Stretch your hamstrings.

tmrowing2014-09-21

「絶版先生」ネタが一つ入ったので、実作の話を暫く残していませんでした。「呟き」やFBから拾い集めて補足しておきます。

進学クラス高1は、『オレンジ本』をもとに、文整序パラグラフ完成、段落整序文章完成をやっています。その上で、音読、Read & Look up、対面リピートと進めて、段落内で、2つだけ「更なる練習が必要な文」を選ばせて、次時の冒頭、私が来るまでの時間に、その英文を練習しておくこと、という課題。ここで、何ができるのか、が大切。
それを踏まえて、今回は、「ラストセンテンス・ディクテーション (= LSD)」で、定着度の確認。文章が長くなると、Flip&Writeをさせている時間が十分取れなくなりますが、このLSDであれば、「匙加減」が効きますので、重宝します。
そうこうしているうちに、いつの間にか「イカソーメン」の準備が整ってくるわけです。

躓きやすいところは、関係代名詞が使われて長くなった主語の把握、イントロの副詞句に続いて、従属節を導く接続詞が出てくる文で、主節のSVを待てるかどうか、文の中盤や、後半での、名詞の連続が、列挙か同格かの見極め、などでしょうか。とはいえ、「躓きどころ」では、躓いておいた方がいいものなのです。
ただ、教材の質から言えば、「読解」での、つながり、まとまりを考えるのであれば、旧旧課程の教科書は捨てずにとっておいた方がいいと思いますよ。

看護科2年は、『連結トレーニング』を少し先へと進み、助動詞の過去形が何を表すかということを、ドリルでやっておいてから、教科書新単元の語句の「仕込み」まで終了。
「意味と音」が結びつくには時間がかかりますから、<日→英>でやっています。発音・発声の留意点は、1年生と同じことをしつこく言い続けています。写真は私のメモ。

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高2進学クラスは、『P単』の一気食いと、『コーパス口頭英作文』の総復習。身につくまでやることです。過去ログでも書いた、かつぞー先生のことばを反芻して下さい。

これは、先週「呟いて」いますので、そちらから再録。

@tmrowing: 清水かつぞー語録:テキストそのものがドリルブックになっているというのが最大の理由。そのドリルに取り組めば必ずそれなりの効果が生まれます。誰よりも使っている本人が分かるはず。その到達度をさらに誰か別の人がチェックするなどということはどうでもいい。(『P単』に付属のテストがない理由)

@tmrowing: 清水かつぞー語録:本来ピー単というものは、範囲を決めて課題とし、そこをテストでチェックするという教材ではない。もともとそういう発想から生まれたものではない。(中略) 学校採用が増えるのは嬉しいのですが、あまりにも細かく範囲を決めてチェックテスト形式で利用されるのには抵抗がある。

@tmrowing: 清水かつぞー語録:最初からきちんとやっていくよりも、忘れてもいいから、全体をざーっと何回も繰り返し (おそらく20〜30回)、繰り返す度になんかの縁で定着していく連語が少しずつ自然に増えていくという方法が一番であろうと確信している。

それにしても、南雲堂は、酷い改訂をしたものだな、と思います。
私が、こちらに来る前に、通勤時に使っていた『金メダルコース』の実物のとあるページ。自分で幾らでもカスタマイズでき、どんどん使い勝手が良くなり、思い出すだけでなく、ここから拡がりを作っていくことのできる、「シンプルさ」が良かったのですよ。

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二枚目の「ひかがみ」の書き込みなどは、最所フミさんの影響丸出しなのがよく分かりますね。

高3は、「表現ノート」の提出が終わり、『L&R』の新しいユニットに入り、ビジネス系の話題。いきなり大人の英語に近づいたところで一段落。
「反意語を援用した語義の理解」で、ホワイトボードへ。私の授業では、どの学校でも高2、高3くらいになると頻出する手法ですが、「学級文庫」と「ホワイトボード」があると、本当に助かります。

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この写真も、「呟き」の方で貼っておいたら、日向先生にRTされたので、多少関心を持たれた方もいるのでしょう。

高3の授業の一コマ。personalとprivateの語義を実感するための地味で遠回りな作業。対極概念を想起して、それをひっくり返して戻ってこれるか?と問うています。ここでは、publicを想定。

privateではpublicに加えてofficialを想定。マトリクスでも考えてみる。P. Nationには怒られそうですが、授業では「反意語を援用した語義の理解」と呼んで、多用する手法です。

反意語として、想定した「語」を否定して、「publicではない」「officialではない」と考えたときに、「あ、そうか!」となればしめたもの。「ごっつあんゴール!」みたいなものですが、そのためには、publicやofficialの方には実感がなければなりませんから。

