tomorrow come never

いよいよ雪が降ってきた。
高1のオーラルのスモールトーク代わりに、「窓の外を見て」と言って、

  • 雪が降ってきました。/ 雪になりました。

の英訳から。予想通り、

  • It’s snowing.

という反応。では、「雪が降っています」と「雪になりました」は同じ意味か?と問うて考えさせてから、『グラセン和英』。

  • It began to snow.
  • It is beginning to snow.

時制・相の違いを実感してもらう。「雪が降っています」も「雪になりました」も英語で言えるようになったら、あと必要なのは?と問うて、「雪が止みました」を引き出す。

  • It has stopped snowing.

で助動詞の番付表の完了形を確認。さらには、不定詞の「これから」イメージと動名詞の「事実・出来事・経験」を踏まえるイメージとの対比を確認。音読した後で、「止む」にあたる動詞を辞書で確認して、

  • The snow has let up.

で、letの活用をダメ押し。
この一例をもとに、

  • 目の前の教材などお膳立てされた英語をまずはしっかりと咀嚼して、そこから自分の学習を始めること。冬休みは日々、自分の身の回りのことを英語で言えるか?英語で言うとしたら?という思考回路を鍛えておくように。

という宿題。和英辞典には限界があるけれど、それは限界まで使ってからぼやけばいいことでもある。まずは使い始めること。始めたら続けること。続けてから振り返ること。単純明快な論理で生きましょう。
ウェブで公開されていた、『新潮』の対談 (水村美苗・梅田持夫) を高3の進学クラスで読ませる。この人たちの物言いは、今の時代、避けて通れないものでしょうから。私はどちらにも与しませんが。
高2は学期内最後の授業だったので、冬期課外での課題を課す。書籍の紹介は、古いものから。
絶版のものはいくら良いものでも入手が困難であれば絵に描いた餅。何のために学級文庫があるのか?何のために「貸出帳」があるのか、先輩の成功事例の検索エンジンとして「貸出帳」を活用することを強調。

今週の『相棒』は、身につまされる内容。
非常勤時代のことを少し思い出した。
情熱だけではお腹は膨れない。

いつもは「コラム」が中途半端で消化不良感の消えない『英語教育』 (大修館) の特集だが、今月 (2011年1月) 号の特集、「日本を支える英語教育とは」では、特集記事よりも、むしろ、根岸裕 (p.30) 、真野泰 (p.40) 両氏のコラムに共感することが多かった。自らの経験、業績や成果に胡座を掻くことなく、「土台」をしっかりと感じながら書いていることがよく分かる。気になることといえば、真野氏が水村の『日本語が亡びるとき』を引いていることの意味を英語教師がどの程度共有できるだろうか?どのくらいの英語教師がこの『水村本』を読んで、自分の問題としてとらえているだろうか?ということ。次回の特集は、そのあたりをテーマに『英語教育が亡びるとき』かな?などという考えが頭に浮かんで、すぐに、そんなことは寺島隆吉先生が既に単行本で書いていたのだな、と思い直した。今回の執筆者に寺島先生や江利川先生、成田先生がいないということの意味をちょっと考えているところ。
特集本編では、佐々木みゆき氏の「『辺境』からも元気に発信しよう!」 (pp. 21-23) にも好感を持ったし、林揚哲氏のような経産省の現役の官僚への原稿依頼というのも、編集部の力の入れようを表しているのだとは思うのだが、自分の大学の広報誌か何かと勘違いしているような原稿があったのには呆れた。
その呆れたついでに、リレー連載 「…時評」(p.41) の小串雅則氏。

  • 今年の高校現場では、新しい教育課程の編成が本格的にすすむと思う。幹になる「コミュニケーション英語に」どのような枝葉をつけて指導内容を体系化するか、教員のカリキュラム構想力が問われることになる。ゆめゆめ時間あわせのためだけに「コミュニケーション英語I」と「英語表現I」で5時間確保して事足れり、後の指導内容は検定教科書にお任せ、などという呑気なことをお考えいただかないように願いたい。

という文言で脱力。高校現場の先生たちは「呑気」なのだそうだ。「私たち御上がせっかく良い指導要領を作ったのだから、その趣旨をきちんと理解してまともなカリキュラムを作りなさいよ」、とでも言いたいのだろうか。結局、この人たちは現場の教員を端から信じてなどいないのである。そのことはよく覚えておいた方が良い。英語教師は財界とかのソトの世界からの圧力だけを気にしている場合ではない。前線に出張っていたら、自分の後ろからも弓や弾が飛んでくるのであるから。
その一方、「読者論壇」は久々に読み応えのある投稿。

  • 福田昇八 「英語が話せる教え方---熊本ITCから40年---」 (pp.89-91)

