climbing your way down

メディアに載る新たな教育政策にはげんなりすることが多い。いつも言うように、まずはPay it forwardなのですよ。教員になりたい、という人をどれだけ増やすか。「学校で働くっていうのはこんなに素晴らしいことなんですよ。」というアピールをこそ。
臨教審とか中教審とか、top-downの政策に関わる「指導助言者」たちの論理としては、

  • 現状で教員の質が低い→現状の教育の質も低い→その質の低い教育を受けた人材の中からこれから新たに教員を志す者の質も低い→低いままでは困るので、てこ入れをして、教員養成の段階で仕分けをする

というような「論理」が働いているのでしょうけれど、そもそも振り出しで、「現状の教員」に免許状を与えたのはどの地方自治体なのか?採用試験で合格させて、勤務させてきたのは誰なのか?そこに問題があったのだったら、まず、その部分に関して「ごめんなさい」を言ってから、新しいことを始めて下さいよ。

  • その採用時の不都合の責任は誰が取るのか?

をいくらいっても、先の展望は見えてこないので、もうこうなっちゃっているんだから、「ここがダメでした」「ここがまずかったです」ということを明らかにしてから、何をどう変えるのかを議論して欲しい。
上述の矢印の流れで言えば、

  • 現状でも教員の質が高いところもある→教育の質も高かったりする→その質の高い教育を受けた人材の中から新たに教員を志す人がいない→いないままでは困るので、てこ入れをして、高等教育の教員養成段階の学費を免除する→優秀な人材が集まる→優秀な教員が世に出る

という餅の描き方だってあるでしょうに。
もっとも、実際に教育現場に出れば、「優秀というお墨付きをもらった自分」などという意識では全くやっていけないのは自明。現場での経験を支えてくれるのは、自分の先を行く先輩であり、一緒にその場に足を踏み入れた同輩であり、少し後に入ってくる後輩である。しかも若い人も中堅もベテランも、専任も臨任も非常勤も、同じ「先生」として責任の分担をし、仕事をこなすのである。そのためには、

  • 「ここは君に任せるから」「ここは私に任せておけ」と双方向に働ける (中間) 管理職
  • 若手も中堅もベテランも、自分の経験知を高めたり刷新したりするための「サバティカル」のような時間

が必要だと思う。そうした「後ろ盾」や「踊り場」の存在が、教員としてのキャリアを積み重ねる上では欠かせない。

  • 教育の現場は閉じていて、子供を相手にしているから、一般社会の常識が通じない。

という批判が何故か説得力をもって世間に流布しており、

  • 教員として人を教える前に、一般企業で何年か実務経験をさせるべきだ。

などという有識者がいて、その声をまたご丁寧にメディアが取り上げたりするから始末が悪い。

  • では、いったい何年の実務経験をしたら「一般社会の常識」を身につけたとして許してもらえるのか?
  • そんな制度ができてしまったとして、数年で辞めていく教員志望者を受け入れて、社会人・企業人として鍛えてくれる奇特な企業がどこにあるのか?

そんなことよりも、教育の現場のイメージアップ。教育に携わる人間の営みそれ自体がすでに「実社会」なのだから、それに対するリスペクトを育てることから。
まずは人の手当。そして人への手当。
さて、
先ほど、「踊り場」と書いたのだが、このような比喩で人のキャリアを考える時に、いつも思うことがある。階段でもエスカレータでもいいのだが、なぜ上へ上へと行くことばかり考えるのだろうか?パワーゲームから降りることだって立派な選択だろうに。今いる位置が高ければ高いほど、降りる時は下が見える分、怖いものだし、下り坂では、加速がついて、自分ではなかなかコントロールできなかったり、と「降りる」ことも言うほど簡単ではないのにね。そもそもパワーを持っている人たちの「高所大所」からの選択・施策がことごとく上手くいっていないのは、どのように説明するのだろうか?
英語にしても、

  • 社内公用語を英語にする企業が増えている。
  • あなたの勤める会社が将来外資系になり、英語が公用語になるかも知れない。
  • 国内の有力企業がどんどん新規採用枠を外国人に開いているので、英語ができない日本人学生にはエントリーシートさえ出せなくなる。

などと英語産業で儲けたい人や、企業内英語研修にお金を費やすのを嫌う企業の経営者が「上を目指せ、日本の外を見ろ」煽るのは結構だが、教育界がそれに踊らされていてはダメ。そういった論理は「パワーゲーム」を志向する人には通用しても、それに対して欲を持たない層を巻き込むことはできない。そもそも、地域で名物の和菓子屋や饅頭屋も早晩、外資系に買収されるだろうか?町工場や木工所や製材工場は?印刷所や製版会社は?家族経営の食堂は?小学生の社会科見学で、自分の住む地域の商店や会社を回って、外国語との接点、その現在過去未来を調べたり考えたりする方が、徒に外圧で不安を煽るより余程健全だと思う。実際の小学校にそのような余裕があり、訪問を受ける商店・会社にもそのような余裕があれば、の話しではあるが。
社内公用語の制定でトップダウンで英語の使用を求められるよりも、地域内公用語というか通用語で外国語が求められることの方がまだリアリティがあるのではないか。
先日高3の授業で話したのは、

