好きこそ、もののあはれ

国体後の本業の実作である、県体育大会兼選抜大会県予選が終了。
今年の自チームはさらに蚊帳の外でした。「レースでは今までで一番良い漕ぎができた」ということは、裏返せば、練習では全力を出していなかったということにもなりますから。評価は冷静に。上の大会が来期までないので、しばらくは「エルゴ部」ですかね。
生業の実作、授業の方はというと、「それぞれ・それなり」です。

高3は、ライティングがシラバスの終盤でargumentative writingへ。
ここ数年、このブログや密林レビュー、さらには、教員対象の研修会やセミナーで、大学入試対策を謳う市販教材の「解答例」「模範解答」へのダメ出しをしてきましたが、授業では、反面教師にしてもらい、何が問題なのかを生徒にしっかりと考えてもらっています。
もうケリが付いたと思っていた、とある市販本があったのですが、このブログの検索ワードの常連語句でまた出てきましたね。私のブログと、密林レビューとを併せ読んでも、何がおかしいのか、がわからないような英語力の持ち主だと、その本や教材の良さ(がもしあるなら)も引き出せないのではないかと、本気で心配しています。
いつも、このことばの繰り返しになりますが、

より良い英語でより良い教材
よりマシ選択でよりマシ授業

です。
去年、今年と、高3のライティングでは日向清人先生の『即戦力がつく英文ライティング』(DHC) が指定副教材となっています。これまでに、第1部の「センテンスをととのえる」、第2部の「パラグラフをととのえる」と読んで来たので、第3部の「説得する文章」 (pp.191-198) を200回くらい熟読せよと言っておきました。

  • 「つながり」と「まとまり」

です。
読解系の授業では「要約」へ、と進んできたので、丁度接点ができているというか、汽水域みたいな感じでしょうか。要約文の作成で、「段落の第1文と最終文を抜き出してまとめる」などといった方法論を盲信していると、「つながり」「まとまり」のある英文を書くまでには、かなり険しい道のりが待っているように思います。
いくら構想を練って、アウトライニングをしても、いざ書くとなると、端折れないんですよ。

本日の授業ではidea generationを。
テクストタイプ別idea generation のうち、argumentative/persuasive writing で、「お題」が、「賛否を問うもの」に主として使う、topic flower & topic ladder の導入。これは、90年代初めでしょうか、福井県の丸岡高校に視察に行って教わって来たものです。汎用性の高い手法で、「オリジナル・出典は?」と尋ねたら、「さあ、よく知りません。」と朗らかに答えられていたのを今でも覚えています。「どや顔」でオリジナリティを強調したりせず、「うまくいっているので気にしていない」というのが清々しいじゃないですか。素敵だな、こういう姿勢。
日本のライティング指導やスピーチ指導のpre-writingの段階では、所謂「マッピング」等で増やし・拡げるというのが、何か定番の活動になっているような印象を受けるのですが、非常に危ういものを感じています。ワークシートいっぱいに、アイデアがバブルのように弾けているのに、その後で「書く」段になると、一向に主題に収束しない、という作文が散見されます。

  • 増やしたり、拡げたりするだけではダメ。

主題に照らした”selection” の活動が不可欠です。これを言うと、「またか」と工藤洋路先生は笑うでしょうけど、選ぶ観点が大事という話です。いくら詳細に「地図」を書いても、現在地から目的地まで、読者を連れて行けなければ何にもならないわけです。「地図」は何のために書くのか?学習者だけでなく、指導者も自問自答すべきですよ。

idea generation.jpg 直


高2の進学クラスは、例年行っている「読み比べ」に入ってはみたものの、時間をかけてもとてもできそうにないので、残念ですがこのクラスでは止めることにしました。
1学年上の人たちは、この辺りでやっていましたね。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120206
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120207
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120208
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120210
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120215

