To say goodbye is to die a little.

tmrowing2012-01-12

勤務校の推薦入試。
朝はいつもより早いスタートなので、ちょっとばたつき気味。
家を出たら朝焼けがとても綺麗だったので、携帯のカメラで撮影。未だに、200万画素ですが、自分の記憶を引き出すメモと考えれば充分でしょう。(ちなみに、twitterで私がプロフィールでアイコン代わりに使っている写真も、同じ携帯カメラで撮影したものです。こちらは、本業の聖地「戸田ボートコース」の朝焼け。まだ、大学のコーチをしていたときのもの。)
時間に追われていた雑な心が洗われたような、清々しさを胸に出校。
試験監督などの入試業務も気持ちよく終われました。受験生の皆さん、お疲れ様でした。縁がありましたら4月にお会いしましょう。

帰宅したら、Oliver TwistのAudio Bookが届いていた。
今回購入したのは、NAXOSのジュニアクラシック。
英語ネイティブの子供向けに、「やさしい」英語で書き直しされたもの。
リライトしたのは、Roy McMillanさん。
朗読は、Jonathan Keebleさん。
妻が娘との散歩から帰ってくるまでに前半のCD1 (約73分) を聞き終える。
プロは違うな。
Audio Booksシリーズは、本当に音源のみなので、ジュニア版など、オリジナルの小説とは異なる表現や構成、展開になっているところは、自分で何回も聞いて確認するしかないのだろう。この音源がシャドウイングできるくらいまで自分のトレーニングはしておきたいと思った。

締め切りの迫る原稿とにらめっこ。
勝ちでも負けでも良いから、早く終わりにしたい気持ち。

  • 年度末までに、もう一つあるからなぁ…。

と思っていたら、新たな依頼が。
あとどのくらい今日のような朝焼けを見る必要があるでしょうか。
妻が夕飯を作ってくれる間、娘と戯れながら、録画した『相棒』を。
梅ちゃんの出番はほとんど前半だけでしたね。
来週の「幸子」に合わせて、関東ローカルでは、過去の3話を一挙再放送、となるらしいのだが、こちらではその企画はない模様。残念…。
晩酌はせず、巷の教材の「仮定法」、「叙想法」や、subjunctive moodやconditionalsの用例と解説の記述を引き比べ。
最近の私の授業では、まずはおおざっぱに、条件節の3タイプを提示、頭の働かせ方の「モデル」を見せてから、実例を扱い、自分で英文を生き直し、実作へ、という流れ。
文法が嫌いじゃないので、分類し始めるときりがなくなるから、どこかで見切りをつける必要がある。レナート・デクラーク 『現代英文法総論』 (安井稔訳、研究社、1994年) ほど細かな分析は高校生には不要だろうと思っているのだが、田中茂範 『文法がわかれば英語はわかる!』 (NHK出版、2008年) のような記述で本当に分かって使えるようになるかは心配。
私は、林語堂が『開明英文文法』 (「第十四章 事実と仮想」、pp. 417-427) で言うように、

過去の仮定は事実に反する
未来の仮定は不確実である
現在の仮定は多岐である

くらいの足場から、陣地を広げたいと思っている。

岩垣守彦 『ルイちゃんの英文法』 (pp. 295-296、玉川大学出版部、1993年) では、「どうして仮定法があるの?」というコラムで、直説法との書き換えではなく、仮定法そのものの持ち味、存在意義、すなわち「使いどころ」を説明している。

I cannot buy the book because I don’t have enough money.
には事実は書かれているけれども、消極的といいますか、どうしても買いたい、欲しいという積極的な気持ちが感じられません。
ところが、
If I had more money, I could buy the book.
は、買いたいけど、残念ながら金が足りないという気持ちが出ています。ですから、同じ事実に対して、心理状態が違うのです。
こういうふうに考えてくると
Since I didn’t take the plane, I wasn’t killed in the crash.
(飛行機に乗らなかったので、墜落で僕は死ななかった)
という文は、文法的には正しいのですが、わざわざ言う必要のないことです。まったくナンセンスです。では、その事実をふまえて
If I had taken the plane, I would have been killed in the crash.
と仮定法にした場合はどうなるでしょうか? 意味は
「飛行機に乗っていたら墜落で死んでいただろうに」
ですが、実は、こういうことを言いたいのではないのです。
「ああ乗らなくてよかった」
という気持ちを言いたいのです。これなら発言の意味がありますよね。ただし、無意味な文も、主語をheに換えて
Since he didn’t take the plane, he wasn’t killed in the crash.
とすると、意味がでてきます。
「彼は生きているよ」
という情報としての意味があるのです。

最後の ”he” の件では、「事情聴取」など、もう少し場面設定があれば尚良かったとは思うのだが、「ハート」とか「フィーリング」を訴えている割には、「口語的な訳語」が示されて終わっている感のある最近の参考書より、よほど「こころ」が反映されている記述だと思う。
使いどころがある程度分かったところで、細かい形あわせに焦点を当てる時には、公式化された定型表現とその統語的分析が得意な、伝統的な文法参考書の「分類整理」と「記述」「解説」の方が知識を整理しやすいだろうと思う。

  • 杉山忠一 『英文法詳解』 (学研、1998年)

では、「第10章 法」 (pp. 286-314) で、「直説法」「命令法」「仮定法」を説明し、その後の第11章で「助動詞」を詳解する、という構成。
この流れは、

  • 毛利可信 『ジュニア英文典』 (研究社、1974年)

でも同様で、「第III部 統語論」において、「7.仮定法」、をまず詳述し、その後、「8.法の助動詞」に進んでいる。毛利氏の subjunctiveの扱いに関しては、『動詞の用法/下』、「接続法」 (pp. 107-112、研究社、1960年) に詳しい。

『森林本』はともかく、『林本』、『杉山本』、そして『毛利本』たちにはまだまだサヨナラを言えません。

本日のBGM: 長いお別れ (柳原陽一郎)