persona grata

原稿の進捗状況は「今二つ」くらい。
9月のシンポに備えて関連書籍を読んで、ここ3ヵ月で随分と頭の整理が出来たつもりだったのですが、実際原稿にまとめようとすると悩みは尽きません。

  • 岡田伸夫『英語教育と英文法の接点』 (美誠社、2001年)

は、第2部で、学校現場で焦点・争点となる「英文法」の個々の事例、現象というものを上手に取り扱っていると思うのですが、第1部の「そもそも」論の部分で、私が疑問に思っていることに答えてはくれないのですね。
亘理先生のブログで、冠詞の指導体系が話題になっていたので、手元にある「冠詞」を扱ったものは?ということで、

  • 織田稔 『英語表現構造の基礎---冠詞と名詞・動詞と文表現・文型と文構造---』 (風間書房、2007年)

の第I部を再読。可算性についてあれこれと頭を巡らせていました。
determinerについて、「学習者目線」のものは?と、書棚から、

  • The Tapestry Grammar: A Reference for Learners of English, Heinle & Heinle

をパラパラ。第5章にあたる、”Noun Phrases: The Basic Structure” では、

1. Parts of Noun Phrases
2. The Core Noun
2.1 Singular and Plural Forms of Nouns
2.2 Countable and Uncountable Nouns
2.3 Collective Nouns
2.4 Coordinated Core Nouns
2.5 Adjectives Used as Nouns
3. The Determiner Position
3.1 Articles
3.2 Demonstratives
3.3 the other, another, other
3.4 Possessives
3.5 Quantifiers

という流れで解説がなされています。それぞれのセクションの練習問題では、留学生が書いたエッセイが俎上に上がっていて、文脈を踏まえて、「使い途」をよく視野に入れた構成となっているのも類書とはちょっと違うところ。Rebecca L. OxfordとRobin C. Scarcella が監修を務める “Tapestry” シリーズの一冊として、1994年に刊行。ほとんど知名度のない本だし、全体の出来にはちょっとムラがあるので、万人にはお勧めできませんが、高校上級を教える教師なら持っていて損はないと思います。私は自分のライティングシラバス構築でTapestryの概説書を使っていた関係で購入し、教材研究に使っていました。個人的には思い入れのある本です。というのも、某ライティング教科書を書いている時にも、この本のお世話になっているから。もう改訂になっているので、現在は流通していない版の「プロセスライティング」「パラグラフライティング」の教科書を作っていた時の話しです。ほとんど完成していた本に待ったがかかって、急遽「文法編」を作って足す、というとんでもない事態になりました。検定までの期間は限られているし、だからといってありきたりの「文法シラバス」のもので屋上屋を重ねることは避けたかったし、というジレンマ解消の苦肉の策。私の発案で、各著者にこの本を読んでもらい、高校英語で求められる文法事項を、「書くために必要な文法」という観点で精選するだけでなく、レッスンの配置、扱う内容などを見直してもらったという経緯があります。その結果、目の付け所や、配列は面白いものが出来たのですが、「文法編」の例文や解説を経て、練習問題を見てみると、

  • 解答となる英語は「問いに対して、または、文の出だしに見合った、内容を自分の頭で考え、かつ、そこで問われている項目を含むもの」を要求する

というopen-endタイプの問題の比率が多くなってしまいました。当時も、今でも、私の考えるsentence level accuracyというものは、「出題の側で既に答えの決められた英文を完成させる力」のことを指しているのではないのです。
「学校文法」の体系や、「学校英語」での指導、さらには、「中高の英語教師」には、運用力とか現実の使用場面という視点が欠落している、という批判がとかくなされるわけですが、「英文法の習熟」を語る際に、「学校教育」という制約を踏まえた議論というのがどの程度なされていただろうか、という疑問が残っていたので、その視点で、

  • 鈴木忠夫『学校英語はなぜ悩迷するか』 (リーベル出版、2000年)

を読了。

  • 言語には語源があり、それは時とともに変化する。いつもそれを思いながら使うとは言えまい。(中略) 文法に縛られると、それらを放置することもできない。仮に、巧みに説明しえても、後になにが残る。過剰な反応は、かえって相手に、納得より紛糾を招き、迷わせるかもしれない。 (pp. 100-101)
  • 英文がわかっていて説明するのと、説明で分かろうとするのは大差がある。 (p. 101)
  • 実際の英語の運用で、いちいち過去の由来を考えて、言語活動をするとは思えまい。 (p. 135)

など、時々、ドキッとする。
あれこれと名詞句の限定表現を巡ってから、「修飾」ということを考えて、やはり、ここからだよな、ということで、振り出しに。

  • 一色マサ子 『修飾 (上)』 (研究社、1968年)

50頁以上を割いて、「前置修飾」の実例を吟味している。中でも、p. 55の「前置修飾」の一覧が有益。一色は、「名詞の前に位置をとり名詞を修飾する修飾語の語順」という見出しを付けている。
この書の刊行から、40年以上経っているが、どの程度、教室現場での「悩み」や「迷い」は軽減されただろうか。

  • 簡単です。並べればいいんです。ポンポン。

とか、

  • 暗記は要りません。3つ以上あったって大丈夫。人間の心理に忠実に、自然に並べるんです。

とか、市販の書籍や雑誌などの媒体でまき散らされる不確かな情報に踊らせることなく、教室で自分の生徒を最後まで面倒見るためにも、教師はしっかりとした知識を自家薬籠中にしておかなければならないだろう。
センター試験の英語に関しては、週明けに自分のところの生徒の出来も踏まえて講評したいと思います。

仕事部屋の環境改善策であれこれ。
ようやくゴミ箱が届いてセッティング完了。これで窓側がある程度落ち着いた。
文具店を覗いて、いくつか小物類を購入。チョークケースも新調。お目当てのものがなかったペントレイはネットで。
夜は、『DASH村』で山口君を見てから、『スターズオンアイス』。
何と言っても、カート・ブラウニング。
深いエッジを素早く切り返すのだが、内外だけでなく、前後の使い方が鮮やかなのに、滑らか。刻んでいるのに繋がって、滑っているのだ。
その後に見た、高橋選手は、懐かしの演目。
良い出来でした。今の方が良いと思う。
この局にも、語りたい「物語」があるようだ。本田さんは、「言葉は要らないですよ」って、言っていたけれど、魅入ってしまう演技中はそれでもいいけれど、「言葉で」解き明かさずして、解説者の存在意義はない。銀盤上の「物語」を描写する努力を一番していたのはジュンジュンでした。期待します。

晩酌はほどほどに飲み比べ。気持ちよく就寝。

本日の晩酌: 猩々・小角・純米大吟醸・無濾過生原酒・岡山産雄町50%精米 (奈良県)、悦凱陣・興・うすにごり生・広島産八反錦50%精米 (香川県)、義侠・純米生原酒・滓がらみ・兵庫産山田錦60%精米 (愛知県)

本日のBGM: そんなことがすてきです。 (大橋トリオ)