地味&滋味

久々の更新です。
センター試験も終わって一息、と思ったら、理科科目での得点調整。
「地学は1万人に満たない受験者だから調整しない」って暴動おきないのでしょうかね?「公平不公平の是正」って、集団の人数の問題?マイノリティ差別ではないのかな?

受験学年の高3は個別指導の段階に入りました。例によって「過去問添削」が主になるわけですが、競技スポーツの練習試合と同じで、やはり「トレーニング」も続けないと力は落ちますからね。

普段の授業では「和文英訳」って殆どやらないのですが、この時期は生徒によって扱い方を変えて取り入れています。
「和文和訳」という「用語」のいい加減さはこのブログでも指摘してきましたから、自分の掘った穴に自分が落ちないように気をつけてはいます。

添削では、生徒の書いたものをベースに、まず、「誰が・誰に対して・何のために・どんな場面で言っている文なのか?」を確認してもらい、

・主題は何か?主題に対して貢献度の低い情報を含めるか、それとも削除するか?
・対比・対照はどちらかに重点・力点があるか、それとも両論併記か?
・統一した主語として人を取り上げるか、モノで始めるか?
・名詞句(とりわけ抽象的な名詞)の処理で、英語でも名詞句で対応させるか、「ことがら」として節に開いた処理をするか?
・日本語では表面に現れていない「主語」「目的語」の輪郭線をどのように補正して英語に組み入れるか?

などというところを昨日今日で扱っています。

まとまった文章の中で下線が引かれているような場合には、文章全体の主題から離れないように、その前文、後文との「つながり」と全体での「まとまり」を確かめながら語句・構文の選択に責任を持つことになりますから、結局は「パラグラフライティング」をしているのとそう変わらないという印象です。生徒の方も、「なぜ、その部分は改善が必要なのか?」「なぜ、そう直した方がいいのか?」といったディスコースや結束性に関するレディネスが育っている分、「パラグラフ」の指導がしっかりとできてから、まとまった和文英訳へと移行する方が指導が浸透しやすいように思います。

ただ、「パラグラフライティング」といいつつも、ただ単に「頭出しチャンク」だけが揃っていて、その続きが英語になっていなかったり、トピックセンテンスを何も支持していない内容や論理の文がダラダラと続くような「テンプレート」に当て嵌めただけの「似非エッセイ」しか指導されていない場合には、注意が必要です。結局は、きちんとした「一文」を書き、その都度「適否」を選択判断して「書き連ねていく」といったトレーニングが必要不可欠なのです。

呟きから転載しておきます。

国公立大二次試験の「ライティング」の出題者と、対策で「ライティング」を指導される方々へのメッセージ。早くこのレベルをクリアーしましょう。 「気づくのはいつでも、過ぎた後だろう」 - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140202

「賛否・二者択一の背景にある価値判断」を自覚し「読み手との共通基盤を作る」重要性を数年来指摘し続けています。果たして定着するのかな? 「ライティング」の授業で養う英語力とは? - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071007

そんなこと言っても、「ライティング」だけ指導すればいいわけじゃないから、という多忙な受験生にはこの辺りをだけでも押さえておいて下さい。お願いします。 『泣くな、英作文教師』 - 英語教育の明日はどっちだ!(@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130224

入試改革、外部試験特需などなど、新たなニュースばかり追いかけていないで、「来し方」を振り返りじっくり考えることが大切。 That’s where I should belong. - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130723#

この記事からそろそろ5年ですね。いつまでライティングの解答は「黒箱」のままなのでしょう? 「再現答案」も推測の域を出ませんからね。 ブラックボックスによろしく - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20100315

ここにリンクを貼った『英語青年』の拙稿(「これでいいのか、ライティング問題:高校の立場から」)からは、やがて9年。外部試験に委ねる前にやることがあります。 「私の入試改革論」 - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140228

大学入試の「英作文」の英語に求められる要件に関して。国立大の中でも少数派ですが、金沢大学は大学の公式サイトで「正答例」を公表しています。ここ2年は「和文英訳」ですが、以前は「お題作文」も課していました。予備校の速報と比べてみては? http://www.kanazawa-u.ac.jp/enter/seikai/26eigo%20.htm

東京外国語大学も、公式サイトで入試問題の正解を公表しています。 ただ、個人的には、昨年度の「ライティング」の解答には、多々不満が残ります。 http://www.tufs.ac.jp/common/is/nyushi/kakomon/1-1zen-e.pdf


高1、高2は地道で地味な授業です。先週末に、自校入試がありましたので、その「英語」の問題を、1,2年生にも解いてもらっています。合否は総合判断ですから、英語だけ取ってみると、上は90点台から下は50点に満たないくらいでも入学しているのが現状です。ですから、高校で既に1年学んでいるとは言え、あまりの出来無さ加減に愕然とする者もいれば、この1年での自分の成長に手応えを感じる者もいます。「それぞれ・それなり」です。ただ、「よりマシ」になっていないと、命の無駄遣いをしたことになりますから、自分の来し方を振り返り、次の自分の行動の選択に責任を持つ良い機会にはなったと思います。

