三色多い負け

昨日のエントリーに、『オリバー・ツイスト』のretoldものの写真を載せて、今朝アップしたのだが、その後、2月7日がディケンズの誕生日と聞き、グーグルのトップ頁へ。へえーっ!という感じ。Wikiで調べて、生誕200年ということも知る。シンクロニシティか?思い返せば6年前の今頃も、『オリバー!』を観て、授業で扱っていたのであった。どんだけ好きなの?
今日の進学クラス高1は、ポイントを指摘して、その箇所の表現、語彙の選択の読み比べ。
分詞構文を扱った後なので、二文以上で動作・行動の描写と、心理描写を分けているものと、それを一文で表しているものとの比較、動作も結果だけを表しているもの、過程に焦点を当てて言葉を割いているものとの比較など。

  • He got up from the table and held his empty bowl out to the master. “Please, sir, I want some more,” he said.
  • He rose from the table and went to the master, with his bowl and spoon in his hand. Almost afraid of his own courage, he said, “Please, sir, I want some more.”
  • Oliver went up to the master, with his bowl in his hand. He felt very frightened, but also desperate with hunger. ‘Please, sir, I want some more.’
  • Oliver rose from the table. He walked down the long row toward Mr. Bumble and the copper pot of gruel. Poor Oliver was shaking with fear. He held his bowl toward Mr. Bumble and quietly said, “Please sir, I want some more.”

これに対して、週末課題で与えた音声付きの英文は、以下の通り。

Shivering with fear, Oliver walked the length of the room. He clutched his bowl so tightly his knuckles gleamed white. A terrible silence descended, pierced by Oliver’s slow echoing footsteps on the stone floor. He passed table after table of boys, their spoons laid down, their empty bowls in front of them. Each round-eyed boy stared at him expectantly as he went by. Oliver guessed what they were thinking---I’m glad it’s him, not me.
At last he reached Mr. Bumble, who looked down his nose at Oliver, as though he were as insect he wanted to squash. Oliver forced himself to speak. “Please sir, I want some more,” he whispered.

オリバーに白羽の矢が立つことになった “drawing straws” の記述も比較。winとloseに関しては、日本でよく行われている、バツ当番や代表者、「鬼」を決める際の「じゃんけん」で、最後に勝った者か負けた者に決まるという決め方を持ち出して説明を加えた。

  • 意味を読んで内容が分かったら、次は言葉を読んで身につけなさい。

といういつもの教え。
一方の商業科は苦戦続き。
前時の復習で、「語彙の仕込み」の日→英から入る。推薦入試で学科試験なしで入学してくる者も含めて、40数名いますから、当然、先週の内容などほとんど忘れてしまっていても平気な者もいるので、授業の約半分がこの確認作業で消費されます。続いて、本文の読み取りと、理解の確認。記号付けと音読とフレーズ順送り日本語訳との対照とRead & Look upとチャンクの切り出しを変えてのRepeatingが全てできるようになったのは1レッスン分のわずか2文。

  • Pictures on notes and coins are important. They show images such as animals, plants, people and buildings.

こんなものだと思いますよ、多くの高校生は。この2文に関しては、音読のクオリティも進学クラスとそんなに変わらないところまで「授業中」ではできるようになります。でも、「自力で」読むのは大変。
英語が苦手な生徒にとって、ここが難しいのは、文章の導入だから。パラグラフライティングで、トピックセンテンスをきっちりと書くのが難しいことの裏返しです。文章の導入にあたる、無冠詞複数形の名詞で一般論での記述ですから、”pictures” とか ”images” なんて言われても、頭の中にそれらが何を指しているのか「映像」が浮かびにくいわけです。挿絵とか、写真とか「レアリア」とかに頼らず、言葉の力だけでこのような処理ができるように授業を組み立てるのは正直難しいのですが、浮き輪を使ってでも何でもこのレベルまで自分の顔を上げておかないと呼吸ができないので、ここは本当に踏ん張り処。
「崖の上のポニョ」を例にとった「四角化ドリル」を地道に繰り返して、<名詞+前置詞+名詞>のひとかたまりでの処理に慣れることが本当に大切。授業では、<並べ方・語順が半分、その形合わせが3割>とエネルギーのかけ方、頭の働かせ方を説いています。英語が分かっていない生徒は、”they show” の部分を「彼らのショー (は)」と読んで、その後いつまで経っても述部に当たる言葉が現れないのに、「おかしい」「変だ」とは感じていなかったりします。並べ方だけでなく、「形合わせ」も私が重要視するのはその弱点の克服のためです。「四角化ドリル」では、「その5」以降で、<名詞の目印>としての限定詞を導入し、he, his, him など主格・所有格・目的格を<四角ととじかっこ、前置詞の波線>と関連づけ位置関係で識別する練習をしています。折に触れ、そこまで戻る「足場の確認」を家庭学習ではなく、授業でやらなければならないのが現状。ネイチャーガイドか、ターザンかといった感じです。
そんなこんなで、たった2クラスでも全く違う頭と心と身体と声の使い方をして1日が終わります。

オーバーホールに出していたオメガを受け取りに時計店へ。
boysサイズで現行の補修部品が使えないということで、またマイスターに一から加工してもらいました。本当に時計への「大いなる愛」と「確かな技術」を感じます。思いの外長話をして帰宅。

ミッチーが今シーズンで『相棒』卒業とのこと。リアルでの相棒ができたからかね?食前酒に三芳菊、食後に「ん」。
いつも以上に早く就寝。

本日のBGM: Scissors Cut (Jimmy Webb)