『レベルアップ英文法』のススメ

NHKラジオの講座『レベルアップ英文法』のテキスト7月号に、「英語のギモンQ&A」というコーナーがあり、次の質問に対する回答が非常に簡潔、明瞭になされていた。

  • I don’t like math or science.のように否定文ではorを使うというのだが、I don’t like math and science.ではどうして間違いなのか?

高校で英文法の体系的理解を標榜する指導者は多いのだが、この質問に対して実感を伴う、腑に落ちる説明を与えられる人は少ないのではないか。「否定文で迷ったら、基本となる肯定文の命題を取り出し、何を否定しているものなのかを場合分けして考察する」という基本が、この7月号では適切になされている。若手教師も教材研究の際に参考となるだろう。
かつて、若林俊輔著『英語の素朴な疑問に答える36章』(ジャパンタイムズ)でも、

  • There never was a good war or a bad war.でorをandとしては間違いか

という項目が扱われたことがある。そこでは論理式を用いて説明されている。他の項目、たとえば not both や neither / norに関して、ド・モルガンの法則を持ち出したり、< 命令文, or>でのorの働きを、電気の回路に見立てて説明したり、と今風の学習参考書では見られない工夫が盛り込まれていたが、今回の「英語のギモンQ&A」の回答はそれを彷彿とさせながらも、より簡潔にまとまっている印象を受けた。『英語の素朴な…』の方は現在絶版なので、この7月号は保存版といってよいかもしれない。
また、同テキスト9月号では、

  • We have studied English for about two years.
  • My grandmother has been studying English for two years.

の二つの例で、なぜ前者は現在完了で、後者は現在完了進行形なのか?
という質問に対する回答も、具体的かつ応用の利く内容でなされている。回答の最後の方で示されている、

  • I have studied English.
  • I have been studying English.

の二つの例を示した上での学習者への助言は現場で揉まれた教師ならではのものであり、まことに有益である。ハートで感じ切れない部分は、やはり論理を働かせる必要があるのだ。
詳しい内容は、書店へ急げ!1冊330円ナリ。大きめの書店で「バックナンバー」を扱っているところは7月号も店頭で手にとることができるだろう。でも、自分の教えている生徒に聞くのが一番早いかも。中高生は結構このラジオ講座を聞いているでしょう。
メインはなんと言ってもラジオ放送の方です。7月号のメインの文法事項は「語順」「後置修飾」、9月号は「名詞を詳しく説明するwho/that/which (関係代名詞)」、8月号は4月から7月までの復習シリーズです。英語が苦手な高校生はこのあたりを一気に復習し直すと、少し視界が開けてくると思うので高校の先生方も試しに聞いてみては如何。
本日のBGM:『悲しきレイントレイン』TULIP (1975年)