mew, pur and whatever you name it

先日、現任校の広報担当の先生から「地元のCATVが学校の取材にくるので、授業風景を撮りに行くかも知れないからよろしく」という流れで、午後の高2の授業の途中でカメラマンご一行様と担当者が教室に。
授業でやることは、既に一度読んでいる英文を元に、私が「四分割」と読んでいる「活動」、のさらに下準備段階の「作業」。

・A3 (B4でも、まあまあ許容範囲) の紙を4つ折りにして折り目を付け、4つのセクションを確認。
・左上に、本文の1つの段落をそのままコピー。 (コピー機でコピーして貼り付けてもよし。)
・ 左下に、その英文の「名詞」を抜いて、コピー。ここは手書きで写すこと。<名詞は四角化で視覚化>ができるのだから、抜けた名詞のところは四角がついていて、中が抜けた状態にしておくこと。 この段階では、ワニは放置。ワニの腸内環境は名詞抜き。
・ 右上に行って、今度は時制の決まった「動詞」「助動詞」を抜く。「時制が決まればとじカッコ」は、動詞・助動詞の左側につける約束事だから、そのとじカッコの右には、スペースを残しておく。「番付表」の形合わせも、とじカッコのつく助動詞の方だけを抜いて、付き人は抜かない。
・ 最後の右下は、冠詞類 (所謂「限定詞」) と前置詞を抜く。四角化するときの名詞の目印が「限定詞」なのだから、下線の始まりが抜けることになるので、その部分は下線の上にスペースが空く。前置詞には「ほにょほにょ (=波線)」 をつけるのが約束事だったから、波線の上は空白となっているはず。

毎年やっている「作業」なのですが、趣旨や意図が分かっていない人が今年は目立つように感じます。
「お客さん」の前で嫌だなとは思ったのですが、ダメだししておきました。

惰性でやっていたら何の意味もないよ。一文をピリオドや「?」まで書き写してから、当て嵌まる情報を消しゴムで消したり、ホワイトで消して何の意味がある?左から右へと書き写している最中に、ちゃんと構造が理解できているかが問われている。イントロの「どどいつ」を書き写しているときに、<前置詞+名詞>の処理が済んでいるはず。そして、そのイントロの終わり=メインのSVの始まり、を予測して進んでいるか?ということ。この活動で “By that time,” というフレーズを書き写しても何もせずスルーしているのであれば、音読を繰り返してもご利益はない。その音読も惰性になってしまうから。

私の授業では、「大関」と呼ばれる助動詞のhaveですが、どんな生息域なのか?ということが身についていれば、この by that time が出てきた時に、「大関」の気配とか、臭いがするはずなのです。裏返せば、身につくまでは、その都度その都度、その臭いを自分の身体に、実感に染み込ませるような「活動」が必要なのです。それが、ドリルの繰り返しであれ、タスクでの気づきであれ、衝撃的な一回のみの実体験であれ、「身につけ」られるのならばそれでいいと思っています。

因みに、高3の授業で扱った素材では、こんな英文に遭遇しています。

By the year 2200, the Earth’s water was completely polluted. People could no longer drink water, they had to use other types of liquids. (Planet Blue Reading, 旺文社より抜粋)

ここでは、By の予想に反して「大関」が出てきません。しかしながら、受け身の表現に「付け足し」されたかのような副詞 “completely” があることで、<完了>のイメージは整合しています。裏返せば、ここは副詞のcompletelyの方がSV以上に情報量が多いのです。
2文目の、”no longer” でも同じことが言えます。ここでは「水が飲める締め切り」を過ぎてしまうわけですから、<助動詞+動詞の原形>以上に、副詞句の方が「効いて」いるとも言えます。
文型の把握では、とかく副詞の類の「枝葉」を取り去るような対応をしがちです。しかしながら、その木が何の木なのか、せっかく「葉」の形が教えてくれるような場合でも、バサバサと枝葉を切り落として粗雑な読みばかりをしていては、いつまでも「概要把握」の力、<鷲掴み>をする「握力」は養えない、とおもうのです。今上で引いたような英文はそういう好例でしょう。
by の生息域を観察する、「すっかり」「きっちり」「とっぷり」といった「擬態語」で表されるような「実感」を自分に取り込む作業、を「生き直す」ということばに込めて説き続けています。
高3の課外講座では、「模試」の解説もしています。
駿台との共催で、少し作問がこなれたかな、という印象です。こちらのストレスが軽減されるのは歓迎すべきことです。
文法語法の出題でも、空所にもっとも適切な語句を補充して英文を完成させる問題で、

問2  We insisted Tom pay the bill this time, but he [空所] and left without paying.

