frighteningly misleading

今月のNew Yorker(4月3日号)で俳優ショーン・ペンに関する論考が掲載されていた。立ち読みで済みそうな分量ではなかったので購入を思案。結局買わず終い。誰か既に読んだ人がいたら評価をお寄せ下さい。(マイケル、ショーン、クリス三兄弟はいつも誰が上で誰が下なのかわからなくなってしまうので、「はてな」かどこかにきちんと書こうかなと思って調べていたら、なんとクリスは今年の一月に亡くなっていた。女優ウィノナ・ライダーの追悼の言葉などがこちらに→http://film.guardian.co.uk/news/story/0,,1695239,00.html。ちなみに長男のマイケルはミュージシャンで、エイミー・マンの夫です。これを書いている今聴いている音楽が、Aimee MannのカバーしたニルソンのOne。"One is the loneliest number that you'll ever do."で始まる歌詞がなんとも不気味で昔は好きになれなかったなぁ…。)
先日、某編集会議にてダブルK先生、U先生と一緒の席で、派生副詞の扱いと訳語について問題提起をした。その際に使った例がfrightenという動詞の分詞から転用された形容詞frighteningから派生するfrighteningly。私が「『ジーニアス英和』(大修館書店)の記述は間違いだろう」、といったら皆さんそんなマイナーな事柄は気にしていなかったらしく、早速電子辞書で調べていた。(そうです、電子辞書に収録されている英和辞典は圧倒的にGなのです。そういえば、全く同じ顔ぶれで、「使役のhaveの語法解説でGは第2版と第3版で記述が変わっているが、これは勇み足を正したものだろうか?」と談笑したこともありました。)Gの記述は以下の通り。次の副詞の訳語はgrossly mistakenである。

  • frightening 形 ぎょっとさせる、ぞっとさせる
  • 〜 ly 副 ぎょっとして、こわがって

frightfullyという語もあるので、エントリーとして載せるのであれば、語義訳語に関しては執筆者以外がちゃんと目を通しておいた方が良い。編集部には以前からお知らせしているのだが、「一介の英語教師の戯言に過ぎぬ」と取りあっていないんだろうなぁ…。雑誌『英語教育』のクエスチョン・ボックスでは、Gの記述についての適否がとりざたされ、「次回改訂で対処致します」なんてやっているのだけれど、一般の辞書ユーザーはそんな雑誌の記事を読まないのだから、自社サイトで情報提供するか、電子辞書ユーザー対応でカードで正しい情報に書き換えられるような製品化を真剣に考えて欲しい。
本題。辞書において派生副詞は追い込みで処理されることが多いのだが、外国語として英語を学ぶ身から、さらには「書き手」の心理から言うと、こういうところにこそ解説や用例が欲しいのである。ことここに限っては英英辞典にモデルを求めていてはダメである。追い込みが機能するのは、その前の形容詞の記述が明解で用例豊富な時だけだろう。frightenの用例を充実させるくらいはどの辞書でもやっているはず。問題はそこから先である。Gは『ジーニアス大英和』でも同じ扱いで正されていない。電子辞書に収録されたデータは現在のところ訂正ができないので困りものだ。Gは語法注記の容認度の検証や、インフォーマントの信頼性確保と同等かそれ以上に、訳語の吟味に人的資源を投入したらどうだろうか。英和辞典の存在意義の第一義は「訳語」ではないのか?私は用例検索くらいでしかGを使わないのだが、それでもこの辞書の訳語は時々不安になる。
『ウィズダム』(三省堂)では、訳語のみシンプルに、

  • frightening形 恐ろしい、ぞっとさせる
  • 〜 ly副 怖いくらい、恐ろしいほど

としている。大人である。
『ロイヤル英和』(旺文社)はfrighteninglyは追い込みで品詞を示すに留まり訳語さえつけていないが、形容詞としてのfrighteningを9行に渡って記述している。訳語は「ぎょとするような、恐ろしい(ような)、こわい、驚くべき、すごい、すさまじい」。さらには句用例が3,フルセンテンスの用例が2という扱いである。ある意味潔い。
以上の例は、「爺さんは時々御しきれんよ、トホホ」という程度のリアクションで済むことで、実際に分詞というものが正しく理解されていれば全く問題ない。本当に怖いのは、frightfullyの語感の方である。古風な例と映るのだろうが、以下の例では、awfullyやdreadfullyと同じく強意の副詞として用いられている。

  • You're frightfully good at this sort of thing.
  • I'm frightfully sorry.

派生副詞に解説・用例が必要なことが判ってもらえるだろうか?