all the distance we’ve covered so far

本業モード。
祝日を利用しての、県強化合宿。
前日にOコーチを新幹線の駅に迎えに行き、そのまま湖へ。自チームの1Xを見てもらう。大収穫の2時間。見えているものは同じなのかも知れないけれど、判断の目盛りの精度が違うのだろうなぁ。
明けて、放射冷却の朝。雲一つ無く、身震いするほど。前日の兆しが幻とならないように、他校の3年生と併漕で2モーション。週末の中国大会に向けて、とても良いトレーニングができました。中国大会に出漕するクルーを一つひとつ丁寧に見て、終了。選手を自宅へ、Oコーチを新幹線の駅へと送り届ける。Oコーチ、本当に有り難うございました。良い報告ができるよう残り数日ベストを尽くします。
車中での話題は、NZで行われている世界選手権。
日本チーム女子が、全日本選手権のパフォーマンスからは想像できないタイムと順位。何が起こっているのだろうか?国体の前に戸田でのキャンプをしている様子は見ていたのだが、それからさらに国内キャンプを経て、かなりまとまった準備をして臨んでいたはずなので、事後報告を待ちたいと思う。

帰宅後は、楽しみにしていた『相棒』が、池上スペシャルに負けて一回お休みのため、女子バレー。木村沙織の天才ぶりを観戦。優等生から脱皮し、そろそろ真鍋監督の掌からはみ出せる頃か。素朴な疑問。TV解説の河合氏はビーチバレーに行ったはずではなかったのか?他の人材はいないのか?なぜ、芸能人とのタイアップばかりを続けるのか?オンデマンドになれば、もっとクオリティの高い解説と実況を楽しめるようになるのか?

以下、正業関連。
連休明けの実作。
進学クラス高3は、長文読解で、解説の「要約」の舌足らずなところというか、主題を括り出し切れていないところを突っ込み解説。話形・話型の話しと、身の回りの物事に対するアンテナを張ることの重要性。

  • 「国際化」、「日本の医療機関」、「衛生看護科」というキーワードを自分という検索エンジンにかけると何がヒットするか?

と問う。いや、当然日本語ですよ。この段階は。この複数のキーワードで主題を括り出すトレーニングを積んでおかなければ、文章を読んだり、聞いたりして、いくらキーワードを抜き出しても、「要約」するスキルは伸びないでしょう。各段落の冒頭と最後の文を繋ぎ合わせると主題が分かるなどというまやかしに耳を貸しているうちはダメなのですね。その綱引きの中で、英語表現、ことばそのものと主題・論理展開・焦点というものを括り出す訓練も教室での重要な学びでしょう。
採択している『いいずな本』での100字要約は、

  • 日本には外国語での対応ができる医療機関はほとんどなく、通訳ボランティアも少ないが、通訳ソフトの開発という希望の兆しもある。外国人との意思疎通を図る努力は、日本の患者と医師の関係をも改善するだろう。 (98字)

となっているのだが、これが本当に主題を括りだしているのかは疑問。授業で取り上げた<主題→題述>での要約例がこちら。5段階でどのくらいの評価をもらえるでしょうか。

  • 日本の医療機関が国際化し、多言語対応されるようになることの意義は、外国人への対応が改善するだけでなく、医療におけるコミュニケーションのありかたそのものが改善され、患者にとっての益が多くなることにある。(100字)

高2は、副詞節の続き。
今日は、

  • although / even though / even if // unless / in case

で例文探しの旅。自分探しなんて言っている場合じゃなくて、自分が個々の例文を生き直すだけの、イマジネーション、感性が要求されます。用例が積み重なってきたら、そこから自分のトレーニングが始まります。

普通科は、中学英語の再入門の大きな山場、後置修飾・過去分詞の形容詞用法が一段落。なかなか、高校レベルの語彙・構文に触れるところまで辿り着きませんが、2学期最後は「関係詞」に入る前に、句が文の中で果たす役割を実感する段階を設定する予定。
さて、
関係詞の指導に関して、前回のエントリーで、加藤京子先生の講演から一部を取り出し言及したが、加藤先生に講演資料を事前に送って頂いた折りに同封されていたのが、織田稔先生の研究資料。オバマ大統領の演説に現れる関係詞の分類と分析でした。教室での中学生の指導だけでなく、このような地道な研究成果を普段から精査されてもいるところに驚嘆するものです。
関係詞節の分類分析といえばまだ学生の頃、”The Grammar Book” (Newberry House) で、「一文」のどの位置に出現するかという視点での分析結果と指導への示唆を目にして、教員志望の私はどう指導に役立てるか良くイメージできなかったのを覚えています。
私がこの項目を本当の意味で強く意識するようになったのは実際に教員になって、様々な習熟度の生徒を教えるようになってから。

  • 小山内洸「関係代名詞」 (『英文法の新しい考え方学び方 日英比較を中心に』 (三友社出版、1985年、pp.189-208に収録)

での、英語史から映画のスクリプトを利用した会話分析まで、接触節から前置詞+関係詞まで、地に足の着いた論考を大いに参考にさせてもらって、現場での指導に当たってきた。この書物自体、「ことばへの気づき」教育の観点から、今こそ再評価されるべきものであると信ずる。とりわけ、

  • 英語では「格」や「前置詞」で表される意味が日本語では「助詞」で表される。ところが日本語ではある文が関係節化されたとたんに、「助詞」で表されていた意味は、「助詞」もろとも消滅するのである。このことを強く意識しないかぎり、たとえば「私は作文を書く紙がない」を、I have no paper on which I can write the composition. と訳すことができない。「作文を書く紙」は「紙に作文を書く」から「に」が消滅してできたものであることを知らなければ、上の英語は出てこない。(p. 207)

