日本の美メロ王、SSWの綿内克幸さんは
- 睨んでみたって 負けちゃうような 春の陽だまり
と歌いました。
でも、夏は話が別。
最近の夏の日差しは
- 気を抜くと溶けちゃいそう
です。
皆さん、安全第一、健康第一でお過ごし下さい。
今日の気になる語法は、文修飾副詞や独立分詞構文的、独立不定詞などの「イントロどどいつ」の定型表現です。
このブログでも、これまでに、
では、
- 所謂「独立不定詞」として使われる To tell you the truth To tell the truth での「you って言うよね?」問題の精査
- The truth is that The fact is that での定冠詞やthatの有無とカンマの精査
を類義の関連表現とともに取り上げています。
- 「独立分詞構文の慣用表現」
などと言われることのある、judging from/by …に関しても、実際の用例とその生息域を精査するべく、
で関連表現を含め取り上げています。
「文修飾副詞」に関しては、このブログの初期のエントリーで、英語に関する記述内容にミスがあり、お侘びをした上で、自戒のために記事を削除せず残しています。
ということで、「イントロどどいつ」に関しては結構取り上げている方ではないか、と思っているのですが、ツイッターなどでは連投していたけれど、このブログではまだまとめていなかったものを取り上げます。
「独立不定詞」とその周辺です。
2022年の3月の投稿では、”To be clear” を含む英語ニュースを取り上げて、
- 「独立不定詞」化した用法
- 「はっきりさせておきたいのだが」「誤解のないようにいておくが」のように、後続の内容に対する話者のスタンスを示す
- To be frank [honest] などに類する「心的態度」を表す働き
であることを指摘しています。
ここで言及した不定詞の用法の変化は、こちらの記事にも出てくる「独立不定詞」化したTo be clearなどの用法と同じ地殻変動という印象。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2022年3月22日
「はっきりさせておきたいのだが」
「誤解のないようにいておくが」
のように、後続の内容に対する話者のスタンスを示す、To be frank [honest] などの類例。 https://t.co/ji8Mz4mVKL
この独立不定詞的 To be clearは学習用の辞書では成句扱いにもなっていないし、まだ用例も見られません。現代の英語、しかも近年のニュースでは頻繁に見るようになりましたが、私が学生の頃は読んだ記憶がありません。GLOWBEとCOHAでソナー発信!という感じですかね。 pic.twitter.com/m4t2qpg7Al
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2022年3月22日
この独立不定詞的 To be clearは学習用の辞書では成句扱いにもなっていないし、まだ用例も見られません。現代の英語、しかも近年のニュースでは頻繁に見るようになりましたが、私が学生の頃は読んだ記憶がありません。
個人的には、このTo be clearの独立不定詞化、というのは英語の「地殻変動」とでも形容したい語法の変化です。
文修飾的副詞の表す意味との整合を考えてみると、
To be frank ≒ Frankly
To be honest ≒ Honestly
To be sure ≒ Surely
To be clear≠Clearly
などの心的態度では、独立不定詞と副詞でほぼ置き換え可能ですが、To be clear とClearlyでは生息域が異なり、相互の置き換えは難しいでしょう。
「現状としては」、という但し書きをつけておきますが、To be clear を、(?)「明らかに」という確信度を表す際に使うのは一般的ではない、というのが私の理解。
また、clearの類義の形容詞でも、
(?) To be evident という言い方は、あまり見聞きしないのでははないかと思います。
その一方で、To be precise ≒Precisely をイントロに使う用法は拡がりつつある印象です。
この辺りの扱いが面倒なのは、例えば、
- To be plain,
という独立不定詞は「はっきり言えば」という「表現の様式」についての イントロ、予告であるのに対して、
- Plainly,
という文修飾副詞は通例、命題に対する話者の確信度を表し、”It is plain that … “ というような意味で用いられるから。
その後、オンラインコーパスの検索結果などを切り貼りして、こんな便利なツイートもしていました。
To be clearに関連して、この4枚を眺めるだけでも、独立不定詞の生息域が結構見えてくると思いますよ。 https://t.co/vl3eBwxyv3 pic.twitter.com/DuF3Mlwnbo
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2023年6月16日
昨年(2023年)9月の英語コーパス学会のシンポジウムに招かれた時にも、私の持ち時間が短くなってしまった苦しい環境下でも、この「イントロどどいつ」の話しはちゃんと入れて、資料も公開していましたが、余り反響はありませんでした (現在は資料の公開もやめています)。
昨年のコーパス学会でも言及したこちらの表現も早く辞書に入らないかなぁ…。
— Takashi “即時停戦” Matsui (@tmrowing) 2024年5月6日
最近の大学入試の読解素材だと、もうこの表現は入ってますよ。
