大寒町

tmrowing2015-02-05

立春を過ぎたと思ったら、直ぐに雪。
季節の変わり目とは言え、なかなか体がついていきません。

慌ただしかった先週末のレポートから。
まずは、自校入試の解答解説会について。
進学クラスの受験生の内、希望者が参加します。
今年は10名程の参加でしたが、皆、熱心に聞いてくれました。

英語は共通問題に加えて、進学クラスのみの選択問題として長文読解とお題に対するライティングがあります。
読解問題の解説では、今回初の試みで、パワポで1文ずつコメントをつける、というのをやってみました。

読解問題の一部を抜粋。

次の英文は、「日本の高校における外国語の授業」についての、特別進学コースの課外授業で、講師のALTが述べたことをまとめたものです。英文と資料を読み、設問に答えなさい。

Good afternoon, everyone. I’m very happy to be here again and share the joy of learning languages with you. Today, I will talk about EOTL or "English as One of Those Languages."
In Japan, when you talk about learning a foreign language or another language, most of you will think of learning English. To me, everyone seems to give too much time, money and energy to learning English. In the newspaper, on TV and on the Internet, they say that English is the most powerful tool in the global communication. They may even tell you that being able to speak English makes you a global leader. But you should lead yourself first. Does every native speaker of English have a global mind? Why are there so many different languages on earth? "English Only" is not the final answer.

EOTLという用語はおそらく聞き慣れないものだと思います。というのも、この問題のための造語・造概念ですから。豪州の公教育だと、LOTE or Languages Other Than English という用語がありますが、それになぞらえてはいるものの、独自に作ったものです。一番の問題は、EOTLだけ取り出すときにどう「発音」するのか?音節構造から考えても、文字をそれぞれ個別に「イーオウティーエル」と読むしかないかなとは思います…。

その後、日本の高校における英語以外の外国語の履修状況の資料(グラフと表)が示されて、日本における多言語学習の現状を知る講師の主張が伝えられ、課外授業が終了する、という流れです。

I hope more high school students will start learning languages other than English in the near future. We are in the beginning of the "EOTL" age. English will soon become one of those languages. I believe that this will make our world truly global. Why don’t you start learning another language?

資料に関しては、

山崎吉朗(2012)、「高等学校における複言語教育の現状・展望と大学教育との連携について」
(http://www.tufs.ac.jp/common/fs/ilr/ASIA_kaken/_userdata//yamazaki.pdf)

より翻訳して用いています。

この読解問題の英文を踏まえて、「ライティング」では、

日本の高校で学ぶ生徒は、日本語と英語以外に、もう1つの言語を学ぶべきである。

に対する「あなたの考え」を「3文以上」の英語で答える問題を課しています。
採点の基準として示しているのは、

A
・3文以上あるか?大文字で始まる「Becauseの宙ぶらりん」は一文とはみなさない。This is because …. ならそれ自体が一文として成立。

B
・はじめに賛否の立場(または明確に保留の立場)を示しているか?
・賛否を表す動詞の語法・用法が適切か?

C
・理由付けが、「日本人一般」ではなく、「日本の高校生の一般論」になっているか?
・「私がしたいこと」「できること」ではなく、「必然性」の理由付けになっているか?
・最後に「はじめに自分が打ち出した立場」が揺らいでいないか?

というものです。予想通り、becauseのfragmentが多かったので、ここは重点的に解説を加えておきました。「理由付け」では、これも予想通り「主観的形容」の考察、サポートが不十分なものが目立ちました。個々の答案の英語を示すことは控えますが、

・日本語と英語でも大変なので、さらに大変な思いはしたくないから。
・日本語、英語以外に中国語も学ぶべき。日本に住んでいる中国人はたくさんいるから。

というような理由付けの何が「論理」として不十分なのかを考えてもらいました。
前者では、「理由のところに意見を書かない」のは難しいのですが、注意しておくことで論理性は高まります。
後者では、「たくさん」という漠然とした言い方ではなく、「ポルトガル(ブラジル)語」など他の言語話者との「比較」「相対」「優先順位」を述べることで、「論」として初めて立つということを感じてもらいました。

明日が「合格発表日」となっています。
ただ、まだ3月に、公立校の入試が待っていますから、今はそちらへの関心の方が高いことでしょう。
多くの人とこの場所で4月に再会できることを願っています。

解答解説会を終えて、私だけ一足先に学校を後にして空港へ急ぎました。

大名 力先生と新著『英語の文字・綴り・発音のしくみ』を読む会
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141216

へ出席するためです。

この新刊を未だお持ちでない方はこちらでご確認を。

大名力『英語の文字・綴り・発音のしくみ 』
http://www.amazon.co.jp/dp/4327401641/ref=cm_sw_r_tw_dp_8Yq0ub0VCZVYZ

私が申し込んだのは12月の中旬。その時点では私が2番目の申し込み者だったそうで、出足を心配されたスタッフの方から、「広めて」というお願いがあり、上記ブログエントリーを書かせてもらった次第です。

