恒例の…

昨シーズンも、大好評のうちに東京と大阪で計4回開催しましたが、今年も「文字指導/handwriting指導法」のセミナーを開催します。
静岡の亘理先生/稲葉先生を中心に展開している「英語授業を語る会・静岡」とのコラボだけは特別に無料ですが、その他は有料のオンラインでのセミナーです。静岡以外の先生方は、こちらのオンラインセミナーをご検討下さい。
教員だけではなく、文科省の担当者や、教科書会社の担当者の方、大学の教科教育法の担当者、教員免許更新講習の企画に行き詰まっている方など、奮ってご参加下さい。

2月13日(土)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

2月23日(火/祝日)「英語の文字指導/handwriting指導法オンラインセミナー」passmarket.yahoo.co.jp

※両日とも同内容ですので、ご都合のよい日時でご検討下さい。

さて、
ソーシャルメディアで「来年度からは、中学校では文字指導をしない」というようなミスリーディングな文言を目にしたので、危機感を持っています。いや、中学校で導入したことが、高校でも定着していない、なんてよくある話じゃないですか?小学校で導入した「文字」の指導を、中学以降でも継続するのは当然だと思うんですけど。

ということで、来年度から使われることになる「中学校の検定教科書」での、「文字」の扱いを見ていきます。
たまたま、いや、本当に偶然に、『英語教育』(大修館書店)の2020年2月号の第3特集が「新しい中学校検定教科書 試し読み」なんですよ。この企画って、高校の検定教科書も発行している大修館書店の雑誌では、「高等学校検定教科書 読み比べ」なんてできないので、小中の教科書を発行していない偶然が生んだ、ということですね。


私は昨年の「展示会」で見てきました。
中1のBook 1 での見開き構成で、
・レッスンタイトル
・セクションタイトル
・指示文
・本文
・生徒が書くであろう部分の例

など、求められる活動ごとに、教科書のフォントがどうなっているか、というところを中心に6社の教科書を見てきました。

One World Book1 (教育出版;中1)

今回の改訂、小学校教科書で各社で見られる「UDフォント」の採用を謳いますが、本文のディセンダー (pqyなどの基線からはみ出る部分が) とにかく見づらい。小文字の y がなどはボールドになるとつぶれてしまいます。
セクションタイトル (小文字のSpringboardのgやa、Part 1の a、Classroom Englishのa)ではUDフォントの配慮はナシ。Book1 でも、メインレッスンではサンセリフのフォントを使っているのですが、Further Reading で読みに特化したレッスンになって初めて、セリフのフォントになるのですね。
これは他社本にも言えるのですけど、「読みの技能への依存度が増す」活動なのに、どうして、文字の認知負荷がより高いセリフにするのかは理解に苦しみます。

New Crown Book1 (三省堂;中1)

伝統のCrown。ところが、表紙見返しのLanguages around the world のタイトルからしてフォントへの配慮に欠け、極めて残念。小文字のa/gをよく見ましょうよ。同じことは、レッスンのセクションタイトルにも当てはまります。Part 1 / Read / Take Actionなどの小文字の a はこれでいいですか?
本文フォントはサンセリフ。yは左に曲がって終わります。この教科書もReading for fun の課(ハンプティ・ダンプティ?)で「セリフ」に変わるのです。「とにかく読む」という、読みに特化した活動で文字認識関わる負荷は下げて、語義や文構造の理解にリソースを割けるように、という配慮がなぜできないのか、と思います。
これは、Book2(中2)でも同じこと。読んでいるときくらい読みに集中させてあげて下さい。「全集中!」ってやつですかね。

New Horizon Book1 (東京書籍;中1)

判型が大きい!Book 1に関してはフォントへの配慮は一番行き届いていると言えるでしょう。そりゃ、小学校用教材のWe Can! から、NH handwriting (字游工房からの発売ではJK handwritingフォント) のフォントを開発して使用してきたのですから。セクションタイトルなどのフォントと、本文のフォントとでのギャップがほぼないのは歓迎できる。Let's Read の2になると、「セリフ」に変わり、その後のOptional Reading の本文もセリフとなっています。
ただし、Book2 になると最初からセリフです。

Sunshine Book1 (開隆堂;中1)

カラーUDへの配慮、対話文での手書き「風」フォントの採用など、一見小学校からのスムーズな接続を考えているように見えるのですが、フォントのデザインは「プロ」が関わっているとは正直思えません。本当に、この文字でノートなどに手書きしてから、書きやすさや読みやすさを確認してますか?まあ、「文字」に関しての専門的な知見のある著者が不在なのでしょうね。
そして、中2のBook 2 からは「セリフ」が一気に増えるのに、そこへの段階的な移行がBook 1で考えられているようには見えないのが残念。今回の教科書の中で、文字の扱いに関しては、私の評価は最も低いです。

Here We Go Book 1 (光村図書;中1)

光村は「コロンブス」という名を捨てましたね。時代の変化を見越していたということでしょうか?
文字に関しては、独自開発のUDフォントを謳います。このフォントのデザインには、プロが関わってますね。でも、セクションタイトル Part 1/ Goal などの a は…。ということで、結局は「教科書著者陣」の見識なんです。
歌のコーナーなど、メインレッスン以外ではセリフが使われていますが、その意図は?
Book 2(中2)からは本文はみなセリフになります。

Blue Sky Book 1(啓林館;中1)

啓林館かぁ…。個人的には、高校の教科書で良い印象のない出版社なんですが、小学校のチームは良識派なんでしょうか。
UDフォントでの配慮を謳っているのに、セクションタイトルは…。
Part 1 / Let's Talk / Get Ready / Practice の a。
Let's Read と歌のセクションはセリフ。
そして、Book 2(中2)では、最初から皆セリフ。

私は展示会で見ましたが、実物をご覧になっていない方も、こちらからリンクを辿ると、各社のカタログやパンフレットがありますから、少しは私の指摘したことを感じることができるかもしれません。

一般社団法人 教科書協会
教科別発行教科書の紹介
中学校
www.textbook.or.jp

私が指摘しているのは、ここで取り上げた「中学校用教科書」にとどまらない問題です。
むしろ、市販教材のほうが、配慮がなされていないというか、気づきさえしていないことが多いのではないかと思います。

難関大進学を目指す意識高い系の中高一貫校などで採択されていると言われる、某Z会の検定外教科書 『新お宝』 も、中学1年生用のBook 1 に相当する、Stage 1 が改訂に合わせて、フォントが変わりました。

www.zkai.co.jp

『お宝』の初版を作ったときにStage 1 の本文フォントを Sassoonにしようと頑なに言い張ったのは私なんですけど、私が抜けた改訂2版でも、Sassoonが踏襲されていました。
今回は、小学校の検定教科書に配慮したのか、モリサワのUDデジタル教科書体のLatinが使われています。
その改訂に合わせて、ペンマンシップの教材も変わったようなのですが、指導体系としては、感心しない構成と内容で残念でした。せっかくUDフォントを使っているのだから、その良さを反映できるような教材が求められるのではないかな、というのが正直な感想。
もっとも、初版を出した時にも、ペンマンシップをどうするか、など私は全く相談を受けたことがないまま、編集委員会を去りましたから、初学者への配慮とか技能の習得/発達段階への配慮というようなことは何も考慮されていなかったということなのだろうと思います。
当時、一緒に編集委員をしていた両K先生、U先生、事実誤認があればご指摘よろしく。

ということで、

  • ライティング指導の第一歩は文字指導から
  • native speakers は存在しても、native writers は存在しない

本日はこの辺で。

本日のBGM: Free (ポルカ・ドット・スティングレー)