授業での問答。officialに対応する名詞は?
そう、office。
学校でofficialでpublicなエリアは?
事務室の窓口。事務室の中は、officialだけどprivate。
そう、英語圏だと、PRIVATE「関係者以外立ち入り禁止」というサインがあるね。

と言って、iPad miniの小さな画面で「サイン」の画像を示し机間指導。

では、personalでpublicなものといえば?
私のブログやTwitter。素姓を明かした上で、オープンなものとして書いている。
では、personalでprivateは?
そう、「鍵アカ」。うちうちでしか見られない。

授業では、この続きから。

personalではin person=personally 「本人直々に」まで説明済み。対局概念を想定する時、officialとかpublicに行かないとすれば、anonymous辺り。ベタで反意語となればimpersonal。

personal続き。対極概念として想定した publicを、general public という語義で捉えられれば、Nothing personal. や、Don't take it personally. あたりも、もう少し実感が伴うかも。まずは「的」を突き詰めることから。

「私的」「個人的」と、「的」で分かったつもりになっていると、「的を外すよ」ということです。

高3の週後半は、『プラネット・ブルー』(旺文社) のReadingをサラリと。
この教科書は高校生に読ませる英文の精選&配列が良くできているという印象。
好印象の要因としては、

  • この教科書のための書き下ろし英文がない。
  • 海外の他のELTの教材からの転用や、トリムしたり易しく書き直したりした英文が少ない。
  • 本編は、内容理解の「発問」などのお膳立てを極力排してあり、とにかく通して読ませるようにレイアウトしてある。

があげられます。
教科書著者陣の、読み手としての「目利き」、授業者としての「腕利き」の面目躍如と言えるでしょうか。
まあ、例によって、私はオリジナル文章の著者になったつもりで筆写して教材研究ですけど。実際に書き写していて、フラストレーションがこんなに少ないのか、とちょっとビックリしました。

ということで、気持ちよく、授業を終えて週末は本業。
悲喜交々というよりは、是々非々という感じでしょうか。来月は長崎国体に成年チームのコーチとして参加しますので、県の新人戦直前に全く練習ができないのですね。少年チームは中国ブロックを突破できなかったので、この時期の他校は新人戦の更に先、選抜大会を見据えた強化に余念がないところですから、その差を埋めるのは容易ではありません。選手にその自覚が芽生えないことにはナントモ…。

本業と言えば、先週末は、戸田で「全日本選手権」がありました。
今の日本のトップ選手、クルーがどのようなパフォーマンスを見せてくれるか、TVで観戦。
世界選手権の代表選手が自分のチームで納得のいく成果を上げられるとは限りません。
女子2Xの富山国際大の加速の強さ、そしてレースでの勝負強さが印象的でした。男子8+は、明治安田生命が切れ目なく加速を継ぎ足して優勝。リリース直後の加速がピークに達する際の艇の挙動、エントリー周りで、減速の谷がどうしてもできてしまうフェイズの艇の挙動がとにかくスムーズで、SRDの性能も活かし切っての勝利という感じでしょうか。

実作との彼我の差に眩暈がしそうですが、「やらずんばなるまい」(inspired by はま先生)ですね。

最近の自分自身の「勉強」としては、1992年で自分の理解が止まっていた、Patrick J. Duffleyの2006年の著作を読んでいます。冒頭の写真がその書。

  • The English Gerund-participle: A Comparison With the Infinitive

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92年の著作は「不定詞」を扱ったもので、随分とお世話になりましたが、この本では焦点は ”ing形” にあります。BrownやLOBなど、古いコーパスからのデータもあるようですが、ただ「理屈」を拵えるのではなく、先行研究も、現代の実例も踏まえた上で、詳細な ”to 原形” との対比がなされています。

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やはり、この分野での第一人者だな、と思わされる内容でした。

ナラティブな文章の特徴について考えるために、改めて読んでいた、
Jean Quigley (2000). The Grammar of Autobiography, LEA

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にも共通する事柄と言えるかも知れませんので、書き記しておきます。

「独創的なアイデア」を言葉にすることも大切ですが、その時に、自らの「独創性」をどのように裏付けるか、その部分に研究者としての腕の見せ所があるように思います。
「独走性」や「独善性」は、いくら誇っても、「追試」もしてもらえないでしょうから。
先行研究・先行実践を丁寧に追うということは、自分が先人の肩に乗るということでもあります。それによって、豊かな地平が見渡せ、自分がどこへ向かうのかが分かるのですから。
その際には、自らが乗る先人の肩を感じる「足裏の感覚」と、自分の肩の上に乗る人がいるかもしれないという「畏れ」という二種類の「センサー」を持つことが大切なのだと思っています。

本日のBGM:Where are you heading to? (James Iha, 『高橋幸宏トリビュート』より)