Things Japanese

高3ライティングは進度の早いほうのクラスは英語俳句の作品の相互批評。お互いに作品を見て、綴り字のチェックなどなど。カードを配布して、月曜日に絵も書いて完成作品提出の指示。残りの時間でThings Japaneseの説明文当てクイズ。「俳句」「納豆」「名古屋城」「回転寿司」「節分」などに関する英文での説明を読み、何を説明しているのかを答えるもの。選択肢はなし。結構盛り上がる。この活動に関連して「パックン英検」の話をした。(解答者として)定義文を読み(聞き)その定義されている語を答える活動は、中高生にとって、一部の帰国子女を除けば、その語を日本語で知っていることを前提としているということ。
たとえば、

  • This is a bird. It is also called butcherbird. It kills insects, lizards, mice, and birds with its beak. It may stick or pierce what it has caught on a thorn. 

という説明を聞いて、 「ああ、shrikeのことね。」とわかる日本語母語話者は、「鵙(モズ;百舌;百舌鳥)」= shrike という知識を学習か生活の過程で仕入れている人だということ。まず、「それって『モズ』だよね」という反応があり、それを英語で何というのか、という転換をしているでしょう、普通は。自分で定義ができることを目指すための第一歩としては「パックン英検的定義活動」は効果的ですが、「英語での定義」が含まれているから、という理由だけで、その活動の効能を盲信(猛進?)してはいけません。
空き時間に教育実習生の授業参観。若さっていいなあ…。
帰る前に勤務校の書棚にあった、『英語教育』(大修館書店)10月号を読む。必要な部分のみコピー。
特集は「テスト」。以下、思いつくまま。
「和訳に頼らないリーディングのテストとは」(岩田純一、千葉県立成田国際高校)から気になるところを。
「準応用題の勧め」(p.19)で、他社教科書から同じテーマを扱った文章を見つけて利用する、というオプションを提案している。

  • この場合は初見の英文なので、「空所なし補充問題」でなくとも読解問題になる。(中略)この場合も和訳問題は避けるべきだろう。背景知識や語彙知識をもとに、本当は読めていなくとも、怪しい「和訳」は書けてしまうからである。

というのだが、他社教科書の英文を読む際に、背景知識や語彙知識をもとに、本当は読めていないのに、正答を選んでしまう可能性も考慮に入れておく必要がある。(詳しくは是非とも「英文和訳テストの功罪」(馬場哲夫)『英語青年』(研究社)10月号を参照されたし)
巻頭原稿では靜哲人氏(関西大学)が持論を展開していた。定期考査の目的や意義は概ね賛成だが、靜氏が引用している、富岡龍明氏の著作は必ずしも靜氏の持論をのみサポートするものではないことには注意が必要だ。以下全文を引用する。

  • 日本の学生が英語を書くのがなかなかうまくならない理由の一つは、英語学習の際、英語を読む作業と英語を書く作業がうまく結びついていないからだと思う。英語を読む時、読んで内容を理解することばかりに気をとられるから、読んだ英語がほとんど残らないことになるのである。私の独断と偏見を言うと、英文を読むときに、ある構文や語句をいつか使うために覚えておこうという気持ちで読めば、英作文力は上がるものである。」(『論理思考を鍛える英文ライティング』、研究社、p.93)

どうだろう。特集での引用とは少し印象が変わるのではないだろうか。さらに注意が必要なのは、これは、和文英訳→論理的なライティングのための練習問題(Example 2)だ、ということである。読者諸氏も、この言葉は富岡氏の直接の主張ではないことは頭に入れておいた方がよい。では、ここで問題とされている学習活動を次のように変えてみたらどうだろうか?

  • 自分の表現力の守備範囲に入っていない「英語表現」や「構文」を積極的に使う「前提」として、英文を読み、日本語との対比など日本語を活用して内容を理解し、表現を整理する。その上で英語により英文を要約し、その内容に対する自分の意見を英語で書く。

ある程度問題は克服でき、英語力向上に大いに資することができそうではないか?
「表現ノート」で私が課しているのは、まさにこの活動そのものである。
今回の特集を読んでの印象は、英語の先生はテストが好きなのかなぁ?ということ。
平成15年の東京私立中学高等学校協会・東京私学教育研究所・文系教科(外国語)研究会の講演録「テストする評価とテストしない評価」(根岸雅史)に面白い話が載っている。

  • テストに関して、「こういうことを調べてくれ」とか「こういうデータも出してくれ」とか、いろいろいうのはいつも英語で、他教科は、数学でさえそういうリクエストはしないと言われて、なぜ英語はいつもテストのことにこんなにうるさいんだとかいう話を聞きます。ほかの教科ではあまりないのではないかという気がいたします。私は他の教科のことをそんなによく知らないのでわからないのですが、いろいろな会合に出ても、美術の先生でテスト研究の専門家とかは聞いたことがないし、社会科でもあまりテストを専門にしている社会科の先生というのは聞いたことがないので、たぶんあまり他の教科はないのかなと思います。

根岸氏は東京外国語大学教授でテスティングの専門家であるので、この後の話の方が本題なのだが、私にはこの部分が妙に頭に残っている。

本日のBGM: 「負けないで」織田哲郎(Melodies, 2006年)