I’m a 46-year-old English teacher who believes....

相も変わらず、「批評」「批判」と「悪口」「罵詈雑言」「誹謗中傷」の違いが分からない大人が多いネット社会ですが、前回のエントリーで触れていた『新英語教育』の10月号の連載記事について「批判的考察」です。
「関係代名詞」を扱う実践が取り上げられていた (pp.26-27) のだが、気になったのは、そこで使用される英文。以下のような完全な文を単独で使うことはどの程度普通だろうか?

  • I am a 35-year-old Japanese man who is from Ishikawa.
  • I am a Major leaguer who was chosen as an MVP.
  • I am a 8-year-old boy who has a brother and a sister.
  • I am an actor who has a car shop.
  • I am the music group who is very popular among young people.
  • I am the music group who was invited to the party of the Emperor 20th Anniversary.
  • I am a very rich Japanese boy who is eighteen years old.
  • I am a boy who can play golf as well as Tiger Woods.

Who am I? というゲーム的活動が、次々と投げかけられた英文を理解し、その自分の理解を重ね合わせ、織りなしていくことで、全体像や主題を引き出す優れた活動であることは認める。しかし、この関係詞を挟んで情報・意味のギャップが余り感じられず、関係詞節による補足の情報量が少ない英文を用いて、しかも「一人称」の “I am a 名詞 ….” とすることによって学習者は関係詞の本質を掴むことができるのだろうか?

このような関係詞を用いた実例をCOCAから引く。まずはヒット数の少ない一人称の例。

  • I am a man who is invested in the children of America and the protection of their futures from the commercial sex industry.
  • Let us assume I am a person who is supposed to live by the ideal of " to each according to his needs " regarding needs for food.
  • I'm not a medical professional. I'm not a scientist. I'm not a politician, a civil libertarian or a homosexual. But I am a father who is profoundly enraged by the impending loss of his daughter, a loss which was preventable.

三人称となるとややヒット数は増える。

  • And Esmond Bradley Martin, as you probably heard, is an American who's been living in Kenya for more than 30 years.
  • He is an American who's devoted his life to public service.
  • He was an American who became an African professional hunter and one of the very few Americans I've known who took up the trade and was actually good at it.
  • Her new husband was an American who was gentle and loving, but when he began to ask tentative questions about her mutilation, Ramsey was too embarrassed to talk about it.

このような実例と比べた時に、上述の

  • I am a very rich Japanese boy who is eighteen years old. 「私は、18歳である、とてもお金持ちの一人の少年である」

という意味内容の文は極めて不自然だと感じるのである。同じ情報を、

  • I’m a very rich eighteen years old Japanese boy.

として、形容詞による前置修飾の際の語順の原則を示すのであれば指導として適切かも知れないが、関係代名詞、しかも制限用法を用いる必然性、利便性はどこにあるのか甚だ疑問である。
発展途上の学習者に、身の丈を越えた表現を課したことによって、このような表現が産出されたというのであれば、それを教室で、教師によるフィードバックをもとによりよいものに育てていくことが可能である。しかしながら、授業で、このような英文が教師の側からお手本のように与えられ、言語活動において取り扱われることに少々驚いている。

英語の文法指導を、海外からの理論の単なる輸入や受け売り、焼き直しではなく、誰よりも、どこよりも地道に、大切に扱ってきたのが新英研ではなかったか。黒川泰男氏の一連の著作など、英文法を地に足の着いた考察で捉え直し、日本の学習者に資する形で広めてきた伝統があるはずである。今や絶版となった『よくわかる新高校英文法』 (三友社) など、日本語と英語を比較しつつ、具体的な使用場面を常に念頭に置いた良質の英文法参考書を世に問うてきた伝統、そして「自己表現」という、定義があやふやで、ともすれば怪しいbuzzwordに、誇るべき実体を与え続けてきた伝統をこそ、今一度思い出して欲しいと思う。
中学期の英文法指導で、後置修飾の理解と定着、運用は大きなハードルである。だからこそ、前置の形容詞ではできない、前置詞句ではできない、不定詞句ではできない、分詞句ではできない名詞句の限定表現を関係代名詞を用いることによって示すことが必要なのだろうと思う。
「ああ、それで関係代名詞が必要なのか!」「関係代名詞があるとなんて便利なのか!」という実感を持たせるような指導を、「それ、あるある!」「自分も使ってみたい。」と思わせるような心に響く例文で成立させたいと願うのである。

