『長崎ぶらぶら節』

最上敏樹が某TVの短い帯番組の中で「核兵器の違法性」について論じていた。良い主張だった。が、たぶん視聴率はものすごく低いだろう。今日は8月9日だというのに、ある民放TVのニュースでは、脳天気といおうか呑気といおうか、米国産牛肉の輸入再開などを大きく取り上げていた。「ニュース23」では現在なお続く被爆者の闘病の様子を取り上げていたが、よい子は皆寝ている時間だろう。
英語は国際語、英語を使って国際人に、英語が使える日本人、と国を挙げて煽ってはいるものの、国内に目を向ければこの程度の認識しかないメディアであり、それを容認する(歓迎する?)視聴者なのである。
ジャパンタイムズが若年層を対象とした『ジャパンタイムズ・ジュニア』を創刊するという。
創刊の趣旨として次のような項目が強調されていた。

  • 国際理解と異文化理解
  • 英語が話せると視野が広がる、将来につながる
  • 英語ができるとカッコいい(同社サイトより抜粋)

誌面内容は次のようなものだという、

  • やさしい英語の英文ニュース/世界の朝ごはん/世界のティーンの悩み_外国人がつづるエッセイ/親子でアメリカ縦断旅行_変な英語見つけた!/留学体験記/ティーン雑誌ななめ読み/映画情報 ほか

勘弁して欲しいというのが正直なところ。『週刊ST』よりも若年層をターゲットにしているということは明らかに、小学校英語・児童英語教育のマーケットと重なっている。創刊にあたって、イベントを華々しくぶちあげるらしい。言語教育とは全くかけ離れて、マーケティングの論理が先行したメディア雑誌になるのではないのか、「タイムズ」などと名乗る資格があるのだろうか、と訝しく思う。
「国際理解と異文化理解」などという常套句で何が語れるというのか?小学生は自分と同じクラスで普段接している児童の持つ異質な行動様式・思考様式を理解しているか、理解しようとしているか?隣の異文化にさえ、嫌悪感むき出しで過ごしていて、国際理解もないものだろう。守るべき安全基準を満たしていなかったにもかかわらず、「政治的」コミュニケーションの力で日本への牛肉輸出を再開させた人たちがしゃべっている言葉も英語という言葉である。この人たちの視野は広いのだろうか?英語ができるとかっこいい?じゃあ英語教育はファッション産業か?「かくあるべし」というモダリティは理解できるが、それと商売とを結びつけるのは感心しない。
英語教師という職業はこのようなジレンマと闘いながら英語を教えていく仕事なのだ。ナイーブな英語大好き、英語活動大好きな人たちには、今一度立ち止まって考えてもらいたい。
以下のアドレスで、今年の長崎平和宣言の英語版を読むことができる。よい内容である。多くの人に伝えなければならない。モダリティであることは同じでも、その持つ意義が大きく異なる。
(http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/abm/abm_e/heiwasengen/sengen_frame.html)