発達段階に鑑みて、時期的に遅い、というのではなく、そもそも、この人たちがそのような類いの学びを求めていないというか、「このような学び方が好きじゃない」ということが要因としては大きいのでしょう。昨年の「キング牧師」の読み比べでも、違うバージョンを読むたびに「面白い!」と積極的な反応を見せていた人が一人しかいませんでしたから。学級文庫には入っているものですから、個人で取り組んで、伸びたい人が伸びたい分だけ伸びてくれればと願っています。
幻となったワークシートだけ載せておきます。

oliver twist rewrite 課題.pdf 直

高1はといえば、その「キング牧師」に入ったところ。
ふた昔くらい前の中3レベルの『オレンジ本』で、ディクトグロスもどき。
以下の手順です。

  • 最初2回聞きます。この時は、ペンを置いて、段落を聞き終わってから書き出させています。
  • その後、口パクで段落を通してシャドウイングしてから、ペンをとって加筆修正。
  • その後、センテンスレペティションを段落を通して行ってから、ペンをとって加筆修正。
  • 正確に通して静聴してから、ペンをとって加筆修正。
  • ペンを持って、ここには何かいるけれど、聞き取れない、書き取れない、という部分に下線を書く。ここでは、語句は書き取らず、下線を入れるのみ。
  • その下線部は「自分にはどう聞こえているか」、カタカナでいいので、音を記録する。
  • ここまでやってから、開本。まだ書かない。開本して、音源に重ねて音読をしてから、ペンをとって加筆修正。
  • 最後に、原文と自分の書き取ったものを見比べて、何が聞き取れて、何が聞き取れないか、自分に都合の良い、どのような音として聞き取っているかを確認。

まあ、普通はこれを繰り返して、素材文のバラエティが増え、文の密度や語いなどの難易度が上がっていけば、それに見合った英語力は向上するのですけれど…。
所詮は「それぞれ・それなり・そのうち」ですから。

高1のキング牧師も、いくつか「読み比べ」をしてもらう予定ですが、どうなりますか。「それぞれ・それなり」に期待しましょう。


看護科高2の方は、「戴帽式」も終わり、気持ちが落ち着いたのか、非常に豊かな音声が教室に響くようになりました。私が現任校に来てから、音声としては一番と言ってもいいのでは。40名弱の教室ですが、これだけクラスの音声の「精度」「底」が高いと、サボる人は少なくなるでしょう。自分の四方八方から、英語らしい音が響いて来るわけですから。
あとは、語い構文と、読み取り、そして英語表現です。
教科書の範囲では、所謂「仮定法」を扱っています。

条件文 (if) の3タイプ
Ifの3タイプ_タイプ1_2.jpg 直

という私の指導では定番の図解から。今回は、タイプ2までを。
高校の英語教師になり、教壇に立ってから、29年になりますが、<直説法との書き換え>というものに、エネルギーを割いたことがありません。

  • そんなことよりも大事なことがあるでしょう?

という思いで、『if本』や『Q&As本』を授業で使ってきました。
Book of Questions を使い始めたのが1988年ですから、指導の基本形は四半世紀前から続いていることになります。まずは、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120112

での『ルイちゃんの英文法』の引用を是非。
その上で、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130727

を読めば、私の狙いは推察できようかと。

関連する過去ログはこちらに。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080131

の例文を吟味を踏まえて、

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120118
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20120125

を読んでおくといいでしょう。進学クラスの人よりも、ことばを「生き直す」センスはあるかもしれませんから。

帯学習の『連結トレーニング』の方は、「疑問文」に跳びました。
教科書本文をもとにした「質問作り」につなげたいという私の欲目はどうなりますか。
2年生のうちに、何か、プレゼンのような機会を作りたいのですけれど、週3時間しかないので思案のしどころです。私自身も、「悩みどころで悩み、迷いどころで迷え」ということなのでしょう。

今回の中間試験で、少し気になることがあったので、備忘録として。

  • 「理由づけ」

です。
所謂「コミュ英」の2学期中間試験で1学期の範囲で扱った、「犬猫話」をお題として英作文を出題しました。

  • Which do you like better, cats or dogs?