という設問が目につきました。文法語法問題を扱った「過去問対策教材」では、insistに続くthat節中のSVのVに当たる語の語形を選択させる出題を収録しがちなところです。しかも、insist は過去時制で、that節中の主語に当たる語は「三人称」である「人」が扱われている場合が多いでしょう。
それに比べると、we がどういう人が複数人集まっているのかが不明で、the bill の中身も不明ではあるのですが、but の対比に着目すれば、日本文が与えられずとも、意味は処理できるところなので、まだ「マシ」な出題でした。

問4 Susan sat reading a magazine, with her baby [空所] beside her.

では、Susanが女性であることは分かろうというものです。いや、私のクラスの生徒でも、それは分かっていると思います。それでも、Susanがどこにいるのを誰が過去形で描写して、他の誰に伝えているのかはよくわかりません。小説の一場面でしょうか?ここでは、カンマの右に接続詞がありませんから、とじかっこが来ないということが絶対的な制約。4つの選択肢のうち、was sleepingを選んだ場合は最悪の選択でしょう。 slept はまだ、受け身の-ed/en形という可能性は残していますから、「間違えるにも程がある」の「程」の端っこくらいには居そうです。-ing形と -ed/en形との識別の観点で、

  • 「動画」か「静止画」か?

という指導をした時の、英語ができない生徒の考え方だと、「おぎゃーおぎゃーと泣いているのとは違って、赤ちゃんはスヤスヤ寝ていて動かないから『静止画』ですよね」などと思っていたりしますから、注意が必要です。「説明に用いることばの精度を高める」ということは結構難しいのですよ。現在の高3クラスは、豊富な用例を「生き直す」ことで、この識別を身につけてきた、謂わば「生き物センサー」を備えた人たちでしょうから、大丈夫だとは思いますけれど。
今年のセンター試験で初お目見えの、空所「二枚抜き」の選択陥穽じゃなかった、完成問題を模した出題も3つありました。本当に続いて出るのでしょうかね?

問10
“Look outside, Mom. It looks like rain.”
“We should ( A ) an umbrella when we go out ( B ) a walk.”

解答時間がかかる割に旨味のない問題です。Cの整序完成があるのだから、複数の空所を持つ対話文をここで問う必然性は全くないと思うのですけれどね。
自動詞でのcomeとgoの対比が、他動詞ではbringとtakeの対比となるという、基本動詞の理解は大切でしょう。名詞 (a) walkのコロケーションでは、COCAに拠れば、

go for a walk : go on a walk = 318 : 2

という出現頻度で、(?) go to a walkはゼロです。副詞のoutが付け加えられたことによって、迷った人が居るのかもしれませんが、takeの必然性を高める小道具として、外にある目的地へと向かうoutの効き目は無視できません。

そんなこんなで「過去問演習」を殆どやらない私の教えるクラスの3年生たちも得意な設問が、今年のセンターで出題された

  • 「不要文」選択排除による、段落の結束性を高める、パラグラフライティングの代替問題

今回の模試では、段落の最初の文と最後の文には下線が引かれていませんでした。ちょっと簡単すぎましたかね。
「ディスカッションもどき」問題は、司会者(役の登場人物)による、意見の要約、があるので、ライティング指導で言えば、主張のrestatementの代替問題とも言えるものなので、センター試験の設問の中では、授業で扱う頻度が最も高いものです。
今回は、久々に模試で真っ当な英文に当たったかなという気がしました。
例によって、意見を述べた後、司会者役が「要約」した内容に関して、決して異議を唱えることなく、話し合いは進んでいき、しかも見開き2ページの分量で一区切りつく、という超ウルトラスーパーご都合主義的な展開ではあるのですが、伏線の張り方や、それぞれの言い分の「のりしろ」などは他の模試に比べればしっかりと利いていたのではないでしょうか。
私が「ほーっ」と感じたのは、司会者役のGeorgeが、第一発言者のAlanaの発言を受けての、一言。

  • That’s encouraging.

この伏線の張り方は上手いと思いました。「ソーラーパネルを製造販売する側」ではなく、「購入し設置するショッピングモールの側」に属する人たちでの話し合いであり、「導入の是非の検討」=「ショッピングモールにとってプラスになるかどうかの判断」であることがしっかり捉えられているかどうか、この1語で試されるので、設問には直接引っかからないのですが、ここをスルーして先を急ぐのではなく、実感した上で歩みを進めていて欲しいところです。設問の最後の空所補充英文完成は、

  • So you’re saying that owners of electric cars will [空所].

となっています。この空所には、「ショッピングモールにとってのプラス材料」が入るのだろうと思って、選択肢から選ぶことになるわけですが、その伏線は既に、That’s encouraging. にあったといえるわけです。
今回のこの設問の英文ライターはちょっと気にしておきたいレベルです。日本人のライターだったとしたら、今度「仕事」の話など情報交換をしたいなと思いました。
この模試問題を解説するにあたって、

  • 菅原文太

を例に出していましたが、誰かわからないというので、昔のCMをYouTubeで見せて、私の伏線としておきました。

  • 天気力エネルギーの「朝日ソーラー」じゃけん!

