容の講座でした。
特別支援を受けている子どもさん、勉強でつまづき自分に自信がないからやりたくない、そんな子どもさんの個別指導をしています。
今まで意識したことのなかった文字指導ですが、確かに!!とうなづけることがたくさんありました。
特に分岐点を意識してみるとどうして混同してしまっていたのかがよくわかりました。
早速、4月からアルファベットに入る子どもさんがいるので最初の7種類の練習から入ります。(学校での学習を邪魔せずに先駆けてやるにはそこが良いと判断しました)
また、山下先生のフォニックスも学びましたので、文字を書くという場面でより意識して観察して見せる、書くというのをやりたいと思います。
2回しか書かないというのも非常にうなづけました。
ワーキングメモリの容量がすぐにいっぱいになってしまう子どもたちだからこそ、2回を集中して体感覚として感じる、そして時間を空けて復習する、というのがとても理にかなっていると感じました。私こそ、また時間を空けて先生の講座を受講したいと思います。
ありがとうございました。

植木先生、ありがとうございました。学習者の「困り感」への対処法の選択肢が増えていれば何よりです。


続いては、私立の高等学校で非常勤講師をしていらっしゃる山田奈津岐先生から。

昨日の講座を受講しまして、感じたことが3つあります。
一つ目は、知ることの大切さ、
二つ目は、書くことの難しさ、
三つ目は、変えていくことの必要性、です。

一つ目の、知ることの大切さにつきまして、昨日の講座の中にたくさんの「知る」がありました。「フォント」比較の着眼点プリントに関しまして、意味がわかるようになりました。これまで、「目指せ!英語のユニバーサルデザイン授業」の58-59ページを読んでいて、「そういう違いがあるのか~」とぼんやり頭で理解していたものが、実際に先生の説明を聞きながら比較していくことで、文字の見え方が変わりました。教員をしている中で、文法や長文読解の方法について学びを深めてきていましたが、こういったフォントについての知識は、まさに先生のおっしゃるとおり、教職課程にある学生すべてに教えていなければならないと強く感じました。実際に自分自身を振り返ると、教育実習の時に、大文字のWの真ん中の頂が低いことを注意されたことがある程度です。また、思い出せば中学生の頃、保健カードの記録か何かで「体重○kg」の飾りのついたgが、英語のgと同じものだと認識できなかったことがありましたが、そんな自分が生徒だったときの気持ちは忘れてしまっていました。gに対しての混乱はみんな通ってきた道だと思います。それが、フォントが原因だということに気づいたのは、先生のご執筆、本講座からです。

二つ目の、書くことの難しさにつきまして、ワークシートに実際に書くことで、「書く」ことにどのようなモータースキルが必要か実感できました。ストロークパターンの練習は、大人でも簡単ではありませんでした。この練習なくして、生徒の文字のことを言えないなと思いました。私も高校で教えていますが、次年度の4月はここから入ろうと思います。また、最初に勤務した岐阜の私立高校では、中一で入学する前の課題で「ペンマンシップ」が課されていたと記憶しています。その内容を、中一で教える私自身が確認していなかったことは、なんて怠慢なことなんだろうと、今大いに反省しています。生徒の文字でwの真ん中が交差してしまっているものを見たことがあります。これは、一画のwを教えれば、交差しなくなるという理解でよろしいでしょうか。交差するwを書く生徒は、4画のwを習ってきているのかもしれないということも、今ようやく思い至りました。

三つ目の、変えていくことの必要性につきまして、早速講座内でとるメモの文字から、変えていく意識をし始めました。それだけでも、自分自身の文字が読みやすくなりました。先生のおっしゃるとおり、unlearn→relearnは簡単ではないなと感じました。書いている文字はまだまだ意識をしなければ、今までの書き方に戻ってしまいます。高校生の生徒にとっても、今まで書けていなかった生徒には大きな変化だと思います。自分自身の文字が読めるようになる喜びとともに、読める文字を書く指導をしていきたいです。

現在教えている生徒たちは、中学で英語に躓いてきた生徒が多く、単語を読めない生徒がたくさんいます。easyが読めず、隣に書いてある「簡単な」という日本語を見て、それがいわゆる「イージー」だと気づく、という理解の手順をたどっている生徒がいます。先生の「分割&縦書きドリル」は、そんな本校の生徒たちにとっても非常に有益だと感じました。これもすぐに取り入れていきます。

山下桂世子先生のコメントにもありましたが、私も講座第二弾にぜひ参加したいです。誰でも「英語コーチ」を名乗れるこの時代に、本当の学びを続けていくことの大切を改めて感じました。 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

山田先生、ありがとうございます。
ご質問の、wの「交差」の件。これは結構悩ましいのです。山田先生への回答を若干修正してこちらでもお示しします。

wの交差の件ですが、Wは、とりわけ大文字であれば、真ん中が交差する「フォント」は多く存在します。これは、UとVがかつては同じ仲間だったこと、ダブルUの「ダブル」が「並べる〜重ねる」で扱われ方に温度差があるところからも、あながちおかしいとも言えないものなのですが、手書きの場合は、交差しないように書くことが「通例」かと思います。そこで問題になるのが、文字の大きさです。

ストロークパターンの7番目のドリル(※注:これは、セミナー受講者にのみに分かる情報です)でコントロールできるようになった児童生徒(再入門の中高生より上の学習者でも)は、小文字は一筆書きで書けると思われますが、大文字の大きさには配慮が必要でしょう。

ニュージーランドの「並行線を先に」というのは、交点/接点で「はみ出さずに書くこと」が、英語を母語/生活言語として学ぶ子どもにとっても「難しい」ものであることを教えてくれるものだと思っています。スライドで「大文字のY」の難しさも示しましたが、屈曲点で止まるような線を新たに引く、別の線の末端に屈曲点をつくって新たな線を引く、というのは、結構難易度の高いスキルです。

本日ご紹介する最後の方は、畏友、有嶋先生。
有嶋先生ご自身のブログ arishima info でレポートしてくれています。
こちらのリンクから是非!

arishima.hatenadiary.jp

有嶋先生、ありがとうございます。リフレーミングを実感するリフレクション!流石です。
であれば、もう次からは見えますね。
第二弾の方は、長い目でお待ちいただければ、と思います。

本日はこの辺で。

本日のBGM: ユリイカ (サカナクション)