  • 東京都江戸川区のインド人コミュニティ

の事例。こういう変化にリアリティを感じられるか。何人くらいのコミュニティになれば、保育所や小学校などがきちんとした対応をするニーズとして認識され、適切な対応がなされるか、自分の住む町や村の小学校の児童数や世帯数を思い浮かべてみることにも意味はあろう。彼我の差、都会と地方の差、と片づけずに、自分の問題へと落とし込める「頭の強さ」が大切なように思う。
「パワーゲーム」の話しにに戻ると、その言葉から思いつくのは、PFなどの「勝ち組志向子育て雑誌」。気をつけなければいけないのは、あの手の雑誌で取り上げられる「ロールモデルとしての父・母」は、あの手の雑誌を買って読んだりしてはいないだろうということ。そうなりたいという人の上昇志向を購買意欲に変えることで成り立っている雑誌というのが私の認識。
東京で「お受験文化」の真っ只中にいる時に、「ノブレス・オブリージュ」という言葉、概念を引用する指導者や学校経営者、さらにはその「コンサルタント」と称する人に多く出会ってきた。エリートやリーダーを養成するという自負心は結構なのだが、そのように育てられた人たちの多くが、自分たちよりも「上」を目指すように仕向けられているだけで、自分とまったくbackgroundの異なる人たちとの交わり方を知らないのではないか、と訝しく思うこともまた多かった。いきなりnobleを目指すのではなく、less nobleな市民としての責務を果たせる人材を育てることとか、残念ながら現時点ではignobleとしか形容できない人を実際に相手にすることとか、教育の世界に限ったところで、「実社会」というものはもっと生々しいものだろうに。
どの「実社会」を生きる人に対してもリスペクトを持てる志の高い人材が、教育現場に、教える側として戻ってきたいと思えるような教育改革、そんなものがあるのならば積極的に支持したいと思う。

心配されたマラソン大会は、天候の荒れるスキマを縫うように無事終了。私は、コースに沿って車で巡回。落伍者や体調不良者の回収が私の役割。弱い者には優しいが、地球環境には優しくない。

  • マラソンという名称だが、実際には「持久走」。5,6キロしか走らないのに、マラソンなどといっているから日本はガラパゴスだと言われるのだ。

などという批判を誰もしませんよね。
「徒競走」と言われる「短距離走」では、スタートに差をつけて個人の能力差がゴールで出ないように配慮する教育現場のことを揶揄する声が時折聞かれました。でも、持久走の大会で参加者全員のスタートの時間差を個々の能力に応じて設定している教育現場は流石にないでしょう。とすれば、持久走では、「自分なりに諦めずに最後まで頑張ること」、に意味を持たせているのでしょうか。確かに、「30人31脚」よりはよほど教育的だと思います。全員がちゃんと走ればの話しですけれど。ちなみに現任校の場合、往路が上り坂で復路が下り坂です。
明けて土曜日は快晴。
朝から、遠い方の湖近くの高校へ。体育館でエルゴ大会。正式名称は何だったっけ?
自チームの選手も不甲斐ない記録に終わったが、全体的に低調というのが偽らざる心境。
閉会式で、県成年チーム強化担当ということで、私の方から、参加者全体に対して講評を述べて終了。
日曜日は、午後から乗艇。
体幹の弱さから、フィニッシュまわりで身体が撚れて、バウサイドを引き込むクセがまた出てきたので、

  • ひたすら腕漕ぎ→後ろ10cm→スライドピラミッド→SR22で最速

の繰り返し。良い時は、加速を継ぎ足す感じが出て、艇の初動、ランともにスムーズでSR22でそれなりのスピードが出るのだが、まだまだムラがあり、安定感に欠ける。今日は、約2時間の乗艇で終了。エルゴや体幹、そしてランニングが多くなる冬場のトレーニングを、自分の課題ととことん向き合って乗り切ってもらいたいものです。
帰りの車で聞いた、ましゃの自分の物真似に大笑い。
帰宅して娘としばし戯れる。
自分より小さな子と遊んで、少しお姉さんになったような気分がしたらしい。いいことですね。
明日は、奉仕活動。
今日は、自分に少し奉仕してから寝ます。
物足りない方は、こちらでもお読み下さい。
(「水口」の酒・三千盛http://www.mediapark.ne.jp/michi/mizukuti.html)

本日の晩酌メドレー: 不老泉・山廃純米吟醸・滋賀県産渡船・無濾過生 (滋賀県) → 三千盛・純米大吟・にごり (岐阜県) → 東洋美人・純米吟醸・愛山 (山口県)
本日のBGMメドレー: かっこいいこと言おうとしてた (マーガレットズロース) → 泣かないけどね (YO-KING)