それと並行して、何回か「呟いた」のも役に立ったのでしょうか、当日は参加者で会場はほぼ満席でした。懇親会にも20名以上が参加されていて、文字通り「盛会」でした。

帰山直後の私の「呟き」がこちら。

昨日の語研読書会は盛会(懇親会も)。忙しい日程を縫って参加して正解。ただ、この奥の深い本の内容を充分に消化吸収できたかは「?」。「森」に足を踏み込んだところ。でも、これを手掛かり足掛かりとして読み進める原動力にはなりました。大名先生、スタッフの皆さん、ありがとうございました。

掛け値なしに、著者自らの解説で読む贅沢な時空でしたし、本当に奥の深い本です。
若林俊輔、大津由紀雄、宇賀治正朋に師事した大名先生だからこその「中身」といえるでしょうか。
私が英語史での疑問点を調べるのにお世話になっている、堀田隆一先生のブログでも、最近これだけ「大名力」に言及されていますから。

http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~rhotta/cgi-bin/clsearch.cgi?key=%C2%E7%CC%BE+%CE%CF&mode=2

3月末に、「大名先生読書会」第二弾があるそうですから、今回参加された方も、今回都合がつかなかった方も、ご検討されてはいかがでしょう?

例によって、「呟き」からの転載。

「中締め講義」で、ももクロの曲をかけた私の目論見が最後にあります。先日の大名力先生の読書会で、思い出し、カナ表記は「ドュ」か「デュ」かで悩んだのでご紹介。 「もどき」と「ごっこ」 - 英語教育の明日はどっちだ! (@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140516

「口蓋化」をカナ表記ではどう処理しているのかな?という疑問から自分のエントリーを思い出した。do は「ドゥー」と書くと思うが、では口蓋化した場合の dew やdue は?大名先生の本だとp. 38, p.60, p.223辺りにヒントがあるかなと読み返し。

咀嚼には、まだまだ時間がかかりそうです。

週明けの授業は淡々と。
看護科2年の「読み」がデフォルトの授業では、こんなワークシートで淡々と進みます。見開き2頁の両面印刷です。この前に、チャンクでの語彙の「仕込み」を済ませていますが、この「本文」をやって疑問点が出るからこそ、「仕込み」に度々戻り精度も上がるものです。

N2_WTL5_Part1.pdf 直

高1の進学クラスは、「高校入試リスニングテスト制覇の旅」の途中。
高校入試素材文を書き換えてディクトグロスをしています。シャトルランでスクリプトの確認。
その後は、音読→リード&ルックアップ→Flip&Writeまで。

石川県の2011年素材文を私が書き換えたものがこちら。

石川2011リライト版1.jpg 直

今日の授業では、新潟県2013年の出題を使いました。
オリジナルはこんな英文スクリプトです。

Hello, everyone. My name is Mary White. I am one of the 20 American students from New York. We are here in this school for one day. This is our first visit to a Japanese school, so we are very excited. We have studied Japanese for six months, so please talk to us in easy Japanese.

We will study English, music and math with you in the morning. In the afternoon, we will tell you about our school life in class. We will show you some pictures and talk about them in English. Please ask us in English if you have questions.

I hope we will have a good time with you today.

Thank you.
(115 words)

「国際交流ネタ」で「話形」はほぼ同じですが、石川県のリライト版と比べると、格段に易しくなっていることがわかると思います。このような英文の難易を変えて、同じトピックで「初見(初聞)の英文を聴くこと」に積極的に意義を見出しています。

今日の手順は、

・ 通して聞いて内容理解
・ 聞きながらキーワードのメモ
・ 「石川県リライト版」のスクリプトを見て、「内容語」の確認
・ 再度聞きながらメモ
・ シャドウイングした後、加筆修正

というものです。今日は、このシャドウイングで時間切れ。
明日は、「分割シャトルラン」で確認から、書き直しバージョンにチャレンジです。


高3の個別指導、今週は「和文英訳」中心です。生徒のオリジナルを活かすフィードバックと、英語らしい表現と論理での英文の提示と匙加減は難しいですね。

もとになる和文は示しませんが、先日、生徒とのやり取りを経てでき上がった英語はこんな感じに。

Something magical in his style has excited deep sympathies in readers. It holds enduring popularity of his novels.

He was aware that he was a weak person. And at the same time, you could say, he had the courage to let his weakness open. The weakness and courage made him write the way he did.

「和文英訳」という出題形式の効用は認めるものの、やはり、大学側の「正答例」「標準解答例」の公表が、大学入試の英語問題の改善には必須だと思います。

こちらの過去ログ(その中のリンクも含めて)を是非お読み下さい。

「私の入試改革論」
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20140228

呟きからの転載も併せてどうぞ。

日本の「英作文」「ライティング」指導の伝統に学ぼうという意欲のある人は、このエントリーにあるダウンロード可能なpdf資料を活用して下さい。二次使用は自己責任で。
業務連絡 - 英語教育の明日はどっちだ!
(@tmrowing) http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20130814

明日もまた、地味で地道な実作です。

本日のBGM: 工場と微笑(鈴木博文)