『わかりやすさの本質』

いよいよ週末に『英語青年』10月号が発売の予定。
今回、『英語青年』の原稿を書くにあたっては、読解についてものすごく基本的なところから自前で考えてみた。かなり考えが明確になった部分もあれば、余計に闇の中へと迷い込んでしまったような部分もある。せっかくいろいろ考えたので、この機会にもう一度書棚の本を読み直してみようということで、日曜日はひねもす読書であった。(数多、原稿執筆の締め切りが迫る中の現実逃避とも言える…)
以下、英語関係のみを紹介。

  1. 高梨庸雄・高橋正夫(1987年)『英語リーディング指導の基礎』(研究社出版)
  2. 斎藤栄二(1996年)『英文和訳から直読直解への指導』(研究社出版)
  3. サンドラ・シルバスタイン(1997年)『自立した読み手を育てる新しいリーディング指導』(大修館書店)
  4. 高梨庸雄・卯城祐司編(2000年)『英語リーディング事典』(研究社出版)
  5. 田鍋薫(2000年)『英文読解のプロセスの指導 談話の結束性と読解』(渓水社)
  6. 古藤晃(2003年)『英文を読み解く以前に知るべき現代社会の常識』(ブレイス河出書房新社)
  7. 金谷憲他(2004年)『和訳先渡し授業の試み』(三省堂)

書棚にあってすぐ手の届く本がこの7冊、という事実で、私の読解への興味関心の在処が推察できようというものだ。どの本も、何回読んだだろうか、と自分で思うくらい読み込んだはずなのに、あらためて、1.のすばらしさを痛感。アマゾンで見てみるとまだ、版は続いている。未読の方はまずは勤務校の研究室の書棚を。私が買った87年当時は2600円だったのに、19年を経て価格は3600円に!本当に基礎の基礎からリーディングの問題を取り扱っており、まさに「必読の書」ではあるのだが、特に「3.単語の読みは漢字型か仮名型か」(pp. 37-53)と題された読字指導の章は、今風の読解指導であまりにも見落とされている領域に関わることであり再読の価値は高いと思われる。4.はそれ以降の英語教育界のトレンドも踏まえて理論と実践のバランスをとった概説書。
3.は翻訳当時ならともかく、現在では今風なのだろう。約150ページと薄いので通読は容易。「フィクション、詩、歌」の読解にまるまる第6章を当てているあたりが類書との違いか。
5.はこのブログでも再三紹介、言及しているもの。不幸にして絶版である。
6.は大学入試の読解問題対策で生徒に勧めているもの。英語に関わる内容であるにもかかわらず、縦書き右開きなのが玉に瑕。
今、日本国中に浸透しつつある「和訳先渡し…」の元祖である7.の読者は是非とも、2.の斎藤栄二先生のものを併せて読んで欲しい。斎藤先生の提言は常に、プラス面とマイナス面を考え併せているところが現場で有益である。

再読の結果わかったこと:リーディングを教えるのは難しい。
今日のタイトルは野沢和弘著(2006年)の生活人新書・169(NHK出版)のタイトルから。毎日新聞の記者が知的障害者とともに、バリアフリーな文章表現を目指す舞台裏が描かれている。英文リーディングの難しさとはまた別の読解の難しさを考える契機にはなるだろう。