”All ’n’ All”

tmrowing2013-03-20

今日は、新入生の「仮入学」で配付する、資料の差し替え。
毎年新入生は変わるので、前年度のものをただ使い回すわけにもいきません。[この冒頭の写真の詳細はこちら↓
音声指導_綴り字.jpg 直
教科書や教材の「トリセツ」も大事ですが、「発音と綴り字」「音読の基礎基本」などをどこまで扱うか。
学年指定の採択英和辞典は、『エースクラウン英和』 (三省堂) です。
学習頁の「リスニングのコツ」を、私が書いていますので、痒いはずのところに気づいてもらうのには重宝します。
「弱形」についての詳しい解説は、水光雅則先生の『文法と発音』 (大修館書店、1985年) に見つかります。「音声学」をきちんと学んでこなかった人には、音声表記がやや難しいと感じるかも知れませんが、日常の平易な語彙を用いて、身近な具体例を援用して解説されています。(「黒柳徹子」さんが出てきた時はちょっと驚きましたが。) 第3章「機能語の発音」 (pp. 105 – 193) が詳しく、かつ分かりやすいでしょう。
『ファンダメンタル音声学』 (ひつじ書房、2007年) では、4.4 (pp. 121-140) が、「弱形と強形」の使い分けに当てられています。
今井 (2007).jpg 直
音源は、トラック数の限られる音楽CDではなく、CD-ROMにmp3で収録されています。細かく練習するには便利です。豊富な練習文例は、「練習73」(pp. 135-140) 。音声ファイルにして、17分に及ぼうかという長さですが、「例文」としてはそれ以前に全て扱ったものが再利用されていますから、復習にも活用できます。私も今でもやっています。

こういった音源のない時代、カセットやテープ、ソノシート、レコードもなかった時代の音声指導は、さぞ大変だったことでしょうね。
私がよく読み返すのは、恩師竹林滋先生のものは勿論ですが、古いものでは、青木常雄『英文朗読法大意』 (1933年) です。

過去ログのこちらでも言及しています、
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20061222
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20080131

文脈・対比を効果的に用いて、「イントネーション」や「強勢」の説明も明快です。
青木 (1933) .jpg 直
私の手元にあるのはリーベル出版からの復刻版 (1987年) で、浅野博先生の「改題」がついています。過去ログでも引きましたが、やはり必読です。

http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071217

「弱形」に関しては、宮田幸一『発音・つづり・語形成』 (研究社、1969年) に極力、専門用語に頼らない丁寧な記述が見られます (pp. 87-92)。
先ずは、人称代名詞など、こちらの記述。
宮田 (1969)_1.jpg 直
続いてこちら。
宮田 (1969)_2.jpg 直
andなどの接続詞にも言及がありますが、宮田氏の手になるものですから、テスト対策などではなく、あくまでも教室の指導用、しかも「受け売り」を排した、現場目線の考察に裏打ちされています。
青木氏のものは80年前、宮田氏のものは40年以上前に書かれた本です。いつの時代にも、きちんと学び、きちんと教え、そしてきちんと研究していた人はいるわけです。
私が1982年にG大で学んだ「大家」「達人」は皆、この領域の指導には長けていたように思います。当然、当時18歳の私に教える大家・達人の中には60歳を数えようか、という方もいらっしゃいました。その方たちが学生だったのは、そこから更に40年前。1940年代といえば、戦中・戦後です。当時は、iPodやiPadはもちろん、CDやカセットさえ利用できない中、音声も含めて英語を「身につけていた」という事実の重みを痛感します。

さて、
フィギュアスケートの世界選手権も終了。
男女とも、チャンピオンは予想通り。
「ミスをしない」ということの重みはエッジの深さくらいの意味がある。
個人的には、男子SPでデニス・テン選手が滑り始めた瞬間の、氷の捉え方、姿勢の良さが鮮烈で、「この選手にいったい何があったのだろう?」、と思った。
フリーの演技では、やはり長年のファンである、キム・ヨナ選手の身体操作に注目していた。
復帰後はとにかく、背中が硬く、動きのしなやかさが失われているのが気になっていたけれど、今大会に向けて相当にトレーニングしてきたことを伺わせる滑りであった。どのくらいの人が気づいただろうか、フリーの3つ目のジャンプである3S。基礎点が低く、トップ選手がそれほど心血を注ぐとは思えない、このジャンプの出来が本当に素晴らしかった。演目全体をトータルパッケージとして見た場合に、綻びを作らないことのエネルギーは、突き抜けるエネルギーと同じくらい重要である。ロス、バンクーバー、そして今回のロンドンと得点のGOEでの盛り具合には異論はあるだろうが、浅田選手の今回の出来では完敗というしかないだろう。
年間を通して、必須の競技会である「選手権」に加えて、「国別対抗戦」、さらにはスポンサー対応でもある国内でのショーアイスにも借り出される日本選手の疲労度を考慮すれば、ピークが合わないのも致し方ない。ただ、来年は五輪年。連盟として、選手最優先の強化をお願いしたい。
来期に向けて、浅田選手はSPはローリー・ニコル、LPはタチアナ・タラソワによる振り付けを表明したとのこと。今なら『鐘』が美しく響くはず、と思うのは私だけだろうか。競技演目では無理だとしたら、Exでもう一度見てみたいものだ。
来期のGPファイナルは、なんと、2013年12月5日(木)〜8日(日) マリンメッセ福岡にて開催。
五輪直前の、まさに前哨戦となるだろうか、チケットをとらねば。

本日のBGM: Everything’s gonna be alright (Al Green)