Easy come, easy go.

昨日は、今ひとつ仕事が進まず。途中ケーブルTVで村山由佳と小西真奈美の対談。村山由佳が読書についての持論を述べていたが、首肯できないなぁ。

  • なぜ学校の先生は教科書で夏目漱石とか武者小路実篤とかの名作から読ませるのか。それはハードルを高く、扉を重くしていることではないか。自分の人生経験を重ねていってから読めば凄いことが書いてあると気づくが、まだ子供のうちは、先生が自分で読んで面白かった本を紹介するなど、読むことのハードルを下げる、扉を開けてあげることの方が大切。

というような趣旨だったのだが、むしろ逆ではないのか。子供の頃は、自分が世界の中心で体験が薄っぺらであるからこそ、「教室では」先人に読み継がれてきた文化を擬似的に体験することに意味があるのだろう。すぐに「うん、あるある、そういうこと!」とか「そうなんだよね、やっぱり」とか「でしょっ!」などと感情移入できる本ばかりを授業で読ませてどうしようというのだ!安易な共感や感動は疑うことだ。最近の日本映画のように「泣かせてばかり」いる映画を見て育つように、消費財としての本を読むことを楽しむ世代の行く末が心配である。
中教審の新しい委員に、吉右衛門が抜擢される。いくらなんでも「鬼の平蔵」のイメージで選ばれたのではなく、小学校などを巡回して歌舞伎を広めている最近の取り組みが評価されたのだろうが、どのような貢献をしてくれるのか?教育に関して好き放題ノイズを吐き散らしている某委員を責め落とす、というわけには行かないだろう。個人的には本業に専念させてあげて欲しいのだが。
週明けの月曜日。高2の進度の早い方のクラスは「流れ型」の日本語と「集中化」の英語との対比ハンドアウトの解説から。自分の頭の中に浮かんだアイデアを文にするためには、文型よりもまず語順。その際に、主語になれるのはどんな語句かということをきちんと考えることを強調。名詞、代名詞、the+形容詞、不定詞、動名詞、副詞、名詞句、名詞節という区分を大まかに確認し、自分の守備範囲に入りきっていない項目を『フォレスト』で確認する、という方法を薦めた。<名詞は四角化で視覚化>はこういうときに便利なのです。同様にして、目的語、補語と進めていけば、なぜそれぞれの文法項目が重要なのかも認識できよう。
続いて、Silent Spring の冒頭を、教科書バージョンと原文の比較。音声は教科書TMのCDと『音読王』を使用。いかに、この教科書の書き換えが杜撰であるか、高校2年生でもすぐにわかる。Unicornの英語 Iにも確か、この冒頭部分が使われていたはずなのだが、もう少しまともだった気がする。(というようなことを去年の今頃にも書いたような気がする)。その後、acrosticの導入。グループでの担当者決め。
午後のもう片方のクラスは、Mercy mercy meの関連課題とその解説から。その後、午前のクラスと同様にacrosticの導入。
授業終了後研究室で、Y先生と雑談。かつての英語教師の力量の高さという話題になる。「湯水のように名文が口をついてでてくる」という話から、Y先生が受験した頃から使っていたという原仙作編の『二十世紀英米名文選』(北星堂)を見せていただくことに。流石に、使い込んでありながらもきちんと保管されている。この高校の先生はみな凄いなあ。生徒は幸せだよ。
帰宅時の電車で一昨年のScientific Americanの地球環境特集号(Crossroads for Planet Earth, Sep. 2005)を読む。グラフなど視覚に訴える情報は多いのだが、英語のstory messageそのものはレベルが高いのですぐには授業で使えそうにないのが悩み。この特集の良いところは綺麗事で終わらせるのではなく、様々な要因を検討した上で、”How should we set priorities?” (by W. Wayt Gibs) という論考で、food, wealth, health, peace, jobs, and environmentの優先順位を考えさせるところ。こういう視点は日本の教科書にはまず出てこない。反論の余地のない「正論」を述べて終わりでは、何も先へは進まないのだ。
帰宅後、コメント集の打ち込み完了。参考資料をつけ、地味なレイアウトでハンドアウト作成。生徒の英語のクオリティが2学期以降徐々に上がってきていたのだが、ここにきて開花しつつある。明らかに一段階上がった。総合的な学習の時間などで、環境問題に対する意識が高く、topical knowledgeがある状態だからこそ、語彙や構文など英語表現に集中できるということをしっかりと認識すべし。もしトピックにも馴染みが無く、初見の英文を与えているのであれば、まとまった意見表明などの表現活動を課すことは有害でさえある。理解の確認をパラフレーズやサマリーで行う場合にも、Output, outputと焦るのではなく、理解できるまで堂々巡りをさせるくらいのじれったい指導手順を覚悟することだ。
さあ、月曜夜はNOAH。
本日のBGM: 時にまかせて(金延幸子)