というような他愛もないものです。2文以上で答えるというのが唯一の条件。

これに対して、半分以上の答案に "I like ... better because ...." と理由付けのbecause が使われていて驚いたのです。強迫観念でしょうか?どこでこのような表現形式を刷込まれるのでしょうか?価値判断とか、相手とのギャップを埋める必要のない、単なる好き嫌いの表現に becauseでの理由付けは必要なのでしょうか?

例えば、

  • Which do you think make better companions to men, cats or dogs?

というような、「意見」を求めるのであれば、そこには「論理」が必要ですから、becauseの出番もあるでしょう。しかしながら、「好き嫌い」というテーマで、思いっきり「主観」を前面に打ち出しているのです。「好きなことに理由はいらない」ことの方が多くはありませんか?
それこそ、アニメ『キューティーハニー』のテーマ曲ですよ。

だってなんだか、だってだってなんだもん。

私も、筆記試験という便宜上「お題作文」といいましたが、実際には、speaking代替の出題ですから、

「家で二匹猫を飼っている。こちらの思う通りには動いてくれないので、余計に可愛い」

とか、

「大型犬が好きだけど、マンションでは飼えないのが残念」

などといった、ありきたりで普通の、つながりを持った第二文が続くことを期待して、出題しています。「好きなこと」「その思い」を羅列、列挙、畳みかけるくらいで丁度良いのですよ。

  • 普段は「ライティングが専門」と言っているくせに、無責任な事を言うな!

と、このエントリーでの私の話にご不満の方は、次のビリー・コリンズのTED Talksでもご覧下さい。

TED日本語 - ビリー・コリンズ: 犬の気持ち(だと思われるもの)についての2編の詩
http://digitalcast.jp/v/21015/

さて、
本業以上に、私の一番好きなスポーツでもある、フィギュアスケートのGPシリーズ開幕戦が終了しました。
男子シングルは、町田樹選手が二位に35点の大差をつけて優勝。
地上波を牛耳る広告代理店の顔色を立てる必要があるのか、頻りに、某H選手の映像を流していましたが、そんな時間があるのなら、最初のグループの「演技」「映像」もきちんと出して欲しいと思います。

アイスダンスは、世界の1,2位のカップルが今季を前に競技の一線からは離れ、第3位のカップルが解散し、上位陣には「戴冠」の期待がかかる新たなシーズンを占う重要な大会でしたが、チョック&ベイツ組、シブズ、ステパノワ・ブキン組という順当な結果に。SP練習中にステパノワがフェンスに衝突、脚にテーピングを巻いて出場。冷や冷やしましたが、最終組で無事滑り終えました。EXでも、その美しさは健在。安堵しました。

女子シングルは、エレーナ・ラジオノワ選手がSP2位からの逆転優勝。シリーズは初タイトルです。
身長が伸びたなという印象で、とりわけ脚が長くなっているように見えます。
ジャンプでの着氷の脚(エッジ)がやや不安定でした。それに加えて、着氷の脚ではなく、フリーレッグのブレードが微妙に氷に当たっていたりというのも気になりました。
先シーズンのプログラムが、SP、LPともに、曲の雰囲気、リズムとラジオノワ選手の魅力全開だたっただけに、
少し違和感も残ります。今シーズン後半に向けて、しっかりと調整して「自分のもの」にして、GPファイナルまで行ってくれると信じています。

GPシリーズには、もう一つ「ペア」という種目があります。
今大会での再注目、いや最注目ペアは、

  • カワスミ

カワグチ&スミルノフ組(ロシア)です。
素晴らしい演技でした。
ケガからの復帰、という「人間ドラマ」を必要としない。滑りそのもの、演技そのもので「魅せる」ことのできるレベルの二人です。とりわけ、SPもLPも、EXも、カワグチ選手が、気負いを感じさせず、突き抜けたような穏やかな表情を湛えていたのが印象的でした。地上波では、ほとんど注目されていなかったのが残念といえば残念。

今週末は早くも第2戦で、スケートカナダ。
日本からは、今季の滑り出し絶好調の、宮原選手が出場します。
優勝しますよ。
でも、地上波の放送自体がないようです。
TV番組の作り手は、誰のことを一番に見ているのでしょうかね?

本日のBGM: I like (The Divine Comedy = Neil Hannon)