「あれは学校の先生の思いつき」

ELEC協議会より、受講者のアンケートが送られてきました。回収率は64%とのこと。大まかな評価では、

  • 満足 : 普通 : 不満 = 85.1% : 14.8% : 11.1%

という比率。
以下、感想。いいところのみの抜粋ですからご注意を。上手くいっているように見える授業にも必ず裏が、そして所々に嘘が隠れていますから。

  • こちらが妥協しない限り、指導は可能だという勇気をいただきました。GTEC Writing Trainingのテキストは大変参考になります。是非活用させていただこうと思います。
  • 実践的なとりくみを様々ふれることができてよかったです。気持ちのこもった講座をうけられて、とてもありがたかったです。
  • タテマエではない話がきけてよかった。inspiringでした。
  • 先生の集大成のようなものを見せて頂き、とても参考になりました。英語を教えるためには、研さんを積まなければならないと強く思いました。具体的な方法論も確かに大切ですが、今日は、そのようなものより、先生のライティングに対する強い思いを知ることができたことが、何よりうれしかったです。ありがとうございました。

その他にも、個人的にメールで感想を送って頂いた方々もいらっしゃいました。深謝。

アンケートやメールでの「フィードバック」を受けて、改めて考えたこと。
私の発表をしばしば見て頂き、その度にいつも鋭い指摘をして下さるある先生から、

  • 今時パワポも使わない、ワードで見せるにしても余白があってフォントサイズが小さい、スクリーンが暗くて見えない、実物を書画カメラで見せても小さくてよくわからない、ハンドアウトのフォントも今時あり得ないくらい小さくてびっしり書かれている、にもかかわらず、受講者は講演者をじっと見つめて話しを聞いているのが不思議。

と言う趣旨の感想が寄せられました。こういった話し方・見せ方・伝え方は、普通は、最低のプレゼンと酷評されて、リピーターもいないだろうし、まず、プレゼンとして成立しないだろうと思われるので、本当に不思議に映るのだろうなぁと思った。

  • 「効果的なプレゼンテーションの技術」や「話術」を磨くことからの脱皮

というのは、ここ何年かずっと自分で志向してきたことでもあるし、午前中の「ELEC同友会サマーワークショップ」のS先生のプレゼンを見て自分の中では感じるものがあったのだと思うが、私自身、「わかりやすい話し方」「わかりやすい見せ方」、さらには、「わかりやすい内容」というものを敢えて避けて皆さんの前に立って話しているのだろうな、という感じがする。
ことさら、受講者を励ましたり、やる気を出させたりという要素が前面に出ているわけでもなし。さらには、研究熱心で真面目な人、熱意のある人が発する「気」を削ぐようなコメントや指摘が入ったりもする。
今回だと、たとえば、「テクストタイプに応じて、アイデアジェネレーションの手法を限定して指導する」と自分で言っておいて、「そもそも論」で、テクストタイプの分類を示すマトリクスを板書した後で、

  • こういったマトリクスになっていると、何か分かったような気になってしまうけど、この「原点」に位置する文章はどんな文章なのか?というのはよく分からないわけですね。単に、2つの軸を重ねて便宜上示したものに過ぎないことをよくわきまえておくことが大切。テクストタイプの分類は、いろんな人がいろんなことを言っているので、あくまでもひとつの物差し、便宜上の一分類であることをお断りしておきます。

などといわれて、やる気がむくむく湧いてくる人はあまりいないだろうなと、私自身思います。
質疑応答で評価の枠組みの話しから、私がかつて用いていた「4Ds」というスキームについて解説を加えていて、

  • Define → Direct → Develop → (get it) Done なんて、自分で思いついた時は「俺って凄い!」なんて思ったものですが、こういう、頭文字とか綺麗に揃ったものは要注意です。揃えるために、どこか無理をしているから。

などと、言われて、そのスキームを高く評価できる人も少ないでしょう。
でも、こういうものでいいんだとも思います。誰にでも当てはまるのは所詮「最大公約数」ですから、「今の自分の抱えている現実の数値」に満たないことの方が多いわけです。と言いかけたそばから

  • 比喩は必ずしも、そのものを表してはいませんから。

と水を差しておきます。
そういえば、研修会の冒頭で、Input とOutputという用語を板書して、

  • この2つでさえ、本当に何を指しているのか、実態が曖昧なのだから、”Intake” っていうラベルを貼って、さらによく分からないものを取りざたするのは慎重に。それぞれの定義を地に足をつけて考えておきましょう。

と、呼びかけたのだったが、真意は伝わっただろうか…。
質疑応答で出てきた「評価方法」で、やはりまだまだ、「内容・構成・語彙・文法などという観点に分けて、それぞれを数値化する評価法」を客観的な評価方法だと考える人が多いのかな、という印象を受けました。質問者の言及する項目が細かくなってきたので、途中で遮り、

  • 私は一貫して全体的・印象評価です。一人で多くの英文を評価する際にそれに勝るものはありません。

と応えたのですが、本当に意外そうな表情を浮かべていたのが私には意外でした。即、「それぞれの教師が、勝手に点数をつけていいんですか?」と質問が続きました。むーん。「勝手」というのとはちょっと違うんですね。今回は、マネジメントにも重きをおいた内容だったので、補足しておくと。

  • 「評価者間信頼性」と「評価者内信頼性」の両立は難しいので、まずは、「評価者内信頼性」を自分の中に作る。
  • 「評価者間信頼性」を高めるために、摺り合わせをきっちり行うには厖大な時間がかかるので、それぞれの答案を2人とか3人とか担当者が全て評価して、その評価を平均する。
  • それにしても1学年300人とかいると厖大な答案となるので、本当に生徒に書かせたい、「書かせずんばなるまい」という英文の量を絞り込み、制限する。
  • これを「英語I」とか、「英語II」などのいわゆる総合的・統合的な科目での「書くこと」の評価で行っていきながら、「評価者間信頼性」を高めるための摺り合わせを続けて行き、「ライティング」といった書くことに特化した科目の評価に活かす。

というように考えてはいかがでしょうか?
もっとも、「評価者内信頼性」、ひいては評価方法そのものの「信頼性」を高めること自体も容易ではないので、まずは、授業をしている「教師」その人を信頼してもらえるかどうかにかかっているのだと思います。
本日のBGM: 竜宮の使い (元ちとせ)

以下、今回の研修会の内容に関連するファイルです。
ELEC20100814レジュメ.doc 直
四角化001-010.pdf 直
3年生必修英語 スピーチ課題.doc 直
10普2-4W1末問.doc 直
要約の指導09.doc 直
名詞の大きな固まり と 文 との識別.doc 直