設問に関わらないと気にしないだけでしょうけど。 pic.twitter.com/VdujKTFpBU
今日は、To be clearを含む、独立不定詞や文修飾の副詞(句)など、依然として「気になる語法」に関連して情報提供しておきます。
NOWコーパスで<To be 形容詞>が作る、主要なイントロどどいつ。上位4表現の中でのTo be clearの異質さ(=近年使用頻度が急増していること)が良く現れていると思います。
Glowbeで世界20エリアの使用状況推測。2012-2013のデータですので、To be clearのヒット数はまだ少ない。
均衡コーパスのCOCA。1990年から、コロナ禍前の2019年までのデータです。
To be sureが一番上にありますが、ヒット数の半分近くがACADな分野に偏っていることが分かります。
台本のある話しことばで、TVコーパス。
Ngram Viewerでグラフでの経年変化/推移を。
「実を言うと」「ぶっちゃけ」に類する表現。In all honestyはallがあるのがデフォルトと考えるべきでしょうね。
先ほどのグラフに、To be honestを重ねてみると…
文修飾副詞でHonestlyとFrankly、独立分詞構文でそれぞれ … speakingを入れて比較。
ノイズも含まれるだろうけれど文頭での副詞の比較。NOWコーパス。
Glowbeで20エリア比較。
ベンチマークとしてのCOCA。
TVコーパス
独立分詞構文で比較。NOW。
Glowbeで見ると、6大メジャーでは少なく、アジアで多い印象。
COCA。Frankly speakingが多いように見えるけれど、近年では余り使われていない。
TVコーパス。
ここで、最初に取り上げた、独立不定詞のTo be sureなどの頻度と、受験頻出とか重要熟語などと称して重点が置かれがちなTo be frank/Frankly speakingとの比較を。
Ngram Viewerで全体。
米
英
率直に言って、もう “Frankly speaking” を中高の教材で教える必要、なくないですか?
To speak franklyになると、もっと低頻度ですよ!
最近見た某「最新の英熟語集」では、独立不定詞を使った熟語の項目に、To be honestやTo be frank (with you)はあるのに、To be clearも、To be fairもありませんでした。
また、慣用的な分詞構文を使った熟語の項目の一番上に、Frankly speakingが(= To speak franklyとして) 載っていました。そして、この熟語集のどこにも、in all honestyは見当たりませんでした。
Frankly speakingを入れるんだったら、”To be fair” や “to be clear” が扱われて然るべきだ、というのが私の見解ですし、実際に高校の授業で、このような状況は伝え、言語材料を扱っています。
ところで、
- in all honesty
って大学入試対策用の教材ではあまり扱われていない印象なんですけど、大丈夫ですかね?
今朝も私のツイッターのTLを通り過ぎて行きましたけど。
Better than expected, but 6.00 is still not good enough. In all honesty, the TTY and YDP should have the same tariff (6.20). https://t.co/VmFZtHCLZw
— Pamchenkova (@Pamchenkova) 2024年7月25日
私も少しだけお手伝いした
- 古藤 晃 編 『クラウン受験英語辞典』(三省堂、2000年)
は20世紀の入試英語データベースでもありますが、そこではちゃんとhonestyのところに太字で載ってるんですよ。
in all honesty 正直なところ
In all honesty, I can’t figure out why people seem to think he’s such a good writer.
正直なところ、どうして人々が彼を名作家としてあんなにもてはやすのか見当がつかない
20世紀の古い情報ではダメ、という方のために、最新のCOBUILD (第10版) から引いておきます。
honesty N-UNCOUNT
Honesty is the quality of being honest.
• They said the greatest virtues in a politician were integrity, correctness and honesty.
PHRASE
You say in all honesty when you are saying something that might be disappointing or upsetting, and you want to soften its effect by emphasizing your sincerity. [emphasis]
• In all honesty, the real problem was me.
独立不定詞の実際の用例や生息域に関しては、noteで公開している「不定詞関連」の記事で詳しく扱っていますので、そちらを是非。もっとも、このnoteの記事も、高校生用のハンドアウトが元になっていますので。
最後に、教材やテストを作る方々へ。
入試過去問データベースを整備して情報を提供してくれるのは有り難いのですが、ただ単に入試頻出という甘いことばを発するのではなく、現代英語の使用実態とかけ離れたものには、ちゃんと注意書きをつけておいていただきたいと切に願います。
本日はこの辺で。
本日のBGM: Fake Romantic (Melt)