”Everybody knows (except you).”

新年度第一週もなんとか終了の予感。
授業はまだ2,3年生のみ。
2年生の英語は授業のオリエンテーションに続いて第一課のPart 1。以下のような流れで取り組む。『多読多聴マガジン』(コスモピア)を参考にした。
Task 1: Phrase reading
1. フレーズごとに意味を確認する→分からないときは和訳で確認(=順送りの意味理解)
2. 全体を通して2−3回聞く(=全体の意味の把握)
3. 音声を聞きながら、キーワードに下線を引く(=重要情報の取り出し)
4. 音声に合わせてスクリプトを見ながら音読、キーワードを強調しながら(=重要情報の確認)
5. なんちゃってread & look up;行の最後3語で顔を上げる(=リテンション;英語としての保持)
ここまでを30分程度。
Task 2: Words & Phrases (辞書引き作業で意味と品詞の確認、例文など情報交換に続いて個々の発音の練習)
Task 3: Read better and faster
6. 聞きながら「つぶやきシロー」(マンブリング=口慣らし)
7. 重ね読み(=音声を支えるフィットネス向上)
8. 見ながら1語遅れ読み(=シャドウイングへの橋渡し)
9. 見ながら3語遅れ読み(=シャドウイングへの橋渡し;フレーズ読みのバージョンで頭出しを容易に)
10. シャドウイング・チャレンジ(音声のみでリピート挑戦)
11. 背中合わせ1行読み(自分が10.で上手くいかなかったところを集中して)
まで2コマ目で終了。
構文など新出事項の学習を経て、次回は、
12. 「切磋琢磨」対面リピート(相手にダメ出ししながら、より良い音読を!)
から。そこまで基礎練習ができたら、
13. シャドウイング再び(音声のみ)
14. 自立読みread & look up(個人音読)
15. なりきりナレーション
16. 一文ずつバックワード・ビルドアップ(最後まで音量・リズムを保って)
17. ラストセンテンス・ディクテーション
18. ウィスパリング
19. 個人最速読み
20. シャドウイング(総仕上げ)
という予定。この後、和英置き換えとか、英英パラフレーズあたりをやって、英語表現の定着を図りたい。

3年は、「教科書レベル」テストの自己採点に続いて、出題者のH高校I先生のブログを紹介。英語を使う喜びの部分を強調しておいた。弱点分野を含め、自分の英語力の見取り図を作るときに、can-do statementやリストでのチェックから、言語材料や知識の部分へと降りていける機会を提供することが、中堅以下の高校の英語教師には求められるのだろう。そういえば、少し前の雑誌『新英語教育』で長沼氏が近年説いている「can-do statementsから教室内タスクへとどう落とし込んでいくか」、という授業改革の話を、能力指標の押しつけによる選別や格差に繋がる、というような趣旨で批判している人がいたが、この辺りのイメージが充分に育っていないのであろう。感情的な拒絶反応のようで残念に思った。
テキストの長文読解素材がヴァイオリンの名器に関してだったので、参考資料を作成し配布。楽曲の紹介に続いて若干時間が余ったので、Youtubeの映像で諏訪内晶子の1990年の演奏を見せておいた。幼い頃からヴァイオリンをやっているとか、父母や祖父母がヴァイオリニストなどという生徒は皆無なのだが、そういった文化資本の差に全く手をつけないまま、リーディングスキルのみに焦点を当てて「英語が読める、読めない」などと息巻いてもどうなのかな、という気がしている。価値判断はさておき、そういう世界があるのだということを意識させるのに、視聴覚教材やレアリアは大きな役割を果たすこともまた事実。
高2、高3では文型についても指導をするわけだが、生徒(だけでなく、英語教師も?)の中には、文型と動詞型をしっかりと区別、認識できていない人が多いように思われる。中学校の検定教科書や高校のオーラルコミュニケーションの教科書で第5文型(いわゆるSVOC型)が出てくると「難しい」などと単純に反応してしまう人は、次のような本を読んで、「文型」についての思いこみを一度修正、微調整しておくことが望ましいと、声を大にして言っておきたい。SV型が必ずしも簡単ではないのだから。

  • 『英語の文型 文型がわかれば、英語がわかる』安藤貞雄著、開拓社、2008年。

200ページに満たない分量の選書なので、教師なら一気に通読も可能だろう。「いわゆるSVOC型」(pp.90-145) だけでも得るところは大きいと思われる。私が好きなのは、次のようなところ。

  • (11) a. I like boys to be quiet.

というような文型を解説するのに、
「意味論的に言えば、(11a)で私が好きなのは、「男の子」ではなく、「男の子が静かにしていること」であり、(話し手は、むしろ、男の子嫌いと考えられる)」
などとさりげなく(  )の情報が添えられる辺りの懐の深さである。類例の、

  • b. I believe John to be a liar.

でも、
「(11b)で私が信じているのは、「ジョン」ではなく、「ジョンが嘘つきだということ」である(つまり、私はジョンを信じていないのだ)。」
となる。こうして考えてみれば、これらの文の文型は当然、SVOになることにも合点がいくだろう。
最近流行の「チャンク文法」や「コアミー」ではこのあたりはどう捌くのか、誰か教えて欲しい。

本日のBGM: Tonight We Fly (The Divine Comedy)