”the body of work”

3学期始業早々に推薦入試。
作文の試験監督と会場管理だったのだが、当日朝は雪と路面凍結で交通機関に大きな影響が出て、一部別室受験の対応もありました。受験生の皆さん、お疲れ様でした。

土曜日からの連休を利用して上京。
まずは、自分の所属する「ELEC同友会英語教育学会ライティング研究部会」の月例会へ。
出席の予告をしていなかったので、驚かれました。私が英国に帰るリチャード・スミスから部長を引き継いでからしばらく経ちますが、山口に引っ越してからは、副部長の工藤洋路先生、長沼君主先生を中心として企画立案運営をしてもらっています。月例会の会場は、古くからの研究メンバーである和田朋子先生の勤める工学院大学。高いところが苦手な私にはドキドキのキャンパスです。
今年度の研究を受け継ぎ、次年度に向けての研究テーマをブレスト。そのうちに正式な告知もあることでしょう。
ライティング指導に興味関心のある方はこちらをチェックして下さい。

ELEC同友会英語教育学会研究部会ページ

日曜日は「英授研関東支部例会」へ。
関東支部新春恒例の「福袋企画」は、2007年に自分で発表して以来の参加となります。

その時の様子を記した過去ログはこちら http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20070120

今年は兵庫から加藤京子先生が来られるということもあり参加を決めました。加藤先生は今年度末まで高校の常勤をされているということなので、授業が見られる、お話しを伺える機会にできる限り足を運びたいと思っています。
参加者には若い方が目立っていたかな、と思っていたら、顔なじみの先生方と次々とご挨拶。
今年の流れは、「授業構成」を模した「リレー講演」ということで、

  • ウォームアップあの手、この手
  • 文法導入、本文導入あの手、この手
  • 音読指導あの手、この手
  • 教科書題材を深めるあの手、この手

というものでした。
久保野先生の「音読指導」で印象に残ったのは、「古い」と思われるような先行研究・文献にきちんと当たられていたこと。黒田巍は今までの講演でもよく引用されていたが、今回は”read and look up” でMichael West の一次資料を読み直していることに脱帽。私も小川芳男訳しか読んでいなかったので、早速古書を探索しました。引用されていた黒田巍 (1934年) は『英語の研究と教授』 (研究社) の「英語教授短評」から。言及されていた青木常雄『英文朗読法大意』は1934年。先人たちの残してくれた「成果」「遺産」を受け継ぎ、消化吸収し、次世代へ繋ぐ役割を果たしてくれていることにただただ感謝。

加藤先生の講座は一番最後だったので、お話を聞き終わった直後に空港へと移動しなければならない旨を最初にお伝えして、拝聴。加藤先生の場合は、誇張なしで、まさに「拝聴」なんです。「手を合わせたくなる」と評された方がいましたが、本当にそんな感じです。今回も、1986年の授業資料を添付してくれていました。私が教師になった年です。1回しかやらなかった授業の資料も。これはなかなかできることではないですよ。
一番深く響いたのは、

  • 教師の語る英語に言葉の力が要る

という部分と、

  • 教科書の題材や英文はそれでよいか?

という問いかけでした。
詳しくは、考えがもう少し整理できた時点で書こうと思います。

原点回帰ではないですが、自分の立ち位置を確かめ、英語教師としての迷い悩みを受け入れるのに、こうして「信頼でき尊敬できる先輩」の声を聴くことには意味があるなぁ、と感じて帰ってきました。

さて、
この連休中にあったもう一つの大きなイベントは、

  • フィギュアスケート全米選手権

です。
「一発勝負」で五輪代表を決めていたこれまでの慣例を破り、”the body of work” を評価しての選出、ということで悲喜交々、波乱の幕を閉じました。
アイスダンスは鉄板も鉄板、神業とも言えるレベルでデイヴィス&ホワイト組の優勝。200点越えですから。
男子シングルは、SPで抜群の冴えを見せたアボット選手が逃げ切りチャンピオンに返り咲き。
で、注目の女子シングル。全米が待ちこがれたスター、ヒロインの誕生、となるはずでした。

  • グレイシー・ゴールド選手の初優勝、五輪初出場!

