智慧の和

tmrowing2014-03-13

採点天国終了から成績処理へ。
今年は2年生が随分と成長したなぁ、と実感。

  • 今年度の取り組みをもう一度やり直すとしたらどうするか?
  • 来年度、この講座で学ぶ後輩への親身のアドバイス

から一例を。

多読を同じ話で別の本と比較して読むという活動に変えたい。学級文庫は絶対に読んだ方が良いですよ。プライドを捨てて、自分が分かるレベルの本をたくさん比べながら読んで行って下さい。

  • この1年間で最も伸びたところ、力がついたところは?

という問いに

単語の意味を覚えられたところ

と回答した生徒は、1年間 ”Miss ワードパワー” としてクラスに貢献してきました。増進会出版 (Z会) から出ていた『ワードパワー英英和』で機会あるごとに「定義の英語とその日本語訳」をクラス全体に伝える係りでした。
定義文・定義表現の「日本語訳」を活用することで、「英語的」な頭の働かせ方が徐々に身につき、英語の定義もスムーズに受け入れられるようになった模様。 1学年上の今年の卒業生でも、”Mrワードパワー” を務めた生徒は地元国立大に合格。言葉と思考を下支えする「基礎力」養成に「英英和」は有効であることを身を以て示しました。
この『英英和』辞書、本当は全員に持たせたいのだけれど、絶版ということもあり、2年生のクラスに1冊、3年生のクラスに1冊を配し、担当者を1名決めていて、授業中に何か語義での日英文化差など「?」があったら、「はいっ、ここはどういう意味?」と、そのMiss/Mr に投げかけて授業をしていました。
英英和、というのも今に始まったわけではなく、「双解」などと呼ばれる、英日併記の辞書は昔からあった模様。
すっごく昔の『令文社学習英語辞典』 (1962年) は良くできた学習辞典となっていました。 (過去ログも参照されたし。http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20110102)
ウエブスターの英英和は、翻訳としては良くできていましたが、いかんせん版形も規模も大きく高校初中級者の学習用には向かない感じ。最近のCOBUILDやCambridgeの英英和も「学級文庫」に揃えてありますが、それらよりは、『ワードパワー』の方が出来は良いと思います。レイアウトは最悪なんですけどね…。
英英和の活用法としては、凡そ次のような流れでやっています。

「英語」→「定義表現の日本語訳」→何をキーワードに定義しているか?どんな言葉の下位グループと見ているか?を確認→で、それを英語でどういうのか?考える→「英語の定義表現」の確認→もとの「英語」に戻る。

まどろっこしいけど、しかたありませんね。自分のことばを作る作業ですから。
教室が「学びの場」として機能すれば、一人ひとりの知恵もつながることでしょう。

「呟き」では写真つきで紹介していたので、こちらにも再録。

これが、『令文社学習英語辞典』(1962年)。 ソーンダイクの3万語リストやウエストのGSLを踏まえて、語義と頻度で重要度を設定している画期的な学習辞書。双解ということで、簡易英英和となっています。
写真 令文社 表紙.jpg 直

編集方針は今から顧みてもしっかりしています。
写真 令文社 編集方針.jpg 直

使用の手引きは至れり尽くせり。
写真 令文社 取説.jpg 直
記号や数字の見方など、実際に辞書を引くときの頭の働かせ方にも配慮。
写真 令文社 取説図表.jpg 直

そして、この辞書の最大の特徴は、この「語」の中身、「語義」別の、使用頻度と重要度の記述です。spiritを例にとっての説明。この「語義別」使用頻度・重要度表示は、現代のコーパスを駆使した辞書で再現して欲しいと思います。
写真 令文社 語義別頻度重要度.jpg 直

私が手にいれた時はまだ「腰帯」がついていて、確か、西脇順三郎ともうお一方の推薦の言葉があったように記憶しています。

令文社学習英語辞典』のはしがきです。 「英語の学習効果をあげるためには…」の件は、今でも重要な指摘。
写真 令文社 はしがき.jpg 直

この学習辞書に当時の最新の語彙研究の成果が反映されていることを受けて、次のように連投してみました。

コーパスを構築して重要語「リスト」を作る際には、やはりGSLのように「語義別」の扱いを望みたい。写真はHindmarshの、CEL (Cambridge English Lexicon) でさえ1980年刊行。コーパス言語学の成果で「新たなGSL」を謳うならこれ以上のものをお願いします。
写真 CEL List.jpg 直

CELでは、句動詞にも複数の語義がある場合は、それぞれで重要度表示の「試み」をしています。
写真 CEL句動詞.jpg 直
教師としての自分を脇において、「学習者」として、「言葉を使う者」として考えると、田島伸悟氏の言うように、まずは「機能ではなく意味」に心動かされるのだと思います。

