「ブレるに注目したらあかんで。ブレないように、になるやろ、次から。」

本日のタイトルは武道家の日野晃さんのことば。

詳しくはこちらの動画を。

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私の本業であるロウイングのコーチングにも当てはまることですが、「…しないように」「…にならないように」という目標設定はたいていうまくいかないものです。


さて、4月25日に続いて、5月9日の「文字指導/handwriting指導法セミナー」が終了しました。
今回は、不徳の致すところで時間のマネジメントがうまくいかずに、「あの曲」を流すことができませんでした。謹んでお詫びいたします。
それでも、参加者の皆さんからは、肯定的なフィードバックが寄せられていますので、いくつか紹介したいと思います。

トップバッターは、私も著作から色々と学ばせていただいている、倉林先生(@Kurab_H)から。

松井先生
本日はありがとうございました。感想というか気づきがいくつかありましたので、お送りいたします。

本日の松井先生の講座を受講して
5点の気づきがありました。
(1)指導する側が文字・フォントに意識を向けることで、学習者を惑わすことなく英語の学びの場に連れてくることができることがわかった。英語が苦手だという学習者は、その理由の一つに「文字の識別が難しい」と感じている可能性があるということを常に意識しなければならないということがわかった。そして「どのようなところで識別しているのか」「どこで識別できなくなるポイントがあるのか」ということを実際のフォントの解説を聞いて、フォントのバランス感覚がわかった。
(2)教員養成に携わる際に、文字指導についてきちんと扱うことができなかったことを反省しつつ、明日からの授業に活かせるヒントがいくつもあった。まずは、自分自身の文字を見直し、それから学生たちに指導をしていこうと思う。同時に、利き手の違いにより筆順を変えても良いという指導を教員がしてあげることにより、生徒、学生のストレスはかなり軽減されるはずだと思った。
(3)かつて高校で教えていたときにaを活字体のaを一筆で書く生徒が多く違和感を感じつつ直してあげることができなかったので、今後は「なにが正しく、何が誤っている」のかを指導できるようにしたい。
(4)音声と文字指導の結びつけ方、どうして今まで気が付かなかったのだろうと後悔しました。かつて中学で教壇に立っていたときは、「単語練習」を繰り返しさせていた。「やらせていれば大丈夫だろう」勝手な思い込みでした。
(5)松井先生の講義、程よい「間」というか、大切なところに入る直前の「ため」があるので聞くときに意識を向けやすくなった。これは情報の提示の仕方として見習いたい。

ちなみに、文字の練習のときはカリグラフィー用の万年筆で練習していました。文字の「間隔」という「感覚」が実感できました。


続いては、英語教室を開かれている谷口先生から。

一つひとつ丁寧にご説明いただき、また質問等にもお答えいただき感謝いたします。
ワークショップを受講し、目から鱗だらけでしたが、それにもまして自分があまりにもライティング指導についてしらないまま指導をしてきたことへの罪悪感を感じました。大学での教職、講義、研究ではもちろんのこと、国内外で受けてきた様々な英語教授法や学部の講義等でも学ぶ機会はなかったですし、正直ここまで細かい意識すらしたことがありませんでした。
子どもたちがなぜうまく書けないのだろう?なぜこうなるのか?を考えながらもひたすら4線に形をうまく書く書き方を教え続けてきました。

まず、自分自身のライティング、板書を注意し、自分の癖を知る。と同時に子どもたちの鉛筆の持ちかた、姿勢、紙やノートの動かし方から意識し指導していきたいと思います。

以下松井先生の講義へのフィードバックというより、私の学びと気づきをかかせていただきます。

補助線について
 補助線はあくまでも補助のためであること、補助の上にいかにきれいに書くか、書かせるかではなく文字が書けるようになるためにどう補助していくのがよいかを考えサポートすることが必要

文字の書き順と形
 生徒が書きやすい書き順、うまく形どれる書き順を指導することが大切。
 Yの書き方についての指導、目から鱗でした。
 書き順が決まってないからただ個々書きやすく書ける方法で書けばよい、と考えていましたが、個々の子どもの癖や性質を把握しそれに基づいた書きやすい、形づくり安い書き方を提案、指導することが大切。

 文字の形に関しても均等に、きれいに書くよりもむしろバランスを考えて書くことが必要

fine motor control の練習
ワークシートを使用して実際に自分自身でワークをできたこと、また昨日は小学1年の息子が隣にいたため、
 実際に息子も一緒にワークに取り組み子どものワークシートをチェックすることができたためよく理解できました。

 また何度も文字を書かせることの難点、それよりも順を追って、ていねいに一文字書くことをくりかえすことの重要性については目から鱗でした。さっそくクラスで取り入れていきたいと思います。

フォントについて
 大文字より長い小文字があること、分岐点や太さなどにより学習者、読み手によりわかりやすく、みやすいフォントを選ぶことが大切

視写について
 ある程度文字が書けるようになると、生徒自身も単語や文章を書きたがり、つい課題として単語の書き写し等をさせていることがありましたが、その前段階で十分に文字と音韻認識を学習してから順を踏んで行うことの大切さを理解しました。
ワークショップで学ばせていただいてことを一つひとつ取り入れながら、今後の指導に生かしていきたいです。またもし更に学ばせていただける機会があるのであれば、ぜひまた受講させていただきたいです。
ありがとうございました。

その他の受講者の方の声を続けます。

私は高校で勤務しておりますので、高校のカリキュラムとして英語の文字指導をすることはほとんどありません。
そのため、今回のセミナーも、最初の動機としては、自分の子供に文字を教える時期が来たときの参考にしよう、とか、
たまにいるbとdを間違える生徒の指導の参考になるかもしれない、というくらいの関心で受講を申し込みました。