『英語教育 2010年10月増刊号』 (大修館書店)
の内容について一部で熱い議論がなされているようだが、私が気になるのは、こっち。

  • ビジネスと英語 (pp.24-25)

この「関連用語」の解説の最後で、「英語で学ぶ経営学」というコラムがあるのだが、そこでのこの文言。

  • さて、日本国内で学士課程において所属する学部あるいは学科学生全員を対象に、経営学 (商学) に関する専門科目を英語で学べるカリキュラムを提供しているのは、立教大学経営学部国際経営学科と立命館アジア太平洋大学国際経営学部だけである。/専門科目の多くを英語で提供しないと、世界のトップレベルの大学・学部との交換留学協定を維持しにくい状況になりつつある。よって、経営学を英語で教えることができる教員の採用を増やすといった対策を講じる経営学部が今後増えるであろう。日本の大学でも専門を英語で教える時代に入った。

これを書いているのは立教大学の経営学部の教授である松本茂氏 (敬称略さず)。経営学の専門家で英語に堪能な人が、経営学を英語で教えるのは結構。どんどんやって下さいな。ただ、こういう情報提示の仕方を「手前味噌」というのです。それから、ご自身の大学の英語教育改革では飽きたらず、中学高校の英語教育のカリキュラムやシラバス、指導法にまで口を挟むのは勘弁して欲しいというのが偽らざる心境である。英語を専門にしてきた大学人が日本の「英語教育の明日」を左右する議論で主導権を握れず、このような人に手綱をとらせてしまったことを大変残念に思う。中高の英語教師にとっては他人事では済まされない、当事者であるから。

  • 事業仕分けと英語教育 (pp. 10-11)

にいたっては、元教科調査官の菅正隆氏 (敬称略さず) の執筆。書いてもらうのなら、ここは蓮舫でしょ、やっぱり。いや、笑うところじゃないって。執筆者が皆、英語教育の「身内」であることが、結果として、この英語教育界が外の世界と地続きではないことの証明になっているように思う。「キーワード」に関して、文藝春秋の『日本の論点』のような形式でウチ・ソトという、時代錯誤的で、必要以上に対立を際だたせるような切り口に仕立て、内外からの批判・不満が噴出するくらいじゃないと健全な議論に発展しようがないのではないか。

実作は、国体関連で、しばしの間、最前線離脱。
金曜日で、全ての自習課題を作成・印刷。同僚に言伝して、解答解説のプリントも、生徒が取りに来たら配布してもらえるよう手配。

今日は本業で、朝から遠い方の湖へ。
国体の成年女子チームの強化合宿の視察を兼ね、自チームの選手も数名連れて行きトレーニング。
国体チームの練習では、午前中は1Xでトレーニング中の選手に、フィニッシュ回りの改善策をいくつか。午後からは、スーパーバイザーの0コーチの手腕をじっくりと観察。詳細は内緒。
自チームはというと、2年の1Xは、今シーズン一度も1Xで勝てなかった、他校の3年生選手と並べ。向こうはフィリピで、こちらはK社というハンデはあったものの、終始良いスピードで並べが成立。有り難う!
1年の2Xは、レートも落ち着いてきて、午前・午後とも集中して12km、合わせて24km漕ぎ込むことができました。今日はターンも速く、良い負荷を持続させることができたと思います。
選手を駅まで送り届けて帰宅。

明日はいよいよ国体の事前合宿で上京。その後、千葉入り。
しばらく更新はお預けです。
良い知らせで再開できるよう最善を尽くします。

本日のBGM: 路地裏の少年 (浜田省吾)