という一節に、英語教師は立ち止まって考えるべきだろうと思う。関係節化と同様の問題点は、”something to write on” 「何か書くもの」などの不定詞の後置修飾でも潜んでいるので、通り一遍の指導で済ませず、日本語の特徴を深く考え、その上で必要に応じてドリルを課したいものである。
この小山内らによる日英比較の依って立つ足場と視点は、例えば、次のような、「輸入もの」とは異質のものなのだろうと思う。

  • Q43: 関係代名詞の習得順序 (吉田正治 『英語教師のための英文法』研究社、1995年、pp. 153-159)

ここで吉田は、Keenan & Comrieらの「関係詞節化する際の名詞句の文法的役割によって、階層が分かれていて、それが理解のしやすさ、習得順序を決めている」という、研究の成果を紹介している。

  • 主語>目的語>前置詞の目的語>所有格の名詞句>比較節の名詞句

これは、言語系統論というか類型論というか、そういう考え方に基づく研究の成果で、ここで示した不等号の右辺に位置するものを習得していれば、その左辺に位置するものは習得済みであるというような解釈をしているわけである。追試として行われるのは、たいていが、

  • 文の目的語の位置で用いられる主格の関係詞節 (Os)
  • 文の目的語の位置で用いられる目的格の関係詞節 (Oo)
  • 文の主語の位置で用いられる主格の関係詞節 (Ss)
  • 文の主語の位置で用いられる目的格の関係詞節 (So)

の習得状況の調査である。吉田の紹介する日本で行われた追試の研究では、習得状態を調べるために、「二文連結」の手法を用いており、本当の意味で関係詞の「習得」は、二文連結で文を完成させることで測りうるのか、という問題まで掘り下げなければ、断定的なことは言えないと思われる。

関係詞を身につけると言うことについて、故・清水かつぞー氏がこんなエピソードを残している。(國弘正雄『國弘流 英語の話しかた』、たちばな出版、1999年、pp. 203-205)
個人的に頷くことの多い内容なので、量を厭わず引いておく。

関係代名詞では面白い経験をした。昔からあって、今でも見かけるドリルは二文を関係代名詞を使って結びつけるというものだ。これはいくらやっても力が付いたという実感が得られなかった。まして、「適切な関係代名詞をカッコの中に入れよ」などというドリルではお話にならない。
ある日、長崎玄弥氏の『脱日本式英語』 (朝日ソノラマ刊、1975年) という本を手に入れた。その中に、関係詞節を自在に作るドリルの方法が紹介されていた。それは一つの文から関係詞節を作るドリルだった。
(1) The man went straight to the police station. (その男はまっすぐ警察署に行きました)
(2) the man who went straight to the police station (まっすぐ警察署に行った男)
という具合だ。こういう方法で「五百例文も作れば自在になる」と数の目安まで言及されている。この本の迫力はすごかった。ともかく著者は明確に「自分で文を作れるようになるための文法ドリル」という視点を持っている。しかも自己検証済みだ。
残念ながら、この本は現在絶版である。しかし、『奇跡の英文法』 (祥伝社刊、1976年) という本も同じ趣旨によって書かれているので、興味ある方は覗いて見られるとよい。上の例は同書からの引用である。さらに同書では関係代名詞のwhoseについて、whoseの後に続く名詞を次のように分類している。
(1) 身体上の所有物 (外部: 目・耳など、内部: 心臓・胃など)
(2) 身につけているもの (帽子・コートなど)
(3) 内面的に所有しているもの (考え・信念など)
(4) その他 (所有関係: 父母・友人など、所属関係: 学校・社会など)
これは素晴らしい。(中略) ともかく長崎先生の本に出会ってからというもの、教科書や問題集にのっているドリルをそのまま真に受けるなんてことはなくなった。

この手法は、私自身、高校生の時に上述の『奇跡の英文法』で読み、200例文くらいを手元に集めて関係詞を使った名詞句の限定表現を自作したところで、「ほぼ自在」となり、自然なものとそうでないものとのカンが働くようになった。自作で困るのが、やはりここで清水先生も言及している “whose” を正しく使えているか否か。それ以来、今でも、whoseに関しては「良い使用例だ」と思ったものはメモをしている。コーパスで、現代口語での使用頻度が少ない、といわれても、自分で自在に活用できるかどうかは全く別の問題だと思っているから。

心に響く、リアリティの持てる用例を求めて、1986年から、高校生への指導でずっと使っている、

  • I need all the friends I can get, Determined Productions, 1984

から、例文を引いて、とりあえず関係詞節の考察も一区切り。この本は、G大の同期のOさん (旧姓) が教師になるという私に卒業の前にプレゼントしてくれたもの。その心遣いとセンスに深く感謝。

  • A friend is someone who laughs at all your jokes.
  • A friend is someone who’ll do your homework while you watch TV.
  • A friend is someone who’ll speak up for you.
  • A friend is someone who understands sharing.
  • A friend is someone who answers your letters.
  • A friend is someone who attracts the teacher’s attention when you don’t want her to call on you.
  • A friend is someone who says your winning goal wasn’t “just a lucky shot.”
  • A friend is someone who makes you laugh when you’re hurting.
  • A friend is someone who eats lunch with you on your first day at a new school.
  • A friend is someone who doesn’t gossip about you.
  • A friend is someone you can call on in an emergency.
  • A friend is someone you can telephone after midnight.
  • A friend is someone you can trust.
  • A friend is someone as sweet and pretty as your sister.
  • A friend is someone you can count on.

本日のBGM: きみはぼくのともだち (ハナレグミ)