しかし、先生のお話を聞くにつれ、予想していた以上の文字指導の奥の深さと射程の広さに関心を惹かれ、
子供や生徒のためという目的意識は後退し、文字指導にまつわる先人や先生方の取り組み自体に感動を覚えていました。
(もちろん目的意識も忘れてはいませんが…。)
私自身は仏文学を専攻していたために、大学では触れることのなかった世界でした。
英語教育を専門に学んだ方なら大学で必ずやるような内容なのかと思いきや、他の受講者の方々の反応を見ると、
どうも必ずしもそうではなさそうなので驚いています。

先生のお話で、微妙なdescenderの形や太さの違いや、分岐点の位置の違いに込められた意図を知り、フォントを見る目が以前とは全く変わりました。
大文字のYは発達段階に応じて様々な書き順・書き方があってよいというお話や、右利き・左利きで筆順を変えるとよいというお話も目から鱗でした。
これまでディスレクシア傾向の生徒にもおそらく接していたはずで、そのような生徒に対していかに配慮のない板書をしてきたかを考えると、非常に申し訳なく思います。
また、文字の形に着目して類型化し、ワークシートでまずは文字そのものではなく形の練習をするという方法も、考えたこともない発想であり、非常に勉強になりました。
他ではほとんど聞いたことのない話であり、受講して良かったと思います。

まずはgのdescenderをループしないように書く練習をしつつ、教わったことを今度の生徒への指導に役立てていきます。
あらためて、本当にありがとうございました。

こちらの方の声や、次の方の声でもわかるように、小学校、中学校段階の指導者だけでなく、高等学校以上の段階の指導者にも多くの「気づき」があるセミナーだと思っています。

日曜日のセミナーではたくさんのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
 まず、このセミナーを終えて、以前は見ることの出来なかったものを見ることが多少なりともできるようになったと感じております。そもそも識別しやすい文字とは何か、そのような文字を手で書くに至るための発達順序など、新しい視座を得ることが出来たセミナーでした。もちろんhandwriting指導の全てを分かったつもりではおりませんが、handwriting指導のきっかけを与えていただいたことに感謝しております。
 それと同時に、今まで見えていなかったものを見ることができるようになり、自身が生徒にどれほど惨いことをしていたのか、また、しているのかということに気付きました。今まで、生徒の字をきれいだと思ったり、汚いと思ったりしたことはありましたが、その美醜というか識別のしやすさは、文字列のどのような点から来るのかということに考えが及んだことはありませんでした。同じ職場の教員とテスト採点時に「この字は n に見えますか? h に見えますか?」という話をしたことはあっても、その生徒に文字を手で書く指導をしたことはありませんでした。丁寧に文字を書くとはどういうことかを自身が知らずして、 「丁寧に書きなさい。」という指導をしていたことを申し訳なく思います。
 昨年まで教えていた生徒にアルファベットがうまく書けない生徒がいました。文字の大きさがばらばらになり、左右に転び、また、かなり多くのスペルミスをする生徒でした。そのような生徒に何か配慮をせねばならないと思いつつもどうすればよいのか分からず、毎週のように課される単語テストで低い点数をとらせてしまっていました。その生徒にも本当に申し訳なく思います。知識があれば全てを解決できていたとは思いませんが、何かしらの配慮ができていたのではないかと思います。
 いまこのメールを書いている机の上にも生徒が書いた提出物があります。注意してみると、n,h,m に pen lift が見られ、一筆で書いていない生徒や、 s の最後に巨大なフックがついてしまっている生徒がいます。少しずつ色々な生徒をみていこうと思います。矯正はできなくとも少しでも良い文字が書けるよう改善のための手段を考えていきます。本当にありがとうございました。

新たな気づきでの自責の念、自らの知識をunlearnする痛みを訴える指導者が多いことも、私のこのセミナーの特徴、傾向の一つといえるでしょうか。

先日のセミナーありがとうございました。
私は普段から手書き文字に関して、自分が書く文字も、他の人(生徒のみならず指導者も含め)が書く文字も注意深く見ているほうですが、そんな私でも「それまで見えなかったものが見えるようになる」内容でした。「手書き」に近い欧文フォントの比較の説明を聞いて、私自身の書く文字も教育的配慮から、いくつか見直そうとも考えております。
文字指導は、主として小学生や中学生を指導している方が関心を持ちそうな内容と思われがちですが、全くそんなことはなく、私のような高校生・高卒生を指導する者にも想像していた以上に得るものが多く、その内容に感動しました。
板書などで生徒に見せる文字を書き、また生徒の書いた文字をノート・テスト・添削などで目にするのですから、どの層の指導者であれ、このセミナーで語られる内容は是非とも押さえておいてほしいと思いました。
この内容を共有する指導者が多くなるほど、無用な負荷で苦しむ学習者が少なくなるはずです。
それは松井先生もブログやツイッターで引いておられましたが、谷川俊太郎の詩

わたしは幸せです
でもわたしが幸せなだけでは
世界は良くならないと思うのです
違いますか?
(「幸せ」)

のような思いからです。
また何か開催されましたら、ぜひ受講したいと思います。
このたびもありがとうございました。


受講された方の多くが気づくことだと思うのですが、「それまでに見えなかったものが見える眼」を持つことの意味、責任のようなものを感じ取っていただけているのであれば、このセミナーを開催して本当によかったなと思います。

ということで、次回の「初級編」の紹介・告知です。こちらのリンクからどうぞ。
5月30日(日曜日)13:00から 
オンライン開催です。

passmarket.yahoo.co.jp

本日のBGM:ぼくらが歌をうたう理由(ポニーのヒサミツ + 中川理沙)