『マイ・ラスト・ソング』

高2の授業は午後から。合唱と語彙。今やっているのは、ちょっと回り道だが、以下のようなグループ活動。

  • 1. 名詞 by 名詞
  • 2. 名詞 after 名詞
  • 3. 名詞 in 名詞
  • 4. 名詞 and 名詞

で成句・フレーズを抜きだし、日本語で意味を確認し、用例を検索するか、作成してリスト化するというもの。

  • day by day 「日ごとに、日に日に」
  • time after time「しばしば」
  • hand in hand「手を取り合って」
  • day and night 「昼も夜も」

などと、日本語の意味を対応させるところまではすぐ出来る。しかし、用例となるとかなり苦労することになる。例えば、次のような用例が続出する。程度の差こそあれ皆、訂正・修正が必要である。

  1. The years past day by day.→ Years passed day by day. / Time passed day by day.
  2. The general command the soldiers to attack enemies one by one. → The general commanded the soldiers to attack their enemies one by one.
  3. He ate his lunch piece by piece. → He ate his lunch little by little.
  4. I read book day after day. → I read a book after another. / I read the book day after day.
  5. I have told you time after time. → I have told you so time after time. / I have warned you time after time.
  6. We have a quiz month after month. → We have a quiz once a month. / We have been tested month after month.
  7. My children are sleeping arm in arm. → My children are sleeping side by side.
  8. Hand in hand, she took him to the party. → She took him by the hand to the party. / Hand in hand, they arrived at the party.

動詞の時制では現在時制を適切に用いていないことがわかる。あとは名詞の数と冠詞。ESLのライティング指導では”Local” errorsに分類されがちな文法事項だが、このような文脈が希薄な単文・短文では、この手の誤りは大きな意味を持つ。このような訂正・修正をする際には、他の副詞(句)で書き換えたらどうなるか、と考えることが有効。例えば、次のそれぞれの英文は文法的にも適切な文である。もしパラフレーズするとしたらどうなるだろうか?

  • It’s raining cats and dogs.
  • The machines are kept running night and day.

Cats and dogs = heavily; hard
Night and day = all the time; without stopping
このような考察を経て、品詞についての意識を高めようというわけである。
これまでの授業で、名詞句の限定表現(前置・後置修飾)は扱っているが、これは拡充しても名詞句のまま文の中で働くのだが、今回の授業で扱ったものは、拡充することで副詞に転換するので、その知識がないと理解に支障を来すものである。昨今の語彙指導のトレンドとは相容れないだろうが、まあ、長い目で見たときの目の付け所を鍛えておいても損はないだろう。結局、辞書を引くときというのはinput, outputどちらであれ、一人で英語と格闘している時が多いのだから。

さて、昨日のFTCでお答えできなかった質問に簡単に(答えられる範囲で)答えておこうと思う。

  • 生徒にスピーチさせる時に気をつけていることは?→ 引用に頼らないで原稿を書く。あとは東大の阿部公彦先生の受け売りだが「早口」にならないように。そのためにグループの中でリハーサルをしてダメ出しをしておく。
  • 英語教師として自らに課していることは?→「教わったようには教えるな」(by 若林俊輔)。自前で考えること。機会のある限り、中学校1年など、入門期の授業を見ること。
  • 中1を教えるとしたら、文字をどのように教える?→ オリジナルの文字専用の練習帳を作ります。基本はSassoonがやっているようなフレームワークで、ストロークの基本、文字から文字の連続まで段階的に説き起こし練習させます。あとは筆記用具の選び方持ち方、姿勢の指導。三角エンピツ(三角万年筆)か、ゴム製の筆記補助具を用いて正しいペンの走らせ方を学ばせます。
  • 自分を奮い立たせる一言・名文句・歌は?→Langston Hughes、Dylan Thomasの詩。鶴見俊輔、長田弘、荒川洋治、大村はま各氏の言葉。あとは若い頃に書いた自分の詩(の一節)。「生きることは重く、足跡を鈍く光らせる」「鍵はいつも掌にある。握りしめている間は使えない」。歌でいうと、真心ブラザーズの『明日はどっちだ!』(このブログのタイトルにもなっています)と爆風スランプの『狂い咲きピエロ』。米国の歌手Jules Shearの曲でTrap Doorとかかなぁ。でもまだまだあって書き切れません。久世光彦の本に『マイ・ラスト・ソング:あなたは最後に何を聴きたいか』(文藝春秋、1995年)というのがあるけど、そのうち、こういうようなエッセイ、コラムも書いてみたいものだ。

本日のBGM: Your Song (Love Psychedelico)