『春がいっぱい』

tmrowing2014-04-05

フィギュアスケートの世界選手権が終わりました。
今頃は、大阪でエキシビションが行われている頃かと思います。
競技会としては五輪と並ぶ世界最高峰の大会は、2011年に日本開催される予定でしたが、ご存知のように東日本大震災の影響で、ロシアに肩代わりをしてもらっていました。3年越しの日本開催。震災の後、F1はまだ何の収束も見せてはいないのですが、日本開催。
場所は、さいたまスーパーアリーナ。
シーズン最後の観戦記として、振り返りを残しておきます。

五輪金メダリストの、

アデリナ・ソトニコワ
ヴォロ・トラ
メリ・チャリ

が欠場。

五輪銀メダリストの、

パトリック・チャン
キム・ヨナ
テサ・モエ

が欠場、
という陣容で迎えた今大会、それで本当に世界一決定戦と言えるのか?という声もありましたが、終わってみれば、良い大会だった、というのが正直な感想です。ただ、波乱はありました。
しかも、最も楽しみにしていたアイスダンスで。
世界のツートップが欠場で、4年ぶりに新王座が決まる大会。大本命と目されていた、ソチ五輪銅メダリストのイリ・カツ組に思わぬ落とし穴が。
なんと、ロシアの関係筋からの情報で、「解散説」が飛び出したのが、世界選手権の直前(前日?)。その上、新しいカップリングが、シニ・ジガのヴィカ様というのですから、心穏やかではいられません。
そんな、不穏な空気の中、練習中のアクシデントで、ボブ・ソロのソロ、ソロビエフが股関節を痛めて棄権、ロシア王者の不在で、イリ・カツ、シニ・ジガの2組で、ロシア3枠死守というミッションが課されたのでした。
何ですかね、ロシアに勝たせたくない人の謀なのか?と邪推したくなるような始まりでした。

アイスダンスのSDでは、噂に心乱されたのか、イリ・カツ組がまさかの撃沈。
ツイズルで距離が近づきすぎ、ニキータが二つ目を回りきれずに「抜け」の扱い。これだけで最低でも6点分のマイナス。アイスダンスでは致命的とも言える大差で、5位。
一方の、シニ・ジガは、ソチのリベンジを果たしたと言えるいい滑りでSB。TESだけなら4位にあたる高評価、高得点。SDを終えて、8位につけました。

上位陣は接戦。1位から順に、

カッペリーニ・ラノッテ組
ウィーバー・ポジェ組
ペシャラ・ブルザ組
チョック・ベイツ組

と4位までが2点差の中での争い。

一つのミスが命取りになる緊張感でFDを迎えることになりました。
終わってみれば、3位までは変わらず。ただし、スコアは小数点第二位での明暗。
初の栄冠に輝いたのはカッペリーニ・ラノッテ組。二位との差はなんと、0.02。
ステップのレベル取りこぼしがあったのは残念でしたが、ハツラツとした笑顔は日本のファンからも大声援を受けていました。
二位と三位との差は、0.04でした。

FDだけでの1位は、やはりイリ・カツ組の「白鳥」。粗さが少し気になりましたが、気迫が優っていました。それでも、最終順位は4位。終演後に二人とも吠えていましたが、その気持ちを推察するに忍びなかったです。
ステップを一つ取りこぼしたのは痛かったですが、FDも8位でまとめたシニ・ジガ組が総合で7位に入りましたから、ロシア3枠は確保。
噂に負けずに頑張りました。シニ・ジガはリフトに派手さはないのですが、独創性のある入り方など、良い演技を見せ続けて、この二人の「イディオム」として認識させるまでもう少し時間が要るのかなぁ、という気がしました。

男子シングルではSPの町田選手が自己ベスト更新の素晴らしい滑りでした。でも、それ以上に嬉しかったのは、SPでのトマシュ・ベルネル選手の演技。フリーでは、アボット選手の演技が印象に残っています。二人は、この大会で競技を引退。日本のファンの多くが待ち望んでいた良いプログラムを最後に届けてくれたことに感謝します。

女子シングルで特筆すべきは、SPのコストナー選手。ソチ五輪の「アヴェ・マリア」以上の滑りはできないのでは?と思っていましたが、その予想を見事に裏切る、史上最高のカロリーナでした。フリーではポゴリラヤ選手が際立っていました。12月に博多で見た時は怪我をする前だったのですが、その時よりも遥かに体のキレが良く、ジャンプも滑りもポテンシャルを遺憾無く発揮していたと言えるでしょう。
優勝は浅田選手になりましたが、あらためてジャッジスコアを見て、「浅田選手はこの評価に納得、満足して現役を終えることができるのか?」としみじみ考えました。

競技のあとはGala。エキシビションが待っています。
シニ・ジガもGGも出ないので楽しみは半減でしたが、それでも、意外な選曲や、伸びやかなスケートなどエキシでしか味わえない感動もありました。相変わらず、地上波ではカットされてしまうスケーターがいて悲しい限りです。
ただ、日本で開かれた今大会ではアリーナに1万8千人が連日詰めかけました。その多くが日本在住の方だったと思います。国籍に拘らず、自分の応援する選手に対しての惜しみない拍手に声援。他のスケーターへのリスペクト。日本のファンがいかに選手を、そしてこの競技を愛しているか、それが各国のスケーター達にも伝わってくれていたら嬉しいです。
今大会でヴィカ様に会うことは叶いませんでしたが、来シーズンもきっとまた、麗しい笑顔で日本のリンクに立ってくれると信じています。できれば、ラジオちゃんと一緒にNHK杯がいいんだけどなぁ…。

本日のBGM:the defector (大村憲司)