盆・煩・本

沖縄から帰ってきて、ゆっくり休んでいるのは、選手だけで、私の方は、1年生を連れて、翌日から湖へトレーニングでした。そのさらに翌日は休みにしてもらって、週末は東京へ。ELEC協議会の夏期研修会の講師です。
テキスト冊子はB社から既に送ってもらっていたので、私は自宅にあるライティング関連書籍、雑誌類をインターハイで使った合宿バッグに詰めて持って行くことに。預ける荷物が20kgを越えると追加料金を課されるので、機内持ち込みのキャリーバッグの方に数冊希少価値の高いものを移して、合宿バッグは手荷物預けカウンターへ。
総重量18kgでした。
こちらの空港へは、自宅から自分の車に積んで、駐車場からはキャリーバッグの上に載せて引っ張って行ったからそれほど大変な感じはしなかったのですが、羽田に着いてから、18kgのカバンを持って階段の上り下りがあることを失念していました。右肩はインターハイ前の練習で痛めていたので、左肩だけで担いでいたらうっすらと内出血。弱っ…。
JR水道橋駅の出口を間違えて、ぐるっと回ってホテルに着くまでに大汗をかいたのでシャワーを浴びて小休止。同友会のスタッフに連絡を取ると、サマーワークショップの懇親会の最中でした。
タクシーで現地へ赴くと、皆さんお店から出てきたところ。若手の企画する二次会に合流して、数曲歌ってきました。
翌日は朝一でELEC協議会の新オフィスまで18kg分の本を運び、使用機材の確認をして、同友会のサマーワークショップの陣中見舞いへと移動。途中の後楽園ゆうえんちは朝だというのに家族連れで大にぎわいでした。
控え室で数人にご挨拶。ワークショップ2コマの間に移動しながら見学。
H先生の「定期試験」、T先生の「音読」、K先生の「語彙」に続いて、大学の大先輩お二人のお話。
前半のS先生の発表は久しぶりに拝見。「コミュニケーション」と「文法」という切り口で、導入での適切な扱いと、運用にいかに繋げるか、という部分に重点が置かれていたように思いました。静かで落ち着いていながら、絶妙の間で、笑いの中に核心を突き、真理を掴む、というような語り。私の場合は、たいてい「自分が知っていること、これまで学んだこと、身につけたこと、を盛り込めるだけ盛り込んで、練れるだけ練って、作り込んで」というような発表になるのだが、S先生の場合は、まったく肩に力が入っていないというか、S先生のデリバリーではなく、S先生が示したことがら一つひとつが力を持っているという感じ。
文法項目の導入に関しても、英語学の知見をいたるところに盛り込みながら、

  • でも、こういうことは、いろいろやってから与えたり、示したりすればいいことであって、最初にまとめて説明したりなんかしたら台無しですね。

という項目がいくつもあって、研究熱心な英語教師の陥穽を浮かび上がらせてくれました。この境地に辿り着くにはどれだけの経験を積まなければならないのだろう…。
後半のH先生のワークショップは、それまでにH先生が教えてきた生徒が実際に産出した英語表現をもとに、指導で用いる実際の英語の例文と導入方法を考えるという流れ。文法項目としては「仮定法過去」のみに絞って、適切な例文と導入方法を考えるというワークショップ。私も教室の後ろで考えていました。単なる「絵空事」のmake-believe なタスクを越えた、「現実とのギャップ」を仕掛けるのは意外に難しいものだと実感。自分ならどういう例文を切り口に使うだろうか、と思いついてメモした例文は、

  • If you were a boy/girl just for another 24 hours, what would you like to do the most?
  • If you wore a different first name, what would be the one?
  • If you were a teacher, what would be the last thing for you to do?

の三つでした。
先輩の底力を肌で感じた一コマで、陣中見舞いに行ったこちらが多くの刺激を受けて帰ってきました。
午後からは、ELEC協議会の夏期研修会。
42名の受講者の皆さんを得て、講師ができたことに本当に感謝します。ありがとうございました。
自分がELECの協議会の研修会で講師をつとめるのは3回目。使用機器の不具合など想定の範囲内のトラブルを乗り越え、質疑応答に20分を割いたものの時間超過の末終了。自分の話の途中で、これで「ライティング」という科目そのものがなくなってしまうのだ、という重い現実を前に、悔しさで言葉が出て来ませんでした。お見苦しいところがあったことをお詫び致します。
内容など詳しくは、受講者の感想や意見を踏まえて整理し、改めてダウンロード可能なファイルは公開しておきたいと思います。研修会の途中で2度ほど休憩を挟み、今回私が持ってきた書籍・雑誌で興味関心のあるものは借りていっても構いません、ということにして、18kg分の書籍・雑誌に目を通してもらいました。今や絶版の書籍、廃刊の雑誌も多いので、返してくれるのが分かっているなら貸してあげた方がいいじゃないか、という思いつき。自分自身、本を買う金はケチらず、自分の足で探して、身銭を切ってというスタンスでしたが、実際に専任から非常勤講師へと転じた時に、その「身銭を切る」ということの大変さを身をもって味わいましたので、これでお役に立てるならという気持ちです。おかげさまで、私の帰り道の「合宿バッグ」は空になりました。
今回の研修会で個人的に嬉しかったのは、公立高校時代の同僚が来てくれていたこと。午前の部の担当の方がお目当てだったのかも知れませんが、久々の再会でした。
受講者の方々は、遠くは北は北海道、南は四国、九州から。お盆の時期だというのに丸一日、研修会に出てこられる先生方の想いに応えられていれば良いのですが…。
研修会の会場を後にして、数名の受講者の方と一緒に、神保町の三省堂本店で開催されている「ELECの夏期研修会講師の推薦図書」を見に行く。ラインナップをみると、

  • ほほーっ。

とか、

  • ふーーん。

など、いろいろなものが一つの棚の中に同居しています。せっかくなので、ポップアップでどの先生がどの書籍を推薦したのかが分かるような見せ方だと良かったのにと思いました。
沖縄以上の猛暑にめげずに、復路。
往路の機内サービスは気流が悪く揺れが激しかったため、私のところに回って来る前に着席指示が出てしまい、何も頼めなかったので、この復路では、迷わず、

  • 青切りシークワーサ

を注文。インターハイのレース会場でもあった大宜味村産の果汁を使った飲料です。
機内で『新英語教育』 (三友社出版) を読んでいたのだが、CAさんが座る対面の席だったので、降りる際に、

  • 学校の先生でいらっしゃるんですか?

と訊かれ、

  • 高校で英語を教えています。

という話しに。英語の先生にしては色が黒すぎると思ったんでしょうか?もっとも、その後KANの歌のようには発展せず、笑いもオチもありません。
明日は、早朝に遠い方の湖へオールと工具類を取りに行き、学校に戻って後期の課外授業。午後からは近い方の湖で乗艇練習です。

本日のBGM: 涙の旅路 (初恋の嵐)