アクションプランとアクションリサーチ

先日のフォーラムでいただいてきた様々な資料の中から、SELHi の調査委員の実地調査でどんなことが指摘されるかをご紹介したい。Inspection。王の目、王の耳とでも言おうか。彼らは水戸黄門のようにお忍びで世直しをするのではなく、来るとと分かっていて来るのだから、まあ、覚悟をすればいいだけのものではある。
文科省からは、視学官の小串雅則氏、以下国際教育課のスタッフが、研究者としては東海大学の松本茂氏が実地調査に来たときの指摘である。

  • 授業では「1分間に120語」読むことができるように目標を設定していたが、英語科内の先生方共通の目標なのか?
  • 実際の2年生のクラスでは1分間で60語程度が現状なのだが、なぜこれしか読めないのか分析はしているのか?
  • 授業で使用していた教科書は「リーディングスキル」を習得するには難しすぎると思うが選定した理由は?
  • 研究テーマの設定と教科書の選定、次の年度への引き継ぎはどうなっているのか?
  • リーディング力の向上という目標は、研究テーマとして全く問題ない。問題は、「コミュニケーション」のレベルでリーディングが出来ているかどうかである。
  • 進学対策をせざるを得ない状況がある、というが、学校案内などの進学実績を見る限りでは、特別著しく成果が上がっているとも思われない。伝統的な指導・授業を継続していることが本当に成果につながっているか検証しているのか?
  • 教室に生徒が一堂に会している意味が分からない。グループやペアを活用したり、生徒の生活と学習内容が関連を持つように、意味のある内容を教えることが望まれる。
  • SELHiというのは、研究開発のための指導であり、指導要領の枠からはみ出して構わない。新しい挑戦として、カリキュラム、教材、指導法、評価法の研究と開発をどんどん推し進めて欲しい。指導力の向上が、これから先この学校に残るように、組織的に考えること。学校全体の価値観の共有の問題である。ただ、いい授業を目指して頑張りました、というのでは困る。
  • 志を高く持ち、英語力の飛躍的向上を目指し、進学との整合性をつけて欲しい。
  • 年に3回は、他教科も含め全教員が授業研究に参加するくらいでなくては困る。学校としての体制が出来ていない。授業をやりくりしてでも他教科の教員も含め全員が参加すべきだ。

3カ年の中でこのような指導助言をもとに研究計画の部分修正をしながら改善を図っているのである。管理職や学校経営者が学校の生き残りをかけてSELHiの申請をしてしまった学校などにとっては、なかなか手厳しい指摘もあるが、来年度以降、全国で計100校が指定されて、年度ごとに入れ替わっていくことになる。それを考えると、このような、上手くいかずに苦労したところも報告してくれなければ、後発の参考にはならない。
文科省の視学官が宿題を残していくのは今に始まったことではないが、ご意見番たる大学の先生方は、まずご自分の大学の学生の「コミュニケーション能力」をどれだけ伸ばしているか、どれだけ「英語が使える日本人」を養成しているかを手本として見せて欲しい。その上で高校現場とのアクションリサーチに一緒に関わっていくことが、壮大なアクションプランの実現につながる、第一歩であろう。例えば、という仮定の話ではなく、今回の第一期指定校の教員で中心となった方々などが公立私立を超えて、都道府県を越えて、アドバイスが出来るような、本当の意味での、研究者アドバイザーバンクのようなものを整備していって欲しい。