SPから、髪型も変え、ウオームアップスーツを脱いだ瞬間に見えた僧坊筋の張り具合に、今大会に向けどれほど練習し、絞ってきたのかが直ぐにわかりました。昨秋からコーチを名伯楽フランク・キャロルに変えたことに加え、SPはGPシリーズのNHK杯後に、ローリー・ニコルの振り付けでプログラムを刷新。この選択が、まさに大吉と出たと思います。フリーではフリップの着氷でよろけてましたが、他の選手との差は歴然としていました。ダブルアクセルがクリーンに降りられたことで確信したのか、最後の方は滑りながらガッツポーズが出てしまい、かつての伊藤みどり選手を思い出しました。
本当に彼女の魅力が満開となった大会でした。
米国の五輪枠は3。残る2つは、アシュリー・ワグナー選手と長洲未来選手だと誰もが思っていたのではないでしょうか。ところがそこに新星が割って入りました。SPで二位につけたのはなんと、

  • ポーリン・エドモンヅ

博多のJGPFに来ていた15歳の選手です。なんと5月生まれで五輪出場資格有り。未来推しの私の胸には不安の暗雲が立ちこめました。このエドモンヅ選手は、博多で見た公式練習でもジャンプの難度が高いことは分かっていましたが、精度で難点があるなあという印象でした。実際、SPで大崩れして、フリーでは「会心の演技」で挽回したものの、ロシアの13歳のソツコワに及ばない得点で2位だったのです。
その彼女が、フリーでもGOEと「演技構成点」で大きく伸ばして二位でフィニッシュ。
3位には、ほぼノーミス。演技終了を待たずして「スタオベ」となった長洲未来選手が入りました。
ワグナー選手は明らかに緊張していて、2回の転倒で4位。
そして、連盟からの代表選手の発表は、

  • ゴールド、エドモンヅ、そして、ワグナー

となったのでした。

  • Why is Mirai left out?

長洲選手のファンだけでなく、この競技を見ている様々な人から、米国人以外からもコメントが寄せられたこの頁をずっと眺めていました。

賛否異論はあれども、多くの人に読んで欲しい「声」がここには響いています。
ワグナー救済のための「論拠」として、”the body of work” を言い出すのであれば、シニアでの国際経験がないエドモンヅ選手を選ぶ説得力は薄いでしょう。舞台裏での「力学」が働いているのでは?と勘ぐられる類の説明しか連盟からはなされませんでした。
更に不可解なことに、ペアと男子シングルでは、僅差での五輪代表枠争いで敗れた選手を、世界選手権の代表に選出しているのに、女子シングルでは、長洲選手は4大陸にしか選ばれていません。これが、今の「アメリカ的」な論理なのだなぁ、と釈然としないまま週が明けました。
今回の全米選手権は、シーズンパスを購入したICENETWORKのストリーミングで観戦していました。
男女シングルの最後2グループはNBCのストリーミングに移り、時々カクカクしながらも最終滑走まで見ることが出来ました。どの種目も、優勝者はクリーンな演技で、近年希に見る、納得のいく王者・女王だったと思いますし、観客との一体感なども久々に良い大会だなぁと思わせてくれるものでした。

男子のSPを終えたアボット選手に、私の大好きなタニス・ベルビンさんがインタビューをしていて印象に残っています。最後の方で、

  • 個人的な感想とお断りしておくけど、SPでの演技がまるで別人でした。どうやって、この変身を成し遂げたのですか?

と、トップアスリートならではの質問を投げかけて、いい話を引き出していました。
(大幅に意訳して載せておきます)

そもそも、(SPで)僕の滑っている曲は、君が映画のPinaを見た後に、「この曲で滑ったら?」と僕に言ってくれた曲だからね。それで、昨年のSPをやってくれたNathan Lanierに頼んでオリジナルの編曲をしてたんだ。そうしたら、本当の作曲者である、三宅純さんから連絡が来て、「君のために編曲しなおしたい」と言ってクリスマスの時期に、僕のための編曲をやってくれたんだ。全てがそうやって実現してからは、そのアレンジで滑るのが本当に素晴らしくて、僕の後ろにはこんなにも沢山の人が支えてくれている、ということが実感できたし、このSPを創りあげようと一人ひとりが込めてくれた魔法に思いを馳せたんだ。

こんなところで、タニスが貢献していたとは!飛躍の陰に美女の支えありということでしょうか。
登録なしで見られるのかちょっと分かりませんが、リンクを。

本日のBGM: Right Behind You (Acoustic Version) / Denison Witmer