という決め台詞を確認してもらって、That’s encouraging. は「朝日ソーラー」にとって? それとも「ショッピングモール」にとって?と問うたわけです。ちょっとお粗末でしたね。

高1は、段落内文整序。『オレンジ本』は中3レベルとは言え、10年位前の中3教科書が素材ですから、「ゆとり」よりも前のレベルです。初見で、段落内整序がスラスラできれば、まあ許容範囲です。
今回は、for example の用法、生息域、情報構造というか、話の流れ、を実感してもらうことが主眼です。「例えば」という日本語訳では、他の文章への波及効果もありませんから。

  • よりgeneralな情報 → for example → その情報を支える、よりspecific な情報
  • 全体を大まかに → for example → 部分を列挙

という概論を踏まえて各論。いつものお題です。

  • 個々の具体例を1つずつ聞いて行って、それが「何の例」として挙げられているのか、「お題」を答える。

というもの。

  • マグロ、タイ、イカ、エビ、アワビ、ハマグリ、ウニ、玉

とくれば、「江戸前寿司(ネタ)」ですね。
「魚類」というラベルに対しては、「イカ」「エビ」で「?」が浮かび、「アワビ」「ハマグリ」で「☓」がつくでしょう。「魚介類」とか「海産物」というラベルに対しては、「ウニ」は乗りきれても、「玉」で困るわけです。

  • 全ての具体例を貫く、共通項は何か?
  • より少ない事例で、統一した主題である「ラベル」をイメージさせられるか?

別に英語でやらなくても、十分にトレーニングが出来る分野・領域です。

国内の『英語本』では、

  • ケリー伊藤  『パラグラフ・ライティング講座』(研究社、2002年)

の第1章がオススメです。ここは、「何も英語でやらなくてもいいのでは?」と言えなくもない練習問題なのですが、それを日本語でしっかりとこなせる「教材」があまりないのだろうと思います。まずは、自分で手にとって確かめてみてください。

今日は、「今朝のことば」を担当しました。
これは、全校放送で、週一回さまざまな「お話」を聞くというものです。部活動の活躍のレポートなど生徒が話すこともありますが、大抵は教師が担当します。
私にも久々に回ってきました。以下、そのまま抜粋します。

おはようございます。立腰姿勢は出来ていますか?無理した姿勢は長続きしませんよ。第二の天性となるまでには時間がかかります。

教科は英語を担当していますが、授業中によく「ぞれぞれ・それなり・そのうち」の話をします。「君と、彼とは能力も個性も違うから、他との競争ではなく、それぞれ」を見ないとダメ。自分の現実に目を瞑らないとういうことです。「やれば誰だってできるようになる」とはいうけれど、それも「人それぞれ」だから「あなたにできること」と「彼、彼女にできること」とは違って「それなり」にしかならない。「自分のそれなり」を人と比べて不当に劣等感を持つ必要はないけれど、自分の成長を求めないのはもっとダメ。それぞれ・それなりが分かっていて努力を続けても、その成果も「それぞれ」で「それなり」だから、結果が出るまでの時間は「そのうち」です。「あなたのそのうち」と「彼・彼女のそのうち」は違うもの。そんなに時間がかかるんだったらやらない、という人には残念ながら永遠に「それなりの成長」さえ生まれません。だから、来る日も来る日も日々、今よりもbetterな、「よりマシ」な選択判断が求められるのです。それぞれ、それなり、そのうち、よりまし。頭文字をとって「そそそよ」。ただ、その発展途上では、「よりまし」選択の機会が増えるでしょうから、「それぞれ・よりまし」「それなり・よりまし」の繰り返しで、「そよそよ」。「私も〜」とか「私が〜」とか、「我」が前に出過ぎると「そわそわ」になってしまいます。「そよそよ」と爽やかな秋風が吹くような学びを体現して欲しいと思います。
とはいえ、この話をちゃんと聞いていない人は、次の私の授業が嵐か台風になるかもしれませんけれど…。

ありがとうございました。

進学クラス棟では「オチ」の部分で大爆笑だったそうですが、他の方々にはどのように受け止められたでしょうか。


さて、
受験対策の話も出てきたので、巷でよく言われる、「単語・熟語」について少し書いておこうと思います。
私のシラバスでは、語彙の指導の基幹教材を『P単』にしているので、『単語集』も『熟語集』も使っていません。だからといって、扱わないわけではありません。
前置詞は『私家版のハンドブック』を配布して折りに触れ授業で扱い、授業中に出てきた用例でより良いものがあれば、ハンドブックに書き込ませています。
基本動詞の意味と用法は長期休業中に集中して、豊富な用例とともに扱っています。
あとは、「表現ノート」の作成も含む、英語ということばの生態観察、天体観測ですね。
過去ログで言うと、

”Rhapsody in blue”
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20090327

に参考書籍や達人のことばの「引用」とともに、私自身の視座を示していますので、是非ともご覧ください。

本日のBGM: Onomatopoeia (Todd Rundgren)