自業自得、身から出た錆、自分のまいた種

例によって週末は本業。今週は朝のスタートが6:00だったので比較的楽だった。とはいえ、土曜日は午後からライティング部会。今年の大会の分科会は私がメインなので、私が今のところ抱えている資料を他の先生に提示。意見交換。ワークショップの切り口や落としどころを考える。入試問題を素材に授業での英語学習に使えるように「料理する」ということで、現場の高校教師ではなく学生の参加が多いとワークショップそのものが成立しない可能性が高いのでリスクの大きい企画なのだなぁ。こういうことを言うと多くの高校教師を敵に回すかもしれないのだが、私の基本的な考えは、

  • 入試問題をそのまま、時間を計って生徒に教室でやらせるだけで終わる活動は英語の授業ではない
  • 類題を設定したり予想問題を作成したりする能力それ自体は英語教師の英語力・指導力とは関連が薄い
  • 生徒の解答後に添削や解説をするだけの活動は英語の授業ではない
  • かといって、生徒が入試問題を前に手も足も出ないようでは英語の授業で力をつけたことにはならない

というもの。
もっとも、全国の高等学校の学校種、学校間格差を考えると、「大学入試にxxがでるから」ということで授業内容が規定されてしまう高校は、どんなに意気込んで数えても、せいぜい半分くらいだと思うのだ。まず、事実関係として、かなりの数の高校教師にとって入試問題の解法に精通していることは直接的な授業改善の意味を持たないのだ、ということを常に頭の隅に置いておかないと、英語教育の「研究会」とか「学会」の存在意義は薄いものとなってしまう。
まあ、私がメインでやるのも今年が最後ですので、これをお読みの英語教育関係者の方、(東京都立高校の進学重点校の英語の先生方など)進学校・受験校での英語進学指導のエキスパートの方、予備校や塾でライティング問題を扱っている方、Five Paragraph Essayの指導がライティング指導だと思っていらっしゃるネイティブスピーカー教師の方、そしてライティング教科書編集に携わっている教科書会社の編集部の方など、ご批判甘受いたしますので、多数お誘い合わせの上、11月5日(日)当日、拓殖大学までよろしくご足労のほどお願いします。
そんなこんなで土曜日は、K先生と駅近くの新装開店のお店で反省会。それほど遅くならずに帰宅。日曜日も朝6:00スタート。朝方はかなり寒くなってきており、パーカーが手放せない季節となったのを実感。本業にはつきもののトラブルがあったのだが、先方の学生が鼻持ちならない態度と思考だったので「教育的指導」を与えました。昼に仮眠を少し取って回復。終了は午後7:30。いよいよ来週金曜日からイベントなので、明日の朝は5:00スタート。2時間ほど見て、その後学校へということになるでしょう。帰りがけに、高3の生徒から、「過去問を解いたので是非見て欲しいのですが、今週は忙しいでしょうか?」というお問い合わせメールが。通り一遍の添削をするわけではないことを相談する方もわかってきたということか。こういわれたら非常勤といえども見ずにはいくまい。
中間考査の準備も気になるところだが、まずは授業なので、高2の10月の歌コメント集作成と高3ライティングの「日本のことわざ説明」のキーワード集作成を明日朝までに完成させねば。こんな夜はBaden Powellに限る。追い込まれた時に聴くと頭が冴えて切り抜けられることが多い。ライティングの採点時などどれだけ救われたか数え切れない。昼に仮眠を取っておいて本当によかった。
コメント集のうち、若干名抜粋。

  • It was very hard to paraphrase each word in the blank, but it helped to understand what the poet tried to say.
  • I noticed “the world” contrast with “the world within”. I think many comparisons are used in this song.
  • 対比がよく使われていると思った。また空所の単語の類義語を調べてみると、他の部分で使われている単語と意味が似ていたり、一緒だったりするので、これからも類義語を調べてみようと思った。
  • Now I can be positive. “Challenge” is the main word of the song.
  • Every word has some kind of connection in this song.
  • The words in this song are very simple but their meanings are very complex.
  • 外と中の対比や、段落ごとに内容が工夫されていてとても面白いと思いました。全てOpenで始めても、こんなに内容が深くなるからすごいし、一つ一つの文は短いけどしっかり言葉一つ一つに意味が込められている。
  • I feel this song as a whole means “blessing”, and this song kind of reminds me of the church I used to go when I was in America.
  • Open toの後に入る言葉は簡素だけど、文脈から考えると、深い意味が込められていると思った。Adventureとriskのつながりみたいに、単語と単語でたくさん結びつきがあると思った。
  • Now I can find the cycle in this song. 抽象的なところが多いけれど、それがまた聴き手に自由な発想を許していて奥が深いと思った。
  • 様々な言葉を使っていろいろ言ってるけど言いたいことは1つ、みたいな感じ。言葉が廻っているような歌。
  • 今まで聴いてきた歌の歌詞と違って詩のようなので、淡々としているように見えるけど、それが逆に心の奥深くまで訴えてくる感じがした。もっと堅い歌詞や内容だと思っていたけれど、優しい歌なんだと思った。詩の形式を取っているのが素朴な感じがしてよかった。
  • 名詞が多い曲だけどそれぞれに深い意味があって聞いているとたくさんの想像ができる曲だと思った。聞いた人それぞれ感じ方が違うと思った。
  • I realized that beautiful words and calm melody go well with the theme of the song and make it impressive.
  • I now feel that every word in this song are connected with each other. To me, this song now gives the impression of tender love.
  • Now I feel that the song has more to do with wonders of the world, like certain people’s beauty or the risk in life. However, the ambiguity remains since I’m not exactly sure who sings the song to whom.

とまあ、こんな様子です。今回は2学期の重点指導項目、paraphraseとsummaryに必須の類義語の整理。
語彙指導に関しては、類義語はふんだんに与えます。反意語は認知負荷が高いのであまり深入りしません。既習語を引き合いに出す程度です。あと、接頭辞・接尾辞は高2まではあまり生徒を煙に巻くようなことはしません。(こちらを参照→http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20050617
前回のグループ課題のDylan Thomasの話と関連づけて読み返すとまた理解が深まると思われる。センスとか、感性で片づけずに、地道に仕込んでいかないと生徒間の格差は埋まらないし、生徒の成長も小さいものに終わってしまう。
今回、高3のライティング課題で、こうコメントしてきた生徒がいた。

  • 普通のことしか書けず、キラリと光るものがない文章になってしまいます。

まずは、普通だと思っている文章・言葉の中から、「キラリと光るもの」を見つける読みの作業に尽力すべし。それが「表現ノート」の趣旨なのだから。

本日のBGM: Pastorinhas (Baden Powell , 2000年)