読みたい本はいろいろあるのだけれど、頼まれごとで読む本もまたいろいろあって、結構バタバタしています。

埼玉は戸田では、本業のロウイングで、チームジャパンの選考レース進行中。
出漕者がみな良いパフォーマンスができ、強いクルー、チームができることを祈っています。

遠く、ブルガリアでは、フィギュアスケートのジュニア世界選手権も開幕。
出場選手の入れ代わりが結構あって、把握するのが大変でした。
一番心配なのは、女子シングル。
昨年の覇者ラジオノワ選手 (ロシア) が補欠から出場へと変わりました。足のケガはもう癒えたのでしょうか?2連覇がかかっているというプライドよりは、次年度の「ロシア3枠」確保のために出場するという感じなのでしょうか?フィギュアスケートの未来を担う逸材なので、無理だけはしないで欲しいものです。
ラジオちゃんのように、シニアのカテゴリーの試合に出ているのに、再度ジュニアカテゴリーに戻って出場する選手も何人 (何組) かいます。病気欠場となってしまいましたが、アイスダンスでは、ステパノワ & ブキン組 (ロシア) は昨年度の覇者で、今回出場を予定していました。一旦シニアのカテゴリーで試合にでた選手が、ジュニアの大会にも出ることについて異論はあるかと思いますが、「本来下のカテゴリーの選手が、上のカテゴリーの試合に出る」ことは年齢制限に達している限りルールで認められていますので。

今季はICENETWORKのシーズンパスを取って観戦しているのですが、この世界ジュニアは「米国内のみ」のストリーミングということで悶々とネットを眺めていたら、すんなり入れてライブ観戦。
ステ&ブキ欠場であれば、アイスダンスは、ヤノフスカヤ&モズコフ組で決まりではないかと思っていたのですが、初日のSDを見て衝撃。
福岡のJGPFでは、かなりのスコアの差があった、ホワイエク&ベイカー組が、会心の演技。ツイズルもビシッと決まり、ステップも丁寧且つ躍動感のある滑りで、約3点差でトップに立ちました。ケイトの自信に満ちた表情と輪郭線がこの3ヶ月での成長を物語っているように感じました。
ヤノ・モズ組は、ロシア選手権を除けば、今シーズン、FDで追う展開というのは初めてでしょう。ハイレベルの滑りでジュニアの到達点を見せて欲しいと思います。


ということで、少々、日が空きますが、女子シングルの順位予想 (というか期待)

1位 ラジオノワ(ロシア)
2位 宮原知子(日本)
3位 サハノビッチ (ロシア)
4位 グレン (アメリカ)
5位 メドベージェワ (ロシア)
6位 チャートランド(カナダ)...

昨年覇者のラジオちゃんは、足の怪我がどの程度影響するか心配ですが、実力からすると頭一つ抜けています。ジュニアのエレメンツはフリーで11個。コレオシークエンスがなくなるので、スパイラルの美しさが見られないのは残念。

宮原選手は後一歩でソチ五輪代表というレベルまで来たので、期待を込めて。ラジオちゃん以外には勝っても構いませんし、ラジオちゃんがケガの影響があるようだったら、もう優勝して下さい、っていう感じです。2ndの回転不足を克服してくれると信じています。

サハノビッチ選手とメドヴェージェワ選手は12月に博多で見てますが、3回転 (F) +3回転 (T) の安定感には唸りました。サハノビッチ選手は、ジャンプの着氷時に膝が深く曲がりすぎると、流れが滞りがちですが、回転の軸も細く綺麗な選手です。メドヴェージェワ選手は、リプニツカヤと同じでエテリ・トゥトベリーゼ門下生ですね。

グレン選手はGPシリーズでは安定していませんでしたが、全米のJrでは別人のような演技でした。フリーの3回転3回転二種類 (3F+3Tと3Lz+3T) が成功すればTESではラジオちゃんと同じか上を行くので、表彰台にも絡んでくると思います。

チャートランド選手は昨年に続いての世界ジュニア出場。GPシリーズでも2本揃った演技ができていませんでしたが、それはシーズンの前半戦の話し。4大陸にも出ているので、安定はしてきていると思います。そろそろブレイクして良い頃でしょう。

日本では、今回補欠ですが、大庭選手などに、もっと国際大会の経験を積ませてあげたいものです。
ジャンプが3つしかないショートプログラムでは、それほど大きな得点差にはならないので、フリーで高難度ジャンプを成功させると大逆転があるのがこのジュニアの大会の見所でもあります。シーズン最後にジャンパーが一皮剥ける絶好の機会でもあると思うのです。昨年のラジオちゃんがまさにその格好の例でした。

ソチに続いて、またまた寝不足にならないよう気をつけます。

本日のBGM: こっちをお向きよソフィア (山下久美子&大沢誉志幸)

2015年9月3日追記: 『令文社学習英語辞典』(1962年)に関しては、不定期連載の『教えて!絶版先生』の第3回で取り上げています。こちらも是非お読みください。
http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20141013