『アメリカ英語の語法』

教材シリーズ第4弾。
高校時代の英語の先生で最もお世話になったのはM先生。高1と高3で教わった。今思い返すと、英語力と教授力とのバランス感覚の良い先生だった。定年退職された現在でも、社会人に対してディベートの講座を開いている。とりわけ、高3の時には英作文の添削を個人的にお願いしていた。今でこそ、ライティングを専門分野といっている私だが、高校時代「英作文」の参考書や問題集はやったことがない。自分で読んだ英文から、用例を抜き出す作業は続けていたが、それ以外に英作文としてやっていたのが、日本語の雑誌や新聞などに出ている、自分の好きなスポーツ選手、芸能人、歌手、作家のインタビューを切り抜いて、レポート用紙の上に貼り、その下のスペースに英文に訳して先生のところに持って行く、というもの。市販教材の和文英訳に対しては、「自分で感じたり、考えたりしたことじゃない言葉を英語に直して喋ったり書いたりする必然性は希薄だ」と思っていたので、「この話題、内容は今の自分にとってリアルなものなんだよね」っていうものを英語に直していったわけである。
多くの場合は語彙の選択や、文構造のミスを添削してもらい、時には、丁寧にスピーチレベルやポライトネスの観点でコメントをつけて頂いた。何度か、「これは全く英語の論理に合っていない」と、全て書き直しを命じられ、憤慨しつつも、悪戦苦闘して再提出し、合格点をもらえたときは達成感があった。

その中で、『一つの文の中に、くだけた話し言葉と、堅い書き言葉が混交しているのですわりが悪い』という指摘があり、当時は複文にすればするほど英文は高級になるものだと思いこんでいたので、新たな課題を突きつけられた気がした。そんな時期に選んできたのが、小西友七著『アメリカ英語の語法』(1981年、研究社刊)。高3の2学期の終わり頃であった。当時で2600円は大きな出費であったが、休み時間なども食い入るように読んでいた。カバー裏にはこうある。
「本書は、現代の英語世界の中で、最も強い影響力をもつアメリカ英語の諸相について、主として統語的な面から分析し、その特徴と言語的エコロジーを詳説した現代英語の語法小事典である。本書に収録した豊富な実例は、アメリカの新聞・雑誌を読む上で、座右の書として活用できる幅広い内容となっている。」
大学の2年くらいまで、本当に何度も読み返した。繰り返しに耐えうるだけの、看板に偽り無しの内容であっただけでなく、自分の、英語表現や語法に対する姿勢に大きな影響を与えてくれた本である。今でも、時折取り出して、ぱらぱら眺めてみるにつけ、自分がどのようなものに強い関心を持っていたか、初心を確かめるような思いである。