碑文と秘伝

今週は、進学クラスの生徒と保護者を対象とした「講演会」を実施。
主任の尽力で、能楽師・ロルファーとしてご活躍の、

  • 安田登さん

に講演をして頂きました。私は記録係。
能の歴史を簡単に振り返り、甲骨文字の解読を経て、能面の解説、そして「舞」。
「濃密な時間」と要約するのが惜しいくらいの100分。
生徒の反応、とりわけ高3生の反応の良さにビックリした。潜在能力を引き出してくれた安田先生に感謝。
詳しい講演内容や映像は、安田先生の許可を得た上で、後日お知らせできれば、と思います。

集団宿泊研修に行っていた看護科は1週間ぶりの授業。
全校集会が少し延びて、更に短縮授業。「四角化ドリル・その6」の復習に集中しました。次回は、跳んで「その10」。「ワニの口」の導入です。

進学クラスの高1は、いわゆる「分詞」。
形容詞として働く、ということが実感できるか。
とじカッコはつかない = 時そのものは表せない、ということが理解できているか。
日本語の足場としては、

  • 「自転車」の定義と、チェコで開発された「空飛ぶ自転車」
  • 「花咲じいさん」と「バス待ちオババ」

あたりから。
excite, surpriseなど「感情」を左右する動詞から派生した分詞の使い分けは、いつもの「ピッチャー」と「キャッチャー」の比喩。「ベジータ」と「弓矢」で補足。
レーザービームでパフュームを使おうかとも思ったのだけれど、青歯スピーカーを忘れてきたので断念。「本質」を一度に教えれば、それで解決、というほど分詞は易しくないので、段階的に。
「話し言葉」と「書き言葉」は導入済みなので、次回は、後置修飾で、

  • 中国で話されている言語

などの例を追加予定。
最後は定番の諺二つで締めくくり。復習の際に、「静止画」と「動画」の観点を提示して、今日提示した実例を振り返ることができるでしょう。

進学クラス高2は、「動く歩道」。
「コンベヤーベルト」の構造・しくみ、は確かにヒントにはなるけど、そのまま引っ張ってくるのはダメ。
まず「大きなラベル」を貼る、というときに、”a tool” でいいか? “a machine” でいいか?それとも、”a system” なのか?「道具・装置・装備・施設・機関」などの定義の確認・整理が必要ですね。

高3の進学クラスは、「精読」。
いわゆる「名詞構文」の解凍。

  • fluency

という語が出てきたので、解凍にあたって、

  • How fluent is it?

での形容詞のfluentに加えて、

  • What is it that flows?

での動詞のflowまでを押さえておいた。そこから、

  • こういうのは、余白に「鴨長明」とか、メモしておけばいいですね。

と余談になったところで、長丁場。『方丈記』まではスムーズに流れたのだが、「行く川の流れは絶えずして」の後で滞り、「淀みに浮かぶうたかたは…」の一節が出てこない生徒がいたので、辞書で確認。古語では、和英辞典のように、いま自分が使っている日本語 (現代語) の意味から、ターゲットにアクセスすることができないことを実感。「あわ」のことを昔は何と言っていたのか?を調べようにも、言葉の候補が手元 (頭の中) にないことには始まらないのだ。
私が高校生の時に古典を教わっていた、S先生は、古文の授業中に、

  • 君たちは、英語で説明した方が分かりやすいだろうから…。

といって、英語のキーワードを頻繁に提示してくれていた、という話しで一段落。
今週は、倉谷直臣先生の教材に加えて、真野泰氏の『英語のしくみと訳し方』 (研究社、2010年) を紹介。昔は、こういう「きちんと読めていますか?」という本がいくつかあったように思うのだが、今や希少種。ちょうど、「名詞と態」を扱っていたところだったので、該当個所を読み合わせ。
真野氏は、月刊誌『英語教育』 (大修館書店) のQuestion Boxの回答者もされている。今私が、この月刊誌を読む理由は、はっきりいって真野氏の回答である。英語を生きている人のことば、思考・思索がかいま見えるような気がして、毎月楽しみにしている。新課程の「コミュニケーション英語」の教科書選定も、真野氏が著者に入っている、という要因が大きかった。(TMの執筆者にいなかったのが、返す返すも残念であるが。)

つい最近、某SNSで「英文科出身の英語教師」を貶めるような発言をする人がいたのだが、そういう人は、自分の師匠や自分の身の回りに「英文学をやっていて本当に英語ができる人」がいなかったという点で、不幸な人なのだと思う。

空き時間に、同僚から、

  • 「気配」って英語でなんて言うんですか?

と尋ねられたので、実例を交えて説明。

  • 秋の気配 a sign of autumn

などはまだ簡単だけれど、「気」を含む日本語やその発想を英語にするのは厄介です。

今週は、今年の「山口県英語教育フォーラム」の日程調整、講師 (候補者) とのメールのやりとりや、来週に迫った、本業の国体県予選の調整もろもろで、大童。

心身のバランスが崩れてきそうだったので、

  • 竹内敏晴 『教師のためのからだとことば考』 (ちくま学芸文庫)

を読み直し。

山田稔明さんのソロアルバム

  • 新しい青の時代

を聴いて就寝。

本日のBGM: どこへ向かうかを知らないならどの道を行っても同じこと (山田稔明)