『悲しいことなどないけれど、さもしいことならどっこいあるさ』

今週の週末は本業三昧。特に日曜日は、朝4:30から練習。まだ日の出前。最後の組は8時に終了。その後、朝食、ミーティング。さすがに睡魔に負けいったん自宅に戻り1時間ほど仮眠。また午後から合流した。終了は午後7:30。完全に日没。帰宅は8時過ぎ。正直しんどいが、今日は、選手も気づきの多い日であったかと思う。ゴルフでいえば、あのタイガー・ウッズにも技術指導をするコーチがいるように、経験の長い選手であっても、技術は日々変化しているので、「目利き」のコーチが必要なのだ。指導者こそ日々精進。
9月の歌が「英詩…」収録で延び延びになっていたので、帰宅後コメント集を作成。一人一人の感想を打ち込む。また、Lのキーが壊れたので、1クラスが終わったところで休憩。
メールを開いたら、ブログを読んだ方から「表現ノート」についてのお問い合わせ。取り組みの内容・手順を書いて返信したのだが、文章だけでは今ひとつイメージが湧かないかもしれない。ブログに画像を貼り付けるのはあまりやりたくないので、サンプルが必要な方は、氏名・所属などを記入の上メールを下さい。昨年の作品から画像ファイルを添付して返信いたします。
高3ライティングは、この「表現ノート」に取り組むことで、高校英語の総決算ができるようになっている。4技能+文法語法語彙+critical thinkingとでも言おうか、「英語を自分の言葉に取り込む」第一歩とでも言おうか。大学入試問題の演習と称して、時間を計ってひたすら効率よく過去問を解いたところで、それは言語教育ではないし、ことばの授業とはなり得ない。大学入試の圧力くらいでスポイルされない、骨太の、志の高い授業を生徒と創っていきたいものだ。それが、ひいては入試のレベルを超えることにつながるのだと思う。
私のライティングのシラバスではnarrative, descriptive, persuasiveというテクストタイプに配慮したディスコースレベルのライティングをさせる一方で、ミニマムエッセンシャルズの単文レベルの和文英訳は暗誦例文として処理している。つなぎ語などは、全て、ある特定のライティング課題のテーマ・トピックに関連した英文例で示し、記憶の定着を図っている。それで入試レベルを超えられるのか、と言われると手薄なのは、「京大・阪大型」の和文英訳対策なのだが、これも日本語の字面にとらわれず、主題と内容を要約することで切り抜けることが可能である。更なる対応としては、「達意文・軽妙文」の和文長文に対して、話の骨子をまとめるための英問英答と、英語表現で悩みそうな重要表現が答えとなるような英問英答を多数作成しておき、答えとなる英文をクラスで考えさせる、というものがある。これなら一斉授業で行うことが可能であり、最後に英語の残る授業が成立する。9年ほど前の公立高校での実践から例を一つ。

  • あの部屋から始まった〜清水ミチコ(タレント): 毛布の下でネタを作っていた頃
  • 十八歳の秋、私は自由が丘で一人暮らしを始めました。別にリッチな雰囲気にあこがれたのではなく、偶然はいった不動産屋さんに、二万円台で短大がある旗の台に近い街という希望を伝えると、これしかないという感じで勧められたのが自由が丘の部屋だったのです。目黒通りと自由通りの交差点を少し入った閑静な住宅地。ただし私が借りたのはアパートの4畳半で、お風呂など望むべくもありません。わずかな家具を置いただけでキツキツ状態。日当たりは良かったのですが、夏は朝から暑くて大変でした。でも大家さんや住人の方が親切で、外出していると洗濯物を取り込んでいてくれるほど。都会にも人情の厚い人はいるんだなと、いたく感動したことを覚えています。タレントの端くれになっても離れがたく、お隣に音が漏れないように毛布をかぶりギャグのネタ作りに励んでいました。あの4畳半からはすてきな思い出をいっぱいもらった気がします。
  • <全体解説>『週刊マイルームガイド』の広告シリーズ、「あの部屋から始まった」の第1回を飾る好エッセイ。約400字の文章である。文章の特徴としては、あたかもインタビューに答えていき、その答えがつづられたような印象を与える。本文には表されてはいない、一般の読者なら持っている『先入観』『イメージ』『常識的な行動』との対比を意識すると、文同士のつながり、それぞれの文に表された筆者の意図が明確になるだろう。
  • <Q&As>
  • What does Jiyuugaoka bring to mind?/ Do you have any image about "Jiyuugaoka"?/ Can you tell any difference between Jiyugaoka and your neighborhood?/ Do you think it is a good town to live in?/ Would you like to live there?/ Why did she start living in Jiyuugaoka by herself?/ Had she been longing for living there?
  • What was it like to live in the apartment there?/ Did she have a lot of rooms?/ Was there a shower booth there?/ How did she like living in the apartment?/ Is there anything positive about her apartment? Did she like the landlady/owner?/ What do you think would be the trouble between her and her neighbors?/ Why did she stay living there even after she had made it as an entertainer?
  • She couldn't play the piano loud enough to brush up her new ideas since the apartment was so small and it would make the neighbors all nervous. Then, did she want to move to a new and larger house?/ Does she think that she had a good time living there?/ What does it mean to her to have lived in such a small apartment so long?/ Can you guess what her new apartment/house would be like?    

質問に対する答えの断片をただつないだだけでは良い英文にはなり得ない。だからこそ、ライティングのシラバスの最初に「ナラティブ」のクオリティを上げることにこだわるのである。今年の3年生は、これを例題として、「子どもをさがす」(『忘れられた日本人』宮本常一)のうちの一節を使う予定。
逃げず、腐らず、阿らず、奢らず。

今日のBGM: 「たそがれマイ・ラブ」(大橋純子)