New World OrderあるいはNo Way Out

萩往還の日だけ雨の勢いも落ち、あまり濡れることなくチェックポイント2カ所を終え、同行区間約2時間踏破。むしろ、午後からは青空も顔をのぞかせ、暑い位だった。明けて今日の2年生の奉仕活動(近隣の清掃活動)は雨のため校内の清掃に。今日からはもう授業はなし。通知票の作成などで担任は大忙し。
同僚でYMO世代がいて、幸宏の話題で盛り上がる。『出口なし』音源を探すがHDDにはなし。とりあえず、『音楽殺人』と1987年のThe Beatniksの音源などから選んで幸宏CDを楽しんでもらうことに。
昼休みにエルゴを引いてから昼食。ハムストで力が伝えきれなくなってきた。歳かな、などといっていたらF氏やN氏に笑われそうだ。
雨の隙間を縫って帰宅。編集部より『英語教育』8月号が届いていた。

  • 夏休みブックガイド 私の選んだベスト3 教えるための1冊、学ぶならこの1冊、ぜったい愉しめる1冊  探している本がきっと見つかる!忙しさに追われる日々だからこそ、この夏は、読書で感性をリフレッシュ!

という特集で、拙稿は2番目に載っております。今回の執筆陣で私だけが高校教諭で、他の方はみな大学の先生であった。あと、タイトルは私だけ英語。今回のタイトル “You’re what you don’t read about.” は、Sam Pickeringのコラム集 "Letters to a teacher" の中の一文から拝借しました。(Sam Pickeringに関しては過去ログ参照→http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20051225)拙文をお読みになってのご意見ご感想は、大修館編集部、並びにこのブログまでどうぞ。
「英語教育時評」は山田雄一郎氏。同氏による連載の「小学校英語にどうとり組むか 広島市の挑戦」では、Keith Sharpeの引用をしていた。このKeith Sharpeの指摘は必読と思う。(Keith Sharpeに関しては過去ログ参照 → http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20061221
評論家然としたコメントをつけるのではなく、実践のまん中に降りてきた山田氏の勇気に敬意を表したい。英語教育を小学校から必修で実施するという「世間」の流れに抗うか、棹さすか、それとも別な「出口」があるのか?全ての英語教師がその意思表明を問われているはずである。ちなみに今号の「日本列島・英語教師リレー」(p. 40) は小学校の先生である。
連載の「授業のここにフォーカス」では、昭和女子大附属昭和中の日高由美子先生が中1でDictoglossを利用した授業に関する報告。この連載は自分の所属する学会の先生方を中心にしたものなのだが、身内のお手盛り企画ではしょうがないので苦言を。
率直に言ってDictoglossを何のために使うのかが曖昧である。リスニングでのSemantic mappingの作成とどう違うのか?復習のために授業で扱ったものと全く同じ英文を用いるとしたら、それはもうdictoglossではなく、ただのdictationではないのか?もう少し、国内でのDictoglossの実践例を踏まえながら、試行錯誤を覚悟した方がいいと思われる。参考文献として挙げられている村野井仁(2006)『第二言語習得からみた効果的な英語学習法・指導法』(大修館書店)は、第二言語習得、なかでもFocus on Formの観点から、dictoglossの効果を評価している本ではあるが、こういういいとこどりの「カタログ本」で示される指導法に飛びつくのは慎重になった方がいい。聞き取れなかった細部を補うだけの文法力がないので、聴きとった内容語を用いてパラフレーズや要約をするために「文」を書くことができない初学者にとって、「原文通り復元する」という目標設定が妥当であろう。その際、未習のテクスト(文章)でのdictoglossでは内容語いをどう手当てするかについて指導者がしっかりしたスタンスを持っていなければならない。私のこれまでの指導経験ではDictoglossの導入での最大の課題は、語い指導と時間配分であると言っておく。
中1という初学者で、しかも国内でのdictoglossの実践例はおそらくほとんどないのではないかと思われる。その意味では貴重な実践である。ただし、無理に中1で導入しなくても、中3や高1くらいになれば、余裕を持って楽しくdictoglossにとり組むことが出来るし、他社本の教科書や副読本、学年が下の教科書など同じテーマ/トピックでパラレルな英文を教師が準備するのも容易である。最近では、日本語教育で盛んに利用されている手法でもある。英語でのdictoglossに関しての必読書としては、次のものが挙げられるだろう。

  • Wajnryb, Ruth. (1990), Grammar Dictation, Resource Books for Teachers. Oxford University Press (ELT)

肝は、このような実践ガイドやリソースブックをただ鵜呑みにするのではなく、地に足のついたprocedureを自分の目の前の学習者と共に作り上げていくことである。今回の中1の生徒が2年後、3年後、どのような学習者となっているかに期待したい。

週末は大型台風来襲の模様。本業は連休最後の、「海の日」にずらしてみた。それまでに通過してくれるか。

本日のBGM: School of thought(高橋幸宏)

追記:私自身のdictoglossの取り扱いは、過去ログ参照→http://d.hatena.ne.jp/tmrowing/20071008