悲喜交交の高1の3学期の授業は、「高校入試リスニングテスト制覇の旅」が続いています。過去ログでも色んなところに記事があると思いますので、検索して見て下さい。

その中から、一つ取り上げておきます。
岩手県の2013年の出題。
モノローグのアナウンスとなっています。
オリジナルのスクリプトがこちら。

岩手県2013年オリジナル
Welcome to the Forest Bus Trip. My name is Mike. I'm very happy we have many people on the bus. Today we will go into the forest, so you will see such animals as birds, monkeys, deer, and foxes. There are over 50 animals. The trip takes about 30 minutes. Before we start, I’m going to tell you some important rules. First, this is a long trip, so you can eat and drink in the bus. Second, some animals will come near the bus, but please don’t give any food to them and please don’t put your hands out of the windows. Of course, you cannot get off the bus. Third, don’t stand up while the bus is moving because the bus may stop suddenly. Any questions? Now, let’s go!
(130 words)

結構ツッコミどころに恵まれた素材文です。「森林バスツアーガイドからの出発前注意事項」らしきことは私のクラスの生徒でも容易にわかります。
気になるのは、

1. 動物は鳥、猿、鹿、狐など←→動物の数は合計で50匹(頭、羽)以上
2. ツアー所要時間は30分←→バス内飲食は自由
3. 近寄る動物がいても餌を与えるな、窓から手を出すな、バスから降りるな

あたりでしょうか。
1. では、「絵が描きにくい」ということ。極端な話、「白鳥の群れ50羽、チンパンジー親子3匹、鹿夫婦2頭、狐母子2頭」でも 言い訳です いいわけです。総数よりは種別ではないのかなぁ、という感想を持ちました。

2. では、「僅か30分間なのに、飲食が我慢できないのかな?」という疑問です。授業の1コマの時間だって45分から70分くらいでしょうに?「我慢」できないと困るといえば、むしろ…。

3. では、「そもそも、いつバスを降りるチャンスがあるの?」まさか「お前たちは、もう、二度とこのバスから降りることはできないのだ、グフフフ…」なんて怖いツアーではないのでしょうから。
であれば、まず、「餌をやる」とか「手を出す」ことの前に、「窓を開け(ておか)ない」ことが先なのでは?

という疑問・違和感を踏まえての「リライト版」で、ディクトグロスをしています。

岩手県2013年Rewrite 版
Welcome to the Forest Bus Trip. My name is Mike, your guide today. I’m very happy we have so many people on the bus who are interested in wildlife.

Today we will go into the forest, where you can see a variety of animals: birds, monkeys, deer, and foxes. Sorry for you, but we do not have any lions or tigers. No elephants or giraffes. There are over 50 kinds of animals, though. The forest is so large that the trip takes about 90 minutes.

Before we start, I’m going to tell you some rules here. If you don’t follow these rules, you may risk your life. So listen very closely.

First, do not get off the bus until we get back. Animals, even small birds, may attack you if they feel threatened.

Second, some animals will come near the bus, but please don’t open the windows. You may not put your hands out of the windows or give any food to them.

Third, this is a long trip but we do not have a bathroom on board. There is no public bathroom along the course. Please make sure you go to the bathroom before departure.

Fourth, remain seated while the bus is moving. We drive safe but the bus may stop suddenly.

Any questions? Now, let’s go and enjoy the forest!
(221 words)

生徒の様子を見て、全文ではなく、加筆修正された部分を中心に聞き取りをすることになります。岩手県オリジナルのスクリプトは既に聞き取って完成していますから、それと対比して、「あ、ここは大幅に変わっているぞ」とか「ここは情報が付け加わった」「順番入れ替わり!」といった、「理解」を伴った発展的な活動にしようというのが私の「目論み」です。

スクリプトをiPad mini3で開いてiOS 8の「読み上げ」機能を利用し音声を聴かせています。この合成音声はまだちょっとぶっきらぼうなので、次はアプリの iSpeech (TTS Pro) にコピペして、米音・女性で再生します。これはかなりの精度で「英語の音声」になっています。この音声ファイルを、さらに「耳コピ」アプリにエクスポートすることで任意範囲を区間リピートで確認できます。
本当に便利な時代だと実感。

ただ、iSpeechが苦手なのが I'm とか We’ll とか Let's などのアポストロフィの処理。ここでリズムが止まり、”s” だけをクリアに読み上げがち。ここはコピペの際に縮約せず、開いた形に打ちなおしています。それでも、”I am going to” くらいだと、かなり自然なリズムで通過してくれますので、充分に許容範囲の音声教材です。

聞き取り・書き出しの後は、当然の如く「シャトルラン」です。今日は「石川県・2011年」の問題を扱いました。こんな具合に2月の中旬まで、「つながり」と「まとまり」を感じるセンサーを育て、鍛える授業が続く予定です。

この週末は、本当の受験生対象の「入試解答解説会」です。
英語の担当は私。出題の意図と解説だけでなく、「英語」という「ことば」はこういう「運動性能」を持っているんですよ、という「英語らしさ」に対する感度・センサーを敏感にして帰ってもらい、県立高校の入試に臨んで欲しい、というのが私の願いです。

週末の天気が心配ですが、なるようにしかなりません。この解説を済ませて直ぐに空港へと移動し上京の予定です。
語研の「読書会」で既知の方、未知の方とお会いできるのを楽しみにしています。できれば、飛行機が飛ぶように祈っていて下さい。

本日のBGM: To make it easier on you (Thelma Houston)