過去ログでも、日本の英語教育改革の成功例に言及したことがある。

熊本といえば、人吉町が週3体制の80年代に見せた独自の取り組みが印象に残っているが、そのさらに前、70年代にこのような地道でいて「ソト」の世界と繋がりを持った自主研修があったことは詳しく知らなかった。この福田投稿をもっと膨らませて特集に組み入れれば良かったのに、と本気で思う。

田邉先生の連載は「ライティングのためにはinputを!」 (pp.51-53)
我が意を得たりの内容、と思って読み進めていると、なんと、このブログのアドレスが出ているではありませんか。私自身「何はなくともライティング、何をやってもライティング」と豪語していた時期があるくらいですから、「ライティング」関連で、いろいろと参考にできるものが綴られているとは思いますが、何分、検索性を著しく低くする意図で構成しているブログですので、まずは、

あたりの「『英語教育の明日はどっちだ!』活用術」を参考にして、過去ログの迷い道をクネクネしてみることからお試し下さい。
田邉先生にはずっと以前から、

  • 「ヨコ糸」を紡ぐための今日的な教材を早く書きなさい!

と言われているのですが、今は本業と目の前の生徒を相手にする正業で手一杯。個人的には、啓蒙的な活動の前線に自分自身が立つことはあまり欲しておりません。ただ、来年以降、ちょっと腰を落ち着けて取りかかりたいと思っていることはあるので、時期が来れば告知したいと思います。
最近は絶版になってしまった書籍など、古い学参や概説書を読み直しています。絶版とはいえ、これまでにも授業で頻繁に使ってきたものが多いのですが、以下、並べてみましょう。

  • 石山宏一 『日本的英語の誤典』 (自由国民社、1982年)
  • 出来成訓 『英作文1000題徹底演習』 (研数書院、1969年)
  • 古瀬良則、岩田一男 『英作文の研究』 (旺文社、1965年)
  • 岩田一男 『英作文の基本文型・新版』 (三省堂、1965年)
  • ハロルド・プライス、長谷川凡次郎 『英作文の盲点・改訂2版』 (1964年、金星堂)

今月の田邉先生の記事に関連するものとしては、

  • 長崎玄弥 『こうすれば英文が書ける 英文ライティング頭の体操』 (ジャパンタイムズ、1984年)

の練習方法などが参考になるかも知れません。

1. ライオンが広いおりの中にいる。
2. 黄色い花が咲いています。
3. ベルが鳴っています。
4. 子供は、馬のひく車にのっていた。
5. 森の中で木を切る音がする。
6. 近道を通って、海岸へ行った。
7. 百まで数えると眠くなりました。
8. 夕方になると虫が飛んできます。
9. 帰りは荷物もなくて楽でした。
10. この原稿用紙は20行です。

この10題に、解説が7ページ分である。さらに、7. 8.の「なる」に関連して、類題が7つ追加されている。

  • (1) 風邪から肺炎になった。 (2) このドリルは君たちのためになるだろう。 (3) 悪くならないうちに、食べて下さい。 (4) 夕方には雪になった。 (5) 損害は合計300万円以上になった。 (6) ペギーに対するジムの同情が、いつの間にか愛情になった。 (7) 彼女は良い奥さんになるだろう。

最後の方にある、「総合練習問題」では、日本語発想のコロケーションを中心として、いかに自然な英語へと変換するかに重点が置かれた「日→英」問題が合計100題。今の時代に合わせて若干の問題を差し替えれば、実用的な英語の基礎力を短期間で養うことができるように思います。

英語ネイティブの例文校閲やコーパスの活用で一見、最近の書籍の方が無条件に優れているかのような印象を持つかもしれませんが、こと「表現」、しかも「日英比較」ということを考えると、言葉の力や感性が弱い著者の場合には、その教材は使い勝手が良くないように思います。絶版となって改訂作業が止まってしまい、英語として今では通じない古い語法ばかりが残っているのでは困りますが、ただ新しければいいかというとそんなこともないのです。ここに上げた数冊が、お近くの古本屋、勤務校の研究室や倉庫の中などに眠っていないか、覗いてみて下さい。今も書店で手に入るもので、単文レベルの英作文に資する最も良い教材を一つあげるとするならば、

  • 金子稔 『ルール48 英作文の解法』 (洛陽社、1999年)

ということになるでしょうか。古いです。が、今のところ、「1冊で一通り満遍なく、しかもある程度短期間で終えることができるもの」、というニーズで探す時に、これを越えるものはないように思います。
私が高3の授業で使っている<単文の英作文100題・解答解説英作診断テスト2010.pdf 直>は、すでにファイルを公開しています。ファイルを開くのにパスワードが必要ですので、左のアンテナよりお入り頂き、私のメールアドレスへメールをお送り下さい。折り返しパスワードをお知らせします。

明日は、マラソン大会。天候がちょっと心配。
その翌日の土曜日は中国地区のエルゴ大会。選手の体調が気になります。
でも、明日は明日の風が吹きますよ、きっと。

本日のBGM: 冬の鏡 風の鏡 (井上鑑)