故きを温めて知るべきを知る

いよいよ2学期の授業も終わりに近づいた。
週明けの実作、高2は仮定法の慣用表現。<I wish S+V>の表現を条件節に書き換えて、主節の内容を考える練習。これは私が高1の時にやっていた長崎玄弥方式。少なくとも次への発展を模索できる学び方ではある。百人一首の英訳と、朔太郎の英訳を利用。
高3は語彙・語法の大詰め。
「人の振り見て我がふり直せ」の英訳で前時の復習から。まずは自力で作ってみる。その後、1分間の旅で情報収集。修正。その後、「ふり」とは何のこと?そのふりの評価は?などと私とやりとりをしてから、『グラセン和英』で確認。

  • Observe other people’s appearance [behavior] and correct your own.
  • Learn wisdom by the follies of others.

「behavior という名詞を使わないとすればどうするか?」と問うて、代わりとなる名詞の候補を打診。

  • actionとact の使い分けなどを踏まえて、名詞句として「体言」を中心に組み立てるアプローチ
  • behaviorの中にいる「用言」の behaveを引き出し、how other people behave という「ことがら・名詞節」へとひらいていくアプローチ

の両方を試してみることの重要性を説く。そこを踏まえてから、othersは定冠詞なし、behavior、wisdomは不可算名詞、名詞の代わりで単独で名詞扱いをするownの活用、「愚かな行い (= a foolish act)」という可算名詞のfolly などなど、この二例から大いに学ぶ。
次のステップは、「他山の石」で、名詞化でのまとめ。まずは「人の振り見て…」を活かせないか各自でトライ。納得いくまでやっておいて『グラセン和英』。

  • a lesson to learn from other people’s mistakes
  • wisdom to gain through other people’s mistakes

の二例から、lessonとwisdomの可算・不可算と という動詞と前置詞のコロケーションを学ぶ。
その後、予告していたall; whole; rest を一通り。結構手強いです。

今日は、last; late; latest; latelyの使い分けと、neither; none; nothing; no+単数名詞 or 複数名詞という流れ。 「last weekには前置詞はつかない」などという怪しい知識のまま高校を卒業してはダメ。

  • I had a cold last week.
  • I’ve had a cold for the last week.

という二例を比較してしっかりと頭の中に「理屈」と「実感」を仕込んでから、一連の例文提示。

  • This is a list of novels published in the last three years.
  • Prices have been rising continuously for the last ten years.
  • There has been a growing motivation in the crew in the last month.

雄弁な用例を追加し、lastとlatestを確認。

  • I’m working on what will be my last novel.
  • His latest novel might be his last.

後半は否定語の整理。
否定語こそ「名詞の四角化」の徹底。根底的理解の問われるところ。
neitherは「選択肢は2つ」が基本。当然「限定」されていないとダメ。

  • Neither of us passed the exam.
  • Neither will do. I want neither one.
  • Neither came. I saw neither of them.

で、誰が誰に言っているのか、というイメージが大切。
noneは選択肢はmore than twoということになるはずだが、動詞の呼応は難物。

  • None of my brothers remembered my birthday.
  • We hoped some students would come, but there were none in the classroom.
  • He has five children, but I have none.

nothingは「単数で決まり」というのは簡単。でも簡単といえるのは、次のような例。

  • Nothing has been done to save him.

elseが修飾すると、「ゼロからさらに除外する」のは無理なのだから、「余りがゼロ」という頭の働かせ方をしないとダメ。

  • There was nothing else I had to do.

最後はno で総仕上げのつもりだったが、でちょっと手こずる。

  • No two fingerprints are exactly the same.
  • No two brothers are so much alike.

前者はすんなり理解できたようだが、後者で「?」という顔をしている者が多かった。

  • soは相対的のso。「そんなに、ってどんなに?」「それくらい、ってどれくらい?」と自問自答せよ。

ここでは、文字に現れていない、話し手・聞き手の間に共通理解のある「ある瓜二つの兄弟」が存在する、ということが分かったかどうか。

このような指示代名詞や不定代名詞を扱う際には、具体的な場面を踏まえるということが大切なのだけれど、やみくもに「オーセンティック」な例ばかり出しても上手くいかないことが多い。諸先輩に教えて頂いた、Michael Swan (1984) の、

  • Basic English Usage, Oxford

あたりは今の高校生で難易度として適しているように思う。そういった「お膳立て」用例集は、学習者の誤用・トラブルスポットに基づいているのだから、昔ながらのライティングや英作文の参考書を吟味しての用例採集が回り道のようで実際には、自分の足で辿り直した分、確実な気がする。今回特にお世話になったのは、次の二冊。

  • 木村忠雄 『高等英作文要覧』 (北星堂、1941年)
  • 学習英語辞典 (令文社、1962年)

前者は全編英語での記述だが、日本で英語を学ぶ者にとっての「勘所」がよく押さえられている「ハンドブック」なので、そこで得られた洞察をもって、現代英語のコーパスに当たるというアプローチで今でも十二分に活用できる。後者は最近になって入手したものだが、この時代に「双解」つまりは「英英和」として、しかも語彙・語義を制限した「学習辞典」として作られているというのに驚いた。英語教育の歴史は知らないことだらけである。襟を正して、謙虚に学び続けます。

放課後は早めの夕食をカップ麺で済まし、寮の当番。
寮監室で教材を作成していたら、推薦入試で大学合格を決めた生徒が一人質問に来たので、いろいろと助言をする。「その大学の一般入試の問題と比べると、推薦の問題はかなり易しいので、今から追いつくように勉強をしているところ」とのこと。良い心懸けです。
9時で宿直と交代。
寒気が入り、雪に変わるのではと心配されたが、霧雨程度で済み安堵のうちに帰宅。
足湯をして就寝。

本日のBGM: Colder (Travis)