NEXUS

tmrowing2015-10-11

まずは業務連絡から。

第8回 山口県英語教育フォーラム(2015年11月14日(土)開催) 絶賛申し込み受付中です。
講師は
・ 松井孝志
・ 亘理陽一
・ 寺沢拓敬
の三人。参加費は無料。
講演要旨、スケジュール、参加申し込みなど、詳しくは、こちらの特設ページを御覧ください。

http://choshu-elt-2015.g.hatena.ne.jp/tmrowing/20150908

追記:
「第8回山口県英語教育フォーラム」に参加をご希望の方で、県外・遠方よりお越しの方は宿泊先の確保を急いで下さい!湯田温泉付近では、ビジネス系のホテルの空室が殆どない状態です。
ホテルの公式サイトで空きがない場合には、楽天トラベル、JTB、じゃらん、るるぶなど旅行業者のサイトからの空室検索もご検討下さい。お手数をおかけしますがよろしくお願いいたします。
フォーラムそのものの受付は100名を目処に〆切りにしていますが、昨年の申し込みは94名でしたから、こちらはまだまだ余裕があります。遠方よりお越しで、宿泊が必要な方は、前泊・後泊に限らず、宿泊先の確保をお急ぎ下さい

さて、
3学期制の現任校では、只今2学期の中間試験の「作問天国」で、自転車操業のような日々を送っているのですが、そういう時に限って本を読みたくなるのは逃避行動の現われなのでしょう。

今読んでいる本と、その間連書籍をいくつか示して置きますので、私と同様の興味関心のある方はお手にとって見ては如何でしょうか?例によって、新刊だけではなく、絶版も含みますので悪しからず。

  • 水谷信子『感じのよい英語 感じのよい日本語 日英比較コミュニケーションの文法』(くろしお出版、2015年)

を読んで、棚卸し。物理的にも、脳内的にもです。
私が最初に水谷信子氏の著作に触れたのは、実は、こちら。

  • 水谷信子『日本語教育の内容と方法 構文の日英比較を中心に』(アルク、1989年)

教壇に立ったのが1986年ですから、駆け出し3年目といったところでしょうか。私の記憶では、その頃の私は、

  • 柳父章
  • 楳垣実

とか、

  • 最所フミ
  • 長谷川潔

らを読んで、主に「表現」の観点で日英比較をしていたように思いますが、そこに「話しことばの文法」といった視点が入ることで、学生時代に追っかけていたCoatesらの研究対象であった「法助動詞」、「モダリティ」といったものとの接点が生まれたように思います。

そこからは、読み比べで、同じ著者のものを読んでいくことになります。

  • 水谷信子『日英比較 話しことばの文法』(くろしお出版、1985年)
  • 水谷信子『英語の生態 話しことばとしての英語を考える』(ジャパンタイムズ、1982年)

この2冊は今読んでも面白いのではないかと思います。英語の学参レベルでは、未だに「時制」や「進行形」などの項目で、「日本語で」解説や訳語を与えていながら、適切な記述となり得ていないものが随分と蔓延っていますので。

そして、その後、随分と時を隔てて、

  • 水谷信子『続 日英比較 話しことばの文法』(くろしお出版、2001年)

が出て、より「談話(ディスコース)」の視点が前面に出た記述となり、また、比較的新しい参考文献も示されて随分と頭の整理に役立っていました。

そこに、今回の新刊です。
余計なものがそぎ落とされたというか、無駄な贅肉がないというか、「分かりやすい筆致」というのか、敷居が低いというのか。研究者というのは凄いな、と思わされます。私は1989年の本から遡り、流れに乗りました。この新刊から遡るというのも面白いのでは?
表紙の写真をこちらへ。

水谷信子.jpg 直

水谷氏には、学参でもこういった名著がありましたね。

基礎からよくわかる英作文 (旺文社)

英作文 (基礎からよくわかる)

英作文 (基礎からよくわかる)

日英比較の棚卸しの一方で、「論理的思考」から「作文」へ、そして「発問」周辺でも、もぞもぞしています。

切っ掛けは、

  • 宇佐美寛『私の作文教育』(さくら社、2014年)

店頭で腰帯のイラストに目が点。漫画家、山下和美さんの「柳沢教授」の推薦文にもびっくりしましたが、『英語教育 増刊号』で山岡大基先生も言及されていて、「今、旬なの?」という驚きを持ちました。
私も英語の学参や学校祭択用の英語教材のレビューで、「エイブン」を酷評することがありますが、宇佐美氏の作文の批評に比べればまだまだ…。ある程度精神衛生の良好な時に読んだ方がいいと思うくらいです。
正直、呼吸を合わせるのが苦手な著者の一人です。

その宇佐美本から、いくつかご紹介。

  • 宇佐美寛『新版 論理的思考 論説文の読み書きについて』(メジカルフレンド社、1989年)

流石に初版の時は全く知らずに、この新版で「初体験」でした。それも、リアルタイムではありません。ライティングのシラバスを構築する際に、テクストタイプを扱うわけですが、その argumentative な文章をどう指導するか、日本語の論説文・説得文はどう指導されているか、ということでそれなりに多くの概説書を読みましたが、その流れでこれを読んだのが、2001年くらいでしょうか。

この右開き縦書きの本を読んでから、その頃出ていた、左開き横書きの、

  • 宇佐美寛『作文の論理 [分かる文章] の仕組み』(東信堂、1998年)

を読んで、「肝」は同じなのに、横書きになった途端、自分の受け取る何かが大きく変わったように感じたものです。

先ほども書いたように、どちらかというと苦手ですので、その後はあまり近づかないようにしていたのですが、

  • 池田久美子『視写の教育---<からだ>に読み書きさせる』(東信堂、2011年)

を手に取った時に、このシリーズが宇佐美氏の「大学授業」シリーズの一冊であることを知り、少し自分の中の位置づけが変わっていました。
そこに、「柳沢教授」のご推薦です。食指が動こうというものです。
それでもやっぱり、心身共に健康な時に咀嚼するのが良かろうというのが私の感想です。

表紙はこちら。
宇佐美寛関連.jpg 直

最後は「発問」。といっても、単なる「教師の発問テクニック」の向上ではなく、「学習者の問いの能力 (questioning skills) を喚起・養成する」という視点で書かれているものです。

Carol Koechlin & Sandi Zwaan の

  • Q Tasks, How to empower students to ask questions and care about the answers

です。Pembroke Publishers Limited から出ています。

初版が2006年で改訂版が2014年。その間が8年です。この時期は日本の英語教室で「発問ブーム」とでも形容できるような指導実践が報告されていたように感じていますが、この書を読んでいなかった自分の不明も深く反省しています。現場での実践を元に改訂されているのが強みでしょう。
本日のエントリーの冒頭に載せた写真が初版と改訂版の表紙です。

Q Tasks.jpg 直

改訂版の目次を示しておきます。

Q Tasks 2nd Contents.jpg 直
Q Tasks 2nd Contens 2.jpg 直

ということで、読み始めるとそこからの「つながり」で更に読み進めることになる私の癖で、「作問天国」では時間は過ぎていかないかの如く、自分の興味のある本にかまけていたわけですが、この連休中で既にテストは一つを除いて作成し終えていますので、生徒さんは楽しみに待っていて下さい。何を出題したかはナイショですけど…。

本日のBGM: ぼくらが旅に出る理由  (小沢健二)